カワサキ Ninja 250:フルカウル250ccバイクの中興の祖

Pocket

カワサキ Ninja 250は、フルカウル250ccスポーツバイクの中興の祖とも呼べるバイクです。ホンダCBR250Rが2011年、ヤマハYZF-R25が2014年から後を追うように販売されたのは、初代Ninja 250Rの成功があったからこそです。

エポックメイキングな初代Ninja250R

初代Ninja 250R

初代のNinja 250Rが販売された2008年当時、ビックバイクブームと排ガス規制のあおりを受けて、250ccクラスのバイクは生産中止か、出力の低いバイクしか生き残っていませんでした。

ホンダのベストセラーネイキッドバイクであるVTRですら、排ガス規制のため2007年に生産終了し、2009年にインジェクション仕様が販売されるまでブランクを必要としたくらいです。2008年当時のホンダの250ccクラスのロードスポーツモデルは、CB223Sという223ccの単気筒バイクしか存在しないというありさまでした。

Ninja250Rは2008年にいち早く新しい排ガス規制に適応するFI(フューエルインジェクション)を搭載し、鮮やかなライムグリーン(カワサキのイメージカラー)のフルカウルスポーツバイクでした。

ライバルメーカーが、売れ筋のビックバイク(400cc以上の大型バイク)に注力する中で、あえて車検のない軽2輪クラスに新型バイクを投入してきたのです。

なぜ、当時はビックバイクばかり優遇されたかというと、大型自動2輪免許が新設され、普通2輪と区別されるようになった1996年以降、自動車教習所で400cc以上のバイクが乗れる免許が取得できるようになったからです。

1996年以前は、大型バイクに乗るためには、試験場での一発合格しか道は無かったのですが、教習所で誰もが取得できるようになり、日本国内でも大型バイクが売れるようになったのです。

そうなると、利益の出る大型バイクばかり新型バイクが開発され、250ccクラスや400ccクラスといったかつての主力ラインナップが一気に廃れました。

そこに追い討ちをかけるように、厳しい排ガス規制がかけられるようになり、キャブレターからインジェクションに変更する必要性が出ました。それをきっかけに250ccバイクのラインナップが激減したのです。

しかし、カワサキにとって大事だったのは新規ユーザーの獲得です。価格が高く、車検を必要とするバイクのラインナップに、お金のない若者が飛びつくはずはありません。そこで、タイで生産することによってコストを下げ、50万円を切る49万8,000円という価格でニンジャ250Rを販売することにしたのです。

初代ニンジャ250Rは、単気筒のキャブ車や、スポーツ性のないバイクに飽き飽きしていた層に爆発的なヒットをしました。水冷並列2気筒エンジンは、当時の4ストローク250ccクラスとしては最高の31PSという最大出力を誇っていました。ニンジャ250Rは納車に1年待ちというほどの人気がありました。

ライムグリーンのニンジャ250R

ライバルになるのは、ホンダVTRですが、こちらは前述したとおり2009年にインジェクション化されるまで、ブランクがあり、ネイキッドのためスポーツよりもオールマイティなイメージがありました。

筆者は、このVTRを3年間所有しましたが、燃費も良く走りも楽しい素晴らしいバイクでした。実は初代のニンジャ250Rもオールマイティな使い方に適したバイクであり、カウルがある分、高速道路の風圧で楽だったのです。

イメージ的にフルカウルの方がスポーツ寄りに見えたということと、54万円のVTRよりも安価なのがポイントだったのだと思います。実際にこの後、ホンダやヤマハも東南アジア生産の安価なフルカウルの250ccバイクを開発し、日本市場に投入しています。

また、このクラスの需要は東南アジアなどの海外市場にもありました。東南アジア市場において、主力は小型のバイクですが、そこよりもスポーツ性を求めて250ccクラスのバイクも高級車として売れ筋となっています。新興国の需要の高まりによって、ニンジャ250Rは世界でもベストセラーとなる販売実績を上げたのです。

このように初代ニンジャ250Rは、あらゆる意味でエポックメイキングなバイクでした。当時、バンディット250からバイクを買い替えるために、色々とバイクを物色しているときにも候補になっていました。結果としてVTRを選択したのですが、ニンジャ250Rが素晴らしいバイクであることは間違いないです。

装備も充実しブラッシュアップされた2代目

まるでSS(スーパースポーツ)のような洗練されたデザインの2代目Ninja 250

2011年に、ホンダのフルカウルスポーツバイクCBR250Rの販売開始、2012年のスズキGSR250の販売を受けて、250ccクラスのラインナップは充実していきました。

特に同じフルカウルスポーツのCBR250R(MC41型)は、ホンダの威信をかけて開発されており、Ninja 250にとって最大のライバルでした。250ccのシングルスポーツとして世界初のローラーロッカーアームを採用し、スムーズに回るエンジンや、250ccクラスでは世界初のABSを装備していました。

また、Ninja 250同様にタイ生産することで、スタンダードで44万9,000円、ABS仕様車で49万9,800円という2気筒エンジンのニンジャよりも安い価格で販売されていました。


カワサキは、先に250ccクラスの販売をてこ入れしたメーカーとして、ニンジャ 250のフルモデルチェンジを行い、2013年より販売開始しました。2代目ニンジャ 250は、Rをはずした名称となりましたが、スペック、装備、デザイン総ての面で先代よりブラッシュアップされました。

フロント部分は、1眼から2眼ライトとなり、より精悍さをアピールしています。ライムグリーンを基調としたカウル形状は、より鋭角的になりスタイリッシュになりました。まるで、リッターSSのような洗練されたデザインです。

エンジンの最高出力こそ、31PSと変わらないものの、中低速トルクが向上し、より乗りやすくなっています。更に、フレームの剛性も素材を見直すことによりアップしていて、足回りにはABSも装備されることになりました。

この2代目Ninja 250が販売開始されたときの人気は相当なもので、納車待ちが1年などという状況になりました。販売店側の要望により、ネイキッドモデルのZ250が日本市場にいち早く導入されたのは、Ninja 250の人気を受けてのことです。

究極の250ccスポーツバイク ホンダ CBR250RR

そして、ついにヤマハも重い腰を上げ、250ccクラスにフルカウルスポーツ、YZF-R25を2014年から投入するのです。YZF-R25は、カワサキやホンダのバイクを凌駕する最大出力36PSというスペックを誇っていました。

後追いで出した方がスペック的に他を圧倒することはよくあることですが、R25はデザイン面でも優れたバイクで、Ninjaの牙城を揺るがしたのです。カワサキは、これに対抗するために2014年からNinja 250にスリッパークラッチ(シフトダウン時の衝撃を緩和する機構)を装備します。

しかし、更に2017年にはホンダから究極の250スポーツバイクCBR250RRが販売されます。250ccでありながら、スロットル・バイ・ワイヤや、3つのパワーモードを採用するなど革新的なバイクです。

また、ヤマハ以上に尖った先進的なデザインや、250ccクラス最高の38PSという最大出力など、ホンダの本気が伝わるバイクです。しかし、250ccクラスでありながら70万円を超える価格など、他のメーカーとは一線を画したバイクといえます。

初代Ninja 250Rの販売により、活況化した250ccクラスは皮肉にも、国内4メーカーがそれぞれ新しいバイクを次々と投入する事態となりました。ライバルによってNinja 250も進化を続け、2018年より3代目が投入されることとなります。

最強よりも路線継続?更に進化した3代目

現行3代目 Ninja 250

2017年にNinja 250がフルモデルチェンジされるという情報を得たとき、てっきりクラス最高峰の性能を実現するバイクになると思っていました。しかし、カワサキは目先のスペック向上よりも、250ccスポーツバイクでのニンジャの立ち位置を明確にすることで、ユーザーを確保することにしました。

CBR250RRは確かに優れたバイクですが、あまりにも高価なバイクです。ホンダは、現在安価で軽量なCB250Rというシングルスポーツバイクを併売することによって、幅広い顧客を確保しています。

ニンジャは、その中間の層である安くはないけど高すぎもしない層を狙って、62万9,640円という価格で販売されています。スペックも最大出力37PSとアップしていますが、ライバルを引き離すものではありません。

装備面では、フロントのLED化や、シフトインジケーターなど充実させています。一番のポイントは、400ccの兄弟車Ninja 400と共通のフレームです。

これにより、ニンジャ 400の250と1kgしか変わらない167kgという軽量さが目立つようになりました。しかし、よく回り車検のない250ccとトルクのある400ccという排気量による棲み分けが出来ていると思います。

※Ninja 250 (2BK-EX250P)の性能表

 カワサキ Ninja 250
最大出力 kW【PS】/rpm 27【37】/12,500
最大トルク N・m【kgf・m】/rpm 23【2.3】/10,000
車両重量 kg 166
車体サイズ mm  1,990×710×1,125
燃料タンク容量 L 14
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン

ニンジャ250は2000年代を代表する250ccスポーツバイク

カワサキは、元気よく走る250ccバイクとしてニンジャ250を位置づけています。その一方でツーリングからサーキット走行までオールマイティに使えるバイクとして開発されています。

初代から3代目まで共通しているのは、スーパースポーツのようなデザインなのに、アップライトなセパレートハンドルによる前傾のきつくないポジションです。これによりニンジャ 250は、待ち乗りやツーリングにも気軽に使えるバイクとなっています。

もちろん、サーキット走行でも見かけることが多く、峠も楽しく走られます。並列2気筒エンジンは燃費もそこそこ良く、レギュラー仕様のためお財布にもやさしいです。

下火になった250ccクラスの2000年代での復権は、間違いなくニンジャ 250Rから始まりました。ライバルも次々と新しい250ccスポーツ車を開発しましたが、ベンチマークとしてのニンジャが常に存在していました。これからも250ccクラスは、日本や世界でも売れ続ける排気量として続いていくでしょう。

ニンジャ 250はいわば、250ccスポーツバイクの中興の祖とでもいうべきフルカウルスポーツバイクなのです。

バイクの関連記事はこちら

スカイネット 1/12 完成品バイク 2015 Kawasaki Ninja250SE ブルー
青島文化教材社(AOSHIMA)

カワサキ Ninja 250:フルカウル250ccバイクの中興の祖” に1件のフィードバックがあります

  1. ピンバック: ホンダ CB250R:ライトウェイトシングルスポーツの血統とは? | K.T Dogear+

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください