現在のホンダ CBR250RRは、MC51と呼ばれる2017年に販売された250ccフルカウルバイクです。スロットル・バイ・ワイヤや、3つの出力モードに斬新な形状など、250ccとは思えない豪華な仕様で登場しました。一方で、MC22と呼ばれる1990年代のCBR250RRがありました。
ホンダの本気バイクはクラス最高の実力!
CBR250RR MC51型の日本仕様車
2015年に発表されたコンセプトモデルから、CBR250RRは注目の的でした。250ccのフルカウルモデルとは思えない斬新なスタイルに、アルミのガルアームという段階でホンダの本気を感じました。
東南アジアでの、250ccフルカウルバイクの需要は高く、カワサキNinja 250、ヤマハYZF-R25という強力なライバルひしめく中で、ホンダはシングルスポーツのCBR250R(MC41)を主力としていました。
CBR250Rの水冷単気筒エンジンは、ローラーロッカーアームを採用したショートストロークエンジンで、シングルながら10,000回転以上からのレブリミットと、よく回るエンジンでした。筆者は、現在同じエンジンのCRF250Lに乗っていますが、このエンジンは少し熱いですが、なかなかいい出来です。
しかしながら、ニンジャ250やR25が並列2気筒エンジンで、30PSを超えているのに対して、MC41の最高出力は27PSと物足りないものでした。売れ筋の250ccクラスで、エンジンのホンダが後塵を拝していたわけです。
そこでホンダが本気になって作ったフルカウルスポーツバイクが、CBR250RR(MC51)だったというわけです。
注目すべきは、新開発された水冷直列2気筒エンジンです。最大出力は38PS、最大トルクは2.3kgf・mと当時のライバル達を圧倒するスペックを誇っています。パワーユニットを3段階に調整するコンフォート、スポーツ、スポーツ+のモードを実装しています。
また、250ccクラスとしては初のスロットル・バイ・ワイヤ方式を採用しており、電気信号でスロットルの調整をしています(いわゆる電スロ)。更に凄いのは、アルミのガルアーム(湾曲したスイングアーム)とφ37mmの倒立フロントフォークです。かつてのレーサーレプリカバイクを彷彿とさせる豪華な足回りです。
2016年12月には、東南アジア市場に投入され、日本でも2017年5月から販売されると、70万円(国内仕様)という価格にもかかわらず、販売は好調でした。2017年での国内販売台数は、3,315台と126~250ccクラスの売り上げ第4位という人気がありました。
CBR250RR MC51 | |
最大出力 kW【PS】/rpm | 28【38】/12,500 |
最大トルク N・m【kgf・m】/rpm | 23【2.3】/11,000 |
車両重量 kg 【】はABS仕様 | 165【167】 |
車体サイズ mm | 2,065×725×1,095 |
燃料タンク容量 L | 14 |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
MC22はレブリミット19,500rpmの脅威の4気筒マシン!
出典https://www.webike.net/ CBR250RR MC22型の前期型
1980年代~1990年のバイクブームの頃には、今よりもはるかに国内でバイクが売れる時代でした。当時はまだ、大型2輪が限定解除と呼ばれ、試験場での一発合格という狭き門だったので、中型(今でいう普通)2輪の126~399ccまでの排気量のバイクが主流だったのです。
更に、レーサーレプリカと呼ばれるフルカウルのバイクが人気で、峠やサーキット走行に特化したバイクが売れました。主流は、2ストロークの250ccか、4ストロークの400ccでした。
NSR250Rや、TZR250、RGV250ガンマなどの2ストロークが主流でしたが、車検のない250ccで4ストロークの速いマシンが欲しい!という要望は少なからずあり、各メーカーも4ストローク250ccの4気筒マシンを開発していました。
当時は、現代と違って排ガス規制も緩く、高回転型のエンジンを製造できたのです。また、フレームもアルミを多用するなど、豪華なマシンを安価に買える時代でした。ホンダは、CBR250Rという4ストロークの250cc4気筒エンジンのマシンを製造していました。
しかし、ライバルであるヤマハのFZR250Rや、カワサキのZXR250、スズキのGSX-R250という強豪ひしめく中で、新型マシンを開発する必要がありました。そこでホンダは、更にRを一つ増やしたMC22型CBR250RRを1990年から販売開始します。
4ストロークで単純にパワーを出したいなら、考えられるのは回転数です。4気筒マルチエンジンが主流だったのは、単純に回転数を上げてパワーを出すためです。気筒の数が増えれば増えるほど、回転は上がりパワーは増えます(逆に低回転でのトルクは細くなりますが)。
後期型MC22
エンジンのホンダは、カムギアトレーン(カムをギアを使って回転させる機構のこと)を搭載したMC14E型エンジンを更に改良し、レブリミット19,500回転という脅威(狂気?)の数値を実現しました。まるでF1のようなエンジンという形容から解るように、どこまでも爽快に回るエンジンだったのです。
当時のホンダのエンジンを「モーターのように回るエンジン」とよく揶揄されていましたが、これはやっかみ半分、褒め言葉ともとれます。というのも滑らかに回転するということは、高性能であることの証ともいえ、エンジンのホンダの面子にかけて開発されたのが、MC14E型だったというわけです。
スペックは、当時250ccの自主規制だった最大出力45PSを達成しています。最大トルクも2.5kg・mと2ストロークには及ばないものの豪華なスペックを誇っていました。フロントフォークこそ、倒立嫌いのホンダなので正立でしたが、ガルアームですしゴリゴリの峠マシンだろう!と思われるかもしれません。
しかし、当時はCBR250RRですら、速さを追求したレーサーレプリカとはいえなかったのです。元々、4ストロークの250ccマシンの顧客のニーズは、流行のレーサーレプリカっぽい形で車検がなく、お手軽に乗れるマシンだったからです。
2ストローク250ccマシンは、速いことは速いのですが、オイルを吹いたり、低速トルクが無かったり、乗りにくく扱いにくいマシンでした。かといって400ccの4ストロークだと車検があって維持が大変です。なんとなく、格好良くて性能もそこそこあり、楽しいバイクという位置づけが250cc4ストロークレプリカマシンでした。
今の250ccフルカウル2気筒マシンと立ち位置はかなり近いのではないでしょうか?それでも、排ガス規制が緩かったり、バイクブーム当時の豪華な設計のおかげで、今なら充分にモンスター級の性能が低価格で実現できたということです。それでも回転数だけなら、F1マシンのような数値を実現していたのでたいしたものです。
筆者が乗っていたバンディット250も、GSX-R250のエンジンですので、同じように高回転まで回りました。確かに、爽快感はありましたが、燃費が極悪だったので、手放しましたが・・・(涙)。
ぶっちゃけ、当時はNSR250Rの方が本気マシンで、CBR250RRは女性や初心者向けのとっつきやすいバイクという印象でした。アルミのLCGフレームの恩恵で足つき性がよく、4気筒といってもホンダの味付けなので、低回転がスカスカというわけではなかったからです。
特に、1994年からのマイナーチェンジでは、出力やトルクこそ40PSと2.4kg・mと減小していますが、中低速域での出力をより扱いやすくセッティングされています。元々あった乗りやすさという要素を更に高めた改良が施されています。
というのも、この頃にはすでにカワサキ ゼファーに端を発するネイキッド・バイクブームが始まっていたからです。ホンダも250ccマルチの主力を1996年からは、ネイキッドバイクであるホーネット250に移行していきます。結局、ホーネットの販売開始から4年経った2000年にひっそりとCBR250RRは生産終了します。
※CBR250RR MC22型 前期型スペック表
CBR250RR MC22 | |
最大出力 PS/rpm | 45/15,000 |
最大トルク kg・m/rpm | 2.5/12,000 |
車両重量 kg | 157 |
車体サイズ mm | 1,907×675×1,080 |
燃料タンク容量 L | 13 |
使用燃料 | 無鉛レギュラーガソリン |
現代のRRと過去の名車
特徴的なMC51のフロント
単純にスペックだけなら、圧倒的に4気筒マルチのMC22に軍配が上がります。しかし、新しい時代のRRであるMC51には、排ガス規制を通すための触媒技術や、スロットル・バイ・ワイヤの実現によるパワーコントロールなど現代のマシンに必要な要素を満たしています。
また、燃費とパワー特性に優れた直列2気筒というのもポイントです。250ccの4気筒エンジンは、1気筒あたり62.5ccです。2気筒の場合は、1気筒あたり125ccでシリンダー内での排気量の問題から低速トルクが4気筒よりもあるのです。
より走りやすく、コントローラブルなMC51は、確かに出力面では、旧型に劣っているのですが、サスペンションが新しいものであることを考慮すると、走りの面でより洗練されていると思っていいでしょう。
ただ、2輪ブーム真っ只中で作られたマシンには、今製造すると100万円くらいかかるような価値のあるパーツを使っていることも事実です。状態のいいMC22を購入してレストアしながら乗る人がいるのも、そういった価値を見出しているからに他なりません。
どちらがオススメかといわれたら、間違いなくMC51の方です。しかし、19,500rpmの世界を体感したいという思い入れがあれば、MC22を修理しながら乗るというのもありだと思います。問題は、中古価格の高騰で、状態のいいMC22だと5~60万円で売られています。
そうなると、70万円で買える新車のMC51の方がお買い得感はあります。環境性能や、2気筒ならではの燃費の良さ、丁度いい前傾姿勢でオールラウンドに使えるなど、今のCBR250RRにもいいところはたくさんありますから。
ちなみにMC22の時代ではRRは、ダブルアールと呼んでいました。ホンダによると、MC51はアールアールと呼ぶそうです。
※2019年1月追記
ホンダドリームで見かけた2019年カラーのCBR250RR
新年のカレンダープレゼントをもらいに、ホンダドリーム藤井寺に寄ったら2019年カラーのCBR250RRが展示されていました。CBR1000RRのSP2に近いデザインのトリコロールカラーです。
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