前回紹介した650ccクラスの直列4気筒バイク、CB650R/CBR650Rとは別に、カワサキが同じクラスのバイクを販売しています。とはいえ、こちらはSS (スーパースポーツ)で、その名もZX-6R!現在WSBで、チャンピオンマシンのZX-10RRの弟分です。
目次 この記事の内容
- 636ccのZX-6R
- 2019年型ZX-6Rの特徴
- 3メーカーで棲み分けた600cc4気筒
636ccのZX-6R
1995年に販売開始された初代ZX-6R この頃は600ccの排気量だった
2016年にトライアンフのデイトナ675も生産終了し、600ccのミドルクラスのSS(スーパースポーツ)は、ヤマハのYZF-R6と今回紹介するZX-6Rのみとなってしまいました。ホンダのCBR650Rは、Rコンセプトと呼ばれる一般的な使い方を重視したオートバイで、ZX-6Rほどのスポーツ性能は持っていません。
しかしながら、CBRは648cc、ZX-6Rは636ccと排気量としては近いものがあります。水冷並列(直列)4気筒というカテゴリーで、レースのレギュレーションに直結する600ccでない点は、普段使う領域での扱いやすさを重視してのことです。
ストローク量を増やした排気量アップの場合、当然ながら低速トルクが太くなり、市街地で扱いやすい特性が出ます。少ない排気量アップでも低速時でのアクセルワークが楽になるのです。
1995年から販売開始された初代ZX-6R(ZX600F)は、ZX-9Rと共通のイメージのデザインでした。アルミツインスパークフレームに、100PSを超える105PSの最高出力と、当時としては豪華なスペックで登場したのがZX-6Rでした。
ZX-6Rは、2003年に登場したZX636Bから636ccの排気量で販売しています。レース用のZX600Kは600ccで、公道走行には636ccというこだわりこそが、ライダーの使用する環境に合わせたカワサキの良心的な棲み分けだったのです。
2007年のZX600Pから、再び600ccに統一され2013年のZX636E/Fから再び636ccとなりました。暫くの間は、レース専用車として先代のZX600Rを併売していました。今もST600クラス用にレース専用のZX-6Rとして日本国内でも販売されています。
600ccクラスのレースカテゴリが廃れたので、ホンダやスズキといったメーカーもこのクラスのSSを製造しなくなっていきます。
カワサキは、ヤマハのようにレースを意識した600ccクラスのSSの製造よりも、普段使いもできる高性能なバイクとして、SSを作る方にシフトしていきます。そのためのこだわりが、以前からあった636ccという排気量というわけなのです。
2019年型ZX-6Rの特徴
出典 https://www.kawasaki-motors.com/ 2019年型 ZX-6R KRTエディション
2019年型の最新のZX-6R(ZX636G)は、使い勝手を突き詰めたモデルになっています。もちろん、同じクラスのNinja 650のようなツーリングや市街地走行を重視したバイクとは異なり高いスポーツ性能を維持したまま、利便性を向上しています。
基本的にSSなので、前傾姿勢になるセパレートハンドルや、高回転のエンジン、最新のサスペンションやトルコンに出力制御、スリッパークラッチなど、現代のSSに必要な要素は揃っています。
パワーユニットは、126PS(ラムエア加圧で132PS)もの出力を発揮する強力な並列(直列)4気筒エンジンで、サーキット走行も十分以上に可能な高性能を発揮しています。
2019年型のZX-6Rは、ツーリングや街乗りのできる汎用性の高さを維持した高性能という部分を重視して設計されています。636ccのエンジンは、ハイオク仕様ながらも、SSとしては扱いやすい特性を持っており、少し柔らかめのサスペンションは、市街地走行における乗り心地を提供しています。
アップ方向のみのクイックシフターは、サーキットだけでなく公道走行においてもメリットのあるシステムです。先代よりも足つき性を見直したり(シート高830mm)、ETC2.0を標準搭載するなど、一般的な使い方をしても満足できる高性能バイクが、ZX-6Rと言えるわけです。
*ZX-6R(ZX636G) スペック表
ZX-6R(2019年モデル) | |
最大出力 kW(PS)/rpm | 93(126)/13,500 97(132)/13,500 ラムエア加圧時 |
最大トルク N・m(kgf・m)/rpm | 70(7.1)/11,000 |
車体サイズ (全長×全幅×全高)mm | 2,025×710×1,100 |
車両重量 kg | 197 |
燃料タンク容量 L | 17L |
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
3メーカーで棲み分けた600ccクラス4気筒
出典 https://www.kawasaki-motors.com/ ZX-6Rのサイドビュー
スズキのGSX-S750は、750ccなので除外しましたが、600ccクラスの直列4気筒というクラスは、年々縮小しています。これは、メインであった欧米での人気が下火になってきたこと、国内でも販売台数が落ちてきたことと無関係ではありません。
こうなってくると、単純にこのクラスのバイクを競合させるよりも、キャラクターを変えて販売する戦略が有効になってきます。つまりは、棲み分けることによって顧客のニーズにメーカー毎に答える形となっていったのです。
- ホンダ CBR650R-Rコンセプトで性能よりも扱いやすさ重視-ストリート向け
- カワサキ ZX-6R-SSとしての高性能と扱いやすさの両立-峠からサーキットまで
- ヤマハ YZF-R6-SSとしての高性能を突き詰めたモデル-サーキット向け
リッターSSのようにガチに性能で競合することがなくなったこと自体が、600ccクラスのSSの衰退を物語っていると思います。今、ミドルクラスは2〜3気筒の安価なスポーツバイクが売れる時代で、高性能な4気筒マシンは、リッタークラスがメインの市場となっているのです。
しかし、丁度いい排気量で車重も軽く、高性能なマシンが欲しい!といった層があるのは事実です。その中でも公道走行を意識した高性能マシンのZX-6Rは、135万円といった価格ながらも、まだまだ存続していくバイクだと思います。
もう一つ重要なのが、600cc(599cc)のレース専用ZX-6Rの存在です。2019年モデルの受注生産は終了しましたが、94万円(税込価格)とリーズナブルな価格設定で、サーキット専用のモデルが販売されています。
ZX-6Rは、サーキット用と公道向けに振り分けることで、扱いやすい高性能なバイクを一般に販売できるようにしているのです。
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