RADIOHEAD 2

RocK名盤解説 File16:KID A RADIOHEAD

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RADIOHEADは、20世紀最後の年2000年に”KID A”を発表しました。前作”OK COMPUTER”で、名実共にNo1ロックバンドの地位を不動のものにしていたレディオヘッドが、エレクトロニカを全面的に取り入れたアルバムを発表するという衝撃的な出来事が起こったのです。

ロックバンドがエレクトロニカ?世界中に衝撃を与えた問題作

バリバリのロック野郎を自負していた筆者も、ハンマーで頭をぶん殴られたかのような衝撃を受けました。これまで大事に思っていたロックそのものが陳腐なものに思えてしまったからです。

ロックミュージシャンにとって、打ち込みや、ポストロックの手法は禁忌の対象でした。機械に頼ることは、生演奏の良さを全面否定することであり、バンドこそが至上のものだったからです。

しかし、エレクトロニカは、ロックの既成概念の先を行っていました。変拍子や、細かく制御できるエフェクト、サンプリングによる音の多様性など、古臭い概念では到達できないサウンドに満ちていたのです。

 

KID A解説

RADIOHEAD 3

1曲目のEverything in Its  Right Placeは、いきなりエレクトロニカ全開の曲です。10拍子のビートに乗せて、エレピのバッキングが入り、静寂から徐々に盛り上がり、また静寂に戻るということを繰り返します。

この曲は、今までと違ってこのアルバムが、ギターロックではないということを如実に表しています。もはやロックの範疇のままでは表現できない領域のサウンドです。僕は、まずこの1曲目に戦慄しました。

2曲目は、タイトルロールのKID Aです。正直、3曲目のThe National Anthemと1曲目に埋もれてしまうような、印象が薄い曲ですが、ヴォーカルのエフェクトのせいでしょう。

3曲目のThe National Anthemは、ベースラインが秀逸です。ボーカル・ギターのトム・ヨークがベースのコリン・グリーンウッドに代わって弾いているのですが、このベースこそ、この曲の肝です。

ナショナル・アンセムは、カオスな感じを全面的にフューチャーした曲で、ホーンセクションが不安をかきたてます。現代の不安さや、緊張感を表現したかったのでしょう。この曲は、ライブ盤”I MIGHT BE WRONG”でまったくアルバムとは異なるアレンジが聴けます。

4曲目は、How to Disappear Completelyで、アコギがイントロから入ってくるので、普通のバラードだと勘違いする人が多いと思います。よく聴くとポリリズム(拍子を複数同時進行させるリズムのこと)が用いられています。

5曲目は、Treefingersで、この曲はインストです。6曲目にして、ようやくバンドサウンドのOptimisticに繋がります。これぞ、レディオヘッドといった感じの、ノリのいいナンバーで、なぜだかホッとします(笑)。

7曲目は、オプティミスティック同様ギターのリフが入り、バンドチックなミドルテンポのIn Limboです。最後のサンプリング音は、次のIdiotequeに繋がるカオスなものです。

8曲目のイディオテックこそ、このKID Aの中で最も重要な曲で、不気味な旋律と目まぐるしく変化するビートが印象的です。キャッシャーが札束を数えるときの音をサンプリングし、拝金主義を揶揄しています。ギタリストのジョニー・グリーンウッドは、この曲をライブではサンプラーを操作する役に回っています。

もう1人のギタリスト、エド・オブライエンのコーラスとトムのボーカルが、現代社会の病巣そのものを悲痛に叫んでいるように聴こえます。

そして、9曲目のドラムをフィル・セルウェイが、イディオテックのラストで叩き始め、そのままMorning Bellに繋がります。この曲は、同じセッションで生まれた5枚目のアルバム”AMNESIAC”で別バージョンが聴けます。

どこか懐かしいオルガン曲、Motion Picture Soundtrackは、KID AとAMNESIACのツアー以前からライブで演奏されていた曲です。ファーストアルバム、”PABLO HONEY”から存在していた古い曲です。

同じように、古くからのライブの定番曲”True Love Waits”を、最近発表した(2016年)アルバム、”A MOON SHAPED POOL”でスタジオ録音しています。ちなみにTrue Love Waitsは、ライブ盤I MIGHT BE WRONGにも収録されています。


Motion Picture Soundtrackは静かに終わりますが、しばらく待つとシークレットトラックのように1分くらいのインストが流れ、次のアルバムAMNESIACに繋がるようにフィナーレを迎えます。

KID Aは、ロックが長い間繰り返してきた手法を真正面から見直すきっかけとなった名盤です。同じようなギターリフ、同じような構成の曲では、新鮮な感動は生まれません。

ロックバンドがエレクトロニカを積極的に取り入れた意味だけでなく、ミュージシャンの中にあったマンネリ化自体を鋭く指摘したことの意味は大きいです。

そういった意味で、ビートルズのサージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドと比肩しうるアルバムだと思います。

ロックの既成概念とは?

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出典 https://www.amazon.co.jp/

ギタリストとして、打ち込みや、サンプリング、DJなどは論外であり、毛嫌いする存在でした。バンドサウンドこそが至高であり、それ以外の音楽を認めることはありませんでした。

KID Aを聴いたとき、自分がいかに情けないことにこだわっていたのか解りました。友人が、エレクトロニカを薦めてきたとき、「こんなゴミ聴くな!」なんて言っていた自分が恥ずかしいです。

ロックが生まれたばかりの1950年代も、同じようにエレキギターに対してアレルギーのある頭の固い連中がいました。KID Aほどのアルバムを聴いてエレクトロニカを否定するのは、そういった古い既成概念にしがみつく連中と同じだと思ったのです。

ロックの持つフォーマット自体が半世紀もの歴史を持ち陳腐化していたのです。小手先の手段で出来なかった革命を、ロックバンド自身が行ってしまったというのは皮肉です。

よってこのアルバム以降は、ロックの名盤というものは存在しません。もはやロックは、メインストリームの音楽ではなくなってしまったのです。

ただ、僕にとってエキサイティングなのは、やはりバンドの生み出すグルーヴであり、ロックサウンドなのです。それは、ロックが主流でなくなった現在も変わることはありません。そして、EDMについて盲目的に批判することはもうないでしょう。

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