2024年冬アニメレビュー前編:薬屋のひとりごと〜シャングリラ・フロンティア

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2024年冬アニメレビュー前編です。前編では、『悪役令嬢レベル99』、『アンデッドアンラック』、『異修羅』、『俺だけレベルアップな件』、『休日のわるものさん』、『薬屋のひとりごと』、『佐々木とピーちゃん』、『弱キャラ友崎くん』、”SYNDUALITY Noir”、『シャングリラ・フロンティア』の10作品をレビューします。

目次 この記事の内容

  • 悪役令嬢レベル99 ~私は裏ボスですが魔王ではありません~
  • アンデットアンラック
  • 異修羅
  • 俺だけレベルアップな件
  • 休日のわるものさん
  • 薬屋のひとりごと
  • 佐々木とピーちゃん
  • 弱キャラ友崎くん 2nd STAGE
  • SYNDUALITY Noir 第2クール
  • シャングリラ・フロンティア

悪役令嬢レベル99〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜

悪役令嬢レベル99 ~私は裏ボスですが魔王ではありません~は、七夕さとりの同名小説を原作にしたテレビアニメです。タイトルでお察しの通り、悪役令嬢であるはずの主人公、ユミエラに現代日本の女子大生が転生するという話です。

元がゲーム世界のため、裏ボスであるユミエラと対になるヒロインがいます。ヒロインのアリシア、そして王子のエドウィン、その取り巻き達がゲームでの主人公サイドです。最初は、レベル99のユミエラに対して、警戒心が過度にあったヒロインサイドですが、最終決戦の魔王との戦いには、なんのかんのと打ち解けるようになります。

筆者が投稿した、この記事の動画バージョンです。

圧倒的な力を持つユミエラのずれた人との接し方とか、所々ギャグ要素が強く、ツッコミ役のパトリック、徹底的なボケ役のエレノーラなど、キャラの造形と配置が面白く、最後まで楽しませてくれました。

アニメーション制作は寿門堂、監督は山岡実(やまおかみのる)、シリーズ構成は『弱キャラ友崎くん』の志茂文彦(しもふみたけ)です。作画はそこそこなのですが、話の展開が面白かったため、星は3.5です。綺麗な終わり方も好印象でした。

アンデッドアンラック

『アンデッドアンラック』は、戸塚慶文(とづかよしふみ)の週刊少年ジャンプに連載中の同名漫画が原作のテレビアニメです。昨年の10月から2024年の3月まで、2クール24話で描かれた不死者と不運の物語は、とても面白く毎週楽しみにしていました。

アニメーション制作は、『ジョジョの奇妙な冒険』のdavid production、監督は八瀬祐樹(はせゆうき)、シリーズ構成は『炎炎ノ消防隊』の蓜島岳斗(はいしまがくと)です。

アクションやSF、人物の細かい心理描写なども秀逸でした。不死者のアンディと、不運を呼ぶ少女風子の物語はスケールとスピード感が凄かったです。アニメの表現と作画のレベルも高く、強豪ひしめく今期アニメでもトップレベルの面白さだったんですが、なぜか話題が他のアニメに取られていました。

星は4佳作認定で、周りのアニメが強烈な印象を残すものが多かったためだと思いました。昨年の秋と今年の冬でなければ、もっと注目されていた隠れた良作です。

異修羅

『異修羅』は、珪素(けいそ)の小説が原作のテレビアニメです。カクヨムや小説家になろうに連載の所謂、ネット小説から話題になっていた作品で、アニメ化されるということで、注目されていました。

実際、1話ではかなり動くし、作画もいいし、今期期待の作品になりそうな予感しかありませんでした。ただ、2話、3話と話数を重ねる毎に、一人一人の登場人物のエピソードが長すぎて、途中で飽きてしまう人が増えるのではないか?と危惧しました。

ファンタジー世界で、剣豪や異形の剣士、ワイバーンの英雄、言葉の絶対的力を持つ少女、姿のない天使の加護を持つ暗殺者など、キャラクター達にはそれぞれ戦う理由がありました。

しかし、本作の本領は各最強キャラクターが揃い、戦い合う7話以降でした。6話までのキャラ紹介から打って変わって、展開が重層的になり、誰が勝つのか楽しみになってくるのです。

正直、これでも勇者を決める試合の前日譚らしく、ここから本番というところで、1クール目が終わりましたが、前半よりも後半の展開が見所があり、楽しめた作品でした。

制作は『見える子ちゃん』のパッショーネで、監督は『狼と香辛料』の高橋丈夫(たかはしたけお)で、シリーズ構成は『幼女戦記』の猪原健太(いはらけんた)です。意外と後半が楽しめられたので星は3.5で、第二期も期待しています。

俺だけレベルアップな件

『俺だけレベルアップな件』は、Chugongによる小説が原作のテレビアニメです。このアニメが始まった当初、主人公である水篠旬(みずしのしゅん)が極限状態に追い込まれたため、1話でこれかよ!って思いました。

ガンツ以来の緊迫感のある序盤で、命を落としたかに見えた旬でしたが、システムという謎の存在によるバックアップを受け、能力を一人だけ向上させることができるようになります。

ゲートと呼ばれるところから、ダンジョンが出現し、そこに現れるモンスターと戦うハンター達がいるのですが、彼らにはそれぞれランクがあり、どれだけ経験を積んでも能力(ステータス)は変わらないのです。

例外があるとすれば再覚醒者のみで、それも一時的なものですし、主人公のようにステータス向上するレベルアップという状態にはなりません。それでタイトルが俺だけレベルアップなのです。

個人的に『86-エイティシックス-』の澤野弘之が音楽を担当しているということで、視聴することにしていました。主題歌「LEveL」は今期でも屈指の出来で、さすがは澤野さん!っと思って見ていました。

アニメーション制作はA-1 Pictures、監督は中重俊祐(なかしげしゅんすけ)で、シリーズ構成は『魔法少女にあこがれて』の木村暢(きむらのぼる)です。作画、ストーリー共に高レベルで星は4、佳作認定です。他の作品との兼ね合いで佳作認定ですが、通常のクールなら、星4.5でもおかしく無かったアニメです。

休日のわるものさん

『休日のわるものさん』は、森川侑によるWeb漫画が原作のテレビアニメです。実はこの作品、筆者はpixivで読んでいて結構ファンでした。主人公の将軍(わるものさん)は、悪の組織の幹部です。しかし、休日には働かないというポリシーのため、なぜか地球人の姿で普通に休暇をとっています。

しかも、上野動物園にパンダを偵察?に行くというのが、休日のルーティーンになっていて、ただのパンダ好きの青年という感じで過ごしています。悪の組織と戦う戦隊ヒーローのようなレンジャーや、悪の組織の他の幹部、木の精の少年と少女という個性豊かなキャラクターが出てきます。


意外と主人公は、普段穏やかで何かと親切ですし、普通にいい人?です。また、パンダだけでなく可愛い動物好きということもあってほのぼのした雰囲気の話になっています。

アニメーション制作は、シンエイ動画、SynergySPの共同制作です。シンエイ動画は他に今期は2作品あり、よくこのクール3作品も手掛けられたな、と感心していました。監督は小高義規、シリーズ構成は後藤みどりです。

実にほのぼのとした感じで、次回予告も短歌のような風情があり、とても楽しめられました。星は3.5ですが、原作ファンとしてアニメ化は嬉しく思っています。

薬屋のひとりごと

『薬屋のひとりごと』は、日向夏(ひゅうがなつ)の小説が原作のテレビアニメです。こちらも、漫画版をWeb漫画で読んでいました。中国風ファンタジー世界の後宮を舞台に、元薬屋の猫猫(マオマオ)が様々な事件を推理し解決していく話です。

宦官の壬氏(ジンシ)が持ち込んでくる事件が多く、それを猫猫が解決するというパターンが多いです。火薬の記述があるということなので、比較的中世以降のテックレベルだと推測される世界なので、化学的な考証もそれに則っています。

この話の面白い所は、後宮という閉鎖された舞台で、政治的な思惑や個人の怨恨などが原因で起こる事件をただの宮女が解決していくというスタイルにあります。つまり、皇后や妃達が主役であるはずの後宮で、貧しい身分の宮女が難事件を解決していくというのは色々ストレスがかかる現代においてカタルシスのあるものなのです。

アニメーション制作は、TOHO animation STUDIOとOLMです。監督とシリーズ構成は『魔法使いの嫁』の長沼範裕(ながぬまのりひろ)です。漫画が2つのバージョンがあり、さらに原作は小説という、色々と難しい本作を、美麗な作画と脚本でまとめた傑作です。

星は名作認定の4.5で、今期の中でも覇権候補の一つでした。漫画版既読の筆者すら、アニメの繊細な描写には脱帽しました。

佐々木とピーちゃん

『佐々木とピーちゃん』は、ぶんころりの小説を原作にしたテレビアニメです。異世界ごった煮世界というべきか、現代日本とファンタジー異世界、魔法少女、異能力者とのバトルなど、様々な陣営が出てくるアニメです。

主人公の佐々木は、しがないサラリーマンでしたが、ペットとして飼った文鳥のピーちゃんが実は異世界では強力な魔法使いだったということで、異世界に行ったり、異能力を持つ人間として、政府の機関にスカウトされるようになっていきます。

お隣さんの少女が、ヤンデレ気質があったり、政府機関の上司星崎が女子高生だったり、異世界の子爵令嬢だったり、魔法少女だったり、ヒロイン候補も実に多かったです。こういう複数の世界の要素を楽しむという感覚は斬新でした。

アニメーション制作は、『Lv1魔王とワンルーム勇者』のSILVER LINK.で、監督は『最近雇ったメイドが怪しい』の湊未來(みなとみらい)でシリーズ構成は赤尾でこです。

星は作画が少し良くなかったので、3.5になりますが、話としては新しかったです。2期の制作も決まっており楽しみにしています。

弱キャラ友崎くん 2nd STAGE

『弱キャラ友崎くん 2nd STAGE』は、屋久ユウキ(やくゆうき)の小説『弱キャラ友崎くん』が原作のテレビアニメで、2nd STAGEは2クール目となります。2021年に放送した1クール目から間が空いて、2024年の冬に2クール目である2nd STAGEが放送されました。

アタファミというゲームでは無敵の友崎くんですが、現実世界でも自分を変えるという目標は佳境に差し掛かりつつありました。クラスでのいじめ問題の解決、オリジナル劇で臨む文化祭など、自身の成長と人間関係の大きな変化が見どころとなっています。

『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。』のようなカラーの作品で、雰囲気がとても好きでした。複数いるヒロインの中から、一番文学的な少女、菊池さんが彼女になる、というのも友崎くんのキャラクターからすると納得しました。

アニメーション制作は『豚のレバーは加熱しろ』のproject No.9で、監督は柳伸亮(やなぎしんすけ)で、シリーズ構成は『悪役令嬢レベル99』の志茂文彦(しもふみひこ)です。

作画は平均的でしたが、人間関係を丁寧に描写するスタイルのアニメで、星は3.5です。俺ガイルテイストのある作品ですので、同作が好きならオススメです。

SYNDUALITY Noir 2クール

『SYNDUALITY Noir 第2クール』は、ロボットアニメが好きな筆者は2023年夏の1クール目から視聴して、2024年冬の2クール目も楽しみにしていたアニメです。また、『青春ブタ野郎シリーズ』の鴨志田一(かもしだはじめ)が原案のオリジナルアニメというのもポイントでした。監督は『ナイツ&マジック』の山本裕介です。

1クール目の続きということで、設定はそのままでメインのキャラクターも同じで、主人公のドリフター、カナタがエトワールに到達し、夢を成し遂げることまでを描いていきます。

迫力のあるロボットの戦闘シーンは、制作会社のエイトビットのオハコである3DCGで描かれています。作画もそこそこ良く、いい点がたくさんあったのですが、如何せん今期には、今までのロボットアニメの常識を覆す作品があったので、そっちと比較すると話題性が弱かったように思えます。

メイガスは永野護のファティマから、泥臭いロボットのデザインは高橋良輔アニメ(ボトムズ)から、シエルの歌はマクロスから、と80年代ロボアニメの要素を中途半端に詰め込んだ結果、平均的な作品になってしまったように思えました。高水準でうまくまとまっているものの、それ故に何か物足りないので星は3.5です。

シャングリラ・フロンティア

『シャングリラ・フロンティア』は同名の漫画作品が有名で、てっきり漫画が原作だと思っていました。しかし、元は硬梨菜(かたりな)の書いたなろう小説が原作の漫画化、テレビアニメ化というのが正確なようです。

VRゲームが一般化した近未来で、クソゲーをこよなく愛する主人公が、サンラクというキャラクターで神ゲーである『シャングリラ・フロンティア』をプレイするという一見するとシンプルな物語です。

しかし、同じクソゲー仲間だったり、主人公に片思いしている少女だったり一癖も二癖もあるキャラクターが神ゲーに参加しています。サンラクは、最強のユニークモンスターとの戦いを経て、『シャングリラ・フロンティア』の真実を研究しているプレイヤーに邂逅します。

一番の目玉である、墓守のウェザエモンとの戦いは大迫力で、序盤の遅々として進まない展開が嘘のようでした。アニメーション制作は『江戸前エルフ』のC2C、監督は『魔女の旅々』の窪岡俊之(くぼおかとしゆき)で、シリーズ構成は『転生したらスライムだった件』の筆安一幸(ふでやすかずゆき)です。

話の面白さ、斬新さ、作画、全てが高レベルで星は4、佳作認定です。『機動戦士ガンダム 水星の魔女』以降の日5枠は、定着しつつある貴重な民放の夕方のアニメ枠なので、これかも視聴を続けていこうと思います。

後編に続く

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