今回は、1950〜60年代におけるエレキギターの価値をデータを基に考証してみました。現在では、高騰しているヴィンテージギターの価格ですが、当時の定価と50年代のアメリカの物価から、庶民が購入できる代物だったのか調べてみました。
目次 この記事の内容
- もはや家と同じ価値?50年代のヴィンテージギター
- ギブソン・フェンダーの59〜60年代モデルの価格
- 1950〜60年のアメリカの年収と物の価値
- 洗濯機や冷蔵庫並みの価格のエレキギター
- 中古だと更に安価?低所得層でも入手可能
もはや家と同じ価値?50年代のヴィンテージギター
1959年製 Gibson Les Paul Standard
前から疑問に思っていたことを今回は調べてみました。ビンテージギターと呼ばれる1950〜70年代のエレキギターの価格は、高騰していて数千万円もするギターがあります。
しかし、ジミヘンがライブの時にギター燃やしたり、フーのピート・タウンゼントがSG壊したりしてるので、60年代当時の価値は違っていたはずなのです。そこで、アメリカ本国における50年代後半と60年あたりの平均年収などから当時のギターの価値を調べてみることにしました。
ギブソン・フェンダーの59〜60年製モデルの価格
1960年製 Fender Stratocaster
1959年製といえば、エレキの王様ギブソン・レスポール・スタンダードの当たり年で、このギターは現存する本数も少なく、数千万円の価格で現代では売られています。
当時のカタログ価格では、スタンダードが265ドル、カスタムが395ドル、ケースはそれぞれ42.50ドル、47.50ドルで、スペシャルは195ドルでした。
フェンダーのストラトキャスターは、1960年のカタログ定価は289.50ドルでトレモロ無しのモデルが259.50ドルということでした。こちらもケースは別売りだったので、意外なことにストラトとレスポール・スタンダードの値段は、あまり変わらなかったようです。
1959〜60年におけるGibsonやFenderのカタログ価格
アメリカ本国の定価 | 付属品の有無 | 資料 | |
レスポール・スタンダード | $265 | ケース別売り$42.50 | 1959年カタログ |
レスポール・カスタム | $395 | ケース$47.50 | 1959年カタログ |
レスポール・スペシャル | $195 | ケース別売り | 1959年カタログ |
ストラトキャスター | $289.50 | ケース別売り | 1960年カタログ |
ストラト(トレモロ無し) | $259.50 | ケース別売り | 1960年カタログ |
ぶっちゃけ、当時の価値がわからなければ、高いのか安いのか判断できないとは思います。しかし、定価だけみると今の価格よりも安いのは一目瞭然で、いかにヴィンテージ市場が高騰しているかわかると思います。
1950〜60年代当時のアメリカの年収と物の価値
ジミヘンはストラトを燃やすパフォーマンスをした
物価と年収と比較すれば、1950〜60年代のアメリカにおけるエレキギターの価値が分かります。1960年におけるアメリカの平均年収は、男性が4,081ドル、女性が1,262ドルでした。つまり、アメリカの家庭では合計すると5,343ドルの年収のある家庭が多かったということになります。
月収だと445.25ドルということになり、男性の独身世帯だと340.08ドルというのが当時の月給の平均値になるのです。
次に1954年当時のアメリカの耐久消費財の平均的な価格を調べてみました。
1954年の平均価格 | |
掃除機 | $95 |
洗濯機 | $230 |
乾燥機 | $233 |
冷蔵庫 | $305 |
ラジオ | $30 |
テレビ | $238 |
自動車 | $1,740 |
この資料によれば、洗濯機が230ドルで、テレビも238ドル、冷蔵庫は305ドルで車が1,740ドルということになります。つまり、レスポール・カスタムは冷蔵庫並み、スタンダードとストラトは洗濯機やテレビくらいということになります。
洗濯機や冷蔵庫並みの価格のエレキギター
1959年製 Gibson Les Paul Special
1955年における、アメリカの洗濯機や冷蔵庫の普及率は8〜90パーセントです。ちなみにテレビは74.1パーセントだったようです。つまりアメリカ本国において、月収の5〜6割程度の価値のものなので、誰もがちょっとお金を貯めたら買える価値のものが、エレキギターということになります。
もちろん、50年代当時の話なので洗濯機や冷蔵庫の価値は今とは比較にならないと思います。ただ、普及率が高い背景には所得の増加が寄与していることは間違いありません。
日本が変動相場制を導入する前の1ドル=360円の頃の話になります。当時の日本だと、レスポール・スタンダードは9万5,000円ということになります。1960年の大卒初任給は、1万7,000円くらいなので、とても日本では購入できるものではなかったのです。
中古だと更に安価?低所得層でも入手可能
マディ・ウォーターズ
ぶっちゃけ、シカゴブルースや、ロック創世記のギタリストは黒人が多かったです。筆者は黒人のギタリストを尊敬していますが、所得という点においては、チェスなどのレーベルに搾取されていたのが、マディ・ウォーターズなどの黒人ミュージシャンでした。
ストーンズのメンバーが、1964年に初めてマディ・ウォーターズに会った時に、壁を塗装していた話がありましたが、これは当時の黒人ミュージシャンの扱いを知る上で重要なエピソードです。
マディ・ウォーターズは、フェンダー・テレキャスターをメインギターにしていました。労働者階級のマディがテレキャスを愛用していたのは、頑張れば購入できる価格だったからではないでしょうか?
筆者が投稿したこの記事の動画バージョンです。
ストラトキャスターを愛用していたバディ・ガイがシグネイチャー・モデルの打診がフェンダーからあった時に、メキシコで自身のシグネイチャーモデルを製造してもらって、10万円台だったことを思い出しました。バディの話では、安価なモデルを多くの人に弾いて欲しいと思っていたようです。
ぶっちゃけ、中古なら半額もしくは6〜70%程度の価格でも手に入ったでしょう。つまり、月給の半分以下の100〜200ドル程度で中古ギターが買えたので、今と違って家どころか家電製品を購入する感覚で、5〜60年代のエレキが買えたことになるのです。
ただ、ヴィンテージに価値がないということではないのですが、今では数千万円もする59年製レスポール・スタンダードですら冷蔵庫並みの価格だったのです。
マイク・ブルームフィールドなど名ギタリストが愛用したことと生産本数の少なさで、価格が高騰したということもあるのですが、明らかに値段が上がり過ぎているのはどうかと思います。とはいえ、5〜60年代のヴィンテージギターは一度は所有してみたい憧れのギターです。
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