F/A18E/F スーパーホーネット:アメリカ海軍の主力マルチロール機

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アメリカ海軍は、現在新型の艦載機F-35Cの配備が遅れています。主力機として運用しているのが、F/A18E/Fスーパーホーネットになります。実は、航空自衛隊がF-Xで選定しているときに候補に上がった機体の一つで、4.5世代機に相当します。

目次 この記事の内容

  • マグドネル・ダグラス(現ボーイング)F/A18E/Fとは?
  • 原型となったF/A18ホーネットについて
  • スーパーホーネットの利点
  • 第4次F-Xでの最終選考

マグドネル・ダグラス(現ボーイング)F/A18E/Fとは?

着艦するF/A18Eスーパーホーネット

近年では、マルチロール機が増えてきています。マルチロール機とは、戦闘機と攻撃機の機能を併せ持つ航空機のことで、主に空戦を行う戦闘機と対地攻撃などを行う攻撃機の両方の任務を装備を換装することによってこなすことのできる多用途戦闘機のことです。

元々、A-6イントルーダーの後継機であるA-12というステルス攻撃機を開発する予定だったのですが、世界的な軍縮傾向のため、計画自体が頓挫したため、F/A18ホーネットを大幅にアップグレードしたF/A18E/Fスーパーホーネットを開発したのです。

スーパーホーネットは、主力艦上戦闘機としてのグラマンF-14トムキャットの後継機でもあり、戦闘機としての性能も求められました。VG翼を採用し、コストの高い戦闘機だったF-14とは異なり、固定翼機として原型となったF/A18ホーネットを大型化し、各アビオニクスを強化し、再設計されたのがスーパーホーネットなのです。

単座型のEと複座型のFに大別されており、スーパーホーネットをベースにしたEA-18Gグラウラーという電子戦機もあります。A〜D型は、原型となったF/A18ホーネットにつけらています。

よくスーパーホーネットとホーネットは別の機体と言われていますが、1割程度しか共通部品がないことからきているのだと思います。ホーネットをベースにしている以上、設計思想や外観の類似などは見られます。

原型となったF/A18ホーネットについて

F/A18Aホーネット スーパーホーネットと区別するためレガシーホーネットと呼ばれている

筆者が子供の頃に読んでいた新谷かおるの漫画『エリア88』にも、主人公風間真とミッキー・サイモンが、地上空母(トンデモ兵器の一種)から脱出するときに乗ったのが、このF/A18です。

1980年代で最新鋭機と表記されていることから、基本設計自体は古く、1970年代にノースロップ社が開発したYF-17コブラが原型となっています。

軽量戦闘機としてのコンペに単発機でコストの低いYF-16との競合に敗れたのですが、海軍の要求している双発機としての信頼性の高さから、マグドネル・ダグラス社に開発が引き継がれ、艦上戦闘機として再設計されたのがF/A18ホーネットです。

艦上戦闘機として運用するために、アレスティング・フックの増設とエンジン推力の強化を行いました。それでも、原型機であるYF-17の機体の製造コストを下げるというコンセプトは生きており、VG翼機で高価だったF-14トムキャットと比較すると安価な戦闘攻撃機として完成したのです。

そもそも当初は、老朽化したF-4ファントムを入れ替えるために採用したのが、F/A18であり、F-14を補完するためのものでした。LERX(ストレーキ)の採用によって高い離着陸能力と、運動性を持ち、ブルーエンジェルスにも採用されました。

同じエンジンのF-20タイガーシャーク1号機

欠点としては、ストレーキの採用のため、超音速の出ない機体構成となっている点です。これは、F-15やF-14が超音速戦闘機として高価なため、あまり空戦に必要のない速度での戦闘を想定するより、亜音速域での戦闘の運動性を追求したためです。

同じゼネラル・エレクトリックF404ターボファンエンジンの単発機、F-20(F-5G)タイガーシャークが、最高速度マッハ2.0以上の超音速機であったことからもエンジン推力(エンジン一基あたり75.6kN)の問題ではないことが解ります。

余談ではありますが、F-20タイガーシャークは前述のエリア88で風間真の愛機だったことから、日本での知名度は高いです。伝説のテストパイロット、チャック・イェーガーが絶賛していた機体でもあります。結局F-20はF-16とのコンペに敗れ、量産されませんでした。

スーパーホーネットの利点

F/A18E スーパーホーネット

攻撃機としての能力が大幅に向上したのが、スーパーホーネットの特徴の一つです。これは、レガシーホーネットの全長の17.03mから、18.38mと延長されたこと、主翼の面積が大幅に増加したためです。主翼のハードポイントも、片側1基ずつ増加しており、より多くの兵装を追加できるようになっています。

次にステルス機能を向上させるために、エアインテークの形状を変更し、吸気ファン前方にレーダーブロッカーを装備するなどの対策を施しています。アビオニクスも強化され、AN/APG73にアップグレードしています。また、空中給油機能も搭載されています。


そして、機体の大型化に伴い、エンジンもGE社製のF414ターボファンへと換装されています。このエンジンは、スウェーデンの優秀なマルチロール機、サーブ39グリペンにも搭載されています。アフターバーナー使用時は、単発でも98kNという優秀な推力のエンジンです。

しかし、これだけ大型化され、重量(空虚重量)もC/D型の10,810kg〜E/F型で14,007kgと増加したためレガシーホーネットの最高速度マッハ1.8からマッハ1.6に低下しています。また、加速性能も低くなっています。ただ、レガシーホーネット時代からのコンセプトの亜音速域での運動性能は向上しています。

スーパーホーネットの初飛行は1995年で、2001年には初期戦闘能力(IOC)を獲得しています。生産数は、600機を超えアメリカ海軍だけでなく、オーストラリア空軍にも配備されています。

※F/A18E/F スーパーホーネット スペック表

F/A18E/F
全長 m 18.38
全幅 m 13.62
全高 m 4.88
空虚重量 kg

最大離陸重量 kg

14,007

29,938

推力 ミリタリー kg

アフターバーナー kg

6,350×2

9,980×2

最大速度 M(マッハ) 1.6
航続距離 km 3,710
実用上昇限度 m 15,250

2013年に提案された案では、エンジン推力を強化し、アビオニクス関係のアップグレードと、ステルス機能が向上したF/A18F アドバンズド・スーパーホーネットとして改修されることとなっていました。

アドバンズド・スーパーホーネット最大の特徴は、ステルス性能が低下するパイロンの欠点を解消するウェポンポッドと呼ばれるミサイルや爆弾などの兵装を格納できるユニットを装備でき、ステルス性を確保すると共に、空気抵抗を低減できます。

この改修により、将来的にはアドバンズド・スーパーホーネットを200機ほどをF-35Cと併用する形で運用することとされていましたが、結局この案より現実的なブロック3にアップデートされることが決定されました。

ウェポンポッドは採用されず、改良型低視認性塗装(LO)によってステルス性能を強化し、アビオニクス関係のアップデートも行います。このブロック3を新規に2019年から24機調達します。今後は、110機程度の追加調達もあるようです。また、ブロック2も徐々にブロック3仕様に改修されることが決定しています。

飛行時間も従来の6,000時間から9,000時間に引き上げることになります。また、旧型のF/A18A〜D型は、2030年までに廃棄されます。

現在のスーパーホーネットでのユニットコストは、7,050万ドルといわれています。現在(2019年7月)のレートで換算すると、75億9,285万円になります。

スーパーホーネットは、現在のところ完成された海軍機です。超音速は出ませんが、空戦と対地攻撃任務をこなすことができ、亜音速域での運動性が高いです。また、ユニットコストも低く、オーストラリア空軍に納入実績もあります。

第4次F-Xでの最終選考

F-35A 1

現在航空自衛隊で運用されているF-35A

実は、F/A18E/Fスーパーホーネットは、日本航空自衛隊の第4次F-Xにて最終選考にまで残った機体の一つでした。第4次F-Xとは、F-4EJファントムの40機が退役する代わりの次期主力戦闘機の選考のことです。2011年からの中期防衛計画において配備する予定の機体を選出していました。

このF-Xで出された案の中には、現在の主力戦闘機、F-15Jの近代化改修案もあり、200機中、100機が改修予定となっています。

フランスのラファール、アメリカのF-22も選考の中にはあったのですが、F-22ラプターは、アメリカ側が情報の漏洩を恐れたことで、売ってもらえなくなったという経緯があり、2008年には購入を完全に断念しました。

ラファールに関しては、早期に選考から外れ、最終的にはアメリカのF-35Aと、EUのユーロファイター、そしてボーイングのF/A18E/Fスーパーホーネットが残ったのです。

実は、ここで重要なことがありました。というのも老朽化したF-4EJの代わりにするならば、完成している機体を配備することが優先的だったということです。F-35は、ステルス機能の優秀な第5世代機にはなりますが、開発が遅れ、1機あたり135億円と高価なために配備が遅れることが予想されました。

現に、2019年現在でも納入が確認されているのは12機のみです。もし4.5世代機として完成しているスーパーホーネットが採用されていたら42機の半数の21機以上は既に運用できたのではないでしょうか?

また、神奈川県の厚木基地のF/A18E/Fのメンテナンスは、日本の企業が請け負っています。実質的にライセンス生産のできないF-35よりも航空産業を育てる意味でF/A18にする意味は大きかったと思います。

ユーロファイターは、今まで納入実績のないヨーロッパの機体なので現実味がなく、オーストラリア空軍での運用実績のあるアメリカ製のスーパーホーネットという結論もあったように思えます。また、スーパーホーネットは初飛行が1990年代と、ユーロファイターと同じ時期のマルチロール機です。

しかし、現時点で第5世代機であるF-35A/Bの購入を大量に決定してしまっているので、どうにもなりませんが、費用対効果を含めて国会で議論していれば、安価に配備できる機体としてスーパーホーネットが採用されていたのかもしれません。

もし、筆者が選ぶなら第4次F-Xの42機はスーパーホーネットにして、F-15Jの後継機として追加で63機を購入、残りの42機をF-35にするという選択をしたでしょう。F-15Jの200機のうち100機は近代化改修によって使えるのですが、初期生産ロットから前期型の100機分は、新しく機体を購入する必要があったのです。

今の日本の歳入だと、高価なF-35を147機運用するのは難しいです。そこで105機をスーパーホーネットで戦力をある程度確保し、ステルス機の戦技研究と精鋭部隊用に42機のF-35を購入するという方法が一番現実的な選択ではなかったのではないでしょうか。

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