AFTER THE GOLD RUSH:ニール・ヤングの2つの側面

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今回のRock名盤解説は、ニール・ヤングが1970年に発表した3枚目のソロアルバム、『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』です。スーパーグループCSN&Yに参加中に制作されたソロアルバムは、ニール・ヤングの代表作の一つとなりました。また、ニールの愛器オールド・ブラックについても解説しています。

ニール・ヤングの軌跡

CSN&Y 左端がニール・ヤング

Neil Youngは、とても好きなアーティストで、昔からアルバムをよく聴いています。ニール・ヤングという人を一言で表現するならとらえどころのないミュージシャンです。

1945年にカナダのオンタリオ州、トロントで生まれ、1966年にスティーブン・スティルスと共に、バッファロー・スプリングフィールドを結成し、カリフォルニアからプロとして活動するようになります。

しかし、1968年にバッファロー・スプリングフィールドは解散し、ニール・ヤングは、ソロ活動を開始します。1969年には、元ロケッツのメンバー、ダニー・ウィットン、ラルフ・モリーナ、ビリー・ダルボットの3人をクレイジーホースと命名し、バンド編成で、名盤”Everybody Knows This Is Nowhere“をリリースします。

同年には、スーパーグループ、クロスビー、スティルス、ナッシュことCSNに参加し、CSN&Yとして活動を開始します。ここでも名盤”Deja Vu“を発表し、ニール・ヤングも名曲、ヘルプレスを作曲します。しかし、スティーブン・スティルスと、ニール・ヤングの間の緊張感が続き、1年後にニール・ヤングは脱退してしまいます。

本作、”After The Gold Rush“は、そんなCSN&Yでの活動中の1970年に製作されたソロ3作目のアルバムです。当初は、前述のクレイジー・ホースのメンバーと録音する予定でした。

ところが、ギターのダニー・ウィットンが、ドラッグ問題でレコーディングに参加できなかったため、急遽スティーブン・スティルスや、グレッグ・リーブスを起用しました。

ソロ名義のセカンド・アルバムは、クレイジーホースと構築したバンドサウンドがメインでした。対照的に、ピアノやアコースティックギターといった弾き語りを中心にした曲の多い、アフター・ザ・ゴールド・ラッシュというイメージがあります。

アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ解説

出典 https://www.amazon.co.jp/ アイキャッチ画像も同じ

1曲目の”Tell Me Why“は、アコースティックギターの弾き語りの曲です。アフター・ザ・ゴールド・ラッシュは、シンプルな構成の曲が多いのが特徴のアルバムで、1曲目からそれを印象づけています。

2曲目のタイトルロール曲、”After The Gold Rush“は、こちらもシンプルなピアノの弾き語り曲です。どことなく間延びしたような朴訥な雰囲気のニール・ヤングが、抽象的な歌詞を見事に歌っています。

“Look at mother nature on the sun. In the nineteen seventies”は、母なる自然と太陽と1970年という訳になりますが、(核戦争によって)荒廃した世界についての歌詞ですので、「母なる自然が1970年代に逃げ出していく」という意訳になるのです。

美しいメロディラインとピアノの音色に、皮肉たっぷりの歌詞の名曲、アフター・ザ・ゴールド・ラッシュは、このアルバムのタイトルロールにふさわしい曲です。このアルバムのピアノは、ニルス・ロフグレンが弾いています。当時17歳のニルスは、その後、Eストリート・バンドにギタリストとして参加するほどギターの腕も有名です。

3曲目の”Only Love Can Break Your Heart“から、ドラムとベースがアコギに加わります。そして、エレキをフューチャーし、クレイジーホースの付いたような雰囲気の”Southern Man“に続きます。これは、南部の黒人差別を痛烈に批判した曲で、このアルバムで最も長いリードギターのある曲です。

4曲目にしてようやく、前作の”Everybody Knows This Is Nowhere“のようなロックナンバーが登場します。俗にいう、馬付きのニール・ヤングの特徴として、こういったイナタイ雰囲気のグルーブ感が挙げられます。今の打ち込み系のように、機械的なしっかりとしたテンポと対照的に、人間の手による暖かみのあるグルーブ感があります。

5曲目の”Till The Morning Comes“は、スティーヴン・スティルスとのコーラスワークが聴けます。短い曲ですが、重いサウザウマンの後にすっきりとした雰囲気にしてくれます。

1976年頃のニール・ヤング

OH, Lonesome Me“のみカバーで、ドン・ギブソンのカントリーです。7曲目の”Don’t Let it Bring You Down“は、不思議なグルーブのある曲です。都市化と老人を対比させ、現代を揶揄していますが、最後には希望のある歌詞となっています。独特の間のある曲で、かなり練られた構成となっています。

ミドルテンポのドラミングに、アコギ、ベースといったシンプルな構成を基本に、ピアノが入ってきたり、ブレイクポイントを工夫することによって、見事なまでのバンドサウンドを構築しています。

そして、このアルバムで最も美しい曲”Birds“で、再びピアノの弾き語りスタイルになります。そして、9曲目の”When You Dance I Can Really Love“では、バッファロー・スプリングフィールド時代のような、バンドサウンドが聴けます。


I Believe in You“は、シンプルなバラードです。最後には、人を信じてしまう心情を歌った曲です。最後の”Crippled Creek Ferry“は、茶目っ気たっぷりの曲ですが、こういう曲で終わるところが、ニール・ヤングらしいです。

個人的なお気に入りの曲は、2、4、7、8です。他の曲もレベルが高く、ニール・ヤングのソロ作として有名な”Harvest“と並んで最高傑作と呼ばれています。丁度、CSN&Yのツアーの合間に作られたアルバムで、一番脂が乗った時期に作られました。

ダニーを除く、クレイジーホースのメンバーも参加しています。そのため、バンドサウンドでは、前作のような雰囲気の曲が入っていて、且つ弾き語りスタイルの名曲も味わえられる構成となっています。

ニール・ヤングはソロにおいて、弾き語りスタイルと、黒いレスポールと馬付きによるバンドサウンドという2つの側面を持っています。ソロにおける両極端なスタイルを贅沢な形で封入したアルバムが、アフター・ザ・ゴールド・ラッシュなのです。

ニール・ヤングの機材について

OLD BLACKとニール・ヤング

ニール・ヤングといえば、”OLD BLACK“と呼ばれる黒いギブソン・レスポールです。53~54年のゴールドトップを黒にリフィニッシュしたもので、フロントにP-90ソープバーを、リアにはミニハムを載せています。元々53~54年製レスポールは、P-90が2基搭載されていますので、ミニハムは完全に後付けです。

OLD BLACKのもう一つの特徴といえば、ビグスビーアームですが、アフター・ザ・ゴールド・ラッシュの写真には、ビグスビーが見当たりません。ということは、このアルバムの制作後に改造された可能性が高いです。

再生産された68年製説もあったりするので、1969年から使用されているオールド・ブラックには未だ謎の部分が残っています。アンプは59年製のフェンダー・ツィード・デラックスを使用しています。

他にはグレッチのホワイトファルコンや、マーチンD-28、D-45など名だたる名器を使っています。ぶっちゃけ、ニール・ヤングの持つ独特のトーンは、同じ機材を使ってもなかなか出ないと思います。特に馬付きのライブでのトランス状態は、再現不可能でしょう。

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