今回は、2025年の夏アニメレビュー前編です。前編では、『雨と君と』〜『サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと』までの8作品をレビューします。評価は星1〜5までの5段階評価で、筆者の主観の入ったレビューになります。
目次 この記事の内容
- 雨と君と
- ウィッチウォッチ
- 宇宙人ムームー
- 怪獣8号 第2期
- 鬼人幻燈抄
- 薫る花は凛と咲く
- クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-
- サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと
雨と君と
『雨と君と』は二階堂幸(にかいどうこう)による週刊ヤングマガジンに連載中の漫画を元にしたテレビアニメです。小説家の藤が、雨の日に道端で拾った”君”との交流を描いた物語です。
君は犬とか呼ばれていますが、葉っぱを頭に乗せたフォルムはた○きにそっくりです。事実、人語を理解しボードに言葉を書いてます(笑)。飼い主の藤はあまり詮索しないタイプで、犬として扱っています。ほのぼのとした作品で、静かに流れる時間の描写が多く落ち着いた感じのアニメです。
お隣の小学生のきいちゃんとか、藤の友人達とか、父親とかたまに騒がしくなることもありますが、最後は君との時間を大切にする描写が多いです。原作は未読ですが、独特の雰囲気を描写しているところが秀逸だと感じました。
アニメーション制作はレスプリで、監督は月見里智弘(つきみさとともひろ)、シリーズ構成は『うちの師匠はしっぽがない』の待田堂子(まちだとうこ)です。星は4、佳作認定です。大人の女性と君との静かな時間を描き切ったところを評価しました。
ウィッチウォッチ
『ウィッチウォッチ』は、週刊少年ジャンプに連載中の篠原健太(しのはらけんた)による漫画を元にしたテレビアニメです。日曜の夕方5時という、日5枠にて2クールにわたって放送されました。
魔女のニコと幼馴染で鬼の末裔のモリヒトを中心に、学園生活や日常生活をコミカルに描いています。ニコがとにかくドジっ娘で、モリヒトや使い魔の末裔がフォローしつつツッコミを入れる、という作風になっています。
個人的に好きなエピソードは、作中に登場する架空の漫画、『うろんミラージュ』の同人誌を教師と生徒が共同で制作するエピソードです。なぜか、作中劇のオープニングまで作られる気合の入りようで、製作陣のこだわりが感じられました(笑)。
アニメーション制作は、バイブリーアニメーションスタジオで、監督は『ダークギャザリング』の博史池畠(ひろしいけはた)でシリーズ構成は『鬼人幻燈抄』の赤尾でこです。
星は4佳作認定です。作画は2クール作としては安定していて、コメディとして楽しめられるアニメでした。
宇宙人ムームー
『宇宙人ムームー』は、ヤングキングアワーズにて連載中の宮下裕樹による漫画を元にしたテレビアニメです。猫型宇宙人のムームーと女子大生の桜子が、大学の家電サークルを通して、地球の文明を考察していきます。とはいえ、結構コメディタッチに描かれており、家電の解説はサークルの部長がもっぱら行っています(笑)。
SF要素と地球の家電話、という組み合わせは結構盲点だったと思います。高度に発展した文明では、逆に原理を忘れてしまう、というのも皮肉な話だと思いました。舞台が大学のため、かなり大人な話題も多いので、深夜枠はちょうどいいと感じました。
アニメーション制作は、『オーイ!とんぼ』のOLM Division 2で、監督は髙橋知也(たかはしともや)で、シリーズ構成は『戦隊大失格』、『ある魔女が死ぬまで』の大知慶一郎です。
星は3.5です。作画はそこそこ安定していて、ほのぼのしたコメディに合わせた感じで音楽までもが統一されていました。
怪獣8号 第2期
『怪獣8号 第2期』は、少年ジャンプ+にて連載終了した松本直也による『怪獣8号』のアニメ化の第2期です。第1期は2024年の春に、第2期は2025年の夏にそれぞれ放送されました。
防衛隊に正体がバレた日比野カフカは、長官のおかげで第1部隊に編入され、怪獣8号としての能力に期待されます。そんな中、大規模な怪獣災害が発生。第1部隊は、鎮圧に向かいますが、怪獣9号の前に絶対絶命のピンチに陥りますが、そこに四ノ宮長官が駆けつけます。
しかし、四ノ宮長官は9号に倒され、2号の力と記憶を奪われてしまいます。しかし、8号と第1部隊の鳴海隊長により、9号を撃退しますが、本体には逃げられてしまいます。防衛隊はこれにより、戦力の増強をすることに決定します。
今回は、防衛隊の状況の変化と怪獣側の新しい動きなどが描かれています。今後は漫画が完結していることもあり、数クール分けて物語が動くようになると思います。なので、2期は丁度間の話でもあり、次のクールが盛り上がる話になるのかな?と思いました。
アニメーション制作は、老舗のProduction I.Gで、監督は『僕らはみんな河合荘』の宮繁之(みやしげゆき)で、シリーズ構成は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の大河内一楼です。
星は4、佳作認定です。作画も良かったし、アクションシーンの多い作品なので、これからも注目しています。
鬼人幻燈抄
『鬼人幻燈抄』は中西モトオによる、同名のなろう小説を原作にしたテレビアニメです。江戸時代から平成にかけて、170年もの時を生きる甚夜という鬼となったものの生き様を描いた伝奇物語です。
1時間もの長さのある1話の出来が良く、甚夜が鬼となった経緯に引き込まれました。ストーリーは本当に丁寧で素晴らしく、久しぶりに骨太の作品を見たように感じました。
しかし、制作会社の横浜アニメーションラボの方が限界なのか、度々放送を休止しては、作画の質が低下する回が目立つようになりました。これなら無理せず、分割2クールにするなどの対策をした方がよかったのに、勿体無いなと思いました。
監督は相浦和也で、シリーズ構成は『ウィッチウォッチ』の赤尾でこです。星は3.5です。ストーリーは良かったので、視聴が楽しみなアニメでした。
薫る花は凛と咲く
『薫る花は凛と咲く』は、マガジンポケット連載中の三香見サカ(みかみさか)による漫画を原作にしたテレビアニメです。名門女子校に通う薫子と、偏差値ランクの低い男子校に通う凛太郎との恋愛を中心に描かれる物語です。
ランクの違う犬猿の仲の学校にそれぞれ通う生徒の恋愛、というところはありがちに見えて、2人がそれぞれ相手を意識していく過程が丁寧に描かれていました。
凛太郎の家がケーキ屋で、薫子はそこの常連という接点がありました。そこで家の手伝いをしていた凛太郎に薫子が好意を持つようになる、という流れなのですが、長身で金髪の凛太郎は誤解されやすいことにコンプレックスを持っていました。また、お互いの学校の溝も深く、そこが恋の障害になってくるのです。
しかし、この作品で救いなのは、薫子と凛太郎のそれぞれの友人が、最初は対立していたけども、誤解を解いて仲良くなるところがです。また、凛太郎の両親とのエピソードが、子を想う親の心情がよく出ていて泣けるところでした。
アニメーション制作は、青春ブタ野郎シリーズで知られるCloverWorksです。監督は『明日ちゃんのセーラー服』の黒木美幸で、シリーズ構成は山崎莉乃です。美麗な描写、繊細な心理描写などが秀逸で、星は4.5名作認定です。丁寧に作られた恋愛もので、オススメのアニメです。
クレバテス–魔獣の王と赤子と屍の勇者–
『クレバテス–魔獣の王と赤子と屍の勇者– 』は、LINEマンガに連載中の岩原裕二による同名漫画を元にしたテレビアニメです。ファンタジーもの、という括りにはなりますが、ベルセルクのようなダークファンタジー要素の強い作品です。
13人の勇者が、世界の果てを目指し、魔獣王の内の一体、クレバテスを討伐に向かいます。しかし、至宝を持つ勇者達は強大な力を持つクレバテスに敗北、角に傷を付けたアリシアも一度は死にます。
一方クレバテスは、勇者を派遣したハイデンに報復します。ハイデン王国はこれにより崩壊しますが、従者が命懸けで守った赤子に興味を持ち、アリシアのことを思い出し、赤子の世話をさせるために蘇生させます。かくして魔獣の王とハイデンの王族の赤子と、屍の勇者は3人で行動することになります。
かなりの急展開が続くアニメで、最終話まで息をつかせぬ展開となっています。特にラストバトルは伏線も見事で、アリシアが父の仇を討ち取るところなど、見どころ満載でした。
アニメーション制作は、『トモちゃんは女の子』のLay-duce、監督はウルトラマンシリーズでお馴染みの特撮で知られる田口清隆、シリーズ構成は『盾の勇者の成り上がり』の小柳啓伍です。
星は文句無しの4.5、名作認定です。今期のファンタジーものの中でも、素晴らしい作画とハイテンションなストーリー展開とアクションで楽しませてもらいました。第2期も楽しみにしています。
サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと
『サイレント・ウィッチ 沈黙の魔女の隠しごと』は、位空まつり(いそらまつり)のなろう小説が原作のテレビアニメです。ファンタジー系の学園もの、という括りにはなるのですが、普通の学園ものとは随分と違います。
主人公の七賢人、沈黙の魔女ことモニカ・エヴァレットはただ一人、無詠唱魔術の使うことのできる特殊な魔法使いです。国家の最高称号の魔術師の一人で、竜による災害も単独で対処できるほどの実力があります。その反面、極度のコミュ症で、山奥に引きこもっていました。
同期の七賢人のルイスの要請により、第2王子の護衛任務につきます。その際、学園に潜入し、モニカ・ノートンと身分を隠しています。ここがタイトルに繋がるポイントです。
面白いのは、モニカの能力と性格とのギャップです。過去のトラウマにより、自己評価が極端に低いのですが、数学的思考に裏打ちされた卓越した魔術は華麗且つ美しく描写されています。
第2王子のフェリクスも優美な立ち居振る舞いをしていますが、過去にモニカ同様のコンプレックスがあり、生徒会にモニカを会計として引き入れるなど気にかけています。しかし、派閥闘争により命を狙われているので容易に本音を明かさないキャラクターとなっています。
つまり、学園生活でのコミカルな演出と、沈黙の魔女としての活躍、そして各キャラクターの背景などが万華鏡のように描写されています。その表現の一つ一つが丁寧且つ美麗な作画で描かれているのです。
アニメーション制作は、『ラーメン大好き小泉さん』、『星屑テレパス』のStudio五組です。監督とシリーズ構成は、金崎貴臣(かなさきたかおみ)です。今期一番のインパクトと、羊文学の曲”Feel”を使ったオープニングも秀逸で、星は5、覇権認定です。滅多に出さない認定ですが、今期の中でズバ抜けた作品でした。
中編に続く