DTMでアルバム制作の第3回は、クリーントーンとクランチ(軽い歪み)のギターの録り方についてです。VOX AC15C1とHeritage H-157の組み合わせでクリーン、同じくAC15とGibson Les Paul Jr.でクランチを弾いてみました。
ディストーションとは異なるクリーンの難しさ
三角形の路地の録音終了時の画面
普段からロック野郎と自他共に認める筆者(tkd69)は、基本的にオーバードライブのかかった歪みとディストーションをかけることが多いです。というより、VOX以前のメインアンプがMesa/Boogieだったことからお察しのとおりの歪んだトーンを好んでいます。
意外と、歪みの強烈なギターほど、ピッキングの誤魔化しがきくので録りやすかったりします。しかし、クリーントーンは下手な弾き方すると、モロにミスがばれます(大汗)。
今回録る曲は、『三角形の路地』という、バンド時代からの曲です。なぜこの曲を録るのかというと、以前、個人名義で録ったときのものが納得のいく出来ではなかったからです。
筆者にしては、明るめの爽やかな曲で、どうやって書いたのかも忘れるほど、長い間の定番曲となっていますが、今回はあえてクリーンからクランチでバッキングギターを録ってみることにしました。
レスポールのカッティングはセンターで!
クリーントーンで使用したメインギターのHeritage H-157
メインギターであるヘリテイジ H-157は、レスポールタイプです。レスポールといえば、ハムバッキングPUが2つあって、カッティングが苦手なイメージがありますが、そんなことはありません。
レスポールのトグルスイッチの真ん中のポジションは、ハムの片側のシングルコイル部分を使っています。フロントとリアのシングル部分のミックスポジションがセンターだと思ってください。ストラトでいうところのハーフトーンのようなものだといえば解りやすいです。
そして、意外なことにこのポジションが一番、カッティングやアルペジオなどに向いていたりするのです。特に、こういったクリーンに近いジャリジャリしたトーンを作りたいときに便利です。感覚的には、テレキャスのセンターポジションに近いです。
そして、VOX AC15C1のノーマルチャンネルにプラグインします。あらかじめ作ってあったドラムパートと、録っていたベースパートの次に新しいギタートラックを制作します。
録音する場合は、基本的にチューニングをしっかりとやっておきます。筆者は、昔からBOSS TU-12を愛用しています。AC15のノーマルチャンネルはトーンは効きません。そこで、カットで余分な高音域のみを削ります。AC15とレスポールの組み合わせの場合、カットは10時くらいに上げています。
実は、去年AC15を購入したときからやってみたかったのが、イギリスのバンド特有の中域にコシのあるジャキジャキしたクリーンだったのです。ビートルズのジョージやジョンのトーンといえば解りやすいでしょうか。
アンプのセッティングが終わるとマイクを準備します。今回はSHURE SM57 LCEです。楽器録りの定番マイクです。部屋が狭いのでマイクスタンドで狙わず、アースノーマットの箱を使ってマイクを固定します。
機材だらけの部屋でマイクスタンドが使用できないときに使うのが、ティッシュケースのような小さな箱です。スピーカーは、中心よりも外側を狙います。マイクは10cmくらい離しました。真ん中を狙うと音がこもるときがあるし、少し離さないとエアー感がでないからです。
クリーントーンで何度も弾いて、納得のいくまで録りました。結構パンチ・イン・アウトもしたのですが、いい出来になったと思います。
クランチにアンプのトレモロをかける
クランチに使用したギブソン レスポールJr.
次に片側のチャンネルのバッキングを録ります。DTMに限らず、ギターを2本振り分けるメリットは、ステレオの広がりを強調できることです。左のチャンネルにクリーンを、右側のチャンネルにクランチを録りました。
今回は、AC15のトレモロを使うことにしました。付属のリバーブよりもかなり質のいいトレモロなので、右側のチャンネルのバッキングに丁度良かったからです。空間系のエフェクトは、後でセンド・リターンでかけた方が編集しやすいのですが、かけ録りする場合があります。
例えば、アナログディレイやテープエコーなど、それ自体に個性のあるエフェクターとの組み合わせが、ギターのトーンとして確立している場合には、インサーションのつもりで録るのもありなのです。
2本、エレキを録るときに注意したいのが、フェーダーによる音の調整です。オーディオインターフェイスのインプット・ゲインは、クリップ手前まで上げますが、ドラム、ベースの音が聞こえにくいとリズムがずれます。
そこで、フェーダーを上げた状態で確認してから、Cubaseで左右にギターを振ってから、フェーダーを調整します。この状態で録音した場合、後からフェーダーは上げ下げできるので、ずれることなく録音できるのでおすすめです。バッキングギターの場合、下げ気味にした方がいい結果が出ることが多いです。
トレモロの方は、完全に勘で調整しました。ギターのプレイですが、メインのクリーントーンは、コードを多用したカッティングで、クランチは高音域での変則カッティングです(たまにボトムリフを混ぜる)。
ジャズコーラスのスピーカーのように左側には普通のクリーンを、右側にはトレモロ(ジャズコの場合はコーラス)のギターを振り分けるという発想で定位を決めました。
ミスは編集によってカバー
今回録音に使用したVOX AC15C1
そして、問題は3本目のリードを録るときに起こりました。ベースと2本目のギターのリード時に裏メロとるつもりで、後半部分にちょこっとスケールを弾いていたのですが、3本重ねるとあまり気持ち良くないのです。
そこで、後半のレスポールJrのリード部分をカッティングにして右に振り、右のオブリっぽいギターをセンターにもってきて、バランスを取ることにしたのです。この場合、リードのセンド・リターンのディレイもCubaseのオートメーションで定位を調整することができます。
要はミスをトラックダウンの段階で修正することによって、より効果的に3本のギターを使うことにしたということです。こういった作業もDAWソフトを使えば簡単にできます。
今回は、左右に振り分けるギターの録り方について紹介しました。他にも、色々と方法はあるのですが、シンプルにアンプで録るギターは楽しいしノリがいいです。
※2019年6月追記
tkd69のアルバムSIXの3曲目に三角形の路地は収録されています。SIXは、Apple、amazon、Google、Spotifyなどの音楽配信サービスにて、ダウンロード、ストリーミング販売されています。NumberOneMusicにて、Willy Nillyが無料で聴けます。
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