『機動戦士ガンダムNT』を、観賞してきました。NT(ナラティブ)は、『機動戦士ガンダムUC』の福井春敏が脚本を書いたユニコーン系列の宇宙世紀作品です。ガンダムの生みの親、富野由悠季が原作、監督を担当していない宇宙世紀の物語です。
冒頭30分無料配信で観賞を決意
出典 http://gundam-nt.net/ 画像はすべて公式ページより
主役機ナラティブガンダム A装備
『機動戦士ガンダムNT』は当初、観にいくつもりはありませんでした。またアニマックスにでも放送されたときにでも見たらいいかって考えていました(汗)。YouTubeでバイク関連の動画を見ていたら、NTの冒頭23分無料配信に気付きました。
軽い気持ちで再生させたら、なかなか出来のいいモビルスーツ戦に引き込まれてしまいました。特にナラティブガンダムA装備の登場シーンがカッコいい!『機動戦士ガンダム サンダーボルト』のアニメのスタッフが参加しているのでクオリティが高いと思いました。
『機動戦士ガンダム』といえば、富野喜幸(由悠季)監督です。長い間、宇宙世紀(UC年代)のガンダムは、富野監督が作るシリーズが正史という扱いでした。
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』や、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』などのOVA作品以外は、富野監督が主導で制作する作品が多かったのです。
『機動戦士ガンダムUC』は、作家の福井春敏が2007年よりガンダムエースで連載した小説です。第二次アクシズ抗争(シャアの反乱)から3年後のUC0096を舞台にした新たな宇宙世紀ガンダムのストーリーでした。
ガンダムUCによって昔からのガンダムファンに加えて、若いファンも増えました。劇場アニメ化に伴った、OVAの展開と、『機動戦士ガンダムUC:RE0096』としてテレビシリーズにもなったのです。
アナザーガンダム(宇宙世紀以外のガンダム作品)にもいい作品はありますが、ガンダムといえば宇宙世紀!というファンも多かったのです。2018年4月にサンライズとバンダイは、UC Next 0100と題して、宇宙世紀ガンダムの新たな作品をリリースすると発表しました。
グスタフ・カール 閃光のハサウェイの連邦軍の量産型MS UCシリーズでは先行配備機として登場している
今のところ解っているのは、UC0097のガンダムNTと、UC0105年の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』、アナザーガンダムシリーズとしては、富野監督の『ガンダム Gのレコンギスタ』の劇場版が予定されていることです。
一番驚いたのが、富野監督の小説である閃光のハサウェイが劇場アニメ化されることです。究極の欝展開ガンダムですので、1990年に完結してから、今まで一度も映像化されることはありませんでした。
ぶっちゃけ、ガンダムNTは家でテレビ放送されたときに見ようと思っていました。閃光のハサウェイが本命だったからです。しかし、23分無料公開の映像の出来の良さにつられて、劇場にバイクで行ってきました。
12月10日のMOVIX八尾の昼の部です。購入特典クーポン使って1,200円で観賞しました。平日の昼なので、他に客は少なかったです(涙)。
ガンダムNTレビュー(ネタばれなし)
物語の中心的役割の奇跡の子供達
とりあえず、ネタばれ無しのレビューからやっていきます。冒頭23分は、現在無料で視聴できるので、そこまでの分はネタばれします(笑)。福井ガンダムといえば、歴史強調スタイルなので、UC0079のコロニー落としを、主人公ヨナ・バシュタ、ミシェル・ルオ、リタ・ベルナルの3人の奇跡の子供達が予言したところから始まります。
次に成長したヨナとミシェルが登場します。ミシェルは、なんとZで印象的だったルオ商会に養女として引き取られていて、ステファニー・ルオの妹になっています。ステファニー・ルオといえば、『機動戦士Zガンダム』の香港編に登場したいわゆるお姉さん系キャラで、カミーユ・ビダンにも手厳しいことを言っていた人です。
ミシェルは、ニュータイプ能力によった占い(易経)で、ルオ商会の特別顧問という肩書き以上の影響力を持っているようです。ユニコーンガンダムに興味を持ち、ユニコーンの3号機であるフェネクスの情報を得るために、護送中のマーサ・ビスト・カーバイン(アナハイムの重鎮でラプラスの箱事件で失脚した人物)を拉致します。
グリプス戦役(UC0087年代)の機体 ディジェ
このときにルオ商会が使っていたモビルスーツが、なんとディジェ!ディジェといえば、グリプス戦役においてアムロ・レイ大尉の専用機として活躍していた機体です。とはいっても先行配備されていたグスタフ・カール、10年落ちの機体にあっさりやられるなよ!ジェネレータ出力では、圧倒してるだろ!
ちなみにスペックでは、グスタフ・カールのジェネレータ出力は3,425kW、10年落ちのディジェは1,892kWです。おそらく、先に書いたZ関連ということで、ルオ商会といったらアムロの乗ってたディジェだろ!ということでしょう。福井さん、よく解ります(汗)。
ここまでの戦闘での作画や、冒頭のストーリーの展開などは、充分に引き込まれました。そして、ここからが序盤のハイライトであるナラティブガンダムの登場シーンです。
主人公ヨナとやたらとごつい耐Gスーツ(専用サイコ・スーツ)
連邦軍が、隠密部隊をつかってユニコーン3号機フェネクス捕獲作戦、いわゆる「不死鳥狩り」をしている宙域では、ジェスタ(ジェガン系MS)部隊がフェネクスを追っていました。
ジェスタ隊隊長、イアゴ・ハーカナ少佐は突然、退去勧告のような通信を受けます。「10秒後に空域から離脱せよ。離脱しない場合の安全は保障しない」というものです。10秒後きっかりにA装備のナラティブガンダムが、高速で突っ切っていきます!
このA装備、おそらく『ガンダム・センチネル』のSガンダムのディープ・ストライカーのような高速戦闘用のブースターユニット装備の武装強化型だと思われます。ミサイルから大型ビームサーベルときて鹵獲用ユニットの展開と、熱い戦闘シーンてんこ盛り!という感じでした。
ヨナやイアゴは、フェネクスのパイロットだったリタの思念を受けます。結局、ヨナはハイメガ砲(ZZの必殺兵器で強力なメガ粒子砲)を使用せず、フェネクスは空域を離脱します。
ユニコーン3号機 フェネクス
冒頭23分は、ここからミネバ様の登場シーンや、ミシェルとヨナのやり取りと、それを盗み聞きしているイアゴ隊長といったところで終わります。ここで、やせっぽちといわれるRX-9 ナラティブガンダムの整備シーンがあります。
ナラティブガンダムは、RX-93 ν(ニュー)ガンダムのテスト用の試験機でフレーム部分がむき出しのままの機体です。そこに、様々な追加装備ユニットと装甲を取り付けることで運用します。νガンダムとは異なりコア・ブロック方式となっており、腰部にはコア・ファイターが収納されています。
ダマスカス(クラップ級巡洋艦)に収納された直後のナラティブ・ガンダム
中盤くらいで、作画が安定していなかったのは少し残念でしたが、奇跡の子供達3人、それぞれの想いや辛い体験など、見せ場も多くよくまとめられた作品でした。また、ライバルキャラのネオ・ジオンのゾルタン・アッカネンもフル・フロンタルの失敗作というレッテルを貼られた強化人間でした。
ただ、ガンダムとしてはオカルトパワーが強いのが、UC系の特徴だと思いました。元々、『伝説巨人イデオン』のイデや、『聖戦士ダンバイン』のオーラ力などのオカルト・パワーを1980年代に描いたことから始まっています。Z以降の富野ガンダムでは、オカルトパワーは結構出てきます(特に終盤において)。
ZやZZのバイオセンサー(擬似サイコミュ)によるものという説明と、サイコフレームによる奇跡というのは、相似しています。福井ガンダムでは、物凄く万能に描かれているので、そういったところに違和感を覚える人もいるのでしょう。というのもニュータイプとは、誤解なく解り合える人々のことだからです。
個人的には、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の吉沢俊一監督、よく頑張ってこれだけの内容を90分で収めたなと思いました。劇場で観る価値は充分以上にあるので、ぜひネタバレされる前に劇場に行きましょう!
※ここからはネタバレあり
段々シンプルになっていくガンダムとネタバレ有りレビュー
ナラティブガンダムB装備とシナンジュ・スタインの戦闘シーン
ネオ・ジオン側も、フェネクスの情報をつかんでいて(ミネバの指示ではなくモナハン大臣の独断)、サイド6の宙域でサイコミュの痕跡をキャッチします。そして、フェネクスを追っていた地球連邦軍とサイド6のコロニー、メーティス内部にて激突します。
ナラティブガンダムは有線インコム搭載のB装備で出撃しており、ごてごてしたA装備からシンプルになっていきます。サイコフレーム装備しているのになんで有線インコムなのだろう?と思いました。
おそらく、ファンネルを扱えるほどヨナのニュータイプ能力が足りていなかったためだと思います。有線インコムは、ガンダムMk-Ⅴやドーベン・ウルフなどに装備された準サイコミュ兵器で、一般兵でも扱えるようになっています。
有線インコムによるオール・レンジ攻撃
コロニー内にもかかわらずに、シナンジュ・スタインのパイロット、ゾルタン・アッカネン大尉は、ビームライフルを撃ちます。その様子を見ていたギラ・ズールのパイロット、エリク・ユーゴ中尉は、「赤い彗星の失敗作が・・・」と苦々しく語ります。
ヨナは、ナラティブガンダムでシナンジュと戦闘します。そのとき、フェネクスがヨナを救うように登場し、シナンジュ・スタインを圧倒します。そこで、ナラティブガンダムは、NT-D(サイコミュをハッキングするシステム)を発動し、ヨナの意思を無視して、B装備の鹵獲機能でフェネクスを拘束しようとします。
ところが、ゾルタンがⅡネオ・ジオングを呼び寄せ、コロニーの外壁に大きな穴を開けます。NT-Dとヨナの怒りによって暴走したナラティブによって、Ⅱネオ・ジオングはコントロールを奪われます。ネオ・ジオングの椀部メガ粒子砲の輝きを止めたのは、フェネクスでした。
ヨナは、そのときにリタの声を聞きます。結局、両軍にとってサイド6の住民を巻き込んだ作戦は失敗に終わり、責任を回避するために各陣営が画策します。
一連の事件は、ミシェルでコロニー内で戦闘できないリタの性質を利用して捕らえるための策の結果起こったものだったのです。ミシェルがここまでのことをする必要があったのは、悲惨な過去が影響していました。
ミシェルと腹心のブリック
ミシェルは、ヨナ、リタとともに戦災孤児となり、施設に拾われました。なんと、そこはティターンズの息のかかった、オーガスタ研究所だったのです。オーガスタ研究所は、ムラサメ研究所と並ぶニュータイプ研究所でした(ロザミア・バダムが所属)。
強化人間(人工的に作られたニュータイプ)を作るために、非人道的な実験を行っており、3人はそこから逃げ出すことを実行しましたが、結局連れ戻されます。ステファニー・ルオによるサイコ・ガンダムの香港襲撃事件の落とし前として、奇跡の子供引渡しに応じたオーガスタ研究所は、本物のニュータイプを3人の中から特定しようとします。
ミシェルは、ヨナに本物がリタであることを告げるように要求します。本物が特定されると、実験のためにメスを入れられることが解っていたので追い詰められていたこともあります。
ミシェルは自分がルオ商会に行けば、他の2人を政治力を駆使して救えると考えていました。嘘をつくのが苦手なヨナでは、すぐにボロが出るだろうし、オーガスタ研究所は、外科的な方法でもニュータイプの秘密を特定したかったので、ルオ商会には本物を渡さないことがわかっていたからです。
ところが、事態は急変します。ミシェルがルオ商会に行った直後にグリプス2が陥落し、エゥーゴの勝利でグリプス戦役が終焉したのです。オーガスタ研究所は焦って成果を出すために、リタに対する人体実験を早めました。結局、ミシェルはリタを救えず、ヨナから恨まれることになります。
サイコ・フレームによって人の魂が保存されるならば、死をも克服されるのではないかと思うようになり、養父であるルオ・ウーミンも救うことができると思ったのです。しかし、そのために多くのコロニーの住民を巻き込んだのは間違いでした。
結局、各陣営による幕引きが計られます。ルオ商会は、ステファニーによってミシェルの帰還の要請がされ、ネオ・ジオンのモナハン大臣は関係者を抹殺しようとします。自分が抹殺されることを知ったゾルタンは、お目付け役だったエリクを射殺し、ネオ・ジオングを起動させ、ヘリウムガスのプラントを護衛していた連邦の部隊を襲います。
このヘリウム3のプラントは、おそらくジュピトリス(木星へ航行している艦)からもたらされたものではないでしょうか。ヘリウム3は、ハイパー核融合炉(モビルスーツや戦艦の動力炉)の燃料に使われているので、重宝されているのです。
ヨナは、この襲撃がリタから聞いた「そのときが来たら手伝って」のことだと直感します。ナラティブガンダムに向かうヨナにミシェルは手を貸します。そして、ナラティブガンダムをサイコ・フレームの外装で作られたC装備で出撃させます。
ナラティブガンダムはA装備が一番ゴテゴテしている
この状態でのナラティブは、ユニコーンガンダム1号機に近い形状となっており、武器もビームライフルにシールド、ビームサーベルといったガンダム3種の神器に近いスタイルとなっています。つまり、Aが一番ごてごてしていて、Bが中間、Cが一番シンプルということになりました。
今回は、ネオ・ジオングが連邦の部隊に対して、その能力を存分に発揮します。連邦部隊は、ネオ・ジオングがヘリウムガスを圧縮、暴発させることで壊滅しました。そこにフェネクスがネオ・ジオングと戦闘しますが、今度は圧倒されてしまいます。そこに、ユニコーン1号機のようなC装備のナラティブが来て、フェネクスを救います。
ネオ・ジオングと戦闘するナラティブガンダムC装備
その戦闘の最中、ミシェルの乗ったベース・ジャバー(MS運搬用のサブ・フライトシステム)は撃墜されます。ミシェルが、ベース・ジャバーで出撃した理由は、サイコ・フレームを届けることでフェネクスとナラティブの援護になると思ったからです。
こういったところは、逆襲のシャアで、チェーン・アギが、リ・ガズィでサイコフレームを持ってアムロを援護しようとしたことに通じます。ヨナは、ネオ・ジオングと激しく交戦しますが、援護に来たイアゴのジェスタをネオ・ジオングによって操られ、窮地に追い込まれます。
そこに、ジンネマンのガランシェールJrから救援にきた、バナージ・リンクス(ガンダムUCの主人公)の乗るシルヴァ・バレト(ドーベンウルフ系の機体)のビーム・マグナムによる援護が!ヨナは、ネオ・ジオングにナラティブで突っ込んで、大破しつつもコア・ファイターで脱出し、フェネクスに乗り込みます。
ようやく、生身のパイロットを得たフェネクスは、サイコ・フレームの力を使って、ネオ・ジオングを倒します。更にヘリウムガスの暴発を防ぎ、コロニーを救うのですが、ヨナはフェネクスに取り込まれそうになります。
バナージによって引き戻されたヨナは、連邦の船に救助されます。そこには、イアゴの姿もありました。ここからエンドロールに入ります。90分でよくここまで話をまとめたなと感心しました。特にこの映画でナラティブの話は完結している点に好感が持てました。
また、ガンダムUCではあまり活躍していなかったネオ・ジオングが大暴れしています。ナラティブガンダムもシンプルになっていくという逆パターンが新鮮な機体でした。
機動戦士ガンダムNT 公式ロングPV
そして、エンドロールが流れた後に、衝撃の予告編が!海岸に座るハサウェイと、空を飛ぶクスィー・ガンダムの姿(もしくはペーネロペー)が!2019年の冬に公開予定の閃光のハサウェイの予告をやってくれたのです!予告編の映像は素晴らしかったので、期待大です。
ガンダムNTは、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』、『機動戦士ガンダムF91』などの1本で起承転結を描くスタイルの劇場ガンダム作品です。今までのガンダム作品や、UCを見ていない人には少し話しは解り辛いですが、単純にエンタメ作品として楽しめられると思います。
ガンダムに詳しい人が見ても納得できる内容だと思うので、宇宙世紀ガンダムが好きな人にはかなりオススメします!
※2018年12月追記
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の予告編に出てきたMSに関して、ごてごてした装備からペーネロペーではないかという情報が多いです。後ろ姿のみで、ミノフスキー・クラフトで空を飛んでいる映像のみなので判別できていませんが、ペーネロペー説が有力になってきたので、訂正させてもらいました。
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