Rock名盤解説File28:Bernard Butler People Move On

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今回のRock名盤解説は、バーナード・バトラー“People Move On”です。1990年代後半に、元スウェードのギタリストのソロアルバムとして注目されたアルバムです。アコギで作曲されたメローな曲が多く、シンガーとしてのバーナード・バトラーの力量の高さと相まって素晴らしい出来のアルバムでした。

スウェードのギタリストからソロ作の発表

スウェード時代のバーナード・バトラー

前回のジョージ・ハリスンの”All Things Must Pass”に続いてギタリストのソロアルバムを取り上げたのには訳があります。バーナード・バトラーとジョージには共通点が多いのです。まずボーカルに細かいビブラートがナチュラルにかかっているというところです。

ピープル・ムーヴ・オンは、アコースティックギターで書かれた曲が多く、意外なほどメロディ重視のボーカル映えするアルバムでした。そういったところも含めて1970年のオール・シングス・マスト・パスと共通しています。

そもそも、バーナード・バトラーに注目していたのは、スウェードの頃からです。Suedeとは、1989年に結成され、1990年代の初頭にデビューしたイギリスのバンドで、ブリットポップ(後のオアシスやブラーのこと)の走りとも言われるバンドです。

ボーカルのブレッド・アンダーソンの過激な歌詞と、バーナードのバランスのとれたギターのコンビネーションによって、様々な名曲を生みました。僕は、バーナードのバッキングやリードのバランスの取れたギターの大ファンでした。

1990年代当時は、80年代の極端なテクニック至上主義に嫌気が差したリスナーが多く、リードをしっかり弾くタイプのギタリストが減小していました。バーナードは、テクニックをひけらかさない、メロディアスなリードを好むタイプで、楽曲を生かしつつもしっかりとしたリードやオブリを弾いていました。

愛用のギブソン・ES-355TDSVのビブラートユニットを激しく上下させるスタイルはカッコ良く、スウェードよりもバーナードのファンになっていました。ところが、2枚目のアルバム、“Dog Man Star”制作中にバーナードがバンドを脱退します。

これ以降、スウェードは、バーナードの後釜としてリチャード・オークスを迎えて活動していきます。僕は個人的にバーナードのファンだったので、とても残念に思いました。それ以降、スウェードよりもバーナードの動向が気になっていきました。

次にバーナードが組んだのが、ソロとして活動していたデヴィッド・マッカルモントです。マッカルモント&バトラーとして活動は短期に終わり、バーナード・バトラーは、誰と組んでもうまくいかないギタリストという印象を与えてしまうのでした。

デヴィッド・マッカルモントはバンドに向かない性格だったのか、ソロ活動の長い人なので、バーナードだけの問題ではないと思います。2001年には、再びバーナードと組んで、アルバムを発表しツアーも行っています。

その後、以前紹介したバンド、ザ・ヴァーヴの加入のニュース(1週間で頓挫!)や、ポール・ウェラーや、マニック・ストリート・プリーチャーズなどのそうそうたるメンバーとの共演など、様々な活動に取り組んでいました。

転機となったのは、1998年に発表されたアルバム”People Move On“です。このアルバムでなんと!バーナード・バトラーが自身でボーカルをし、ソロデビューしました。

People Move On解説

1曲目の“Woman I Know“はメローでやさしい曲です。ここでの白眉は、バーナードの素晴らしいボーカルと、印象的なスライドギターです。この曲を聴いたときの衝撃は忘れられません。

あれだけ色々言われていたのに、いざボーカルやらせてみたらこんなにうまいとは!細かいビブラートが入る、やさしめのバリトンを聴いた瞬間、思い浮かべたのはビートルズのジョージでした。

2曲目の”You Just Know“は、このアルバム唯一のアップテンポのロックナンバーです。ギタリストのソロアルバムなので、こういう曲が延々と続くのではないかと思っていました。

3曲目の”People Move On“は、このアルバムのタイトルロールです。2曲目とはうってかわって、アコースティックな優しい曲です(歌詞は辛辣ですが・・・)。”A Change of Heart“は、徐々に盛り上がっていくメローでキャッチーな曲です。このアルバムは、曲の中で抑揚のあるものが多いです。

5曲目の”Autograph“は、このアルバムで一番長い8分45秒の大作です。次点は、1曲目のウーマン・アイ・ノウの7分50秒です。この曲は、一番アーティスティックな曲です。一応、ボーカルの入っている曲ですが、インストゥルメントパートが長い曲です。

6曲目のメローなアコギ曲”You Light the Fire“に続いて、7曲目がこのアルバムのハイライトであり第2弾シングルの名曲”Not Alone“です。この曲を1990年代後半のグラストンベリー・フェスティバルで、バーナード・バトラーが演奏していたのを映像で見たときには鳥肌が立ちました!

ソロになってから「1人じゃないよー」と懸命に歌うバーナードの姿は、トレードマークのES-355のビグスビーアームをこれでもかとしばく様子と相まって涙が出るほど感激しました(大ファンなものですみません)。

バーナードのソロ活動には坂本真という日本人のドラマーが参加しています。坂本真は、2018年の8月に亡くなられました。バーナードはこの死を悼みSNSに投稿しています。

坂本真は、世界最大級の野外フェスティバル、グラストンベリー・フェスティバルにもバーナードと共に出演しています。日本人で、グラストンベリーに出演しているのは、ラウドネスくらいなので、坂本真の残した功績は大きいです。とても素晴らしいミュージシャンが亡くなったのはショックですが、彼の残した演奏は残り続けていきます。

グラストンベリーフェスティバルでのバーナードと坂本のライブ

8曲目の”When You Grow“スライドギターから入る、メローでやさしい曲です。このアルバム全般通じてバーナードの人柄が出ているような気がします。9曲目の”You’ve Got What it Takes“に続いて、シングルカットされた10曲目の”Stay“では、静かなイントロから徐々に盛り上がる手法をここでも使っています。

11曲目の”In Vain“に続いて、最後の12曲目”I’m Tired“でアルバムは締めくくられます。とてもやさしい曲の多い、ギタリストのソロ作というより歌もの重視のアルバムでした。

ギター全般はバーナードが担当しているので、ただの歌もので終わっていません。印象的なオブリやリードをここぞ!という場面で弾きまくっているので、ファンとしては嬉しいアルバムです。


しかも、このアルバムのプロデューサーは、バーナード自身が担当しています。ミキシングもジョージ・シリングと共同でバーナードがやっています。レコーディングは、ロンドンにあるRAKスタジオとエア・スタジオで行われています。アルバムのメンバーの一番最初にMakoto Sakamotoと書かれています。

ジョージのオール・シングス・マスト・パスと違う点は、かなりの部分でパーソナルにバーナードが演奏をこなしているところでしょう。バーナードは、ピアノも弾けるし、プロデューサーとして2009年にブリット・アウォーズで賞を獲得しています。

バーナードは、1999年にセカンドアルバム、”Friends And Lovers“を発表します。このアルバムは佳作でしたが、ピープル・ムーヴ・オンほどの評価は得られませんでした。

どちらかというと、バンドサウンドに回帰している印象を受けて、個人的には好きなアルバムなのですが、バーナードのソロ活動に関しては、アコースティックな路線の方が好まれたということなのでしょう。

バーナード・バトラーの使用機材について

トレードマークのES-355TDSV いつもしばかれるアーム(笑)

スウェード時代から使っていて、トレードマークになっているのが1961年製のチェリーレッドのギブソン・ES-355TDSVです。ES-355は、ES-335の上位機種として開発されたギターで、ES-345同様にバリトーンスイッチ(音を硬くするスイッチ)が付いています。ちなみに以前ES-335は記事にしているので、よかったら参考にして下さい。

また、バーナードの特徴であるビグスビーアームが付いているのもES-355の特徴です。ビグスビーアームは、フェンダー・ストラトキャスターのシンクロナイズドトレモロより、可変幅は少ないですが、板バネの単純な構造のため取り付けるのにかかる手間は少ないです。

ES-355には、ビグスビーが最初から付いています。ニール・ヤングとバーナード・バトラーは、ビグスビーアームの操作の達人として有名です(ニール・ヤングはレスポールを愛用)。バーナードの細かく震えるようなビブラートは、たいていアームプレイによるものです。

こちらの映像は近年のものでバーナード自身がES-355とストラトについて語っています

他には、スウェード時代に使っていたギブソン・レスポール・スタンダードや、ソロ時代のギブソン・ES-330(P-90ピックアップ搭載のES-335タイプのギター)、フェンダー・ストラトキャスターなどが確認できています。アンプは、VOX AC-30を使っています。

僕は、1990年代~2000年初頭にかけて活躍した最高のギタリストは?と聞かれると、迷うことなくバーナード・バトラー!と答えています。

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