R.E.M. DOCUMENT:ロックの可能性を広げた個性

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Rock名盤解説 80年代編の2枚目は、R.E.M.が1987年に発表した5枚目のアルバムです。ジャケットに、R.E.M.No5と記載されているのが、“Document”です。R.E.M.はとにかく個性の強いバンドで、ボーカルのマイケル・スタイプはじめ、曲者ぞろいの印象があります。

R.E.M.は異質な魅力のあるバンド

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R.E.M.は、1980年アメリカ合衆国のジョージア州アセンスで結成されたバンドです。オリジナル・メンバーは、ボーカルのマイケル・スタイプ、ベースのマイク・ミルズ、ギターのピーター・バック、ドラムのビル・ベリーの4人です。アルバムのクレジットは、4人の名前が書かれているなど、きわめて民主的なバンドです。

というのも、曲の印税の関係で昔から、作曲者クレジットでもめるバンドが多かったからです。ザ・バンドのロビー・ロバートソンが他のメンバーともめた原因もこれでした。

R.E.M.は、この時代のどのバンドとも似ていないのが特徴です。音楽的には、パンクとフォークを融合させたようなサウンドで、バンジョーを多用し、民族音楽的なアプローチもありました。しかし、そのどれもが、4人の生み出すグルーヴそのものであるため、「R.E.M.のサウンドである」としかいいようがありません。

よくオルタナティブ・ロックの元祖だとか、グランジなどにも影響を与えただとか言われますが、そのどれもが的はずれのような気がします。というのも、R.E.M.というバンドが一番嫌ったのが、そういった一つの形に押し込められることだったからです。よって、僕の見解は、「アメリカのバンドで、R.E.M.というバンドそのもののサウンドであった」というところでまとめておきます。

Document解説

僕が所持しているCDは、後年になってからリリースされた日本盤で、後半にはライブバージョンの曲を収録するなど、色々と水増しされていました。

当時は、日本で売る場合、日本語の解説がついたライナーノーツや、ボーナストラックなどが必要だったからです。というのも、輸入盤が1,600円から1,800円で買えたのに、日本盤は最低でも2,500円もしたからです。オリジナルのバージョンについて、後半部分を除いて語りたいと思います。

オリジナル・アルバムでの曲は11曲です。ノリのいい1曲目Finest Worksongから始まって、暗い世相を皮肉ったような曲Oddfellows Local 151で終わります。このアルバム最大の名曲は、7曲目のThe One I Loveです。

メロディアスで、シンプルな歌詞なので覚えやすい曲です。”This one goes out to one I love”と”Fire”が全体の60%を占めています。だからこそ、色々と想像をかきたてられるのでしょう。意味は、「この行いは愛した一つのもの(こと)のために」と「燃えろ」です。

2曲目は、どちらかというとフォーキーな曲です。アコースティック中心のWelcome to The Occupationというタイトルで、内容は結構ヘビーです。3曲目は変わって軽妙なExhuming Mccarthyで、コミカルに政治を風刺した曲です。4曲目も3曲目と同じような流れです。ただ、こちらのDisturbance at The Heron Houseの方が2曲目同様、フォーキーな感じです。

5曲目は、ピーターのエレクトリックなリフ主体のStrangeで、次の6曲目がIt’s The End of The World as We Know Itこの曲もメロディックなのですが、ちょっと明るめの軽いノリなのです。しかし、歌詞の中身はもの凄く世間を斜めに見ています。そこから7曲目の前述したThe One I Loveに繋がるという流れです。


抑揚をきちんとつけているアルバムだと思います。特に、感情の起伏を曲に反映しているところが、このDocumentの素晴らしいところです。バンドサウンドの一つの理想として、ビルのドラムと、マイクのリズム隊の息の合ったプレイがあります。そこに、ピーターのリフと、マイケル・スタイプのボーカルが重ねられるのだから、おのずとサウンドに説得力があります。

マイケル・スタイプとパティ・スミス

マイケル・スタイプは、影響を受けたミュージシャンとして、ニューヨークパンクの女王パティ・スミスを挙げています。確かに朗読風のボーカルや、世相を皮肉るところとか、パティ・スミスの影響がそこかしこに見られます。まったくの余談なのですが、R.E.M.とパティ・スミスは、“New Adventures in Hi-Fi”という1996年に発表したR.E.M.のアルバムで共演しています。

1970年代のパンクが、80年代のバンドに与えた影響は大きいです。僕も、パティ・スミスは好きで、特に3枚目の「イースター」は名盤シリーズで紹介しようと思っていました。しかし、パンクのため、その時は泣く泣く見送ったので、ここで少し触れさせてもらっています。ちなみに「イースター」のプロデューサーは、あのトッド・ラングレンです。

80年代という時代の中でこその輝き

出典 https://www.amazon.co.jp

誤解を受けるかもしれませんが、1980年代のロックはどこかいびつでした。ダンスミュージックやら、MTVやらのおかげで、ロック自体も変わらざるを得ませんでした。特に、ハードロックがメタルになったりしましたが、サウンド上の違いというより、ファッションの違いのように見えてしまいました。

視覚上の違いばかりで、音楽的な発展が止まっているような80年代において、R.E.M.のアルバムは、ロックにもまだ発展できる可能性があることを示したのです。その輝きは今でも色褪せることはありません。

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