今回から1980年代編となります。1970年代より、80年代は更にロックのジャンルは細分化されていきます。そんな中でも、ジャンルなんか関係ないぜ!っていうような固定的な概念では語られないバンドもありました。
■今回から1980年代編に突入!
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そのうちの一つが、THE THEです。僕は、ジョニー・マーというギタリストが好きなので、THE THEを知りました。このバンド?というよりマット・ジョンソンのソロ名義とでもいうべきTHE THEでギターを弾いていたジョニー・マーは、元ザ・スミスのギタリストです。ジョニー・マーが参加していたのは、この“MIND BOMB”(1989年)と“DUSK”(1993年)です。
■ジョニー・マーの職人芸とマット・ジョンソンの自己主張
なんで、ザ・スミスのクィーン・イズ・デッドじゃねーんだよ!と言われるのではないかと思いますが、このアルバムは腐るほど取り上げられているので、僕が解説しなくてもいいのではないかと(大汗)。
それに、せっかく80年代を取り上げるのならモリッシーよりも、マットと組んだときのジョニー・マーの職人芸を語りたかったのです。1987年にザ・スミスを脱退したジョニー・マーは、様々なセッションに参加したりして、ぶらぶらしていました。そんな時、旧知の間柄であったマット・ジョンソンと組んで、THE THEのメンバーとして活動するようになりました。
この当時、下手糞なパンクか、うますぎるハードロックかというような二極化が進んでいまして、正直個性もへったくれもありませんでした。このアルバムを聞いたとき、ここまで独特の世界があるアルバムはないと思いました。
まず、地味ながらも曲を生かすジョニー・マーのギターに脱帽です。リフは地味なのですが、だからこそ光るプレイです。よく聞くとしっかりした技術と哲学のあるプレイをしています。滅茶苦茶に歪ませて速弾きするのがギタープレイじゃないぜ!っていう感じです。
そこに、ジャケットの写真のお方、マット・ジョンソンの自己主張(陶酔?)の激しいボーカルが乗っかるわけです。意図的に黒子を演じるジョニー・マーと前にぐいぐい出るマット・ジョンソンのコントラストは強烈です。正直、ドン引きするレベルです。ここに、ジェームズ・エラーのベースと、デイビッド・パーマーのドラムがリズムを支えるのです。THE THEは、この一時期に(1988~1994年)にバンド形式をとっていました。
しかし、この3作目のアルバムと次回作のDUSKでは強力なコラボレーションとなっています。まさに最強タッグです。僕は、ジョニー・マー関連のアルバムの中でもこの2作はお気に入りで、ヘビーローテーションしているのですが、本当に癖になります。
■Mind Bomb解説
いきなり7分間のムスリム調の曲から入ります。大半はインストなのですが、なぜかマットの色が強いという不思議さ(笑)。Good Morning Beautifulという曲ですが、一応マットのボーカルも入っています。しかし、パーツとしてメインにするのではなく、インストの中に溶け込ましている印象です。
この時期のTHE THEは、インプロビゼーションなパートが、重要視されています。もちろん、マットのボーカルは主体的に働いているのですが、しっかりしたバンドサウンドあってのものです。
そして、マットのボーカルが全面にフューチャーされたArmageddon Daysに繋がります。キリスト教とイスラム教の対立をによる最終戦争を描いて、宗教による戦争を皮肉った曲です。現在の状況を考えると、悪魔の詩事件による当時の宗教対立が今に及ぼしている影響の深刻さを考えずにはいられません。
3曲目もどちらかというと、ノリのいい曲で、The Violence of Truthです。曲の歌詞はこれまた重いテーマなのですが、ジョニー・マーのギターがうまく機能していて、飽きさせません。
そして、4曲目のKingdom of Rainでは、女性ミュージシャンのシネイド・オコナーがボーカルとして参加しています。前半の重さから、軽いジョニーのカッティング主体の曲、The Beat(en)Generationに繋がり、6曲目のAugust & Septemberから、7曲目のGravitate To Meに移行します。この曲のみがマットとジョニーの共作です。他の曲は、マット・ジョンソンのクレジットとなっています。ジョニー色の強い8分間の曲です。そして、最後のBeyond Loveで締めます。
ジョニー・マーのギターは、楽曲を生かします。前に出ることよりも曲の構成要素として最大限に機能する職人芸のようなプレイなのです。僕はどちらかというとリードバリバリの派手なギターも好きなのですが、こういったギタリストの渋いプレイには敬意を持ちます。
特に80年代のギタリストに多いことなのですが、スケールがややこしい複雑なものだったり、テクニックが重視され曲のアンサンブルが軽視されていました。好みの問題もあるかもしれませんが、1970年代からこの流れは加速していったように思えます。
パンクは、ご存知のとおり産業化したロックに対する反発ですが、逆に単純すぎてつまらないときがあります。ジョニー・マーのギタープレイは、技術はしっかりしているのに、弾きすぎないのです。この調度いいところをサラっと表現できるというところが、センスがいいということなのでしょう。
正直、80年代の音楽は色々と問題がありました。しかし、ロックの中にはこういった流れに反発するような、個性のあるバンドがまだ残っていたのです。ロック名盤解説、80年代編、次回をお楽しみに!
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