今回は2024年の夏アニメレビュー前編です。『異世界失格』、『俺は全てを【パリイ】する』、『グレンダイザーU』、『SHY 東京奪還編』、『新米オッサン冒険者』、『ダンジョンの中のひと』、『杖と剣のウィストリア』、『転生したらスライムだった件』の8作品をレビューします。
目次 この記事の内容
- 異世界失格
- 俺は全てを【パリィ】する〜逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい〜
- グレンダイザーU
- SHY 東京奪還編
- 新米オッサン冒険者、最強パーティーに死ぬほど鍛えられて無敵になる。
- ダンジョンの中のひと
- 杖と剣のウィストリア
- 転生したらスライムだった件 第3期
異世界失格
『異世界失格』は、やわらかスピリッツに連載中の原作野田宏、作画若松卓宏(わかまつたかひろ)の同名漫画が原作のテレビアニメです。とある文豪(お馴染みの人間失格の方)こと先生が、愛人のさっちゃんと心中しようとしていたら、トラックに撥ねられて異世界に来てしまう、という異世界ものです。
この作品の面白い所は、皆さんお馴染みの文豪が、異世界を旅をするというもので、前線で体を張って戦うタイプでもない、他の異世界転生ものの主人公とは一線を画するところでしょう。
筆者が投稿したこのブログの動画バージョンです。
ただ、作家としての観察眼と、固有のスキル「ストーリーテラー」によって人々に迷惑な存在となってしまった異世界からの召喚者を改心させたり、元の世界に返還したりします。
召喚された直後に知り合った神官のアネットや、武闘家のタマ、冒険者を目指す少年ニア、などの仲間と共に様々な困難にあうのですが、先生はいつもマイペースです。
面白いのは旅の途中で会う、登場人物のエピソードで、どちらかというと先生よりもそちらを中心に描かれています。先生はあくまでも作家であり、人間観察をして相手にとって大事なことを見抜いていきます。つまり、能動的なのは各エピソードの主要人物です。
唯一先生を動揺させる存在が、心中予定するほど愛したさっちゃんです。最終話でさっちゃんを求めて異世界を旅する先生の旅は続いていきます。つまり、オレたちの戦いはこれからだエンドでしたが、うまくまとまっていたと思います。
アニメーション制作は、『異世界おじさん』のAtelier Pontdarcです。監督は『異世界おじさん』の河合滋樹(かわいしげき)、シリーズ構成は『かぐら様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の中西やすひろです。
あの文豪を異世界に召喚するというある種の難しい題材を、よくここまでまとめたと思います。また作画もそこそこ良く、毎回楽しく視聴できました。星は4佳作認定で、ぜひアニメで続きが見たいです。
俺は全てを【パリイ】する ~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~
『俺は全てを【パリイ】する ~逆勘違いの世界最強は冒険者になりたい~』は、小説家になろうに連載されている鍋敷による小説が原作のテレビアニメです。
いわゆるなろうもの原作アニメですが、スキルはパリィと言う薙ぎ払いのようなものと低レベルの魔法しか使えない主人公ノールが、努力によって実は世界最強クラスの強さがあったという話です。
ぶっちゃけよくあるタイプのなろうものかと思ったんですが、ノールに嫌味が無いところがいいですね。とにかく努力の天才、という感じで自分に凄い実力がある、という自覚がないんですよ。
押しかけ弟子?の王女リーンが何度もノールの凄いところを認めても、本人がそれを意識していないと何もなりませんよね。結局主人公の性格はそのまま、だが、それがいい!という感じの作品です。俺強ェエとは無縁なので、楽しく視聴できました。
アニメーション制作はOLMで、監督は福山大、シリーズ構成は『ダークギャザリング』の村越繁です。作画はそこそこで話もファンタジー系なろうものの王道っぽい展開でした。他に優れた作品が多かったため、星は3.5ですが、毎週楽しく視聴できました。
グレンダイザーU
豪華な制作陣、オイルダラーからの資金提供、元になる『UFOロボ グレンダイザー』は、1975年に永井豪とダイナミックプロ原作でヒットしたマジンガーシリーズに連なるアニメであり、世界でも放送されフランスでは平均視聴率75%だったという人気のあった作品です。
正直、今期最高の作品だと思い、視聴前から期待していました。元々ロボットアニメが三度の飯より好きな筆者だったので・・・(大汗)。そして、本編である『グレンダイザーU』が始まり、回を重ねる毎に、こんなはずでは無かった、なんか薄味な作品だな・・・っていう感想になっていきました。
最初の違和感は、やたらと恋愛関係回が多いところでした。今作の主人公、デューク・フリードにはルビーナという婚約者がいて、そのエピソードが多かったのです。姉のテロンナと共にEDにも登場しています。
個人的な記憶では、グレンダイザーって恋愛要素よりもロボバトルの方が多かった印象でした。リメイクはいいのですが、1クールしかないのに、そっちで丸々1話使ったりして、このままで大丈夫なのか?と心配していました。
すると案の定、昔のグレンダイザーファンから批判されるようになり、オイルダラーが投入されたとは思えないような作画の回もあり、徐々に評価が低くなっていきました。僕も正直、色々微妙だと思いつつ、きっと終盤には良くなっていくんだろうな、と考えていました。
アニメーション制作はスタジオガイナ、皆さんご存じのガイナックスの系列会社です。オイルダラーの影響か、考え得る限り最高のスタッフが集まりました。
総監督は、あのガンダムSEEDシリーズの福田己津央(ふくだみつお)で、シリーズ構成は、『機動戦士ガンダム水星の魔女』の大河内一楼(おおこうちいちろう)、キャラクターデザインは、あのエヴァンゲリオンシリーズの貞本義行(さだもとよしゆき)です。
いや、なんでこれほど強力なメンバー揃えて、こんな微妙なまま終盤まで来るんだよ!って思っていたら最終話はうまくまとめていました。
ロボ戦闘も熱かったし。最初からこれをやっていれば、もっと評価は上がっていたんですが、途中が悪すぎました。よって評価は3.5で平凡なものとなりました。思っていたグレンダイザーとは違うアニメでした。
SHY 東京奪還編
『SHY 東京奪還編』は、実樹ぶきみ(みきぶきみ)原作の”SHY”のアニメ化2期目です。前作、SHYから成長した日本のヒーローSHYが、東京で起きた異変に対して、ヒーロー達のリーダーとして対応していく話になります。
そのため、ほとんどは東京を奪還する話になっており、その中核はクノイチの天王寺姉妹の話で、アマラリルクとなった妹の昧が今回の黒球を生み出した張本人で、姉の曖がそれを止めるために、ヒーローたちに同行します。
アニメーション制作は『転生したらスライムだった件』、『ブルーロック』のエイトビットで、監督は『彼方のアストラ』の安藤正臣です、シリーズ構成は『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳合戦〜』の中西やすひろです。
1クールで、うまくまとめてきたのが、今回のSHY第二期で、最後の姉妹の和解と黒球の怪異をSHY達が解決するところなど、うまく描けていたと思いました。よって星は4佳作認定です。作画も終始、安定して良かったです。
新米オッサン冒険者、最強パーティに死ぬほど鍛えられて無敵になる。
『新米オッサン冒険者、最強パーティに死ぬほど鍛えられて無敵になる。』は、岸馬きらく原作の小説版なろうに連載されHJノベルスによって書籍化された同名小説が原作のテレビアニメです。
冒険ファンタジーものですが、冒険者を目指していたリックが、最強パーティーに入り徹底的な努力と特殊な条件でしか発動しないスキルによって、自覚のないまま指折りの実力者になる、と言う話です。
そういうところでは、俺は全てをパリィする、と共通点が多いですが、ベクトルが異なっていて、こちらはオリハルコン・フィストという最強のパーティーに所属してます。Sランク冒険者の集まりで、頼りになる先輩冒険者の常軌を逸したトレーニングで強くなる、というのがポイントではないかと思いました。
アニメーション制作は、『マブラヴ オルタネイティヴ』のゆめ太カンパニーです。監督は片貝慎(かたがいしん)、シリーズ構成は土田霞です。作画のレベルは、平均的ですが、1クールで切りのいいところにまとまっていたと思います。星は3.5で、オープニングからして漢らしいアニメでした。
ダンジョンの中のひと
『ダンジョンの中のひと』は、双見酔(ふたみすい)原作のwebアクションに連載中の同名漫画を元にしたテレビアニメです。完全にノーマークなアニメでしたが、1話目からダンジョンの内情を描写するという、今までにない新鮮な発想に驚きました。
ファンタジー世界のダンジョンは山程登場しますが、その舞台裏をこれほど丁寧に描写する作品はあまり見たことがありません。主人公の冒険者クレイが、ダンジョンの管理人であるベイルヘイラ(通称ベル)に出会い、ダンジョンの管理側の仕事をするようになります。
確かに、ダンジョンのモンスターの管理をする場合、ダンジョン内部は自給自足で食糧なども必要だし、物資の調達のプロセスなども重要になります。特に宝箱とか、どうしてるんだろう?という疑問を解消してくれたりしました。
とはいえ、あくまでもダンジョンの中のひとの世界内でのことであり、高度な文明世界がダンジョンの生成に影響を与えている、という設定があったりします。
アニメーション制作はのOLM TEAM YOSHIOKAです。監督は山井紗也香、シリーズ構成は竹内利光という『異世界美少女受肉おじさんと』製作チームっぽい編成でした。作画もそこそこ良く、星は3.5です。OLM TEAM YOSHIOKAは視点が新しい作品をうまくアニメ化するスタジオだと思いました。
杖と剣のウィストリア
『杖と剣のウィストリア』は、別冊少年マガジンに連載中の原作大森藤ノ、作画青井聖の同名漫画を元にしたテレビアニメです。魔法学院の存在するファンタジー世界で、魔法を使えない剣士が、魔法の最高峰である塔を目指す、という内容です。
主人公のウィルは、とにかく魔法以外の身体能力や剣技、ダンジョンの探索などの能力に長けています。それでも、学院の生徒には魔法が使えないことでバカにされています。
ウィルの友人で優れた土魔法使いのコレットや、ヒロインで塔に登ったエルファリアなどがいます。ヒロインは総じて可愛らしく、且つウィルに親身になっています。対照的に、何かと絡んでくる炎魔法の使い手シオンなど、男子生徒からは目をつけられることが多いようになっていました。
ぶっちゃけ身体能力だけで、ダンジョンの階層を一人で探索しているので、そっちの実績を周りももっと認めるべきでは?と思いました。ハリポタ要素の多い作品ですが、無能者だと思っていた主人公が実は、凄い能力を持っていたという設定が面白かったです。
アニメーション制作は、『ガールズ&パンツァー』のアクタスとバンダイナムコピクチャーズが共同で行いました。監督とシリーズ構成は、原達矢です。話の展開も熱く、作画も良かったので星は4佳作認定です。ハリポタシリーズが好きな人ならもっとハマったのではないでしょうか。
転生したらスライムだった件 第3期
もはや説明不要のアニメ、『転生したらスライムだった件 第3期』は、伏瀬(ふせ)が原作の『転生したらスライムだった件』というタイトルの小説が原作のテレビアニメです。
1期、2期と経てテンペスト建国からも仲間を増やし、魔王にまでなった主人公のスライム、リムルは神聖法皇国ルベリオスとの争いを避けるため、聖騎士ヒナタと交渉しようとします。
しかし、両者を敵対化させようと企む勢力により、衝突することになります。ヒナタも薄々感知していた陰謀は、土壇場での黒幕の登場によって確定されます。リムルとヒナタの関係の修復と魔王ルミナスの登場によって両国は和解します。
前半の1クールはルベリオスとの争いと和解、後半は開国祭という流れになるのですが、いきなり会議から始まったのには驚きました。両陣営の思惑を描写したかったのでしょうが、少し長く感じました。後半の開国祭は余興が多く、ほのぼのした感じがしました。
これだけ登場人物が増えると、相関関係を把握するのも大変になってきます。白老の娘、モミジ、勇者マサユキなど、新しいキャラクターも出てきて賑やかになっていきます。
アニメーション制作は『ナイツ&マジック』、『ブルーロック』のエイトビット、監督は中山敦史、シリーズ構成は『マクロスΔ』の根元歳三です。エイトビットの作画は素晴らしく、会議など冗長な部分もありましたが、総じて楽しめたアニメでした。よって星は佳作の4です。これからもエイトビットは注目していきたいスタジオです。
後編に続く
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