ファイヤーバードとテレキャスター デラックス:際立つ個性は研究の成果?

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今回紹介するのは、ギブソンとフェンダーがお互いの特徴を入れ替えたようなギターです。1960年代にギブソンが開発したファイヤーバードは、フェンダーのようなトレブリーなトーンを意識しました。1970年代にフェンダーが生産した、テレキャスター デラックスは、ギブソンのギターのようなパワーを意識して開発されたギターです。

目次 この記事の内容

  • 他人の芝生は青く見える?
  • ギブソン・ファイヤーバード:奇抜なデザインとトレブリーなトーン
  • フェンダー・テレキャスター ・デラックス:2ハム仕様のテレキャス
  • ファイヤーバードとテレキャスター ・デラックスが愛される理由とは?

他人の芝生は青く見える?

フェンダー・テレキャスター ・デラックス

一般にフェンダーのギターは、高域の伸びるシングルコイルを搭載していてトレブリーで歯切れのいいトーンです。その一方でパワーのあるハムバッキングPUを搭載しているギブソンは、ウォームで太いトーンが特徴です。

ボルトオンネックのフェンダーと、セットネックのギブソンというギターの構造上の違いや、アルダーやアッシュをボディに使っているフェンダーと、マホガニー系のギブソンと木材による個性もトーンに反映されています。

ぶっちゃけ、どちらも違いがあるからこそ、色々なギタリストに使われているのであって、ぶっといサウンドならギブソンを、ジャキジャキさせたいならフェンダーを使っていれば間違いありません。

しかし、「他人の芝生は青く見える」ということわざどおりに、ライバル社の優れたところを取り入れようとして出来たギターがあります。Gibson FirebirdFender Telecaster Deluxeです。

しかし、ギターをそのままコピーするのではなく、自社の独自性にこだわるところが、エレキギターの2大メーカーの意地の張り合いのようで面白いです。

ギブソン・ファイヤーバード:奇抜なデザインとトレブリーなトーン

ギブソン・ファイヤーバードV

Gibson Firebirdは、一眼見た瞬間に誰もが強烈なインパクトを受けるデザインです。通常のギターと違って、左側が大きく張り出しています。通常右利きの場合、左は下に向く方向で、左手でネックを押弦するならハイポジションは、左側を削ってプレイアビリティを向上させます。

フェンダー・テレキャスター や、ギブソン・レスポールモデルなどが、左側を削ったシングルカッタウェイの典型的な形のギターです。しかし、ファイヤーバードは、この逆で左側が大きく張り出しています。

そして対角線上の右側のボディエンド部が、張り出しています。これにより左右非対称のボディ形状をしています。しかし、ネックのハイポジション側のボディはダブルカッタウェイのようにえぐれていて、とても弾きやすい構造になっています。

次にフェンダーのヘッドとは、逆の左側(つまり下側)にペグが並んでいます。オリジナルのファイヤーバードは、ペグに重たいバンジョー用っぽいEB-1のものを流用していたため、ヘッドが下がりやすいという欠点を持っていました。このヘッドとボディ形状から、ファイヤーバードの初期型はリバースモデルと呼ばれます。

このような奇抜な形状のギターをデザインしたのが、クライスラーや、タッカー、フォードなどの数々の名車に関わってきた、レイモンド・ディートリッヒです。鳥が翼を広げたようなイメージと、火の鳥のロゴといい、文句なしにカッコいいギターです。

当時のギブソンの社長であるテッド・マッカーティが、フライングVやエクスプローラーといった奇抜なデザイン(いわゆる変形)のギターが失敗した後の1963年にファイヤーバードを販売したのには、理由があります。

当時のギブソンが好まれたのは、主にジャズの市場でした。ギブソンのウォームなトーンは、ジャズには合っていたのですが、当時流行し始めたサーフミュージックなどのトーンはジャキジャキしたフェンダーのトーンが好まれ、売り上げを伸ばしていました。

そこで、フェンダーのようなトレブリーなトーンを目指して開発されたのが、ファイヤーバードということになります。ギブソンのシングルコイルであるP-90は、構造的にウォームなトーンを持っていました。よりトレブリーなサウンドを指向したギブソンは、新しいピックアップであるミニハムバッカーを開発します。

PU-720とPU-740という型番のミニハムは、通常のギブソン製ハムとは異なり、アルニコ製バーマグネットを並べてポールピースの代わりし、2つのコイルを逆着磁になるように巻いていきます。つまり、歯切れを良くするために、ポールピースを磁石にしているフェンダーのシングルコイルに似た構造のハムバッキングPUを開発したのです。

シングルだとトレブリーでハムだとウォームだというイメージがあります。実はハムでも、ピックアップの構造上、ポールピース部分(直接音を拾う部分)が磁石の場合は、音が鋭くトレブリーになります。

P-90もPAFも、ポールピースは鉄製で、マグネットはコイルの下に取り付けられています。このため、磁界が広くなり結果として、ウォームなトーンとなっているのです。

ミニハムがギブソンにしてはトレブリーなトーンを持っているのは、ポールピースの代わりのバーマグネット部が、そのまま磁石となっているからです。このため、磁界は狭くなり、結果としてトレブリーなサウンドになるというわけです。

そして、ボディ形状は、ギブソン初の試みであるスルーネックです。伝統的なセットネックと違った構造にした理由は、フェンダーのボルトオンネックに対するギブソンの対抗心によるものでしょう。

スチールギターや、アンプの製造から発展してきたフェンダーと違い、アコースティックギターの時代からギター作りに長い歴史を持つギブソンからすれば、製造過程が簡便化できるメリットのあるものの、4本のネジでボディと固定するボルトオンネックは認められないものだったのでしょう。

そこでファイヤーバードに採用されたのが、ネックとボディの9プライのセンター部が一体となっているスルーネック方式です。ファイヤーバードは、中心のスルーネック材をボディ材で左右から挟み込む形になっているのです。ボディとネックはマホガニーで、指板はローズウッドです。

ファイヤーバードは、ラインナップも複数存在します。ローマ数字で区別される仕様の4つのモデルが生産されました。

  • I-1ピックアップ、テイルピースブリッジ(もしくはショート・バイブローラー)
  • III-2ピックアップとショート・バイブローラー
  • V-2ピックアップ、チューンOマチック、ロングバイブローラー、ドットインレイ、ネックバインティング
  • Ⅶ-3ピックアップ、チューンOマチック、ロングバイブローラー、ドットインレイ、ネックバインティング

これだけ、ギブソン独自の創意工夫に溢れたファイヤーバードでしたが、残念ながらあまり売れませんでした。左右非対称のリバースを逆転させた構造のノン・リバースモデルが、1966年から販売されることになりました。

ネックのペグの位置は、右側の片側6連ペグになり、バンジョーペグは廃止されました。次に、3ピックアップ用のキャビティを最初から開けているため、大型のピックガードでボディを覆っています。

最大の変更はスルーネックから、セットネックへの変更です。ボデイの張り出しも抑えられ、普通のギターになったのが、ノン・リバースモデルといえます。ⅠとⅢは、P-90ピックアップとなりトーンも変わってしまいました。結局、1969年にはファイヤーバードは生産終了となりました。

しかし、その後クリーム時代のエリック・クラプトンや、100万ドルプレーヤーのジョニー・ウィンターなどが使用し、1970年代には復刻バージョンであるゴールド・メダリオンが販売されるなど、現代でも作られるようなコアな人気のあるエレキギターとなっています。

ノイズが少なく、トレブリーなミニハムと、スルーネックという構造から、フェンダーのトーンと異なるファイヤーバードのトーンがあります。同じギブソン社の中でも特異なギターですが、筆者も一度所有してみたいギターです。

フェンダー・テレキャスター・デラックス:2ハム仕様のテレキャス

70年代のテレキャスター ・デラックスはストラトのラージヘッドが特徴

フェンダーにもギブソンのトーンを意識したギターがあります。1970年代、ハードロックの隆盛とともに、フェンダーの方でもギブソンのようなヘヴィな歪みが得られるハムバッキングPUを搭載したギターが必要になったのです。

そのベースのギターとして白羽の矢が立ったのは、テレキャスター でした。1949年にエスクワイヤーとして登場して以来、数多くのギタリストに愛用された歴史のあるテレキャスター は、フロントピックアップの出力が弱いという欠点がありました。

そのため、フロントにハムバッキングPUを載せるという改造が流行っていて、キース・リチャーズや、ロビー・ロバートソンのようなギタリストが同様のカスタムをしていました。

1972年から登場したギターが、Fender Telecaster Deluxeです。1968年のテレキャスター ・シンラインから続くテレキャスター のバリエーションとして、テレキャスター ・カスタムの販売開始と共に、70年代から追加された派生モデルの一つです。


フェンダーは、新たなモデルのために、PAFと通称されるギブソン・レスポールのハムバッキングPUを開発したセス・ラヴァーを招聘します。そして、フェンダー独自のワイドレンジ・ハムバッカーをこれらのモデルに搭載しています。

ワイドレンジ・ハムバッカーのポールピース自体に磁力のある構造は、フェンダーのシングルコイルに似たブライトなトーンを持っています。

カスタムは、フロントのみで、デラックスは、リア側にもワイドレンジ・ハムバッカーを2基搭載しています。ギブソンとは異なるフェンダーらしいトーンのハムバッキングPUに、ギブソンのようなトグルスイッチに、2トーン、2ボリューム仕様なのが、デラックスとカスタムの特徴です。

面白いのは、テレキャスター が、レスポールに似ているという、ジミー・ペイジやロイ・ブキャナンの言葉を真に受けたようなモデルを、フェンダーが出したことです。実際には、シングル基とハム2基や、材や形状の違うテレとレスポールは似ていないのですが、ヴィンテージギター特有の個体差で、そういった印象があったわけです。

ストラトのように真ん中にPUがないこと、ソリッドギターでシングルカッタウェイであったことが、レスポールとテレキャスに共通した要素です。つまり、ギターの構造がレスポールやSGにフェンダーの中で一番近いのが、テレキャスターだとメーカーも思っていたということになるのです。

レディオヘッドのトム・ヨークとテレキャスター ・デラックス

テレキャスター ・デラックスのトーンは、トレブリーであるもののハムの厚みがあります。センターにした時に、レスポールやSGのようにスイッチング奏法や、フロントとリアのボリュームやトーンを個別に調整することが可能です。

サウンドバリエーションという点でいうと、普通のテレキャスターはシンプルに1ボリューム、1トーンでピックアップセレクターのみの構造なので、デラックスやカスタムの方が多彩であるといえます。

1970年代のストラトと同じ、ラージヘッドに、マイクロティルト機能の付いた3点止めのボルトオン方式が1970年代のオリジナルのテレキャスター ・デラックスの特徴です。

ハムのため、パワーと厚みはあるものの、ギブソンと比較するとトレブリーで抜けのあるトーンが出ます。オリジナルの70年代にしか搭載されていないワイドレンジハムバッカーのデラックスは、弾いてみたいギターの一つです。

しかし、カスタムもデラックスも、当時はあまり売れなくて、結局は1981年に生産が終了しました。しかし、2004年から1970年代のデラックスが売れたことから、再販されるようになりました。注意すべきは、ワイドレンジハムバッカーは、再販されたものには搭載されていません。

最新のアメリカン・プロフェッショナルラインのものだと、ティム・ショウが開発したショウバッカーが搭載されています。PAF同様に、コイル下部にマグネットが配置されている構造です。出力を弱めにしてシングルコイルとのバランスを考慮したハムバッカーということになります。

テレキャスター ・デラックスの使用ミュージシャンは、ブルーズ界の大御所、バディ・ガイと、オアシスのノエル・ギャラガー、レディオヘッドのトム・ヨーク、フー・ファイターズのクリス・シフレットなどが有名です。

ファイヤーバードとテレキャスター・デラックスが愛される理由とは?

ジョニー・ウィンターとファイヤーバード

いうまでもなく、ファイヤーバード人気を再燃させたのは、ジョニー・ウィンターです。デビュー間もない頃のジョニー・ウィンターは、フェンダー・マスタングを愛用していました。

ジョニーにとって、理想のトーンがストラトキャスターだったのですが、レギュラースケール(25 1/2インチ)のため、テンションがきついためチョーキングしにくいので、ショートスケール(24インチ)のムスタングを愛用していたのです。

しかし、ミディアムスケール(24 3/4インチ)のファイヤーバードは、トレブリーなトーンを持っていました。つまり、指板はギブソン系でありながらもフェンダーのような明るいトーンを持つファイヤーバードは、ジョニー・ウィンターにとって理想のギターだったのです。

また、フェンダーに慣れ親しんだギタリストが、ハムバッキングの厚みと少ないノイズのギターが欲しい場合は、テレキャスター ・デラックスを購入します。

つまり、2大メーカーがお互いの個性を残しながらも、相手のことを研究した結果、形やスケールなどは自社のものでありながらも、相手メーカーの特徴をある程度反映したギターを作ってしまったということになったのです。

これは、フェンダーのルックスやスケールが欲しいけど、ハムのトーンが欲しいという需要があったということに他なりません。反対に、ジョニー・ウィンターのようにギブソンのネックにトレブリーなトーンが欲しいという層もいたということになります。

一度生産が中止されながらも、再販されていることが、ファイヤーバードとテレキャスター ・デラックスのファンが少なからずいたという証明になっています。かくいう筆者も、この2本のギターは興味深く、たまに無性に欲しくなります(大汗)。

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