前回から引き続き、∀ガンダムの紹介をしていきます。後編では、脚本家や音楽担当、メカデザインについても書いていきます。ターンタイプMSに搭載されている月光蝶システムについても言及します。
ザックトレーガーから月に向かうウィルゲム
画像は公式ページより http://www.turn-a-gundam.net/
ザックトレーガーとドッキングするウィルゲム
第35話『ザックトレーガー』で、地球から月に行くため、ザックトレーガー(人工的にスイングバイさせるための樽状の宇宙ステーション)にウィルゲムは接舷しました。羽衣を持つ宇宙船ジャンダルムに囚われていたディアナと、ウィルゲムに乗るキエルによってザックトレーガーから無事にミリシャの面々は月に向かいます。
月までの距離が近づくと、レット隊のキャンサーとムロンがディアナを救出し、廃棄コロニーミスルトゥに入ります。その動きを知らされたロランとソシエは、ターンエーとカプルで、ディアナを迎えにいきます。というより、カプルが万能すぎます。お前水陸両用機というだけでなく、宇宙でも使えるのかよ!
筆者が投稿した、この記事の動画バージョンです。
ハリーは、ウィルゲムからキエルを連れて、月の武力勢力であるギンガナム隊と接触します。その大将であるギム・ギンガナムは、ソレル家に代々使える武人でありながら、2000年にもわたる演習に飽きていた好戦的な人物でした。
ギンガナムは、モビルスーツのマヒロー部隊にミスルトゥを攻撃させ、ミスルトゥの破片が20万人が住む月の都市に落下することを知ったロランは、ターンエーのミサイルサイロに入っていた核ミサイルを使って、ミスルトゥの残骸を破壊しようとします。
好戦的なギム・ギンガナム
そこえ、ターンXの頭部(ターンXのコックピット)を持ったマヒローに乗ったギンガナムが、ターンAと交信します。ロランは、核をミスルトゥの残骸に向けて投げつけます。残骸は破壊され、ロランとソシエ、ディアナは月に向かいます。一方、ギンガナムと接触したグエンは、ギンガナムに月と交渉しにきた意思を伝えます。
ギンガナムは、月の政務を司るアグリッパ・メンテナーとの交渉を薦め、グエンはアグリッパとの交渉を画策します。一方で、月の運河から月面都市を目指す、ディアナとロラン、キエルはマヒロー隊と戦闘になり、これを退けます。
というより、月面の運河でもバカスカメガ粒子砲をぶっ放す、マヒロー隊って本当に月の軍隊か?って思いました(大汗)。また、マヒローの性能のせいか、演習しかしてこなかった軍隊だからか、めちゃ弱いです。マヒロー隊の隊長であるスエッソン・ステロくらいしか、まともなパイロットはいません。
実は、『ガンダムGのレコンギスタ』でも似たような回がありました。あっちは、金星のスペースコロニー、ビーナス・グロゥブでの戦闘でしたが、人工的に作られた水中での戦闘という共通点があります。
衝撃の黒歴史とターンX!
ターンエーの兄弟機ターンX 2機のターンタイプの性能だけ突出している
実は、ターンエーガンダムでのメカデザイン、特に主役メカターンエーガンダムと、ターンX、スモーといった主要な機体は、『ブレードランナー』で知られる世界的なアメリカの工業デザイナー、シド・ミードが行っています。もちろん、シドじいさんのシドはここから取られています(笑)。
主役機、ターンAは最初見たとき、ヒゲがついてて格好良く見えなかったのですが、実際に動いているところをアニメで見ると、もの凄く合理性があっていいデザインに思えてくるので不思議でした。
スモーは、ターンエーガンダムとして最初デザインされていたようなのですが、『機動戦士ガンダム』におけるガンキャノンのように(最初にガンダムとしてデザインされたのはガンキャノンの方)没にされたものだそうです。
ターンXは、ターンAの兄弟機で、縮退炉を動力源とし、月光蝶システムを搭載した文明を滅ぼすほどの規格外の戦闘力を持つ機体です。
ジェネレータ出力は、ガンダム作品MS最高の68,000kWで、本当の機能を回復するとその10倍ともいわれています。実はターンエーも同様の戦闘力を持つ機体で、かなり危ない存在がターンタイプといえます。
ターンXは、ジオングを意識してデザインされた機体で、左右非対称ですが、とてもカッコよく、当時のニュータイプ誌でデザインが公表されたときには、登場を心待ちにしていました。
ガンダムのライバルキャラの乗るモビルスーツとして、人気のある機体です。ギム・ギンガナムの名ゼリフの数々は、声優の子安武人がノリノリで演じていて、印象に残っています。「我が世の春が来たァァ!」とか、「凄いよターンX!さすがはターンAのお兄さん」とかは、誰かが必ずマネしてるので聞いたことがあると思います。
ギム・ギンガナムは、ターンXを月のマウンテンサイクルから掘り出し、ターンXヘッドを接続、その後一時的に月面都市を停電させるほどの電力を供給することによって、エンジンを始動させることに成功し、ターンAと対峙します。
第43話『衝撃の黒歴史』で、ディアナの居城、白の宮殿から月面に向かったターンAは、ターンXとニュータイプと思われるメリーベルの乗るモビルスーツバンディットと対決します。その過程で、ターンAはビームサーベルを極限まで振動させることによって、空間転移などを使い、徐々に本来の能力の片鱗を見せ始めます。
映像として映し出される黒歴史
その戦闘の最中、月の住人が冷凍睡眠している冬の宮殿にある、黒歴史のデータをディアナは解き放ちます。ミリシャの主要なメンバーは、黒歴史の真の意味を知ることになります。そして、その映像は、ターンタイプの戦闘と共に、月面中に流されました。
宇宙世紀の時代の戦いと争乱、ガンダムW(アフターコロニー)やX(アフターウォー)などのアナザーガンダムの歴史も含めて記録されていたのが黒歴史です。∀とは、全称記号と呼ばれるもので、全てのという意味があります。
このように、公式で今まで作られたガンダムの全作品を肯定しているのがターンAなのです。ガンダムの生みの親がお墨付きをあげているので、不毛な旧宇宙世紀ファンとアナザーガンダムからのファンとの間の論争は、意味がありません。どちらもガンダムです(大汗)。
これらの黒歴史を経て、人類はターンエーの月光蝶システムにより、地球の文明を一度リセットしました。月光蝶とは、あらゆる人工物を分解するナノマシンをIフィールドによって広域散布するシステムです。
ターンXは、地球外から漂着したメカであるという設定らしきものがあり、ターンエーは、ターンXなどの地球外の脅威に対抗するために作られたという説もあります。そして、文明をリセットする側の代表として、ターンAがターンXと戦ったという記録があるようです(ギム・ギンガナムのセリフから)。
そして、あらゆる争乱の原因となっている地球を月光蝶によって、文明を一度リセットし、その結果が高度に発達した月と19~20世紀レベルの地球との文明レベルの差を生んだということでした。ちなみにスペースコロニーの住人は、その間に外宇宙に旅立ったとされています。
月で起動した月光蝶システム
アグリッパ・メンテナーは、ミーム・ミドガルドによって殺され、ミドガルドはジャンダルヌを月の都市ゲンガナムで航行させ、ミリシャに対して牽制をかけます。月面での戦闘でターンXとバンディットの追撃を振り切ったターンAのロランは、ジャンダルヌの攻撃を月光蝶によるバリアで防ぎ、船体をその強大な出力で押し戻します。
ミドガルドは禁忌の力を持つターンAに恐れをなします。ハリーのスモーの攻撃により、ミドガルドは倒され、騒動は終息したかに見えます。ディアナは、ギンガナムにターンXの引渡しを要請します。
ギンガナムは、民衆の支持は完全にディアナのものであることを知っていたので、一時は引渡しに応じます。しかし、野心を持つグエンは後ろ盾を必要としていたギンガナムと組み、ウィルゲムに全員乗り込んでいない状態で帰還しようとします。
その際、ロランだけを呼び寄せました(ローラとして好意を持っていたため)が、ロランはウィルゲムから脱出し、ギンガナムの操るターンXと戦闘になります。
ターンXは、全身が分離するオールレンジ攻撃によってターンAを機能停止させます。ロランは、ターンAのコアファイターで戦闘空域から離脱します。ターンAをギンガナムに奪われてしまいました。
残り数話で使われることとなったコアファイター
残り数話というところで、ターンAのコアファイターがようやく使われることになります。ターンAのコアファイターは、コックピットである腰部の股間部分とその左右のアーマー部分で構成されています。
ホエールズと名付けられたアルマイヤー級戦艦を艤装しているときに追撃してきたズサンことズサ(ガンダムZZに登場していた量産型MS)の部隊を、ロランはコアファイターで、ハリーら親衛隊と共に迎撃しています。
先に、地球に帰還したグエンとギンガナムは、地球勢力と戦闘になります。圧倒的な技術レベルの差に、地球の勢力は対抗できません。そこに、ディアナ率いるホエールズが地球のディアナカウンターと合流します。
メリーベルは、ターンAにスモーのコックピットで操縦し、月光蝶で地表を破壊していきます。その様子に恐怖を感じたグエンは、ターンAを引き渡すことをギンガナムに要請します。
コレン専用カプルは角付きの赤(汗)
再び、地球で使われた月光蝶を見て正気を取り戻したコレン・ナンダーは、ディアナの元で戦うことになります。リリ・ボルジャーノンは、月に置いていかれたことでグエンを見限り、ディアナに協力し、ルジャーナ・ミリシャの戦力を糾合します。
一方、ミリシャのパイロット、ジョゼフはターンAの奪還のための作戦を敢行します。その結果、ターンAの奪還には成功しますが、周囲の説得があってもジョゼフはロランにターンAを返還しません。
ターンXは強大な力で次々とMSを破壊していく
そうしている間に、デイアナカウンターとミリシャの連合軍は、ギンガナム艦隊と本格的な戦闘に突入していました。コレンの活躍もあり、徐々に押し込んでいくディアナカウンターとアメリア大陸の合同軍に対して、ギンガナムはターンXで対抗しようとします。
そこに、飛行船を目くらましにして降下し、強襲するジョゼフのターンエー!腹部ビームキャノンで、ターンXの背部プラットフォームを破壊するも、オールレンジ攻撃で、ジョゼフはピンチに陥ります。気絶したジョゼフを救出し、ロランのコアファイターを接続したターンAが最後の決戦に向かいます。
奇跡の6分間
激しく戦闘する2体のターンタイプ
最終話(50話)『黄金の秋』は、アニメファンなら一度は見てもらいたい回です。特に、ガンダムファンには、全てのガンダムの物語の終結として必見の回だと思います。
激しく戦うターンタイプ2体は、月光蝶を展開し、周囲の破壊が始まります。デイアナカウンターは、戦艦のバリヤーで月光蝶を封じようとします。メリーベルのバンディットを撃破したコレンのカプルは、ターンXに撃破されてしまいます。
比較的メインキャラが死亡することの少ないターンAですが、コレンは、ノックスの街を壊滅させた罪があったから死んだのではないでしょうか?同じように味方であるギンガナムに殺された、スエッソン・ステロも見境なく戦闘を拡大させました。
ターンAとターンXは、相打ちになり、ロランは脱出し、ギンガナムと刀で格闘します。そのまま月光蝶に囚われたギンガナムとターンタイプ2機は、月の繭のような形にみえました。おそらく月光蝶同士が反応しあって、お互いを取り込んだということでしょう。
ロランは生還し地球の争乱は終息します。ここで奇妙だったのは、あれだけ筋骨隆々に見えたギンガナムが、ロランの上段からの打ち降ろしに刀を折られていることです。
地球帰還作戦で、月の6倍の重力で鍛えられていたロランの筋力の方が勝っていたということでしょうか?ギンガナムは、道具であるターンXに操られていたような描写があり、制御してターンエーを使っていたロランと対照的に描かれています。
道具は、粗暴に使うことよりも完全にコントロールすることの方が難しいのです。ロランのガンダムの使い方は、これまでのパイロット以上にコントロールすることに比重が置かれていました。その結果として、この後の奇跡の6分間に繋がるラストとなるのです。
最終決戦でのターンA
憎しみ合い、イデを制御できなかったが故に滅びた『伝説巨人イデオン』や、オーラマシンによる争乱で敵味方全滅した『聖戦士ダンバイン』の結末とは異なり、ターンエーを使って月と地球の争いの拡大を防ぎ、月光蝶で再び文明を破壊しようとしたターンXを止めたロランは、富野アニメ史上最高のパイロットだったのかもしれません。
奇跡の6分間は、音楽を担当していた菅野よう子が作曲し、井荻麟こと富野監督作詞、奥井亜紀ボーカルの名曲、『月の繭』が丸々使われています。実は、この曲はターンAの最初の方の回でも英詞バージョンがちょこっとだけ使われていました。また、ディアナのイメージのある回でも挿入歌として何回か使われていました。
第41~第49話のエンディング曲でもあり、フルバージョンで使われたのは、最終話の最後の6分間のみで、ED曲はこの回だけ『限りない旅路』が流されました。
このターンエーでの菅野よう子は、オペラ調の戦闘時の曲”Final shore~おお再臨ありやと~“といい、実に作品にマッチした曲を書いています。中でもこの『月の繭』は素晴らしい曲で、最高のエンディングがこの6分に詰まっています。
冒頭、ロランの運転する車でディアナとハリー、キエルとソシエは、ハイム家に里帰りします。次にコレンの部下だったブルーノとヤコップが子供達に人形劇でターンエーの活躍を伝えています。
次にウィルゲムが修理されている様子が描かれていて、その工場を護衛しているのがウォドムであることから、月と地球の和平がうまくいったことをあらわしています。
そして、冬の雪の降る日(冒頭の場面が秋だとすると)に涙を流すソシエと、彼女とキスするロラン、その光景から目を逸らし、クルマから窓の外を眺めるディアナの姿があります。ここから、ロランがディアナと旅に出ることが解ります。ディアナは地球で死を迎えることを望んでいました。ロラン1人を従者として。
そして、春にはディアナとして船でウィルゲムに乗り込むキエル(おそらくディアナが地球で隠遁するため)の姿がありました。愛するハリーと、ブルーノ、ヤコップ、ミラン、フィルを連れています。見送りには、リリー、ソシエ、スエサイド隊の面々、ハイム家の人々もいます。
このカットがディアナとロランの関係をはっきりさせている
そして、場面は切り替わり、ディアナとロランの姿が見えます。おそらく、初代ウィルゲイムの屋敷か、その近くだと思うのですが、はっきり解りません。渡り鳥を眺めるディアナの左手の薬指には、指輪があります。初代ウィルゲイムの妻として、指輪をはめているのかもしれません。
というのも、ロランはディアナの斜め前の席に座っています。また、ロランの指には指輪はありません。あくまで従者としてディアナの側にいることがこれで解ります。ロランは、ソシエの愛に答えることよりも、ディアナの余生を見守ることを選んだのです。
そして、次のカットでウィルゲムが地球から飛び立ちます。ブリッジ部分を切り離して、月に向かうウィルゲムには、キエルとレット隊の面々の姿があります。次に、フランと結婚して子供を抱えているジョゼフの姿が出てきます。ジョゼフがシャツ1枚だけの格好をしているので、季節が夏になったことが解ります。
ここで、今回初めて解ったことがあります。シドじいさんの発掘の助手は、なんとあの泣き虫ポゥでした。どういう経緯で、シドの助手をしているのかは不明です(汗)。次にキースとパン屋のお嬢さん、それに祖母のアリスの姿があります。
パン屋の車のアリスの腕には、キースとお嬢さんの子供がいます。そして、キースの視線の先には、新しいパン屋の看板があります。そして次のカットで、月に入港するウィルゲム、ディアナとして月の民衆に演説するキエルの姿があります。
そして、地球ではメシエーと、ボーイフレンドのムーンレイス(髪の長い少年)が人力飛行機で空を飛んでいます。そして、人力飛行機が墜落した後ろから、2人を見守っていたメシエーの父、ラダラムの姿がありました。2人は幸せそうに笑っています。
対照的に、ロランのブリキの金魚を自転車で、川に投げ込むソシエの姿がありました。そのときに叫んでいるのは、ロランと決別したからなのでしょうか。少なくとも、半年以上は、ロランの帰りを待ち続けていたのかもしれません。
そして、視点が星空に移ると、帆船でメリーベルを連れて、どこかに旅立っているグエンの姿がありました。そこで、カヌーが出てきて紅葉(黄金のような黄色)で一面の森の景色が映し出されます。そこから縦に視点が伸びていって、月が写ります。黒歴史の記録を見ているディアナ(キエル)と、側にはハリーの姿がありました。
これは、ディアナとして黒歴史の全てを継承したことを意味しています。衛兵が、新たなディアナに敬服して、ディアナが微笑み緊張を解いています。キエルは、新しい統治者としての威厳が身についてきています。このときのキエルの肌の色と目の色は、完全にディアナと見分けがつかなくなっています。
再び、月から地球に視点は移り、一面の金色の紅葉の中、釣りをするロランと、ディアナの姿があります。そして、星空から三日月をバックに渡り鳥が飛び、場面は横に流れていきます。
凍った湖面を眺めるディアナの姿は下から上にカットが移ります。このときのディアナの声は少し低く、年を取っているように聴こえます。ディアナが見上げた先には、三日月があり、そこから繭となった2体のターンタイプと、ギンガナムの繭が見えます。
そして、画面いっぱいの満月のアップから、再びロランとディアナの屋敷に場面が移るのです。そして、ロランがスープが出来たことをディアナに告げています。ディアナの生活の世話をロランがしていることがはっきり解る場面です。部屋の扉を外側から閉めるロラン、そこから部屋のベッドで静かに眠るディアナの姿がありました。
最後のディアナの姿は、まだ若いように見えましたが、声の感じは低いので声優の高橋理恵子(キエルも担当)が意図的にそうしたのでしょう。そして、最後にかかった曲は、輪廻を意図してのものでしょうか?そこは、想像で補うしかありません。
全てのガンダムを締めくくる、素晴らしいラストです。2014年に放送された『ガンダム Gのレコンギスタ』のリギルド・センチュリーが、ターンエーの時代の後か先かは、諸説あります。普通に考えると、前の時代になるのですが、富野監督が後の時代だと言っていたから、色々な説が出ています。
G-ルシファーが月光蝶を使っているシーンや、ヒロインの1人であるラライヤ・マンディが、ロランに似た肌の色や髪の色、金魚のチュチュミを溺愛しているので、血縁関係も噂されていますが、真相は不明です。
後の『機動戦士ガンダムSEED』や、『機動戦士ガンダム00』が作られたきっかけになる作品が、∀ガンダムなのです。2002年には、劇場版が2部作として公開されています。
この作品で脚本家として『コードギアス 反逆のルルーシュ』、『ルパン三世 PART5』の大河内一楼がデビューしています。
そして、作家の福井晴敏が、小説『ターンエーガンダム(月に繭 地には果実に改題)』を書いたことがきっかけで、2007年から『機動戦士ガンダムUC』を執筆し、福井ガンダムシリーズが幕を開けることとなるのです。
番外編:Vガンダムのラストとターンエーのラストの違い
出典 http://www.v-gundam.net/
Vガンダムの最終話より V2ガンダムとVガンダム(マーベット機)
1993年から1994年にかけて放送された富野監督のおそらく最後の宇宙世紀ガンダム『機動戦士Vガンダム』の最終話、『天使たちの昇天』のラストとの違いについて考えます。
挿入歌『いくつもの愛をかさねて』は、リーンホースJrが特攻をかけるシーンでも使われましたが、最終回の罪をかさねたカテジナ・ルース(ガンダム三大悪女の1人にされている)が、シャクティ・カリンと会って、1人で寂しく失明した状態で去っていく場面でもかかっていた曲です。
このとき、シャクティは、カテジナのことが解っています。しかし、カテジナはシャクティに気付いていないフリをしています。シャクティやウッソ、カルル、トマーシュ、マーベットとは、二度と一緒に生活できないことがわかっているからです。
小説には、カテジナが強化人間として強化された描写があります。クロノクル・アシャーに寄りかかることしか出来なくなり、精神的に不安定になっていたからといって、シュラク隊のメンバーやオデロを手にかけた罪は一生消えることはありません。
カテジナを見送り、涙するシャクティ
そして、そんなカテジナの気持ちを察してか、精一杯の施しをした後、送りだすシャクティの目には涙がありました。Vガンダムは、このように苦いエンディングがありました。
ターンエーのラストと同じように後日談でありながら、一方は心温まる穏やかなラストに対して、一方は悲しみで塗りつぶされています。ザンスカール帝国と、リガ・ミリティアの戦いは、犠牲が大きすぎました。
女だらけのシュラク隊のメンバーを初めとして、オリファーや、ジンジャ・ハナム、ゴメス艦長に技術者のじいさん連中という、リガ・ミリティアの犠牲者たち。
そして、ファラなど多くのザンスカール帝国の面々に、爆撃を受けて死亡したウーイッグの街の人々、地球浄化作戦でバイク戦艦に押しつぶされた市民に、ウッソの母ミューラ、シャクティの母の女王マリア、その弟クロノクル、そしてオデロ・・・。
ターンエーでも、コレンやギャバンなどの犠牲はありましたが、大勢のメンバーは生き残っています。悲惨な戦争というよりは、対話によって、月と地球の友好を築いたという点で、結末は大きく異なっています。
結果としてリガ・ミリティアは、地球連邦軍を動かし、ザンスカール帝国は打倒されました。力に力で対抗した結果、待っていたのは双方多大な被害と巻き込まれた多くの民衆の死です。フォンセ・カガチの独裁という最悪の結果を防ぐという大義はあったものの、グリプス戦役のような悲惨な戦争は苦いものしか残しませんでした。
失明し、1人寂しく去っていくカテジナ
Vガンダムの主人公、ウッソ・エヴィンの能力が足りなかったからではありません。UC0153年の宇宙戦国時代という不幸な時代が全てだったというべきでしょう。富野監督は、Vガンダムのキャラクターをかつてないくらいに、子供向けの年齢設定にしました。ウッソは13歳で、ヒロインのシャクティは11歳です。
当初は、子供向けの明るい話にする予定だったのですが、サンライズのバンダイ傘下という出来事により、バンダイの役員によって色々と方針が変わったようです。どんどん作品が陰惨な方向に向かっていきました。
富野監督が欝になってしまったことも原因かもしれません。Vガンダムが始まったときには、セイラさんのような年上ヒロインポジションだったカテジナが、悪に染まっていくのは、きつい出来事でした。
ソシエ以外のターンエーのメンバーがラストで、幸せになっているのに対して、Vガンダムには悲しみが覆っています。救いは、シャクティがエンジェル・ハイロウのリングから生還したことで、オデロの戦死は、正直ドン引きしました。
Vガンダムは、結果として失敗したガンダム作品でしたが、ブーツとハンガー(BパーツとAパーツ)を戦艦にぶつけるなど、量産機であることを生かしたギミックなど、見るべき点のある作品でした(個人的には嫌いな作品ではありません)。
しかし、作画のレベルがとても下がっていて、バンダイの役員の横槍によってバイク戦艦が登場するなど、ガンダム世界にそぐわない内容が多かったのも事実です。その後、『機動武闘伝Gガンダム』から続くアナザーガンダムにより、サンライズの作画の質は向上していくので、作った時期が悪かったとしかいいようがありません。
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