BLADE RUNNER 2049 観賞! 名作SFの続編制作は難しい?

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BLADE RUNNERといえば、泣く子も黙るSF映画の傑作です。1982年の初公開から、西洋と東洋が入り混じったような近未来世界の退廃的な雰囲気に、人造人間であるレプリカントの悲哀を描いた作品です。


サイバーパンクSFの元祖:ブレードランナー

監督はリドリー・スコット『エイリアン』や、『ブラックレイン』、『グラディエイター』、『ブラックホーク・ダウン』などで知られています。

主人公デッカード捜査官を、スターウォーズやインディー・ジョーンズなどでおなじみのハリソン・フォードが演じ、サイバーパンクな世界観を、シド・ミード(後に∀ガンダムでもメカデザインを担当)がデザイナーとして描きました。

ブレードランナーは、フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作にしていますが、オリジナルの展開や結末などに変更されています。

サイバーパンクSFなどという言葉が無かった時代に、奇抜であるけど、心に残る世界観や、レプリカントの感情や愛情、人間の持つ傲慢さと憐憫などを、レプリカントを追うハンターとしてのデッカードを主軸に描きました。

ブレードランナーが無かったら、ゴースト・イン・ザ・シェルも、マトリクスも映画化されていないでしょう。

35年越しの続編 ブレードランナー2049

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出典 http://www.bladerunner2049.jp/ アイキャッチ画像も同じく公式ページより

全世界が注目しているブレードランナーの続編を、なぜ35年越しに制作したのでしょうか?一説には、ハリソン・フォードが共演したレイチェル役のショーン・ヤングと揉めたり、リドリー・スコットと意見の食い違いがあったりと悶着があったことも一因のようです。

実際には、これだけの名作なので、続編を作ること自体が困難だったからではないでしょうか?同じ時期にスピルバーグ監督のETが公開されていて、難解な内容のブレードランナーは興行的には失敗でした。

ビデオやDVDなどのリリースがきっかけで、マニア層から徐々にファンを増やしてきただけに映画会社も制作を渋っていたのだと思います。

ブレードランナー 2049感想

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出典 http://www.bladerunner2049.jp/

11月1日は映画の日ですので、1,100円で映画が観賞できました。バイクでTOHOシネマズ橿原まで行ってきました。平日の昼間なので、客はまばらでしたが、1/3は埋まっていたと思います。

リドリースコットが製作総指揮に回っており、監督は『メッセージ』や『ボーダーライン』のドゥニ・ヴィルヌーブとなっています。主人公も新型レプリカントのK捜査官となっており演じるのは37歳の気鋭の俳優ライアン・ゴズリングです。

※ここからはネタバレ含みます

Kを通じて、デッカードとレイチェルの痕跡をたどっていきます。レイチェルは、レプリカントでありながら、妊娠、出産したようで、難産の末死亡しています。人間とレプリカントの血を受け継ぐ子どもを巡って、ロス警察とレプリカントの現在の製造会社であるウォレス社が策動していきます。

K捜査官は、孤児院の不自然な記録により、同じ遺伝子を持つ男児と女児がいたことを突き止めます。女児は死亡し、男児は生きていることから、孤児院を調査しますが、記録は何者かによって消去されていました。

Kは、重要な文字の書かれた木馬のおもちゃを自身の記憶を元に孤児院で発見します。子供の正体を自分自身であると疑い、記憶の書き換えがあったかどうか調べます。記憶デザイナーの、アナ・ステリン博士によって、Kの記憶が本物の人間の記憶であること、レプリカントの記憶が捏造されたものであることを知ります。


Kは自分自身が、デッカードとレイチェルの子供ではないかと思うようになります。Kは、捜査官としてでなく、追われる者としてデッカードの元に向かいます。デッカードは、妊娠したレイチェルをレプリカントの解放運動組織に預け、自分の痕跡を消し隠遁していました。

デッカードは、レイチェルと子供を守るために、記録の改竄を行ったとKに語り、襲撃してきたウォレス社のレプリカント・ラヴに捕まります。

Kはレプリカント解放運動に救助され、生き残ったのは女児であると知らされます。Kは自分がレプリカントであったことを悟り、苦悩します。レプリカント解放運動は、レプリカントの生殖能力に関する秘密や組織の概要を秘匿するために、デッカードの殺害をKに依頼します。

Kは結局、ラヴを倒し、デッカードを救います。子供の正体は、記憶デザイナーの、アナ・ステリン博士でした。Kの記憶を覗いたときに、涙を流していたことからなんとなく、そうなのではないかと思っていました

Kは、デッカードとアナを再会させ、深手を負った体を横たえて、しんしんと降り積もる雪を眺めます。雪が降り積もるラストシーンからエンドロールに移行し、2時間43分もの長い映画は終幕をむかえます。

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なんともやりきれない、苦いラストです。親子を再会させたKにとっての幸せとはなんだったのでしょうか?Kには、レプリカント解放運動に参加する動機はありません。

Kにとって、ホログラフの彼女であるジョイとの生活や、捜査官としての日々に不満があったわけではなさそうですし、自分が人間とレプリカントとの間の子供かも知れないという疑念を持たなければ命を危険にさらすこともなかったでしょう。

デッカードと、アナ・ステリン博士を再会させたのは、ジョイを失い、生きる望みがなくなったレプリカントとしての最後のけじめのように思えました。Kが相手からの攻撃をほとんど避けていなかったことから、そのように解釈しました。

前作のブレードランナーでは、デッカードとレイチェルの希望のある逃避行というラストだったので、今作は主人公のKが死を迎えるのと対照的だと思いました。

救いは、デッカード親子の再会ですが、レプリカント解放組織と、ウォレス社との対立に巻き込まれる可能性が高いです。前作で感動的だったシーンは、敵であるはずのレプリカントが、死期を悟ってデッカードを助けて、そのまま息を引き取るというシーンです。親子を再会させ、雪に埋もれていくKの姿が、前作とオーバーラップしていました。

Kは、前作のライバルであるロイ・バッティのようなキャラクターではないかと思いました。というのも捜査官として、冒頭で戦ったのはレプリカント解放組織のザッパーですし、最後にデッカードを殺しに行って救うのも同じような立ち位置だからではないでしょうか?

この続編が、10~20年前に制作されていたら、捜査官Kは、ライバルとして登場し、デッカードがアクションをこなすシーンが多かったのかもしれません。『インディ・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国(2008年)』くらいまでのハリソン・フォードならキレのあるアクションがギリギリできたでしょうから。

ブレードランナーの続編は、想像の範疇の中に納まった良作だと思います。前作のような、時代を代表する名作にはなっていません。サイバーパンクとしてより洗練された、攻殻機動隊やマトリックスなどの作品以後では、以前のような衝撃はありません。

ただ、前作ファンとして、きっちりとデッカードとレイチェルのその後を描いてくれたことには感謝しています。アメリカでの興行は不振だったようですが、派手さはなくてもしっかりとしたSF作品だと思いますし、前作のファンなら観にいく価値は充分にあります。

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