前回に引き続き、2025年秋アニメレビュー後編です。後編では、『不器用な先輩』〜『ワンパンマン 第3期』までの6作品をレビューします。星1〜5までの5段階評価で、筆者の主観の入ったレビューになります。
目次 この記事の内容
- 不器用な先輩
- 藤本タツキ 17-26
- 野生のラスボスが現れた!
- 私を喰べたい、ひとでなし
- ワンダンス
- ワンパンマン 第3期
- 多様性のある秋アニメ
不器用な先輩

『不器用な先輩』は、工藤マコトがヤングガンガンで連載中の同名漫画を元にしたテレビアニメです。タイトル通り、人間関係に不器用なOLと、その後輩を主軸にしたラブコメです。
美人で仕事もできるが、人付き合いの苦手なOL鉄輪(かんなわ)は、上司から新人の好青年亀川の教育係を任されることになります。人間関係に不器用ながらも、仕事を教える鉄輪に、亀川は段々とその優しさに気づいていきます。
鉄輪のギャップ萌え要素というか、可愛らしさが、この作品の肝だと思います。地方の方言を気にしていて、ついぶっきらぼうな口調になってしまうところがあり、色々と誤解されやすい鉄輪ですが、亀川のおかげで周囲と馴染むようになってきます。
アニメーション制作はスタジオエルで、監督は小竹歩(こたけあゆむ)でシリーズ構成は井上美緒です。星は3.5になります。
『蒼穹のファフナー』のOPのangelaが主題歌のボーカルをしていました。また、作画はそこそこながらも、美人だけど不器用な鉄輪の魅力がしっかり出ていたと思います。
藤本タツキ 17-26

『藤本タツキ 17-26』は、『チェンソーマン』、『ルックバック』で知られる藤本タツキの17歳から26歳にかけて描いた短編をアニメ化したものです。Amazonプライムで配信していました。
エピソードは8あり、それぞれに異なる制作会社、監督、構成で制作し、短編として完結している作品が多いです。また、1話毎の尺もバラバラで短いものだと13分、長くても23分といった感じになります。
ラパントラックや、P.A. WORKSといったお馴染みの制作会社や、100studio、スタジオカフカ、GRAPH77といった新進気鋭のスタジオも参加しています。つまり6つの制作会社が8つの短編をそれぞれ担当しています。
ラブコメ、SF、ファンタジー、日常系、それぞれのエピソードは多様性があり、それぞれテーマが異なります。個人的には、ルックバックを彷彿させる『妹の姉』というエピソードが印象に残りました。
美術学校に通う姉の裸体を描いた絵で賞を受賞した妹と、その姉の話です。姉妹のエピソードとか、コンプレックスがよく描けていて、作画も素晴らしかったです。
星は4.5名作認定で、これだけのエピソードを多数のアニメスタジオで制作し、それをまとめるという手腕に脱帽しました。
野生のラスボスが現れた!

『野生のラスボスが現れた!』は、炎頭による同名小説が原作のテレビアニメです。オンラインゲームの世界に呼び込まれたプレーヤーが、覇王ルファスとして、ファンタジー世界を冒険する、というストーリーです。
オンラインゲームの世界だとルファスは考えていましたが、ルファスとしての記憶や、各登場人物の行動などから、実在する世界のように思えてきます。ルファスは参謀のディーナと共に、かつての部下覇道十二星天を探す旅に出ます。
まずは、牡羊座のアリエス、次にゴーレムのリーブラ、そして山羊座のアイゴケロスと順調に集まっていきました。そんな中、ルファスの故郷での騒動後に、ディーナはテストプレーヤーだと正体を明かします。
そしてディーナや魔神王により、女神アロヴィナスの企てを知り、その存在を打倒することにするルファスというところで、1クール目は終了します。
アニメーション制作はグロス請け(下請けのこと)の多かったワオワールドです。監督は、ほりうちゆうやでシリーズ構成は『終末ツーリング』の筆安一幸です。
作画は安定していて、話もディーナのことなど伏線があり、星は3.5です。第二期の制作が決まったようで、今から楽しみです。
私を喰べたい、ひとでなし
『私を喰べたい、ひとでなし』は、苗川采(なえがわさい)の電撃マオウに連載中の同名漫画を元にしたテレビアニメです。妖怪に狙われやすい体質の少女、比名子と彼女を喰べる約束をした人魚の汐莉の物語です。
基本的には百合とホラーという要素が強く、妖怪についてはおどろおどろしく描かれています。比名子を守る側である、汐莉と地元の狐の妖怪で比名子の友人の美胡なども例外ではありません。
汐莉も美胡も比名子の通う学校にいるのですが、人間体は美少女なのに、妖怪本体は不気味に描かれています。人魚も、日本の妖怪ベースなので、そちらは恐ろしい存在、として線引きされているようです。
比名子は幼い頃に両親と兄を事故で失っており、そのトラウマが原因で心を閉ざし、あまり笑わなくなった少女です。汐莉も美胡も比名子を守る理由があり、なんとか生きる気力を取り戻して欲しいと願っているのです。
しかし、肝心の比名子の方は、食べらえれたがっています。そこで已むなく汐莉は彼女を食べる契約をする、ということです。その条件は比名子が心から笑うこと、という切ない望みでした。最終話まで、比名子が心がわりすることは無かったです。
アニメーション制作は、グロス請けの多かったスタジオリンクスです。監督は鈴木裕輔でシリーズ構成は『オーイ!とんぼ』の広田光毅(ひろたみつたか)です。星は3.5です。
作画もそこそこ安定していて、比名子という無気力なヒロインをうまく描けていたと思います。
ワンダンス

『ワンダンス』は珈琲の月刊アフタヌーンに連載中の同名漫画を原作にしたテレビアニメです。ダンスに青春を賭ける、カボと湾田という高校生を中心にした物語です。
吃音症のカボは、高校で湾田という少女に出会います。彼女はダンスをしていて、人前で話すことの出来ないカボは、ダンス部へ入部したことがきっかけで、どんどんダンスにハマっていきます。
湾田はダンスの練習を真剣に取り組んでおり、始めたばかりのカボはその差を埋めるべく、努力していきます。音を聴く能力と、高身長から繰り出されるダイナミックなダンスは、部長の恩、ダンスに長けた部員の伊折からも認められていきます。
アニメーション制作は、老舗のマッドハウスと、3DCGなどに長けたスタジオ、サイクロングラフィックスとの共作になります。監督と脚本は加藤道哉(かとうみちや)です。
序盤からの3DCGを使ったダンスシーンは、正直、あまり表情もなく、一般パートの作画とかけ離れていたため不評でした。しかし、後半になるにつれて、止め絵の効果的な使い方、ダンスシーン中のエフェクトなど、表現も良くなっていきました。
星は佳作の4で、後半のようなダンスシーンが序盤からあれば、名作認定だったと思います。また、ダンスに使われる楽曲も豊富で、かなり気合が入っており、音楽面でも洗練されたイメージがありました。
余談ですが、珈琲先生の描く原作をマガポケで読んでみました。ダンスシーンの絵は迫力があり、ファンになりました。
ワンパンマン 第3期
『ワンパンマン 第3期』は、原作ONE、作画村田雄介の『ワンパンマン』を原作にしたテレビアニメです。2015年にアニメ化したマッドハウス制作の伝説的な1期から数えて、これが3期目になります。
2期以降は、制作をJ.C.STAFFが担当しましたが、正直2期目は作画が凄まじかった1期と比較すると物足りなく感じました。しかし、今期は見事にそのリベンジを果たしたと思います。
今回は、ヒーロー協会と怪人協会の戦いが本格化し、アジトにS級ヒーローが乗り込みます。その一方でガロウが怪人協会からタレオを救出するために行動します。また、キングやシルバーファング、フブキ、ボンブらは別行動をしていました。
今回はS級ヒーローと怪人協会との戦いが熱いです。メカ(ロボット)で立ち向かう童帝や、剣技で魅せるフラッシュやアトミック侍、不死身のゾンビマンなど、戦闘スタイルに個性があってよかったです。
監督は永居慎平で、シリーズ構成は『ブギーポップは笑わない』、『葬送のフリーレン』などで知られる鈴木智尋です。作画、特にアクションシーンがかなり向上しており、1期に肉薄する出来で星は4.5、名作認定です。
2027年には第3期のシーズン2があるようで、今から楽しみです。
多様性のある秋アニメ

今期はSFやファンタジー、恋愛やダンスといった多様性に富んだラインナップが多かった印象です。その一つ一つが、これまでにないものだったりしたことから、正当でない評価を受けた作品もありました。
しかし、ワンダンスのようにクールの後半で持ち直したり、違った視点から評価されたりした作品もありました。
名作認定が、『終末ツーリング』や『藤本タツキ 17-26』、『ワンパンマン 第3期』と3作ありましたが、夏アニメのような覇権認定は個人的評価ではありませんでした。このため、夏は凄いアニメが多い印象がありました。
また、『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』は2クール連続のため、今回のレビューには含まれておりません。『グノーシア』については、見通しが甘く、2クールだったのですが、今期内での評価ということにさせていただきます。
今年もK.T Dogear+を読んでいただいてありがとうございました、良いお年を!








