2025年春アニメレビュー後編:戦隊大失格〜ラザロまで10作品をレビュー!

前回に引き続き、2025年春アニメレビューの後編です。2025年4〜6月に放送されたアニメを10作品、星1〜5までの5段階で評価します。後編では、戦隊大失格 2nd season』〜『ロックは淑女の嗜みでして』までの10作品をレビューします。

目次 この記事の内容

  • ざつ旅-That’s Journey-
  • 戦隊大失格 2nd season
  • 謎解きはディナーのあとで
  • 日々は過ぎれど飯うまし
  • ボールパークでつかまえて!
  • ムーンライズ
  • mono
  • ユア・フォルマ
  • LAZARUS ラザロ
  • ロックは淑女の嗜みでして
  • 春アニメの総括

ざつ旅 -That’s Journey-

『ざつ旅 -That’s Journey-』は、石坂ケンタ原作の同名漫画を元にしたテレビアニメです。漫画家志望の女子大生、鈴ヶ森ちかが日本全国を旅する話です。比較的、近場である和歌山を旅する回もあり、ツーリングしたことのある串本町とか熊野本宮大社の回ではテンション上がりました。

北は青森から南は島根まで、日本全国津々浦々廻ることが出来るとは凄いです。ちかの漫画家のアシスタント業の賜物ですね。このアニメの凄いところは、全国の名所のロケーションをちゃんとやっているところです。漫画家の師匠や、友人のハッスー、高校時代の後輩、酒豪の漫画家など、一緒に旅するキャラクターも個性的です。

アニメーション制作は闇ヒーラーのマカリアで、監督は渡邊政治(わたなべまさはる)で、シリーズ構成は『月刊少女野崎くん』の中村能子(なかむらよしこ)です。星は3.5ですが、背景が丁寧に描かれていて、理屈っぽくなく、旅をテーマにした面白い作品でした。個人的に日常系アニメが好きなら、もう少し評価は上がっていたと思います。

戦隊大失格 2nd season

『戦隊大失格 2nd season』は、週刊少年マガジンに連載中の春場ねぎ(はるばねぎ)の漫画『戦隊大失格』を原作にしたテレビアニメです。シーズン1は、2024年の4〜6月に放送され、シーズン2が2025年の春に放送されました。今回から、戦闘員Dがグリーン部隊に潜入する、という話です。

戦隊が怪人を制圧してやらせ番組をやっていた流れから徐々に変わってきています。意外とちゃんとヒーローしてるグリーンだったり、戦隊の各部隊の部隊員だったり、戦隊内部でもまともな正義の味方がいるという描写が目立ちました。

その割に、異常にキレやすく問題行動を起こすレッドだったり、武器開発が得意で仲間の安否よりも怪人を倒すことを優先するイエローだったり、極端に振れているので、大戦隊の立ち位置が曖昧に思いました。

後半からの怪人保護協会の存在と、大戦隊の実態の暴露、その後の保護協会による怪獣への変身薬の投与、その後の怪獣の侵攻を経て、最終的には戦闘員Dと大戦隊によって、動乱は止められました。このあたりの展開は混沌と混乱といった感じでした。

大戦隊のやらせを否定し覆していく物語と1シーズンまでは思っていましたが、それも少し違うようです。展開が急すぎて、理解する前に話がどんどん進んでいく印象でした。

アニメーション制作は『空色ユーティリティ』のYostar Picturesで、監督はさとうけいいちで、シリーズ構成は『ある魔女が死ぬまで』の大知慶一郎(おおちけいいちろう)です。

作画は終始安定していたのですが、話の展開を広げすぎたように思います。よって星は4佳作認定です。もう少し、話の展開がまとまっていると評点も高くなっていたのですが・・・。

謎解きはディナーのあとで 

『謎解きはディナーのあとで』は、東川篤哉(ひがしかわとくや)原作の同名小説を元にしたテレビアニメです。実写ドラマが先に映像化されていて、テレビアニメが後、というパターンです。逆は多いのですが、このケースは珍しいと思いました。

お嬢様である宝生麗子(ほうしょうれいこ)は、実は刑事であり、上司の風祭警部ととあるパーティーの障害事件の謎を解くことになります。犯人をすぐに割り出せずにいた麗子の前に影山と名乗る執事が現れ、事件を解き明かしてしまいます。

新たに宝生家の使用人となった影山は、かつて探偵を志し推理が得意でした。そして、刑事として事件を追う麗子へ推理を披露するようになります。風祭が、かなり凄い性格で、実際にこんな上司いたら間違いなく引かれると思いました(笑)。まあ、そこまで酷い人では無いのですが、果てしなくウザい感じがよく出ていました。

影山も主である麗子に結構辛辣で、推理の前に必ずこき下ろすのが、ルーティーンのようになっています。そこが主従逆転のような、ある種の爽快さがあり、この作品の肝のように感じました。

アニメーション制作は、老舗のアニメスタジオ、マッドハウスです。監督は増原光幸(ますはらみつゆき)で、シリーズ構成は國澤真理子です。作画は安定していたのですが、アニメとしては平均的な出来に見えました。よって星は3.5です。

実写ドラマが先に映像化しているので、アニメならではの表現などを期待しましたが、ミステリーとして平均的な面白さのアニメのように感じました。

日々は過ぎれど飯うまし 

『日々は過ぎれど飯うまし』は、数々の名作アニメを生んだアニメスタジオ、P.A.WORKSが制作したオリジナルアニメです。P.A.WORKSのアニメは個人的に好きなので視聴していました。

大学1年生の河合まこは、幼馴染のしのんと再会し、立ち上げたばかりの食文化研究部というサークルに加入します。当初はダミーサークルでしたが、まこの提案で食事を作ることをサークル活動の一環として行うようになります。くれあ、つつじに加えてななもサークルに参加し、大学から公式に認可されて活動するようになります。

また、くれあとしのんが車の免許を取得し、行動範囲が広がることで、食を楽しむ、という目的に旅という要素も加わっていきます。女子大生がワイワイサークル活動をする日常系なのですが、食事の描写などに凝っている印象がありました。

監督はのんのんびよりシリーズの川面真也(かわつらしんや)と春水融(はるみとおる)で、シリーズ構成は比企能博(ひきよしひろ)です。星は3.5です。日常系はそこまで好きなジャンルではありませんが、楽しく視聴できました。

ボールパークでつかまえて!

『ボールパークでつかまえて!』は、モーニングに連載中の須賀達郎原作の漫画を元にしたテレビアニメです。無料漫画サイトで読んでいたので、アニメ化は感無量です。

モーターサンズという千葉ロッテマリーンズをモデルにしたプロ野球球団の、モーターサンズスタジアムを舞台にしています。ビールの売り子のルリコと、社畜リーマンの村田を中心に、選手や裏方やファンを含めた群像劇となっています。全体的にコメディタッチなのですが、所々でホロリとするエピソードが入っていたりします。

特に好きなエピソードは、ベテラン選手のコジローとマスコットのサン四郎の話です。現役を引退したプロ野球選手が、マスコットの中の人ではないか、という憶測をベースにしていて、コジローがサン四郎が同期の元同僚であることに気づくところは泣けました。


アニメーション制作は、『終末トレインどこへいく?』、『ある魔女が死ぬまで』のEMTスクエアードです。監督は北村淳一でシリーズ構成は『ダークギャザリング』と『アポカリプスホテル』の村越繁です。評価は星3.5になります。

作画があまりいいとは言えなかったのですが、ストーリーや展開が良く、世界観が崩れなかったことが評価できました。

ムーンライズ

『ムーンライズ』は、WIT STUDIOが制作し、Netflixで配信されたアニメです。配信サイトのみなので、テレビでの放送はありません。

キャラクター原案を『鋼の錬金術師』の荒川弘(あらかわひろむ)が、ノベライズとストーリー原案を『マルドゥック・スクランブル』の冲方丁(うぶかたとう)が、監督とシリーズ構成を進撃の巨人シリーズの肥塚正史(こいづかまさし)がそれぞれ担当しています。

名前を聞くだけで、錚々たるメンバーが集結して制作された『ムーンライズ』ですが、SFアクションもの、というジャンルになります。肥塚監督が得意な進撃の巨人の立体機動装置とガッチャマンシリーズのアクションの組み合わせのような、エングレイブという技術を使った格闘戦の描写が斬新でした。

また、主人公のジャック含め、主要な登場人物の年齢層が青年(酒を飲む描写から)というのもポイントで、海外を含めた視聴者を想定しているようでした。物語の根幹に関わる、マリーという少女を除いてですが。

サピエンティアというAIに支配された世界で、地球と月の格差が広がり、月の住人の不満が溜まっていました。そして、ジャックは月が地球に対して独立戦争を仕掛けた当日に、家族を失い、更に月との共謀の嫌疑までかけられてしまいます。

そしてジャックは、恋人のリースを隊長にした特務部隊に配属され、月の反乱組織の首謀者、ボブ・スカイラムの暗殺任務に赴くことになります。しかし、ボブ・スカイラムの正体が、幼馴染のフィルだったことから、悩むようになります。更に、月の少女、マリーに対する処遇に対して、独自の行動を取るようになっていきます。

1〜6話が第一部、7〜13話を第二部、14〜18話を第三部、という感じで、6話毎に一区切りしている印象です。特に中盤〜終盤にかけて、地球側の矛盾と月の民の境遇、またLゾーンと呼ばれる生命体などの要素が複雑に絡んできています。

正直、SFアクションとして情報量が多い作品なので、一挙に配信するよりも、テレビ放送という形の方が相性がいいのでは?とも思いました。星は名作認定の4.5です。作画は素晴らしく、ストーリー展開も面白かったです。終盤は少し駆け足になっていましたが、それでもうまく纏まっていました。

mono

“mono”あfろの4コマ漫画を原作にしたテレビアニメです。原作漫画は4コマですが、本作ではストーリー性を持った25分のアニメとして表現されています。シネフォト研究部のさつき、アン、桜子の3人が、360度カメラなどのガジェットを使い、部活をやっていく話です。

そこに、駄菓子屋しろねこ屋の居候で漫画家の春乃や、motovlogをやっている華子(かこ)などが加わり、活動範囲が広がっていきます。女子高生がワイワイ楽しくカメラを使って景色を撮ったり、スイーツを食べる日常系アニメです。

春アニメは日常系が多く、日々メシ、ざつ旅、monoとありました。3作それぞれにテーマが食、旅、カメラと分かれていましたが、一番身近に感じられたのは、写真という趣味のmonoでした。

アニメーション制作は、まだ新しいスタジオのソワネです。監督は愛敬亮太(あいけいりょうた)で、シリーズ構成は『パリピ孔明』の米内山陽子(よないやまようこ)です。

星は3.5ですが、日常系が好きな人ならもっと評価していたと思います。作画もそこそこ良く、ロケーションもしっかりしていたアニメでした。

ユア・フォルマ

『ユア・フォルマ』は、菊石まれほによる同名のライトノベルを原作にしたテレビアニメです。攻殻機動隊のようなサイバーパンクっぽい世界観の作品で、ユア・フォルマと呼ばれる脳に埋め込まれる形の情報端末により、脳における情報が閲覧できるようになり、主人公のヒエダのような電索官が活躍するようになります。

相棒のアミクス(ロボット)、ハロルドは人間のような容姿と思考をしています。かなり特殊なアミクスで優秀なのですが、規則によるリミッターがかかっているとはいえ、どこか抜けているように見えるのは筆者だけでしょうか?

よく捕まったり、ピンチになることが多いです。フィジカル面では、攻殻機動隊の少佐とバトーのような強さはありません(笑)。

ただ、思慮深い捜査官、という意味では2人共推理は得意で、事件の真相を解き明かしていくのですが、電索によって解決に至ることも多いです。原作の2巻から始まるので、最初はどういうことか分からないのですが、数話見れば世界観とか登場人物の相関関係について理解できるようになります。

アニメーション制作は、『虐殺器官』のジェノスタジオで、監督はゴブリンスレイヤーシリーズの尾崎隆晴(おざきたかはる)で、シリーズ構成は筆安一幸(ふでやすかずゆき)です。星は4、佳作認定です。作画も悪くなく、話は好みのサイバーパンクだったので楽しめられました。

LAZARUS ラザロ

LAZARUS ラザロ』は、『カウボーイビバップ』の渡辺信一郎監督が再びオリジナルアニメを制作する、ということで期待の高かったテレビアニメです。春アニメで一番楽しみにしていました。

内容は近未来で、ハプナと呼ばれる薬が普及し、ハプナを飲んで3年経過すると、突然変異して死に至らしめると、開発者のスキナー博士がビデオメッセージを世界中に発信しました。

スキナーを捜索するため、アメリカは刑期888年の脱獄王アクセルや元物理学者のダグ、元工作員のクリス、ドローン操縦の名手リーランド、天才ハッカーエレイナなど、癖はあるが優秀なメンバーを揃えたチームラザロを結成し、スキナーの捜索に向かわせます。

しかし、スキナーの行動は追跡者を痕跡を辿らせていくようにさせつつ、すぐには場所を特定出来ないような巧妙なものでした。ハプナによるカタストロフが近づく中、ラザロのメンバーは徐々にスキナーの思考や、過去にあった出来事を突き止めていきます。

しかし、陸軍の情報部が、スキナーに関する情報が漏洩することを危惧し、アクセルの抹殺を双竜という暗殺者に依頼します。情報部とラザロが対立する中、スキナーの追跡は佳境を迎えます。最終的には双竜を倒し、スキナーを発見するのですが、ラザロはチームとして存続します。

アニメーション制作は『坂道のアポロン』、『全修。』のMAPPAで、原作と監督を渡辺信一郎が担当しています。星は佳作認定の4です。

作画は素晴らしく、ジークアクスや薬屋のひとりごとを除けば、最高点を付けられます。しかし、フォーマットが少し古く感じられました。アクションものとして、見たことのある要素が多い、というべきでしょうか?

良かった点はアクセルのパルクールの動きなどですが、ストーリーとしてラザロが毎回、スキナーの居場所を特定出来ない、というところが気になっていました。これなら3話くらいでスキナーの居場所を特定し、その後ラザロがチームとして様々な任務をこなす、という風にストーリーを展開させた方が良かったように思えます。

またラスボスである双竜が、スキナーとあまり関係のない人物であることも、ラストバトルの高揚感の無さに繋がっています。これなら、アクセルと過去の因縁があったことをもっと膨らませた方が盛り上がったように思えるのですが・・・。それでも作画や音楽、雰囲気などは素晴らしかったです。

ロックは淑女の嗜みでして

『ロックは淑女の嗜みでして』は、福田宏がヤングアニマルに連載中の同名漫画を元にしたテレビアニメです。元庶民で母親が再婚したことをきっかけに、お嬢様学校に編入された鈴ノ宮りりさは、母親のために学園のノーブル・メイデンの称号を得ることを目的にギタリストになる夢を諦めていました。

しかし、同じ学園の一年生黒鉄乙葉が旧校舎でドラムを叩いているところを目撃します。そして、突発的なセッションを経て、りりさは再びギターを手に取り、バンドを組んで、ロックフェスでの演奏を目指すようになります。

そこにベースのシロや、キーボードのティーナが加わるのですが、全員がお嬢様学校の生徒、ということでバンド名はロックレディとなります。演奏スタイルは、インストバンドで、言うまでもなく、ギターが重要になってきます。ぶっちゃけ、学園でのお嬢様ぶりとロックをやっている時の顔芸とも言うべき表情とのギャップが凄いです(笑)。

ぶっちゃけ、音楽的に指向しているのはテクニカルな要素の強いロックサウンドだと思います。イメージ的には80年代に流行した速弾き系の。それを女性グループがやる、というところがギャップになっていてカッコ良く見えます。ただ、これをアニメでやると流行のモーションキャプチャーをやることになります。

モーションキャプチャーを担当しているのは、ガールズロックバンドのBAND-MAIDです。この流れは『ぼっち・ざ・ろっく!』の時でも解説しましたが、音楽とアニメの関わりが段々深くなってきた、ということでもあります。

しかし、ギャグとロックという要素のぼざろと異なり、お嬢様とロックというギャップを狙った本作は、かなりピンポントな層に向けて作っているような印象を受けました。

アニメーション制作は、『杖と剣のウィストリア』のBN Picturesで、監督は綿田慎也(わただしんや)で、ガンダムビルドファイターズシリーズでお馴染みの方です。シリーズ構成は、『治癒魔法の間違った使い方』のヤスカワショウゴです。

星は佳作の4で、作画は良かったのですが、イマイチぼざろのような爆発的なヒットに繋がりそうなアニメとしての要素が足りないように思えました。

春アニメの総括

春アニメは、ジークアクス始め、SF要素の強いオリジナルアニメが多く、個人的に楽しめられたクールでした。ムーンライズ、アポカリプスホテルなどは同じSFでも両極端な作品です。アクションやコメディ要素などが入った両作はそれぞれに甲乙つけ難かったです。

薬屋のひとりごとは、かなり作画が良かったですし、話も面白かったです。少し残念だったのはラザロですが、期待値が高すぎたせいかもしれません。

漫画原作では、九龍ジェネリックロマンスは飛び抜けて良かったです。日常系は得意なジャンルではないのですが、ざつ旅、日々飯、monoの3作品とも悪く無かったです。

ウィッチウォッチと、宇宙人ムームー、鬼人幻燈抄は連続2クールのため、夏アニメに持ち越しとなりました。総括すると色々なアニメが毎週視聴出来て楽しいクールでした。

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