2022年冬アニメレビュー後編:着せ替え人形〜リアデイルまで

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今回は前編に引き続き、2022年冬アニメレビューの後編をレビューします。2022年1〜3月の1クールに放送されたアニメを中心に、『その着せ替え人形は恋をする』、『東京24区』、『ハコヅメ 交番女子の逆襲』、『異世界美少女受肉おじさんと』、『平家物語』、『リアデイルの大地にて』の6作品を評価します。

目次 この記事の内容

  • その着せ替え人形は恋をする
  • 東京24区
  • ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜
  • 異世界美少女受肉おじさんと
  • 平家物語
  • リアデイルの大地にて

その着せ替え人形は恋をする

『その着せ替え人形は恋をする』は、福田晋一のヤングガンガンに連載中の漫画が原作です。ぶっちゃけ、「明日ちゃんのセーラー服」に並ぶ今期最高峰の作画のアニメの一つで、それだけでも佳作に該当するので星4とさせてもらいました。

ストーリーは、見た目ギャルのオタク美少女と、人形職人見習いの少年が、コスプレを通じて親密になっていくというものです。ヒロインのギャルの海夢(まりん)ちゃんが、とても魅力的に描かれています。主人公の五条は、朴訥な職人といった雰囲気があり、衣装作りにおいて絶大なスキルを持っています。

https://youtu.be/14mbK1SwdW8

筆者が投稿したこの記事の動画バージョンです。

ギャルと職人という組み合わせが斬新で、そこにコスプレ衣装の話が絡んできます。テンポやノリが良く、新感覚の恋愛ものといった感じで、筆者がコスプレ好きなら、星4.5になっていたでしょう。

アニメーション制作は、明日ちゃんのセーラー服と同じCloverWorksで、監督は篠原啓輔(しのはらけいすけ)で、シリーズ構成は冨田頼子です。CloverWorksは、同じ時期に「東京24区」含めると3本ものアニメを手がけていたことになります。脅威的な仕事だったと思いました。

東京24区

『東京24区』は、今期において珍しいオリジナルアニメです。架空の東京湾に浮かぶ人工島が24区であり、そこを舞台に3人の若者が様々な事件に遭遇し、時に協力し、時に対立しながら解決していく物語です。

CloverWorksは、今期漫画原作の2作品と、オリジナルの東京24区の3作品を放送していましたが、一番期待していたアニメです。しかし、いざ始まってみると1話目はともかく、中盤の中だるみで視聴継続するのが辛くなりました。

トロッコ問題が一貫としてテーマにあって、選択するという行為が重要になるのですが、主人公サイドの3人の立場が違いすぎてて、最終話になるまでまとまらないです。少なくとも、6話目までは主人公の3人が協力して事件を解決するスタイルでやっておけば、もう少しメリハリついたと思いました。

1話以降がグダグダだったので、評価は下がって星3.5です。ただ、最終話のヒロインのところは泣けた・・・。ニトロプラスの下倉バイオの初のアニメ脚本ということで、期待しすぎたかもしれません。監督は、津田尚克(つだなおかつ)で、後半の作画が少し残念な点も気になりました。

漫画原作の明日ちゃんと着せ替え人形の作画は素晴らしかったのに、オリジナルの方が少し落ちたのは、どうしてでしょうか?昔、サンライズがザンボット3やってる時に、ボルテスVの方に作画監督いたのを安彦良和が嘆いていたことを思い出しました。

ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜

警察もののコメディ作品は多いですが、『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』は元女性警察官の秦三子(やすみこ)が描いた漫画原作のためか、やたらリアルな交番の描写があります。

『ファントム無頼』で、原作者の史村翔(武論尊)が、元自衛隊員だったことを生かして作品にリアリティを出していましたが、その職業に就いていないと分からないことがあります。

ぶっちゃけ、コメディものなのですが、たまにシリアスなことがあったり緩急がしっかりあってとても楽しめました。あまりに過酷な職場環境に、女性警察官全てに頭が下がる思いをしました。


アニメーション制作は、老舗のマッドハウスで監督はYAWARA!などで作画監督をしていたベテランの佐藤雄三です。星は4で、安定した作画、原作のテンポの良さを再現したカット割りなど、見事な出来で毎回楽しめました。

異世界美少女受肉おじさんと

今期一番笑わせてもらった作品が、『異世界美少女受肉おじさんと』ことファ美肉おじさんです。このアニメ、とにかく異次元の面白さで、1話目から爆笑させてもらいました。元々は、津留崎優(つるさきゆう)原作、池澤真(いけざわしん)作画の同名のWeb漫画で、サイコミに連載しています。

主人公橘とその親友である神宮寺は、共に32歳の会社員(サラリーマン)です。橘が酒に酔った勢いで喋ったことを真に受けた異世界の女神によって、召喚された時に金髪碧眼の絶世の美少女にされてしまいます。

魔王を倒す勇者として加護を受けた2人ですが、女神に対するぞんざいな態度のため、互いに相手を異性として意識してしまう呪いにかけられます。友情を守るために、一致団結して魔王を倒すことになった2人ですが前途は多難で・・・、といったストーリーです。

今期に多かったTS(トランスセクシャル)な主人公橘ですが、容姿に加えて女神の加護(呪い)のせいで、異性を無差別に魅了してしまいます。神宮寺は、元々の戦闘力が高い上に、勇者である橘の武器扱いということで、最初からレベル70でやたら強いです。

相手のことを意識しているのに、友情を守るためにドタバタする異世界ラブコメなのですが、ギャグのテンポが良く笑いのツボが良く解っています。

今期ぶっちぎりの面白さで、評価は名作認定の星4.5です。アニメーション制作は、OLM Team Yoshiokaで、監督は山井沙也香です。マクロス7でお馴染みの福山芳樹による主題歌「暁のサラリーマン」も必聴のアニメです。

平家物語

今期最高峰の作画とストーリーで、ぶっちぎりに好きな作品がこの『平家物語』です。日本の古典の一つであり、12〜14世紀に編纂されたとされています。源平合戦により、滅亡していく平家を哀調を持って描かれた作品で、古今問わず多くの人に親しまれています。

秀逸な羊文学によるOP曲、「光るとき」の歌詞で書かれているように、最終回は決まっています。平家は滅亡し、主要な登場人物の大半は亡くなります。原作通りに、物悲しい雰囲気なのかと思っていました。

本作の主人公のびわ(後の琵琶法師)が、語り部として後世に伝えることが、平質盛(たいらのすけもり)が言っていたように、人々の記憶として残っていくことに繋がっていきます。

びわは、父親を平家の一門に殺され、平清盛の息子である重盛に育てられます。重盛の息子達と兄弟のように接したびわだからこそ、客観的にも主観的にも平家の生き様を語ることができたのだと思いました。

ただ、源平合戦をある程度知っている人向けで、当時の時代背景などを把握していないと理解しにくい構成になっています。1クール11話でやるには、尺が足りないためです。平家物語における印象的なシーンを、びわが弾き語りをし、ダイジェストで語るスタイルで進行していきます。

とはいえ、全編を通じて今期最高峰の作画とストーリー、最終回の余韻も含めて、星5の覇権認定とさせてもらいます。

アニメーション制作は”DEVILMAN crybaby”のサイエンスSARU、監督は『聲の形』の山田尚子(やまだなおこ)、シリーズ構成は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の吉田玲子です。

古典を再構成し、現代的テイストを盛り込んだ平家物語は、今後のアニメ業界に多大な影響を与える作品だと思いました。

リアデイルの大地にて

『リアデイルの大地にて』は、元はCeez原作の小説家なろうにて連載されていた、いわゆるなろう系のファンタジー作品です。廃人クラスのゲーマーの少女が、停電による死をきっかけに、自分がプレイしていたRPGの世界に転移するというストーリーです。

ハイエルフのケーナは、作中最強の力の持ち主ということで、かなりなチート能力者です。里子制度によって、子供が3人いるのですが、ハイエルフということもあり少女の外観のまま、というところもポイントです。

アニメが始まる前から、コミカライズ版、なろう版と読んでいました。嫌いな話ではないのですが、制作のMAHO FILMによる作画は普通のレベルで良くも悪くもないレベルでした。

話の展開も原作通りな上、ほんわかしたファンタジーとなっているので、そういった雰囲気が好きな人にオススメの作品です。監督は、柳瀬雄之(やなせまさゆき)評価は平均の星3です。

オリジナルが少なく感じた2022年冬アニメ

今期紹介した12作品中、東京24区を除く11作品に原作があり、オリジナルは1作品のみしか視聴していない結果となりました。また、原作ものの佳作5作、名作2作、覇権1作という高い評価の作品が12作中8作もあり、ハイアベレージな評価となりました。

ぶっちゃけ、鬼滅、ファビ肉、平家物語以外の作品もレベルが高く、今期は視聴が困難になるほど、たくさん視聴したように思います。個人的には、ロボットとかSFにもっと頑張って欲しいし、オリジナルアニメももっと見たかったのですが、総じて満足度の高い2022年冬アニメでした。

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