『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝-永遠と自動手記人形-』を鑑賞してきました。2018年に放送された京都アニメーション制作のテレビアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の外伝として公開された劇場版第1作です。
目次 この記事の内容
- クオリティの高かった2018年のテレビシリーズ
- 特典と2つの劇場作品について
- 外伝のネタバレなしレビュー
クオリティの高かった2018年のテレビシリーズ
出典 http://violet-evergarden.jp/ テレビアニメ本編より
2018年の1月から4月の1クール13話で、放送された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、テレビアニメと思えないクオリティの作品でした。叙情的な話に、美しい作画、主人公ヴァイオレット・エヴァーガーデンが人として成長していく姿は心を打ちました。
以前紹介した2018年の冬アニメのランキングでもぶっちぎりの1位とさせてもらいましたが、2018年全体の中でも1位に該当する作品です。
原作となった『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、KAエスマ文庫(京都アニメーションの文庫レーベル)で2015年に発行された暁佳奈の小説です。つまりは、京都アニメーション大賞出身の作家の小説を原作にしたテレビアニメということになります。
分類としては、オリジナル作品とは違って原作小説のアニメ化ということになります。少年マガジンで連載されていた漫画原作の劇場版『聲の形』、テレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』や『氷菓』などのラノベ原作作品など、京アニといえば原作ものというイメージがあります。
公式の解説動画 本編を視聴していない人にオススメの動画です
本作、ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、架空の世界を舞台にしています。本編で何度も描写されている戦争や時代背景からテックレベルは20世紀初頭くらいだと思います。しかし、主人公ヴァイオレット・エヴァーガーデンが戦争で失った両腕の代わりに装着している義手の精巧さは、現代の技術を超えているように思えます。
物語は終戦から始まっており、戦争は人々の心や体に大きな傷を残しました。ヴァイオレットも戦闘能力の高さから、戦場で多くの兵士を葬っていた機械のように感情のない少女でした。
しかし、育ての親であるギルベルト少佐を戦場で失い、ギルベルトの友人であるホッジンズの経営するC・H郵便社でドール(自動手記人形)として働くうちに、人として成長していきます。
ドールの仕事は、タイプライターを使って代筆することです。文章を書くことに長けた自動手記人形に対して、様々な依頼が来ます。ヴァイオレットは、出会った人々の想いを代筆することで感情を知り、やがてギルベルトに対する気持ちを自覚していくようになるのです。
特典と2つの劇場作品について
出典 http://www.violet-evergarden.jp/sidestory/
ヴァイオッレット・エヴァーガーデンの劇場版は2作公開される予定です。1作目は外伝として公開されました。2作目のテレビシリーズの続きの『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、京アニ第1スタジオの痛ましい放火事件のため、2020年1月に公開予定だったはずが、延期となってしまいました。
先行して公開される予定の『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝-永遠と自動手記人形-』は、9月6日から予定通り公開されることとなり、本作の大ファンである筆者も、さっそくあべのアポロシネマの平日1100円の公開初日の14:50の放映を観に行ったというわけです。
放映10分前に、チケットを劇場の受付に渡すと、銀色の包装紙にくるまった特典をもらいました。原作者の暁佳奈による短編小説の冊子が入っていて、第1週〜2週はランダムに3冊、3週目は外伝のイザベラ・ヨークの話の短編小説で、全巻収納ケースも付いているようです。
筆者がもらったのは、『リオン・ステファノティスと一番星』で、テレビシリーズに出てきた天文台の写本をしていた青年リオンの話でした。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンのファンは女性が多いようで、平日の昼にも関わらず、客席の大半が埋まっていました。この女性ファンの多さは、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』の劇場版とよく似ていて、アニメ映画の客層の多様性を実感しました。
放火事件の犠牲者もクレジットされていたようでした。映画の出来が良かったためもあり、誰もエンドロールで席を立ちませんでした。事件はとても残念で、アニメスタジオに放火するという犯人の心理が理解出来ません。犠牲になったスタッフに、心から哀悼の意を表します。
監督は藤田春香で、テレビシリーズの監督の石立太一が監修しています。シリーズ構成は、テレビシリーズと同じく『聲の形』の吉田玲子です。
外伝のネタバレ無しレビュー
外伝の公式トレーラー
外伝の冒頭で登場する子供は、2部構成の後半のメインキャラクターで、生き別れた姉妹の妹であるテイラー・バートレットです。話はそこから時が少し巻き戻って、戦争後数年経過し、ヴァイオレットがドールとして仕事に慣れた時期の話となっています。
時系列的には、生徒のセリフからシャルロッテ王女が結婚した話の後だと推測できます。ヴァイオレットは、ヨーク家の依頼により、娘であるイザベラのダンスパーティーまでの養育係として3ヵ月限定で寄宿制の女学校に派遣されてきたのです。
イザベラは病気がちで、容易に人を信じられなくなっていました。最初は、ヴァイオレットのことを疎んじていましたが、感情を表に出すことが苦手なヴァイオレットが、とても優しい少女であることを理解するようになって打ち解けていきます・・・。
前半部分が、イザベラとヴァイオレットの女学校の話、後半は数年後にテイラーがC・H郵便社に来訪する話になります。2部構成となっていて、姉妹それぞれの視点から話が展開していきます。
本編では、依頼人からの話は各話1本ずつ(30分)で完結していました。ヴァイオレット本人に関わる話や、テロ事件以外では、このスタイルでテレビアニメは進行していました。
それに対して、外伝では90分の中に、話を2本に分けています。これは本編ではできなかった試みです。外伝は姉妹の絆の話であり、美しい背景や、登場人物の感情を豊かに表現する作画によって感情を揺さぶられる話となっています。
そのどちらにも、ヴァイオレットと、C・H郵便社の配達人、ベネディクトが関わってきます。特にベネディクトは、意外なことに今回大活躍します!後半は、ベネディクトの頑張りがあってこその話となっています(師匠さすがです!)。
元々テレビシリーズから、劇場版のような美しい作画でしたが、外伝ではより精密に描き込まれています。ヴァイオレットの髪をイザベラが結うシーンが、特に素晴らしかったです。
テレビ本編を見ていなくても独立した作品として観賞できるようにはなっていますが、できれば本編を見た後の方が作品世界をより深く楽しめられると思います。外伝では、アクションシーンは皆無で、叙情的な話となっています。女性だけでなく、男性にも観てもらいたい作品です。
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