前回に引き続き、2018年の夏アニメの個人的ランキングを発表します。5~8位はロボットものが多かった上位とは異なり、ギャグアニメが2作品、歴史ものが1作品、SFが1作となりました。
第5位 アンゴルモア元寇合戦記
出典 https://angolmois-anime.jp/
『アンゴルモア 元寇合戦記』は、たかぎ七彦原作の漫画を基に制作されたテレビアニメです。2018年夏から秋にかけて1クール12話で放送されました。1274年の鎌倉時代中期に始まった元寇(モンゴル帝国のよる日本侵攻)が主な題材となっている歴史ものです。
元寇の主人公にされることの多い幕府の執権北条時宗は、ちょい役でしか出てきません。本編の主人公は、朽井迅三郎という架空の鎌倉武士です。対馬に伝わる文書に登場する口井兄弟がモデルとなっているようです。
第一次日本侵攻が、文永の役であり対馬はその前哨戦です。ぶっちゃけ、兵力の差が大きすぎます。元が対馬に上陸させた兵力は約1,000、対する対馬の守護代の宋助国はたった80人だったと記録されています。このあたりは、序盤で描写されているとおりで、宋助国は討ち取られ、対馬は蹂躙されることとなります。
たかぎ七彦が、どうして前哨戦である対馬戦から元寇を書いたのか、少し疑問です。というのもこの文永の役は、元が博多に上陸してからの赤坂の戦いと、鳥飼潟の戦いが主な戦闘になるからです。元寇全体を描くなら、対馬から始めるとかなり長い物語になりますし、史実を基にするならば、登場人物の大半は死ぬか奴隷にされるからです。
アンゴルモアでも、対馬側はよく戦いますが、劣勢を覆すことは不可能でした。頼みの援軍も送られることなく、兵は次々と死に、島民は奴隷として連れ去られます。主人公の朽井迅三郎とヒロインの輝日姫しか主要なメンバーで生き残らなかったので、なんともやりきれない結果で終わってしまいました。
元寇は、第2次日本侵攻の弘安の役で武士の大規模な抵抗と、7月に起きる台風と疫病により、元が撤退することで終結します。アンゴルモアでは、対馬の戦いまでが描かれていますが、あくまでも元寇の一部です。原作は、これから九州編となるようなのですが、再びアニメ化されて続きをやってくれるのでしょうか?
本作アンゴルモアでは、絵巻風に和紙のようなエフェクトがかけられています。こういう工夫は、歴史ものだからこそでしょう。元寇という、今まであまり取り上げられなかった題材を元にエンターテイメント性の高い作品にしていることは評価できます。
N○Kの大河ドラマも戦国時代や幕末ばかりやらないで、他の時代も題材にして欲しいです。制作はNAZで、監督は『アルドノア・ゼロ』や”Re CREATORS”で演出をしていた栗山貴行です。
第6位 あそびあそばせ
出典 http://asobiasobase.com/
『あそびあそばせ』は、涼川りん原作の同名漫画のテレビアニメです。表紙サギと形容されるCM(笑)のとおり、可愛らしい絵柄と、ギャグの品の無さのギャップが強烈です。夏から放送し、1クール12話で完結しています。
あそび人研究会こと通称あそ研の3人の主人公、本田華子、オリヴィア、野村香純は、それぞれ可憐な女子中学生です。しかし、あそ研の3人のメンバーは、色々なところがぬけていて、大抵失敗してしまいます。
ときにはお洒落な喫茶店を火事にしてしまったり、将棋部の部長が全身骨折するという出来事を誘発してしまったり、国語教師にあやしいクッキーを食べさせて依存症にしたりします。
偶然によって悲惨な結果になってしまったり(悪意がないのが逆に怖い)、周囲が引くような行動をとるため、見た目は3人とも美少女なのですが、まったく萌える要素がありません(笑)。
エンディングの後にあるチープな人形劇での、だるまさんが転んだの回が、メタルギアのネタが含まれていて、爆笑してしまいました。最終回も、これからもあそ研の3人の学園生活が続いていくような終わり方をしていたので、またアニメ化されるかもしれません。
作画の質が総じて高く、原作同様に無駄にうまい絵を描いている印象でした(褒め言葉)。アニメーション制作は、『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』のLercheで、監督は“Persona4 the Golden ANIMATION”の岸誠二です。
第7位 シュタインズ・ゲートゼロ
出典 http://steinsgate0.jp/ ※公式ページのゲームの画像より
『シュタインズ・ゲートゼロ』は、2011年のテレビアニメ“STEINS;GATE”の続編であり、テレビゲームの“STEINS;GATE0″のアニメ化した作品です。前作シュタインズ・ゲートは視聴していますが、ゲームはやっていません。春から放送し、2クールで完結しました。
シュタゲは、タイムマシンやタイムリープが中心のSF設定と、オタク文化をフックにしたラブコメ要素のハイブリッドともいうべきアニメでした。ぶっ飛んだ主人公である岡部倫太郎と、クセのあるものの愛すべきラボメン達による日常生活とハードSFのギャップが、たまらなく楽しい作品でした。
シュタインズ・ゲートのアニメの続編ということで、かなり期待していました。なんのかんのとシュタゲは、かなり好きな作品だったからです。なぜ、この順位かというと、シュタゲの良さである明るい雰囲気が最後まで戻ってこなかったからです。
主人公の岡部倫太郎が、あの厨二病の権化たる鳳凰院凶真を封印した状態から始まっています。なぜなら助手であった牧瀬紅莉栖を救えなかったβ世界線が、シュタゲ0の舞台だからです。
狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真が復活するのは、終盤の重い話の中です。前作は、序盤から中盤で鳳凰院凶真が暴れまわり、後半ではシリアスな展開になっていきました。シュタゲ0では日常パートが暗く、後半での欝展開時に鳳凰院凶真が復活して、物事を解決していくのです。
この順番だと、物語全般が暗めで陰鬱な雰囲気になります。シュタゲの良さは、日常パートのゆるさと、ハードSFの重さのギャップですので、どちらかが中途半端だと話にメリハリがありません。また、前作の結末とは違った世界線の話になっているので、ギャップのある内容についていけなかった感じが最後までありました。
とはいえ、前作同様SFとしての設定は、かなり凝っていて、前作では少なかったアクションシーンも多く、ダルやまゆしぃやルカ子といったラボメンの活躍も堪能できたので、まったく楽しめなかったわけではありません。
アニメーション制作は、『刀語』、『ヨルムンガンド』のWHITE FOX、監督は川村賢一です。
第8位 ぐらんぶる
出典 http://grandblue-anime.com/
『ぐらんぶる』も井上堅二、吉岡公威による漫画原作のアニメ化作品です。アニメーション制作は、『バッテリー』のゼロジー、監督は『銀魂』シリーズ、『坂本ですが?』の高松信司です。
高松信司は、ギャグアニメに定評のある監督なので、ぐらんぶるのテンポも良く、大学のダイビングサークルの日常をうまくコメディ化していたと思います。前半はとても面白かったのですが、後半になるとギャグのパターンが解ってきて笑うポイントが少なくなってきました。
主人公の北原伊織と相棒の今村耕平との掛け合いや、伊織のいとこのヒロイン古手川千紗のツンデレぶりなど、見所はありました。原作準拠の顔芸の凄さと、サークルの飲み会の凄まじさから、なぜか全員20歳以上ということにされました(笑)。
ダイビングに関するパートでは、まじめに解説してくれたりしているので、この作品がきっかけでダイビングを始める人が増えるかもしれません。
アニメのターニングポイント
出典 http://www.project-pandora.jp/
2018年の夏アニメと春アニメからの1クール作品は、かなり本数が多く視聴を断念した作品も多かったです。『バキ』は、漫画が長すぎたため、途中で読むのをやめたのでアニメは見ていません。地下格闘場での兄弟対決までは、結構ハマって読んでいました。
『はたらく細胞』は、途中まで視聴していたのですが、いつの間にか見なく(録らなく)なっていました。『ハイスコアガール』は、録画を忘れていたために、1話から見ていません。このアニメ、実は評判も良かったので、本当は見たかった作品です。
今季でも、覇権アニメは登場しませんでした。飛びぬけた印象の作品は少なく、どちらこというと筆者の好みのランキングとなりました。ロボットもの好きなので、ギャグ2作品の順位が下がってしまいましたが、多様性のある夏アニメだったと思います。
『プラネット・ウィズ』の漫画家のネームを基に作品を作るという試みが、一番斬新に感じました。これから、こういった手法のアニメも増えてくるのではないかと思います。
『重神機パンドーラ』のように、中国との同時放送をするアニメも増えてくるのかもしれません。このように今季アニメは、ターニングポイントとなるような作品が出てきたのが興味深かったです。
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