今回は前回に引き続き、2024年春アニメレビューの後編です。『戦隊大失格』、『T・Pぼん』、『ダンジョン飯』、『転生したら第7王子だったので、気ままに魔術を極めます』、『となりの妖怪さん』、『変人のサラダボウル』、『忘却バッテリー』、『無職転生II』、『夜のクラゲは泳げない』の9作品をレビューします。
目次 この記事の内容
- 戦隊大失格
- T・Pぼん
- ダンジョン飯
- 転生したら第7王子だったので、気ままに魔術を極めます
- となりの妖怪さん
- 変人のサラダボウル
- 忘却バッテリー
- 無職転生II〜異世界行ったら本気出す〜第2クール
- 夜のクラゲは泳げない
- レベルが高く多様性のあった春アニメ
戦隊大失格
『戦隊大失格』は週刊少年マガジンに連載中の春場ねぎ原作の同名漫画を元にしたテレビアニメです。日曜の夕方放送のため幅広い年齢層にも見られた作品ではないかと思います。深夜枠以外での放送は増やした方が、もっとアニメが盛り上がると筆者は常々考えています。
戦隊ヒーローが、実は悪の怪人軍団を既に屈服させ、その後は十数年間やらせのショーをやっていました。かなりぶっ飛んだ設定で、初見でこれは凄い!と感じ、更に夕方放送も相まってリアタイ視聴を可能な限り続けていました(ここ重要)。
筆者が投稿したこの記事の動画バージョンです。
正直、戦闘員Dという存在について、色々思うところはあります。というのも、戦闘員であるのに、大戦隊の下部組織の中に潜入後、隊員と馴れ合わないと言いつつ、悪の幹部と戦ったり行動が矛盾しているからです。Dの行動は、つまり個人としての感情の帰結であると思いました。
しかし、そういったブレは戦隊側にも存在しています。肝心の大戦隊の方は悪を討伐するという目的がありながらも、戦闘員達とやらせのヒーローショーをしていることなどです。つまり、こういった矛盾や疑問が今後どういう形で整合性が出てくるか、興味深いところです。
アニメーション制作は、アークナイツシリーズのYostar Picturesで、監督は『いぬやしき』や戦隊もののデザインで知られるさとうけいいち、シリーズ構成は『五等分の花嫁』の大知慶一郎です。
3DCGを多用した作画も素晴らしく、ストーリーも引き込まれるものがありました。なぜ、戦隊大失格なのか、それは今後の展開に期待するということで、星は4.5名作認定です。第二期も期待するマガジン原作アニメです。
T・Pぼん
『T・Pぼん』は、藤子不二雄(F先生単体)原作の同名漫画を元にしたアニメでNetflixにて配信されていました。今回は、春に配信された1クール12話のレビューをします。
故、藤子・F・不二雄先生の生誕90周年企画としてアニメ化された本作、『T・Pぼん』はよく大人向けドラえもんだとか言われていました。タイムパトロールという仕事に就くことになる中学生の並平凡が、先輩の隊員リームと共に、歴史の中で非業の死を遂げる人々を救う話です。
ドラえもんでは、のび太の机の中にあったタイムマシンが、T・Pぼんでは天井が開閉してタイムボートが出現するというギミックに変わっています。また、実際にあった歴史的事件を背景にしており、魔女狩りであったり太平洋戦争の沖縄戦であったり、O・K牧場の決闘だったりします。
凄惨な事件が少なくないのですが、最後はぼんとリームのチームワークや、色々な人々の協力で事件を解決し、現代に帰っていく、というラストになります。起承転結が本当にうまいアニメで、毎回新鮮な気分で話を見ることができます。
アニメーション制作は『文豪ストレイドッグス』の老舗のボンズで、監督は『荒ぶる季節の乙女どもよ。』の安藤真裕(あんどうまさひろ)、シリーズ構成は『色づく世界の明日から』の柿原優子です。
かなり漫画原作のテイストを残した作画、テンポのいいストーリー展開で藤子先生の世界を久々に見せてもらいました。よって評価は名作認定の星4.5です。現在やっている第2クールも素晴らしい出来です。
ダンジョン飯
『ダンジョン飯』はハルタに連載中の九井諒子(くいりょうこ)原作の漫画を元にしたテレビアニメです。トールマン(おそらく人間のこと)のライオスをリーダーにしたパーティーが、ダンジョンを攻略するのに、食糧を持ち込む余裕が無かったためモンスターを食べる、という話です。
エルフのマルシル、ハーフフットのチルチャックの3人パーティーからドワーフのセンシが調理担当として加わります。また、作中のモンスターやダンジョンに生えている植物を使った食事はリアリティーのある美味しそうな料理になっています。
ぶっちゃけ、毎回料理ネタって続くのか?と思っていましたが、見事な演出と作画で魅せてくれました。センシの作る料理はどれも美味しそうなので、一度食べてみたくなりましたが、実際に作るとなると近い動植物を用意する必要がありそうです(笑)。
アニメーション制作は、”SSSS.GRIDMAN”、『キズナイーバー』のTRIGGER、監督は宮島善博(みやじまよしひろ)、シリーズ構成は『アストロノオト』のうえのきみこです。
もちろん、ファンタジー世界としてのモンスターとの戦いや、ダンジョンの攻略、という要素もあり、ストーリー含めて楽しめた2クールでした。よって星は名作認定の4.5です。第2期の制作も決定しており、今から楽しみです。
転生したら第7王子だったので、気ままに魔術を極めます
『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』は、謙虚なサークルによるなろう小説が原作のテレビアニメです。とある魔術師が転生すると第七王子となり、魔術の研鑽を生きがいにしていく、という話です。
ある意味、転生ものファンタジーのお約束のような展開なのですが、ロイドという第七王子は魔術バカというか、魔術フリークで狂的なまでの探究心を持っています。容姿はショタもの主人公っぽいのですが、中身とのギャップがかなりあります。
また、兄である第二王子や、封印された図書室にいた魔人グリモ、メイドで剣の達人のシルファなど魅力的な登場人物が多いのも特徴です。やたらと女性キャラが裸になったりしますが、ここは視聴者サービスなんでしょう。
ただ、暗殺者ギルドのジェイドの話はかなり胸に迫るものがありました。魔族に体を乗っ取られても尚、強力な精神力で術式を簡便化し、ロイドに託すという描写はとても良かったです。
制作はつむぎ秋田アニメLabというスタジオです。監督は玉村仁、シリーズ構成は戸塚直樹です。女性キャラにも魅力があり、作画も良かったので星は佳作の4です。春アニメの中でも楽しみにしていた作品で、2期の制作も決定しています。
となりの妖怪さん
『となりの妖怪さん』はWeb系の配信サイト、マトグロッソにて連載されてたnohoが原作の同名漫画が元になったテレビアニメです。妖怪達が人間と共に暮らす現代日本の並行世界で、天狗のジローと人間の子供むーちゃんを中心にハートフルな感じのアニメです。
妖怪と言っても普通の人と同じように生活していて、猫又のぶちおや狐の百合のエピソードを絡めつつ、終盤まではほのぼの感が強かったです。しかし、最終2話は世界が融合し、多くの妖怪や人々が鬼による被害を受けます。そして、そのカタストロフを防ぎ、世界を元に戻すのは妖怪達と子供達の絆でした。
アニメーション制作は『裏世界ピクニック』、『うちの師匠はしっぽがない』のライデンフィルム、監督は山内愛弥(やまうちあや)、シリーズ構成は『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』の金春智子(こんぱるさとこ)です。
最初は、原作未読のため、ほのぼの現代ファンタジーだと思っていました。しかし、妖怪達と人間との様々な問題や、丁寧な世界観といい、一言で説明できない魅力のある作品でした。よって星は佳作の4です。とても雰囲気のいいアニメで、家族と見ても楽しめられると思いました。
変人のサラダボウル
『変人のサラダボウル』は、平坂読(ひらさかよみ)による同名ラノベが原作のテレビアニメです。並行世界からやってきたお姫様サラと同居人の探偵惣助を中心に、様々なキャラクターの織りなす群像劇となっています。
特にサラの護衛騎士のリヴィアの遍歴が凄いことになっています。当初はホームレス、転売ヤー(騙された結果)、新興宗教の教祖と同居、最終話直前でのバンドでのブレイクなどなど。
よくある異世界転生の逆パターンで、異世界から優秀な女騎士が現代日本にやってきたらどうなるか?ということをやっていて、しかもホームレスだったり、ギャンブルにハマったりと色々と違うベクトルに向いていきます。
このリヴィアというキャラクターだけでも強烈なのに、美人局の後輩探偵や、30代の見た目がロリ美少女の先輩弁護士だったりと惣助の周りには個性的なキャラクターがこれでもか!という感じで集まります(つまりタイトル通り)。
アニメーション制作はSynergySPとスタジオコメットで、監督は佐藤まさふみ、シリーズ構成はなんと原作者の平坂読と山下憲一が担当しています。作画はそこそこだったのですが、話がとても面白かったため、星は3.5です。
バンドメンバーのインサイダー取引での逮捕、というところで終わったので、リヴィアのその後が気になります。ぜひ2期もやってください。
忘却バッテリー
『忘却バッテリー』はみかわ絵子によるジャンプ+に連載中の同名漫画が原作のテレビアニメです。野球のバッテリーを題材にしているものの、ギャグとか日常の高校生活などの要素も大きい作品で、幅広い層にオススメできます。
清峰葉流火(きよみねはるか)と要圭(かなめけい)のバッテリーは中学時代に完全無欠の存在として君臨していました。当然ながら、有力な高校からスカウトがきていて、甲子園の常連校に入る、と目されていました。
山田太郎は中学時代に清峰と要によって完全に自信を失い、野球部のない都立の小手指(こてさし)高校に入学します。そこで出会ったのは、なんと清峰と要のバッテリーでした。要は事故によって記憶喪失となっていて、野球のことを忘れてしまい女子が多い小手指に入りました。そこについてくる形で清峰まで同じ高校にきたということです。
しかし、小手指には野球同好会があり、2人と山田が入ります。また、同じように中学時代の有力選手だったショートの藤堂とセカンドの千早も加入し、正式に部として活動することになります。
記憶喪失後の要はおちゃらけた性格で、野球の練習をサボろうとしたり、一発ギャグで笑いを取ろうとしています。また、唯我独尊の清峰が引っ張る形で野球をやっていましたが、山田や藤堂、千早と仲良くなり自然に部活動を楽しむようになってきます。
そして、練習試合で試合を決定付けるタイムリーヒットを打ったことから野球を楽しむようになっていきます。個人的には藤堂の過去編が一番胸に迫るものがありました。
アニメーション制作は、『チェンソーマン』、『呪術廻戦』のMAPPA、監督は中園真登(なかぞのまさと)、シリーズ構成は『終末トレインどこへいく?』の横手美智子です。星は名作認定の4.5です。
野球ものの定番ものとは一味違った面白さのある忘却バッテリーが、素晴らしいクオリティでアニメ化された傑作です。今期の中で面白さはトップクラスでした。
無職転生II~異世界行ったら本気出す~ 第2クール
『無職転生II~異世界行ったら本気出す~ 第2クール』は、理不尽な孫の手原作の小説を元にしたテレビアニメです。第二期は2クールに分かれていて、第1クールは2023年の秋に放送されました。
第一期の頃と比較すると、アニメーション制作をしているスタジオバインドの方の体制が変わり、アニメーターの引き抜きなど懸念していました。実際に第一期の監督であった岡本学(おかもとまなぶ)から第二期は1クール目が平野宏樹、そして第2クールは戦隊シリーズのデザインなどで知られる渋谷亮介がそれぞれ担当しています。
またシリーズ構成も岡本学から、第二期は『宝石の国』、”86″の大野敏哉(おおのとしや)となっており、製作陣のクレジットも大きく変化がありました。ここは、鬼滅の刃と比較すると異なる点です。そもそもスタジオバインドは無職転生シリーズをアニメ化することを目的にするために設立されたアニメスタジオと聞いています。
しかし、第1クールこそ作画の安定しない回がありましたが、徐々に1期の頃のクオリティに戻り、更に2クール目では終盤の戦闘シーンなど目を見張るものがありました。セル画ならではの重みと質感を表現していることが、CG全盛の今でこそ活きてきているように感じます。
そして、ストーリー展開については第1クールの魔法大学編から、引き続いていてシルフィと主人公ルーデウスの新婚生活と妹の共同生活を描いた前半と、母親を救出するために迷宮を探索することになる後半に分かれています。
迷宮で師匠であるロキシーとの再会、パウロとの別れを経て、ルーデウスは父親となって更に一皮むけた大人になっていくという過程が丁寧に描かれています。正直言って春アニメトップクラスの出来で星は5、覇権クラスという評価をさせてもらいます。色々な作品がありましたが、個人的には無職転生は抜きでていたと思います。
夜のクラゲは泳げない
『夜のクラゲは泳げない』は、『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』と『イエスタデイを歌って』のアニメーション制作スタジオ動画工房が手がけたオリジナルアニメです。
最初は、何のアニメかちょっと分かりづらく感じました。光月まひるは、幼少期の頃イラストレーターとして活動していましたが、高校では絵を描かなくなっていました。そんなまひるが、覆面アーティストの山ノ内花音(やまのうちかの)と出会い、共にJELEEとして活動していくことになります。
作曲担当の高梨・キム・アヌーク・めいや動画制作担当の渡瀬キウイが加入し、JELEEはネット動画で注目されるようになっていきます。つまり動画投稿を題材にした音楽もの、というアニメとなっています。架空のアーティストJELEEの楽曲を40mPがプロデュースしてアニメ本編で流す、というスタイルです。
春アニメでは、同じようにアニメとタイアップして楽曲をプロデュースしている『ガールズバンドクライ』とかち合う形になりました。しかし、こちらはアイドルの曲というベースの違う音楽でした。
監督は『エロマンガ先生』の竹下良平で、シリーズ構成は屋久ユウキです。音楽をベースに少女達の葛藤や友情などを描いているのですが、アイドルものが苦手な筆者には、あまり共感できる要素が薄かったのが正直なところです。しかし、作画やストーリー展開などは見るべきものがありました。よって星は佳作の4です。
ここでの評価は個人の好みも大きいので、人によっては評価が異なるかもしれません。しかし、夜のクラゲは泳げないは最初から最後まで物語の骨子になる部分は弱く感じました。
レベルが高く多様性のあった春アニメ
2024年春アニメも視聴作品が20を超えていて、毎週アニメを見るのが大変でした。ラブコメやSF、異世界転生ものや音楽ものまで、多種多様なジャンルが揃っていて、オリジナルもありかなり楽しめたクールでした。
その中でも無職転生IIや、ガールズバンドクライ、T・Pぼん、鬼滅の刃、怪獣8号、戦隊大失格、ダンジョン飯、忘却バッテリーなどが星4.5以上という稀に見るほど上質な作品が多かったクールでした。
アニメを見る本数を減らさないといけない位にアニメが多いので、夏アニメからは視聴作品を意図的に減らすようにします(大汗)。冬アニメも同じこと書いてて結局20作品くらい視聴したので説得力ありませんが、頑張ります。
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