前回に引き続き、2024年冬アニメレビューの後編です。今回は、戦国妖狐 、葬送のフリーレン、治癒魔法の間違った使い方、望まぬ不死の冒険者、姫様”拷問”の時間です、僕の心のヤバイやつ、魔女と野獣、魔法少女にあこがれて、メタリックルージュ、勇気爆発バーンブレイバーンの10作品をレビューします。
目次 この記事の内容
- 戦国妖狐
- 葬送のフリーレン
- 治癒魔法の間違った使い方
- 望まぬ不死の冒険者
- 姫様”拷問”の時間です
- 僕の心のヤバイやつ
- 魔女と野獣
- 魔法少女にあこがれて
- メタリックルージュ
- 勇気爆発バーンブレイバーン
- SNSでの話題性と新しい風
戦国妖狐
『戦国妖狐』は、『プラネット・ウィズ』、『惑星のさみだれ』の水上悟志(みずかみさとし)が原作の同名漫画のテレビアニメです。このレビューで紹介する水上漫画原作アニメとしては3作目で、戦国妖狐は3クール制作される予定で、1クール目の本作は『世直し姉弟編』となります。
戦国時代に乱れた世を正す、世直し姉弟こと妖狐のたまと仙道の少年迅火はかたわらと呼称される妖怪や野党などを退治していました。真介という元農民で剣士を目指す少年との出会いと断怪衆との関わりで、大きな運命に翻弄されるようになっていきます。
筆者が投稿した、この記事の動画バージョンです。
アニメーション制作は、”STEINS;GATE”『ゴブリンスレイヤー』のWHITE FOXで、監督は相澤伽月(あいざわかげつ)で、シリーズ構成は『レベルE』、『僕の心のヤバイやつ』の花田十輝(はなだじゅっき)です。
水上キャラをうまくアニメで動かす作画と、1クールでキリのいい1部完結と、レベルの高いアニメ化だったと思います。他の作品が強すぎたため、星は3.5になりましたが、かなり面白かったアニメです。続編にも期待します。
葬送のフリーレン
『葬送のフリーレン』は、週刊少年サンデーに連載中の山田鐘人(やまだかねと)原作、アベツカサ作画の同名漫画が原作のテレビアニメです。「サンデーの最終兵器」と呼称されるほどの人気作のアニメ化に放送が始まる前から注目されていました。
魔王を倒した勇者一行のエルフの魔法使いフリーレンが、人を知るための旅に出るという話です。そのきっかけが、勇者ヒンメルの老いによる死でした。フリーレンは、かつての仲間だった僧侶のハイターから、魔法使いの修行をしている少女フェルンを託されます。
そして、大魔法使いフランメの残した手記から、北の果てエンデにあるとされている死者の魂と対話できるという場所に向かうことにします。その旅の途中で、かつての仲間のアイゼンの弟子のシュタルクを仲間にします。アニメでは、更に北方の旅を続けるため、一級魔法使い試験を受け、その決着まで描かれていました。
1〜4話を金曜ロードショーでやり、その後30分枠で28話を2023年の10月〜2024年3月にかけて放送しました。アニメーション制作は老舗のアニメスタジオ、マッドハウスで、監督は『ぼっち・ざ・ろっく』の斎藤圭一郎、シリーズ構成は『ACCA13区監察課』、『ブギーポップは笑わない』の鈴木智尋(すずきちひろ)です。
序盤〜1クール目が終了するまでの間は、フリーレン一行の旅を叙情的に描き、2クール目は魔法使い同士の戦闘がメインになる一級魔法使い試験編でした。どちらのクールも見事な作画と演出で、冒険譚の結末から入る斬新なストーリーを丁寧に描いていたため、星は覇権認定の5、冬アニメ最高点の一作です。
治癒魔法の間違った使い方
『治癒魔法の間違った使い方』は、くろかた原作の小説を元にしたテレビアニメです。いわゆるなろう原作ものなのですが、少しそれまでのものとは違う要素があります。
主人公のウサトは下校中に、友人のカズキ、スズネと共に異世界に召喚されます。2人の勇者についてきてしまった感じだったのですが、治癒魔法という、この世界でも珍しいスキルを持っていたため、救命団の団長であるローズに半ば強制的に連れて行かれ、激烈な訓練を受けるようになります。
常軌を逸する訓練に対して、治癒魔法を持つウサトは耐え抜きます。ここはかなりスポ根入っていて、いつの間にかフィジカルが常人とはかけ離れたものになっていくのです。今までのなろうと違って、いきなりチートではなく、きちんとした努力と鍛錬によって強くなる、という点が良かったです。
アニメーション制作は、スタジオアドとシンエイ動画の共同制作になります。監督は緒方隆秀(おがたたかひで)でシリーズ構成は『あやかしトライアングル』のヤスカワショウゴです。
スポ根のような鍛錬する主人公+異世界という斬新な設定で、主題歌のwaterweedの”Cure”もこのアニメに合っていました。星は3.5ですが、冬アニメの中でも楽しみにしていた作品の一つです。
望まぬ不死の冒険者
『望まぬ不死の冒険者』は、丘野優が書いた小説が原作のテレビアニメです。いわゆるなろう小説らしいファンタジー系の話になっています。龍に喰われアンデッドとして蘇ったレントは、なぜか人としての意識を保ったままでした。そして、迷宮で存在進化して、素性を隠したままミスリル級冒険者を目指す、というストーリーです。
なろうっぽい話なので、転生ものかと思いきや、ただの冒険者がアンデッドになるという斜め上の展開でした。
知り合いの学者、ロレーヌがレントに協力しますが、彼女なくしてレントの活動はありません。レント自身、冒険者ギルドの仲間から頼りにされる面倒見のいいところがありました。人徳はあれども実力は普通、というところから不死者になり、能力が上がっていくというRPG的要素のある作品です。
アニメーション制作はCONNECTです。SILVER LINKの一部門ということになっています。監督は『アクティヴレイド -機動強襲室第八係-』の秋田谷典昭(あきたやのりあき)で、シリーズ構成は『オーバーロード』の菅原雪絵です。
話は面白かったのですが星は3.5です。作画のレベルがあまり良くなかったこと、他の作品のレベルが高かったことが響きました。阿部真央のED曲、“Keep Your Fire Burning”はかなりいい曲で、このアニメのEDを見るのは毎週恒例になっていました。
姫様“拷問”の時間です
『姫様“拷問”の時間です』は、題だけ見ると凄惨なシーンを想像してしまうタイトルでしたが、実はかなりのほのぼのコメディでした。というのも、騎士団長の姫様は、魔王軍に捕まるのですが、拷問官トーチャーのする拷問?は美味しい食事をちらつかせて情報を聞き出す、という非常にほっこりするものでした。
また、他の拷問官も友達として遊びに誘うとか、魔王の娘に至っては、その可愛らしさから姫様自ら情報を話してしまうことも多いです(笑)。その様子を見て、姫様の聖剣エクスは呆れることもしばしばで、ツッコミ役と化しています。
ジャンプ+に連載中の原作春原ロビンソン、作画ひらけいの同名漫画が原作のテレビアニメです。はっきり言って魔王がかなりの人格者でブラック企業に見習って欲しいほど、魔王軍はホワイトな職場です。こういうところなら、働きたい人が多いのではないでしょうか?
アニメーション制作は、『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』のPINE JAMで監督は金森陽子でシリーズ構成は『シャングリラ・フロンティア』の筆安一幸です。想像以上に面白いほのぼのコメディで星は佳作の4です。飯テロか?というほどの作画で、食事シーンに力も入っており、視聴の際にはご注意を。
僕の心のヤバイやつ 第2期
『僕の心のヤバイやつ』の第2期は、桜井のりおの同名漫画を原作にしたテレビアニメです。1クール目から引き続き、山田と市川の不器用ながらも、育まれていく2人の関係は、2クール目の終盤にて大きく変わることとなります。
1クール目からここまで2人の恋愛が進展する、という展開はここに至るまでの過程が丁寧に描かれていて好感が持てました。最終回での告白と、それに伴う関係の変化はこれから原作で読めるのですが、アニメの3クール目を期待して、少し待とうと思います。
アニメーション制作はシンエイ動画で、冬アニメは共同制作の2作品(わるものさん、治癒魔法)があり大変だったでしょうが、僕ヤバのクオリティは流石の一言でした。監督は『からかい上手の高木さん』の赤城博昭(あかぎひろあき)で、シリーズ構成は花田十輝(はなだじゅっき)です。
桜井先生の独特の絵柄の再現性の高さ、アニメーションとしての表現力、共に高く文句のつけようがありません。よって星は4.5で名作認定です。本当に、いいアニメをありがとうございました。
魔女と野獣
『魔女と野獣』は、佐竹幸典(さたけゆきのり)による月刊ヤングガンガンに連載中の同名漫画が原作のテレビアニメです。冬アニメの中でもダークな雰囲気があり、この手の話は好きなので、視聴していました。
魔女という存在が魔法の力で圧倒的な力を持ち、魔術師のいる世界が舞台です。魔響教団という組織に所属するギドとアシャフは教団に持ち込まれた依頼をこなしています。ギドは身体能力が人間のそれを大きく凌駕しています。少女の姿をしていますが、それは魔女の呪いのせいで、本体は棺桶の中に入っています。
魔女の口づけで一時的に呪いが解除されると、世界を滅する可能性を持つほどの戦闘力のある男の姿に戻ります。なので、魔女と野獣なのかと思いました。アシャフはヘビースモーカーの青年で、こちらは凄腕の魔術師で策略に長けています。
魔女絡みの事件をギドが追う理由は、自分に呪いをかけた永遠の魔女を探すためです。その旅の道中、本物の魔女に遭遇したり、魔女にまつわる呪具を使った事件を解決したりしていきます。
制作は横浜アニメーションラボで、監督は『図書館戦争』の浜名孝行(はまなたかゆき)で、シリーズ構成は『惑星のさみだれ』の百瀬祐一郎です。星は3.5ですが、雰囲気は好きなアニメで、2期があれば見てみたいです。
魔法少女にあこがれて
冬アニメ随一の話題作!あらゆる意味で(大汗)なのが、この『魔法少女にあこがれて』でした。ぶっちゃけ色々と放送規制ギリギリな(エ○な意味で)アニメでしたが、1話放送以降の衝撃は当時のSNSなどの書き込みなどにも現れていました。
元は小野中彰大(おのなかあきひろ)の同名漫画が原作のテレビアニメなのですが、女子中学生うてなが、魔法少女と戦う悪の女幹部になって、憧れの魔法少女にあんなことやこんなことする話です(なんのこっちゃ)。
竹書房が運営しているストーリアダッシュ連載作ということで、主にエ○方面に話を振っています。ただ、悪の女幹部マジアベーゼと魔法少女の戦いは、ある意味熱い展開があり、エ○要素だけでない特撮ヒーローものへのオマージュのようなものも感じます。
トレスマジアという魔法少女の一人、マジアズールが、闇堕ちしかけた時にマジアベーゼが奮起を促す時のセリフ、「解釈違い」も推しを全力で愛するファン心理からのものですし、今までの魔法少女パロディものとは違った要素があるように思えました。
アニメーション制作は『アルスの巨獣』の旭プロダクションで、監督は鈴木理人(すずきりひと)と『To LOVEる -とらぶる- ダークネス』の大槻敦史(おおつきあつし)の2人です。シリーズ構成は『俺だけレベルアップな件』の木村暢です。
作画カロリーは見所のエ○に極ぶりしていて、お世辞にもいいとは言えませんが、話題性やインパクトが強く、星は佳作の4です。筆者が魔法少女ものが好きなら、もっといい評価になっていたと思います。
余談ですが、謎の光がない円盤の売り上げが、かなり多いらしく、視聴者の正体が分かりました(笑)。ただ、主な登場人物が女子中学生という設定なので、もうちょっと年齢面の配慮があった方が良かったかな?とは思いました。
メタリックルージュ
結構期待していたのが、この『メタリックルージュ』です。原作とアニメーション制作が老舗のBONESで、原作はなんとあの出渕裕(いずぶちゆたか)!これは期待しかない!ということで、1話目から気合入れて見てました。
確かに、ボンズらしい作画は良かったです。話もちょっと専門用語が多くて、とっつきにくい印象はあるけど、昔のアニメの方が難しい話なんていくらでもあるし、主人公のルジュの見た目は可愛いし、相棒のナオミも魅了的です。ルジュはネアンと呼ばれる人造人間で、戦闘時に変身して戦うという設定です。
メカ作画もいいし、オープニング、エンディング共に良質、更に言うと話の展開も悪くない。これで不満なんか、あるはずないと思いたいのですが、何とも物足りないんですよ。
なんというか、今まで見てきたアニメのテンプレだらけで新しい要素というか、ワクワクがないんですよね。作画とか脚本とかそういうことではなく、全般的に古臭く感じる。葬送のフリーレンとかまほあことか、そういうアニメと同じ時期の作品に思えない。
つまり、攻殻機動隊のようなサイバーパンクとも違う古さなんですよ。人造人間の苦悩なら、キカイダーとかでやり尽くされているテーマだし、目新しい何かがないんです。これだと今の視聴者はついてこれないんじゃないかな?と思っていたら案の定存在自体が知られずに埋もれてしまいました。
監督は『キャロル&チューズデイ』の堀元宣(ほりもとのぶ)、シリーズ構成は『ラーゼフォン』の出渕裕と根元歳三(ねもととしぞう)です。クオリティは高いものの、どうしても古さが目立ち、星は3.5。素材はいいのに色々と生かしきれなかったように感じました。
勇気爆発バーンブレイバーン
いやー、これには参りました。ぶっちぎりで冬アニメの話題をさらった本作、『勇気爆発バーンブレイバーン』はあの伝説のアニメーター、大張正己(おおばりまさみ)が監督をしたオリジナルアニメです。
1話目のキービジュアルで、リアルロボットものっぽいところにすっかり騙されました。近未来でティタノストライド(TS)と呼ばれる人型兵器の演習に始まり、日本の自衛隊のエースパイロット、イサミとアメリカのエース、スミスの2人がクローズアップされます。
しかし、後半パートで謎のデスドライヴズという宇宙からの侵略者が飛来し、地球の兵器は通用せず、ハワイの戦力も壊滅するかと思われたところ、謎のスーパーロボット、ブレイバーンが登場!
イサミを乗せて戦場を駆け抜け、イサミをして「何なんだ、この曲は?」というブレイバーン自身が歌う(CV鈴村健一)熱い主題歌と共にデスドライヴズを倒します。リアルロボットの世界にいきなりの喋る勇者ロボ降臨!更にここから主題歌で締めるという鮮烈な初回放送だったのです。
初回放送見るまで全員が騙されました、許さんぞ大張監督(笑)。しかし、SNSで話題をかっさらい、木曜の夜の放送から翌日の金曜日はバーンブレイバーン祭り、筆者も思い切り書き込んでしまいました(大汗)。大張監督の得意げな顔が目に浮かびます。
その後も2話のイサミかわいそう事件、3話のヒロインルルの鮮烈なデビュー。そして、8話でのまさかのスミスの死、9話で明かされるブレイバーンの正体とバーンブレイバーンという合体形態(これはやると思った)、11話の最終話前のおふざけ、そして最高の12話。
これ以上にないくらい熱く、そして楽しい作品でした。まさかロボットアニメにこんな境地があるとは!そうだよ、こういうの待ってたんだよ!俺たちは。なので、説明不要の最高点星5、ここから勇気爆発のその先があれば100点です。
アニメーション制作は、CygamesPictures、シリーズ構成は『盾の勇者の成り上がり』の小柳啓伍(こやなぎけいご)です。大張監督は、『機甲戦記ドラグナー』のオープニングからのファンで、このバーンブレイバーンで更に大ファンになりました。次はどうするんだマサミィイ!
SNSでの話題性と新しい風
今回レビューした20作品のうち、オリジナル作品はSYNDUALITY Noirとメタリックルージュ、バーンブレイバーンの3作品です。そのうちのバーンブレイバーンは、SNSと共に大いに盛り上がりました。
先の読めない展開と想像の斜め上を行く悪ふざけ、これがハマる人にはとことんウケて、冬アニメの話題はバーンブレイバーンに持って行かれました。SNSが普及した時代だからこそのオリジナルロボットアニメだと思います。これこそ、新時代の風です。
最高得点の星5は、葬送のフリーレンもでしたが、こちらは漫画原作の方が先にあり、展開についての考察はどうしても原作既読の人に有利になります。逆に言えば、どうアニメでまとめていくのか?というのは難しいことなのです。
ただ、オリジナルアニメのいいところを再確認できた、という点において突破口になり得る作品が、この『勇気爆発バーンブレイバーン』だったと思います。これからどうするんだ!マサミィイ!
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