プロダクションI.Gの白眉!シュヴァリエ解説

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今回は、2006年〜2007年にかけてWOWOWで放送されたアニメシュヴァリエ 〜Le Chevalier D’Eon〜を解説します。実在したフランスの外交官である、デオン・ド・ボーモンが主人公で、18世紀のヨーロッパを舞台に虚実入り混ぜた名作アニメです。

目次 この記事の内容

  • シュバリエ〜Le Chevalier D’Eon〜とは?
  • 主人公と史実
  • 虚実入り混じった展開
  • イギリスに巣食う革命教団
  • 衝撃の真相と騎士の時代の終焉
  • 冲方丁とプロダクション I.Gの作画

シュヴァリエ 〜Le Chevalier D’Eon〜とは?

シュヴァリエ 〜Le Chevalier D’Eon〜とは、WOWOWの開局15周年記念作として、Production I.Gが制作したテレビアニメです。2006〜2007年にかけて2クール24話で放送されました。

当時のWOWOWのアニメは、『カウボーイ・ビバップ』の後半クールや、富野由悠季監督の『ブレンパワード』や『オーバーマン キングゲイナー』、『THE ビッグオー』などサンライズ作品を放映していたことで有名でした。当時はCSよりもBSのスクランブル放送の方が色々と充実していたため、WOWOWでアニメを視聴していました。

筆者が投稿したこの記事の動画バージョンです。

WOWOW開局15周年記念アニメということで、スクランブル放送枠(有料)でハイビジョン画質のアニメであり、作画も流石にプロダクションI.Gということで毎週視聴していました。伝奇的な要素を持つ歴史ものという、めちゃくちゃ好みな作品でした。

ただ、少女漫画的な華やかな歴史ものを期待すると完全に肩透かしで、重苦しさや暗さが目立ちます。詩人やガーゴイルといった超常的な存在との戦いは凄惨を極めるので、伝奇アクションが好きな人におすすめしたいです。

主人公と史実

本作の主人公、シュヴァリエ・デオンこと、デオン・ド・ボーモン(CV.泰勇気)は、このアニメではパリの治安を守る騎士の一人でした。姉であるリア・ド・ボーモンの死をきっかけに、フランス国王ルイ15世直属の情報機関、王の機密局に入り、各国を渡り歩き、外交と詩人との戦いに身を投じることになります。

また、ガーゴイルと呼ばれる死体から生まれる超常の存在と戦う時に、姉リアの魂が憑依します。リアの剣と詩の力によって、強力な詩人(詩の力で超常能力を持つ人のこと)と渡り合うのですが、完全に変身ヒーロー(ヒロイン?)みたいな感じです。

アニメでのデオンはアンナという婚約者のいる異性に対して恋愛する青年として、描かれています。リアが憑依すると、髪留めが外れ、女性の声になります(CV.水野理紗)。外観上で変化をつけるための演出をしていました。

史実のデオンは優秀な外交官でした。当時のフランスの置かれていた状況から、ロシアやイギリスという強国との交渉と情報収集を行う、スクレ・ドゥ・ロワという秘密機関の一員であったことは間違いないようです。

虚実入り混じった展開

ガーゴイルや詩人との繋がりのあるボロンゾフを追って、機密局の四銃士、デオン、テラゴリー、デュラン、ロビンはロシアに向かいます。その道中、詩人とガーゴイルとの死闘があります。強力な詩人との戦いにおいて、リアの魂はデオンに憑依し、圧倒的な力で打ち倒します。

ロシアの女帝エリザヴェータが主催していたのは、男は女の格好を、女は男の格好をする男女逆転舞踏会でした。デオンはその舞踏会でリアのドレスを着て参加し、女性と見紛う容姿で参加者を驚かせます。


女帝はデオンの剣の腕を確かめるため、衛兵とデオンを戦わせます。デオンは、ドレス姿のまま連戦連勝し、剣士としての技量と胆力によりエリザヴェータに認められます。リアはロシアの改革を志す、エリザヴェータの友人だったのです。

この後、女帝の暗殺計画を防いだデオン達は、ボロンゾフを捕らえる許可を得ます。しかし、その間にマクシミリアン・ロベスピエールによってエリザヴェータは殺されます。

エカテリーナを女帝にする協力をした四銃士は、ついにボロンゾフとの決着をつけます。しかし、機密局の追っていた『王家の詩』マクシミリアンが入手し、イギリスに渡ります。デオン達は、すぐさまマクシミリアンを追ってイギリスに渡るのです。

※ここからネタバレ含むので未見の人は気を付けて下さい。

イギリスに巣食う革命教団

ロンドンで、秘密文書を見た四銃士は革命教団がイギリスに根を張りつつあることを知ります。革命教団は、文字通り革命を起こすため詩の力を利用していました。それはフランス国内における革新派の動きと連動していました。

イギリス国内での行動の自由を得るため、リアの知己である王妃メアリー・シャロットに身を寄せます。そこで、メアリーは病気で死んだ姉のこと、その姉こそがメアリーであり、本当の自分は妹であることを話します。

リアによって魂の融合をし、姉妹が一つの肉体に同居しているのが、現在の王妃であったのです。そのメアリーの立場は、魂が同居しているデオンと重なるものでした。

王家の詩を奪還に向かう四銃士は、革命教団の本拠地に乗り込みます。そこでマクシミリアンとデオン=リアの共闘で革命教団の首領を倒します。そこでついにデオン達は、王家の詩を入手します。

そして、革命教団との革新派との繋がりが明かされると、フランスとイギリスでの政治闘争の構造が変化します。フランスでは、ボンパドゥール夫人の革新派は勢いを失い、イギリスではジョージ3世が退位します。これにより、フランスとイギリスの戦争は回避されます。

衝撃の真相と騎士の時代の終焉

四銃士の一人、デュランにはある密命がありました。王家の詩を奪還した後、他の3人を口封じのため殺せという命令です。

デュランは葛藤しますが、最後はガーゴイルになって、デオン=リアに倒されます。機密局員としての使命と、仲間の間で苦しんだ後の最後でした。ロビンは、ここから騎士という生き方に疑問を持つようになります。

更に、テラゴリーが実はオルレアン公のスパイであり、騎士に対して冷たいルイ15世を裏切っていたことが分かります。デオンを捕え、オルレアン公の元に戻るテラゴリー。しかし、結局はオルレアン卿は失脚し、テラゴリーもオルレアン卿を銃弾から庇って死にます。

そして、デオンとロビンは王家の詩を王妃マリーに届けます。そして、デオンは全ての真相を知るため、王家の詩を読み始めます。そして、封印されていたリアの記憶により、全ての真相が明らかにされます。

元々ルイ15世には、フランスの王家の血は流れていませんでした。本来の王族は、マクシミリアンとリアだったのです。王家の詩に書かれていた予言は、歪な役割をルイ15世に与えることになり、この秘事によって、多くの人々の運命が狂わされたのです。

マクシミリアンは、リアとの結婚を王に許されなかったことが理解できずにいました。そして、王によって王家の詩の真相を知ったリアが殺されたことを知り、反旗を翻したのです。

そして、ルイはこの秘事を知ったマリーに毒杯を煽らせ、マリーも最愛のルイのため、それを受け入れます。ルイは更に、その一部始終を見たアンナを手にかけます。

全ての真相が明るみになり、王の側近ブロリーによってマクシミリアンは死に、ルイは王家の詩の一部を燃やしたことで、体が腐敗していく呪いにかけられます。デオンはリアと完全な魂の融合を果たし、王家の秘事を知る者としてフランスから追われるようになります。

そして、王家の詩は最後にロビンが入手し革命の詩に変質し、マクシミリアンの意志を継ぎ、ロベスピエールを名乗っていくのです。ここはフランス革命の立役者で、後に恐怖政治を行う、マクシミリアン・ロベスピエールに繋げていくためでしょう。史実につなげていく最終回でした。

冲方丁の脚本とプロダクション I.Gの作画

全般的にヨーロッパの近世らしい雰囲気の暗く、重厚なトーンの話でした。錬金術師を詩人という呼称で統一し、虚実入り交えた展開で飽きさせずに24話を描き切った力作だと思います。

ただ、話は連作故に全話見る必要があるほど複雑です。このアニメの見どころである外交は、18世紀のヨーロッパの歴史を知っていれば楽しめられますが、そこの知識がないと難しいと思います。

しかし、退廃的な近世ヨーロッパという舞台で、フランスの騎士が活躍するというのは、とても面白かったです。騎士の時代から市民が革命を起こす時代へと移ろう様を、歴史上の人物を含めて描き切り、全編において見事な作品でした。また、プロダクション I.Gならではの作画も良かったです。

シリーズ構成と原作は『マルドゥック・スクランブル』、『蒼穹のファフナー』の冲方丁(うぶかたとう)で、監督を『機動戦士ガンダムUC』、”SPY×FAMILY”の古橋一浩がそれぞれ担当しています。プロダクション I.Gの名作は多いですが、シュヴァリエもまた記憶に残るアニメでした。

プロダクションI.Gの白眉!シュヴァリエ解説」への2件のフィードバック

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