前日までの台風6号の荒れた天気から一転して、晴れた第42回鈴鹿8時間耐久レースの後編です。決勝が行われたのは、7月28日です。ワークス3チームによる、8耐史上稀に見るほどの終盤のドッグファイトでしたが、苦い結末が待っていました。
目次 この記事の内容
- ピットウォークは大混雑
- ホールショットはエスパルス ドリームレーシング!
- ワークス3チームの攻防へ
- 300km/h以上の世界を体感
- 後味が悪い結末
- やるべきではなかった表彰台
ピットウォークは大混雑!
TSRのキャンギャル
28日の決勝当日は、天気も回復していました。5時起床とか言ってた兄が寝てたため(笑)、伊賀上野を出発したのは、7時過ぎになってしまい、結局9:30からのピットウォークにしか間に合いませんでした。
7時15分のピットウォークよりも、この時間の方が混雑します。最終コーナーのかなり上の観覧車付近から並ぶことになり、炎天下の中長時間待たされました。この時点で、体力は失われ、混雑が予想できました。
今年から、缶バッジではなくピットウォークのチケットの提示となりました。チケットホルダーを持ってきて正解でした。何回か確認されたので・・・。
珍しく、阪神タイガースの元投手、下柳剛氏も観戦に来られていました。下柳は、格闘技界にも友人がいたり、幅広い交流があるので、ひょっとしたら知り合いのライダーでもいるのかもしれないですね。若い頃には、バイクに乗ってたみたいだし。
元阪神の下柳氏
ぶっちゃけ、暑くて人が多すぎて、すぐにギブアップして涼しい日陰に避難しました。そうしていると、半身不随になってからバイクに乗っていなかった青木拓磨(青木三兄弟の次男で元GPライダー)が、特別仕様のCBR1000RRに乗って鈴鹿を2周デモランするというイベントがありました。
半身不随でもバイクに乗れるというのは、単純に凄いことだと思いました。指でシフト操作するみたいで、かつての名ライダーの復活した姿はとても感動しました。
ホールショットはエスパルス ドリームレーシング!
ゼッケン95 エスパルス・ドリームレーシングのGSX-R1000
8耐のスタートは、午前11時30分からで、11時には昼食にしました。グランドスタンド近辺の屋台でハンバーガーを食べてから、最終コーナーの方から更に歩いて、130Rあたりまで行きました。
スタート時には、なんとか座れたものの、暑くて屋根のあるスタンドがうらやましかったです。V2(グランドスタンドに入場できる券)は高いので普通の入場券しか持っていないので、色々と大変でした(大汗)。
ウォームアップラップ中に、ゼッケン090のauテルルのMoto2ライダー、長島哲太が転倒するというアクシデントがありました。どうやら、タイヤウォーマーがリア側にセットされていなかったようです。レーシングスリックタイヤは、タイヤの温度が上がっていないとグリップしないので、リアからスリップしたのでしょう。
8耐ならではのルマン式スタート(ライダーが走ってマシンにまたがる)で、ホールショットを奪ったのは、ゼッケン95のエスパルス・ドリーム・レーシングでした。2位には、ゼッケン10のカワサキ・レーシングチーム、3位にはゼッケン1のTSRホンダです。
ワークス3チームの攻防へ
ゼッケン10 カワサキワークスのZX-10RR 高速コーナーで撮影したためブレが目立つ
レース序盤、ゼッケン12のヨシムラのシルヴァン・ギントーリ選手がシケインでトップになると、12-1-10-21-95-33という順位になりました。ワークス3チームは、序盤は様子見をしていて、2分8秒台で周回していました。
4ラップ目にゼッケン111番のホンダ・エンデュランスが転倒し、5ラップにはゼッケン9のMotoMapスズキが転倒しました。
9ラップ目に、ヤマハファクトリーの中須賀選手が、2分7秒台を出しました。順位は、12-1-21-10-33-7となり、ワークス3チームの前にヨシムラとTSRがそれぞれ走っていました。11ラップ目にゼッケン17の八尾カワサキが転倒し、セーフティカーが入りました。
セーフティカーのホンダ NSX
16ラップには、SCは解除され23ラップにゼッケン11のEWCのカワサキ・フランスがピットインしました。25周目には、ヤマハファクトリーの中須賀がトップになり、続々とピットインするチームが増えていきました。29周目には、ヨシムラとTSRがそれぞれピットインし、ライダーが交代しました。
30〜34周目に、ヤマハファクトリー、カワサキワークス、レッドブルホンダの順にピットインし、ライダーがそれぞれ交代しました。36周目には、ゼッケン21のアレックス・ロウズ選手が、2分7秒台を叩き出しました。
ここから、カワサキのジョナサン・レイ選手が追い上げ始め、レースは3大ワークスの争いとなっていくのです。
300km/hオーバーの世界を体感
1コーナー付近にて撮影 300kmを超える時速にカメラの性能が追いついていなかった
14時頃には、キャンギャル・ステージの撮影に行った兄といったん別行動して、バイクのところに戻りました。Tシャツ乾かしたり、タオルを入れ替えたりして、駐輪場脇のベンチが涼しかったので仮眠を取って、15時すぎにはアドベン点心のかき氷を食べて、リフレッシュしてメインスタンドに戻りました。
この頃には、トップがコロコロ入れ替わっていたのですが、流石に炎天下の中、観戦するのは大変なので、8フェス横の物販コーナーに行きました。お買い得商品があったりしていましたが、バイクの積載量のことを考えると、買い物は控えました。
8フェスという音楽イベントもやっているのですが、好みのバンドが出ているわけでもないので、観に行くことがありません。一応、8耐のチケットがあれば、入場できるので、できれば海外のバンドを連れてきて欲しいです。土曜日の175Rは、観たかったのですが、大雨のためやめました。
1コーナーの近くで、観戦と撮影のできる#無双感ハンパないというハッシュタグをつけて、SNSに投稿すると入場できるというイベントが一番良かったです。1コーナーのストレートエンドは、最もスピードが出ているところからのブレーキングをするので、大迫力です。
確実に300km〜320kmは出ているので、爆音と体感したことのない速度を間近で見ることができるのです。とにかく理屈抜きに凄いので、これは一度経験したら病みつきになりそうです。写真は、思いっきりブレてました(大汗)。
このイベントは、三国無双とのコラボレーションのようです。三国志は好きですが、リアル感の皆無な無双シリーズは苦手です。いくら猛将でもあんなに敵を一人で倒せるわけねーだろ!って思います(大汗)。
兄と合流したのが、16:30です。最終コーナー近辺のトンネルを使って、裏に出てS字から逆バンクでマシンを撮影しました。18時頃にはアドベンカレーを食べにいきました。暑い日はカレーが最高です。そこから、1コーナー近辺のモニターを見ながら観戦できるポイントに行き、ゴールまでいました。
後味が悪い結末
ゼッケン19 モリワキレーシングのCBR1000RR
176ラップ目の順位は、10-33-21-1-12-7-634-95-2-19となっていました。レギュレーション違反により、ピットスタートだったハルクプロの634号車が、7位にポジションアップしていたのには驚きました。
ぶっちゃけ、ワークス3チームのみが別次元で、トップを入れ替えながら争っている印象を受けました。EWC(世界耐久選手権)の順位で、2号車のスズキ・エンデュランスチームが、このままの順位(9位)だと年間チャンピオンになれそうでした。
ランキングを争う、ゼッケン11のカワサキ・フランスは、11位よりも下のポジションとなり、同じEWCのTSRホンダは4位とまずまずの順位でした。ただ、ポイント差が大きいので、TSRは今年は2位になりそうです。
185ラップ目に、ゼッケン2はピットインし、最終スティントのため、ライダー交代をしました。189周目には、ゼッケン33の高橋巧がカワサキを抜いてトップになり、190周目の18:30では、ライトオン表示が出ました。
195周目には、10号車のカワサキがピットインし、ライダーはジョナサン・レイに交代しました。S字でトラブルがあったため、イエローフラッグが出ていました。同じ周にはTSRホンダもピットインし、196周目には、ジョナサン・レイがファステストとなる、2分6秒911を叩き出し、猛追を開始します。
同じ周には、33号車のホンダワークスがピットインし、高橋巧をそのまま2スティント走らせる作戦に出ます。結局清成選手を使うことができなかったのが、ホンダワークスにとって大きな作戦面での宇川監督のミスに繋がっていきます。
同じ周に、ピットインした21号車のヤマハファクトリーは、エースの中須賀選手から、アレックス・ロウズ選手に交代しました。レースも残り50分を切るタイミングで次々と有力チームが最終スティントのためのピットインを行っています。
199ラップ目の順位は、33-10-21-1-12-7-634-95-2-19です。そして、200ラップ目に疲れの見える、33号車の高橋を10号車のジョナサン・レイがとらえます。仮に、予定通り、MotoGPのテストライダーである、ステファン・ブラドルにチェンジしていたら、カワサキが追いついていたかどうか解りません。
というのも、普段V4エンジンのRC213Vをテストしているブラドルが、8耐のレースウィーク中に直列4気筒のCBR1000RRに慣れてきていたからです。疲れたエースよりも、ブラドルの方がいい走りをする可能性は高く、一番混戦になった最終スティントに、高橋を温存できなかった、作戦ミスだと思いました。
そして、201周目に、高橋をレイが1コーナーでパスしました。この時点で、ホンダが逆転する要素はなくなり、順位は10-33-21-1-12-7-634となりました。202周目に、ゼッケン29のドッグ・ハウスが落下物に乗り上げて転倒し、あわやトップ走行中のジョナサン・レイの10号車と接触するところでした。
チーム・フロンティアのCBR1000RR
ゼッケン18のベイビー・フェイス・チタニウム・パワーレーシングもスローダウンしていました。オイルフラッグが上がっていたので、オイルが漏れていたのでしょう。19時頃には、雨が降り始めましたが、1コーナー近辺ではパラパラくらいにしか感じられませんでした。おそらく、反対側では激しく降っていたのだと思います。
205周目の順位は、10-33-21-(周回遅れ)1-12-(2周遅れ)7-(3周遅れ)634-95-2-(5周遅れ)19という順位です。2号車は、EWCのチャンピオンのためには、9位を死守する必要がありました。ゼッケン21のヤマハファクトリーのアレックス・ロウズ選手は、得意のウェットで2分9秒台を出して、33号車を猛追します。
210周目には、33号車は21号車に抜かれて3位に後退しました。エースの高橋を2スティント走らしたことが、完全に裏目に出てしまいました(涙)。そして、ここでマフラーから頻繁にバックファイアが出ていたスズキ・エンデュランスの2号車がピットインしました。
おそらく、EWCのタイトルのために続行させたのでしょうが、ここは止めるべきでした。完全に雨が降ってウェットパッチができていたので、バックファイヤが目立つほど、エンジンに熱がある場合のリスクを考慮すべきでした。
215周目、レースも残り数分というところで、2号車がウェットパッチに突っ込んだ瞬間、水蒸気のような煙が出ました。エンジンブローによってオイルが吹き出し、マシンはそのままコースアウトしました。
216ラップ目に、運営の重大なミスが出ました。あれだけの量のオイルがばら撒かれたのに、レッドではなくイエローフラッグを出したのです。217周目、10号車のジョナサン・レイがオイルに乗り上げてしまって転倒、ここで遅すぎたレッドフラッグによってレースは中断し、SCが入り、波乱の鈴鹿8耐は幕を下ろしました。
最初のアナウンスでは、赤旗中断のため、カワサキワークスの暫定優勝だということでした。しかし、グランドスタンドのトイレに行っている間に、5分以内にピットにマシンを戻さなければならないルールのため、ヤマハファクトリーの優勝とアナウンスされました。
EWCの方は、2号車がリタイヤしたので、チャンピオンがカワサキ・フランスチーム、2位にTSRホンダ、3位にスズキ・エンデュランスという結果が正式発表となっています。しかし、暫定で8耐の表彰式は、やってはならなかったと思います。というのも、この時点でのヤマハの優勝は、カワサキの抗議によってくつがえるからです。
やるべきではなかった表彰式
出典 https://race.yamaha-motor.co.jp/ ヤマハファクトリー21号車とアレックス・ロウズ 他の写真は全て筆者が撮影したもの
レースディレクションに問題のある8耐だったと思います。表彰式をやるなら、正式発表された後でないとスッキリしなかったです。
よく解らないのが、2号車がオイルを吹いた段階で、赤旗中断にしなかった件です。残り数分というところなので、チェッカーを降って感動を演出したかったのでしょうが、オイルと雨という危険な組み合わせのある段階で、イエローではなく、レッドフラッグでSCを入れるべきでした。
レースディレクションは、危険性のある場合は安全性を一番に考えるべきで、トップのチームが転倒した直後にレッドフラッグを出す意味が解りません。せっかくの表彰式ですが、途中で帰りました。
帰宅後、ネットでカワサキの優勝を知り、当然の結果だと思いました。EWCのルールでは、レッドフラッグの場合、1周前の結果が適用されるからです。こんな中途半端な状態で、表彰式をやる神経が理解できません。カワサキの1993年以来の26年ぶりの優勝が素直に喜べなくなってしまいました。
ヤマハファクトリーは、表彰式では優勝という扱いでしたが、実際には2位でしたし、3位表彰台だったTSRは実際には4位だったのですから・・・。最終結果は以下のとおりです。
第1位 | #10 カワサキレーシングチーム |
第2位 | #21 ヤマハファクトリー |
第3位 | #33 レッドブルホンダ |
第4位 | #1 TSRホンダ |
第5位 | #12 ヨシムラ・スズキ |
第6位 | #7 ヤート・ヤマハ |
第7位 | #634 ハルクプロ |
第8位 | #95 エスパルス・ドリームチーム |
第9位 | #19 モリワキ |
第10位 | #72 桜井ホンダ |
2019年の鈴鹿8耐は、稀にみるほどの激戦で最終ラップまで解らない面白い展開でした。しかし、まずいレースの運営の仕方のせいで、最後は苦い結末となってしまいました。それでも、8時間を走りきったライダーやチーム、関係者には敬意を表します。
今年の8耐は、雨で泣き、最後にレースディレクションのせいで後味の悪いレースとなったものの、近年稀に見るほどの接戦で楽しめたレース展開でした。ワークス3チームを脅かすプライベーターが来年は出てくることを期待します。
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