カワサキ KLX250は、生産終了となった今でも人気のフルサイズ250ccトレール車です。KLX250に搭載されていた水冷単気筒DOHCエンジンは、以前紹介したNinja 250SLにも流用された優秀なエンジンです。
目次 この記事の内容
- スパルタンなKLX250SR
- モデルチェンジでKLX250に名称を変更
- 排ガス規制の影響でマイルドになった最終型
- KLX230の発表で受け継がれたトレール車!
スパルタンなKLX250SR
出典 https://www.goobike.com/ KLX250SR
今でも人気のあるのが、カワサキKLX250/SRです。2ストロークのKDX220SRと併売されていた実績のあるマシンで、4ストローク車でありながら、1993年に販売された初代KLX250SRは乾燥重量109kgを実現しました。これは、セルを搭載しないことにより実現しました。
軽量化された車体に、新設計の水冷4ストロークDOHCエンジンを搭載し、最大出力はなんと30PS!闘う4ストとして、打倒2ストロークマシンとして足回りに倒立フロントフォークを採用するなど、まさにコンペモデルのような雰囲気のスパルタンな仕様が売りのマシンでした。
このKLX250SRのデビューによって、ライバルであったホンダがXLRからXR250にフルモデルチェンジしたといっても過言ではありません。それほど、オフ車にとって軽さは正義で、後のヤマハWR250Rに通じるコンセプトのマシンだったということになります。
1990年代中盤で2ストロークのデュアルパーパス車が席巻する中、普段使いをアピールすることなく、スパルタンさを売りにした4ストマシンは、他にありません。ただ、水冷化したため、転倒リスクはあったので、従来の空冷4ストマシンを好む層もあり、棲み分けはできていたと思います。
それでもカワサキは、使い勝手を考慮して、KLX250ESという派生型も1994年から販売開始しました。これは、スパルタンすぎたKLX250SRにマイルドな装備を搭載して、普段使いでの利便性を向上させたモデルです。
フロントフォークには、整備性の高い正立フォークを採用し、始動性を容易にするセルも搭載しました。ぶっちゃけ、堅実な装備を好む層には、このESの需要もあったのでしょう。
1997年には、空冷エンジンのよりマイルドなバイク、スーパーシェルパも販売されています。いかに当時は、オフ車の需要が高かったかが分かります。
モデルチェンジでKLX250に名称を変更
出典 https://www.kawasaki-motors.com/ 写真は最終型のKLX250
1998年には、モデルチェンジでKLX250に名称を統一しました。これにより、競技車両のKLX250Rと、公道走行マシンのKLX250の2種類になったということになります。
KLX250は、SRの倒立フォークはそのままに、セルと多機能デジタルメーターを搭載したバイクです。つまり、ESの使い勝手を備えて両方の需要をとりまとめたのが、KLX250というわけです。
車両重量は少し増加し、116kg(乾燥)となりましたが、最大出力30PSのパワーは健在でした。ぶっちゃけ、水冷エンジンの単気筒にしては吹け上がりのいいエンジンで、爽快感のあるマシンがKLX250でした。
そして、この2代目KLX250からモタードバイクの先駆けとなったD-TRACKERが販売されています。このバイクは、17インチのオンロードタイヤをKLX250に履かせたバイクです。
1999年には、2ストローク車が販売終了となり、2007年にはスーパーシェルパも排ガス規制のため生産終了となります。結果として、KLX250のみが250ccクラスのカワサキのオフ車となってしまいました。
排ガス規制の影響でマイルドになった最終型
KLX250 最終型
カワサキは、2008年に三代目となるKLX250(LX250S)を販売開始しています。このモデルの特徴は、排ガス規制の影響で重くなってしまった車重と、最大出力が24PSとよりマイルドになったことです。
装備重量と表記が変わったため、乾燥重量と違って、ガソリンやオイルや冷却水などが入った状態での重量となりますが、136kgとかなり重くなっています。これは、インジェクション化と排ガス規制をクリアするためにキャタライザー(排気を浄化するための触媒装置)を装備した重量増などが原因となっています。
筆者が現在乗っている後年のホンダCRF250Lと似たスペックになっているのが、この最終型の特徴で、スパルタンだった先代モデルよりもマイルドになってしまったともいえます。前年の2007年に販売開始されたヤマハWR250Rのような高性能マシンにしようとすれば、車両本体価格の高騰は避けられない時代でした。
カワサキは、あえてWRと競合することを避けて、セロー250とWRの中間を狙ったコンセプトで三代目KLXをまとめたのだと思います。つまり、普段使いの利便性と、水冷エンジンによる爽快感を手軽な価格(WRよりも14万円安い)で実現しました。
この狙いは、結果として当たり、2016年のファイナルエディションまで作り続けられるロングセラーバイクとなったのです。そして、このコンセプトは、ホンダが2012年から販売しているCRF250Lも踏襲しています。高回転まで回る水冷エンジンに、手頃な価格という意味で、この2台は似ています。
そして、KLXの水冷4ストローク単気筒は、カワサキのNinja 250SL/Z250にも採用されます。2014年から東南アジアで販売されている2気筒のNinja250よりも尖ったシングルスポーツモデルに、KLX250のエンジンをロード向けにチューンして搭載しています。
それだけ、このエンジンがスパルタンで高性能だった証明だと思っています。実は、筆者がCRF250Lを購入する前に、ホンダCB250RとこのNinja 250SLは検討車両の一つでした。
※KLX250最終型スペック表
KLX250 (LX250S) | |
最大出力kW(ps)/rpm | 18(24)/9,000 |
最大トルクN・m(kgf・m)/rpm | 21(2.1)/7,000 |
車体サイズ mm | 2,200×820×1,190 |
車両重量 kg | 136 |
燃料タンク容量 L | 7.7 |
使用燃料 | 無鉛レギュラー |
KLX230の発表で受け継がれたトレール車!
出典 https://www.kawasaki-motors.com/ KLX230
カワサキは、2019年の夏以降に、新型KLX230を販売すると発表しました。これは、2017年に生産終了したKLX250の後継バイクとなるようです。KLX230は、空冷4スト単気筒OHCエンジンで、最高出力19PS、車重は132kgとなるようです。
以前にも紹介したセロー225や、XR230など230ccクラスのオフ車は先例があります。オフロードは、パワーよりも乗りやすさが重視されるので、230ccで販売されるという所に、カワサキの狙いがあるような気がします。
また、転倒に強い空冷エンジンというところもポイントです。筆者のCRF250Lもですが、水冷エンジンの場合、ラジエーターを守るためのシュラウドが必須になります。オンロードは違い、転倒のリスクの高いオフロードでは、空冷エンジンということに価値があるのです。
完全新設計のエンジンとフレームということで、ヤマハのセローに対抗するバイクとなりそうです。こうなると、ホンダもCRF250Fというブラジルの空冷オフ車を国内販売するようになるかも?と思ってしまいます。なんにせよ、国内のオフ車のラインナップが増えるのは歓迎です。
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