前回から引き続き今回は、センスのいいアニメのエンディングを選んでみました。オープニングで大事なのは、高揚感やアニメの中身を視聴者に印象付けることでしたが、エンディングは、余韻が重視されます。
第1位 ぼくの地球を守って 『時の記憶』
出典 https://www.amazon.co.jp/
『ぼくの地球を守って』は、日渡早紀原作の1993年販売されたOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)です。個人的にProduction I.Gが製作した中で最も素晴らしい作品だと思っています。
圧巻なのが、エンディングです。当時のアニメーションの中でも白眉ともいえる出来です。菅野よう子作曲の『時の記憶』は、ただただ美しく情感溢れる素晴らしい曲でした。
菅野よう子のことを知ったのは、『カウボーイビバップ』からでしたが、後になってぼく地球(本作の略称)のエンディングを作曲していたことを知りました。作詞は錦織貴子、ARION、ボーカルはSEIKAです。
監督は、『風の名はアムネジア』、『ファイブスター物語』のやまざきかずおです。OVAぼくの地球を守っては6巻で終了し、原作の花とゆめコミックス全21巻の途中で終わっています。
1995年に発売した『総集編完全版~亜梨子から輪くんへ~』で、21巻の成長したキャラクターによって回想させる形で、OVAの内容をまとめつつ原作最終回の終わり方になぞらえた映像を追加しています。筆者は原作全巻を持っており、今でも好きな作品です。
第2位 シュヴァリエ 〜Le Chevalier D’Éon〜 “OVER NIGHT”
画像は公式ページより https://www.production-ig.co.jp/works/chevalier/
『シュヴァリエ 〜Le Chevalier D’Éon〜』は、2006年にWOWOW15周年記念作品として、放送されたアニメです。Production I.G製作で、監督は『るろうに剣心~明治剣客浪漫譚~』、『機動戦士ガンダムUC』の古橋一浩、シリーズ構成に作家の冲方丁です。
18世紀に実在した外交官で、スパイでもあったフランスの騎士デオン・ド・ボーモンが主人公です。姉のリア・ド・ボーモンの死の謎を、国王直属の機密局のメンバーとなって追い求めることとなります。
超常的な術を使う詩人という存在と何度も対決するのですが、その際に亡き姉の霊が降霊し、強力な詩の力と剣術で詩人を退けていきます。リアの名前は、デオンが女装していたときの仮の名だったそうで、史実では姉はいません。
デオンの女装(史実でも有名)も、姉の降霊という設定によって変身ヒーロー(漫画版の方が顕著)のような感じで描かれています。虚と実が巧みに入り交じったストーリー展開で、毎回楽しみにしていました。
エンディング曲”OVER NIGHT“は、日本のシンガーソングライター亜矢の曲で、実にシュヴァリエの雰囲気と合っています。エンディングの実在した人物の肖像画風の絵と、生年から没年の表記が歴史を感じさせてくれます。丁寧な作画と、練られた脚本の骨太な作品で、プロダクション I.Gの傑作アニメの一つです。
第3位 ∀ガンダム 『月の繭』
画像は公式ページより http://www.turn-a-gundam.net/
『月の繭』は、菅野よう子作曲、井荻麟(富野監督の別名)作詞、奥井亜紀ボーカルの∀ガンダムのエンディング曲です。実際にエンディングとして使われたのは、41~49話の間です。圧巻なのが、最終話(50話)のいわゆる「奇跡の6分間」です。
ターンエーとターンXの戦いの決着により、ディアナ・カウンターとミリシャの和平が結ばれました。人々は平和を取り戻し、月の女王ディアナ・ソレルは地球で静かに余生を過ごすことにします。ディアナは、コールドスリープと、月の高度な医療技術で1000年近く生きており、自分と瓜二つのキエル・ハイムに後事を託します。
その看取り役として、ターンエーのパイロットでディアナを崇拝しているロラン・セアックが選ばれます。ロランは、友人以上恋人未満の関係のソシエと別れ、ディアナの世話をすることにします。
「奇跡の6分間」は、4クールにわたって放送されたターンエーの壮大な話の顛末を見事にまとめています。その時に使われた曲が、月の繭でした。究極のテレビアニメのエンディングといってもいい6分間です。
ターンエーガンダムは、1999年にフジテレビ系列により放送されました。制作はサンライズ、監督は富野由悠季、メカニックデザインに大河原邦男と、『ブレードランナー』のシド・ミード、音楽は菅野よう子です。
第4位 みゆき 『想い出がいっぱい』
出典 https://www.amazon.co.jp/
『みゆき』は、1983年にフジテレビ系列で放送されたあだち充原作の同名漫画原作のテレビアニメです。僕はあだち充作品の大ファンで、アニメも初回から見ていました。
主人公若松真人とその血の繋がらない妹のみゆきと、真人のガールフレンドの鹿島みゆきの三角関係を描いた作品です。あだち漫画では珍しくスポーツの要素のない純粋なラブコメディ漫画です。
『想い出がいっぱい』は、音楽デュオのH2Oの曲として有名ですが、実際に作曲したのは、鈴木キサブローで、作詞は阿木陽子です。ぶっちゃけ、みゆきといえばこの曲のイメージが強く、H2Oの最大のヒット曲で当時のオリコンチャートも6位に入るほどの人気でした。
制作はキティ・フィルムで、監督は「タツノコ四天王」の1人西久保瑞穂(利彦)です。余談ですが、他のタツノコ四天王の押井守とうえだひでひとの協力で、『赤い光弾ジリオン』を西久保監督が制作したことにより、後のProduction I.Gに繋がっていきます(タツノコ制作分室より派生)。
第5位 伝説巨人イデオン 『コスモスに君と』
出典 http://www.ideon.jp/
『伝説巨人イデオン』は、『機動戦士ガンダム』の生みの親である富野喜幸監督の最高傑作です。話の壮大さ、テーマの深さは最近のアニメでもイデオンを超える作品はありません。
製作は日本サンライズで、監督は富野喜幸、キャラクターデザインを『聖戦士ダンバイン』の湖川友謙、音楽を『ドラゴンクエスト』のすぎやまこういちが担当しています。
イデと呼ばれる無限エネルギーを巡って、地球からの移民であるソロ星の人々と、バッフクランという異星人による愛憎劇は、2つの銀河系を巻き込む戦いになっていきます。
イデオンという名前は、ギリシャ文字のようなイデのゲージ(スクリーン)のマークから来ています。実際の由来は、古代ギリシャの哲学者プラトンのイデアから持ち込まれたものです。Bメカパイロットは、非業の死を遂げることでも有名です(Bメカ魔のシート)。
『コスモスに君と』は、作曲すぎやまこういち、作詞井荻麟(富野監督の別名)、ボーカルを戸田恵子が、それぞれ担当しています。イデオンの悲惨な話と完全にリンクする歌詞と、すぎやまこういちの曲はとても見事です。
第6位 幕末機関説 いろはにほへと 『愛の剣』
出典 http://www.irohanihoheto.jp/
『幕末機関説 いろはにほへと』は、2006年に動画配信サービスGyaOで放送されたWebアニメで、伝奇的要素のある時代劇アニメです。殺陣のシーンが本格的でした。
製作はサンライズで、監督は『装甲騎兵ボトムズ』の高橋良輔です。エンディングテーマ『愛の剣』は、シンガーソングライターの白井貴子の曲です。いろはにほへとの世界観と見事にリンクする曲でした。
同じ高橋監督のボトムズのエンディングの出来も素晴らしく、どちらを紹介するか迷いましたが、曲の好みでいろはにほへとを選びました。
第7位 ルパン三世(ファーストシリーズ)『ルパン三世主題歌Ⅱ』
出典 https://www.lupin-3rd.net/
1971年に日本テレビ系列で放送された『ルパン三世』は、モンキー・パンチの同名漫画が原作のテレビアニメです。近年の『カウボーイビバップ』の製作メンバーにもファーストシリーズの影響がうかがえます。
製作は、東京ムービーで、監督は『オバケのQ太郎』、『ラ・セーヌの星』の大隅正秋で、3話目以降はあの宮崎駿と高畑勳(ご冥福を祈ります)に交代しました。ファーストシリーズのルパン三世が、大人向けのハードボイルドな作風だったのは、大隅正秋とモンキー・パンチの原作の影響が大きいです。
エンディングの演出では、峰不二子のバイク(ヴィンセント 1955と思われる)が夕日をバックに疾走するといった斬新なエンディングです。『ルパン三世の主題歌Ⅱ』も、東京ムービー(現トムス・エンタテイメント)らしい、渋くて余韻の残る名曲です。
ルパン三世の主題歌Ⅱは作曲を山下毅雄、作詞を東京ムービー企画、ボーカルはチャーリー・コウセイがそれぞれ担当しています。不二子のバイクのSEは、各話毎に様々なバージョンがあります。奥田民生がカバーした曲としても有名です。
第8位 カウボーイビバップ “THE REAL FOLK BLUES”
出典 http://www.cowboy-bebop.net/
CSN&Yの名盤デジャ・ヴをイメージしたブルーレイのジャケット(笑)
『カウボーイビバップ』は、オープニングアニメでも1位を獲得した作品です。エンディングの”THE REAL FOLK BLUES”も菅野よう子の作曲です。作詞は、岩里祐穂、ボーカルは山根麻衣(麻以)です。
サンライズの中でも屈指の出来のエンディングだと思います。主人公スパイクの過去を写真のように切り取っています。モノクロが、過去であることを強調しています。そして名曲、リアル・フォーク・ブルースが哀愁漂うエンディングのイメージにこれ以上ないくらい合っています。
筆者(tkd69)自身のThe Real Folk Bluesのカバーです。
スパイクの過去は、25話と最終回である26話で明らかにされます。スパイクは、ずっとこの過去にとらわれ続けていています。ビバップ号のメンバーとなったスパイクが、決別できずにいたものと対決するとき、この物語は終わるのです。
第9位 機動戦士ガンダム00 “trust you”
出典 http://www.gundam00.net/
『機動戦士ガンダム00』は、2クールのファーストシーズンを2007年に半年かけて放送し、残りの2クールをセカンドシーズンとして2008年からMBS・TBS系列で放送しました。
“trust you“は、セカンドシーズンの後半15話から24話に使われていたエンディング曲です。主のないジャケットが、各登場人物の関係性を表しています。このエンディングの最後の00ガンダムの姿は、実は劇場版のラストに繋がっています。
trust youは、TATE&MARKIEが作曲、作詞をしており日本のシンガー伊藤由奈がボーカルを担当しています。ガンダム00の世界とマッチした曲で、かなり印象深いエンディングです。
機動戦士ガンダム00は、製作はサンライズ、監督は『UN-GO』、『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』の水島精二です。
第10位 はじめ人間ギャートルズ 『やつらの足音のバラード』
出典 https://www.tms-e.com/
『はじめ人間ギャートルズ』は、園山俊二の漫画『ギャートルズ』と『はじめ少年ゴン』を原作にしたテレビアニメです。1974年からTBS系列で、1975年からはNET(テレビ朝日)で放送されました。
製作は東京ムービー(現トムス・エンタテイメント)で、音楽に定評のある作品の多いアニメスタジオです。ルパン三世シリーズや、『スペースコブラ』のセンスのいい曲も素晴らしいです。このはじめ人間ギャートルズでは、1970年代中盤の時期に、かまやつひろし(ムッシュかまやつ)の作曲した曲をOPとEDで使っています。
『やつらの足音のバラード』は、作詞を原作者の園山俊二が、ボーカルをちのはじめが担当しています。印象的なムッシュかまやつの泣きのギターに、シンプルな歌詞、ラスコー洞窟の壁画のような絵がなんともいえない余韻を残します。
低予算ならではの工夫
出典 https://www.production-ig.co.jp/
ここまで紹介したエンディングを見ると、明らかにオープニングよりも動画が少なく、テロップの方が多いことに気付きます。視聴者に見てもらうためには、オープニングの動画の方に力を入れざるをえないのです。
しかし、4位のみゆきのように、曲の内容とシンクロさせて、写真のような絵と中央の木のコントラストによってエンディングを印象深いものにするなど、様々な工夫がされています。
2位のシュバリエでは絵画調、10位のはじめ人間ギャートルズでは、ラスコー洞窟壁画など、過去の芸術を参考にした手法などもその一例といえます。
今回の中で飛びぬけて1位のぼくの地球を守ってのクオリティが高いのは、オープニングアニメのないOVA作だったからです。実質的に、エンディングがオープニングのように力を入れる例は少ないのですが、OVAならではの試みともいえます。
アニメのオープニング、エンディングのランキングは、これで終了します。ここで紹介出来なかった映像と曲(挿入曲など)もありました。映像には音楽がつきもので、これからも様々な作品を彩ってくれるでしょう。
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