ようやく、録画しておいた2018年のMotoGP第2戦アルゼンチンGPを見ることが出来ました。荒れたレース展開により、物議を醸している今回のレースでいったい何が起きたのでしょうか?
荒れたレース展開
レース当日は、雨の影響で二転三転しました。Moto2が終了してから徐々に雨が強く降り始め、ウェットレース宣言が最初にされました。ウェットレース宣言とは、路面が濡れていることを前提にレースをすることです。
これにより、雨が強くなってもレインタイヤの交換などでレースが中断されることはありません。しかし、フォーメーションラップ前のグリッドでは、徐々に晴れてきていたので、ポール・ポジションの、プラマックレーシングのジャック・ミラー選手が、スリックタイヤを履いてくるなど、レースは混乱が予想されました。
この段階で、グリッド上でタイヤを交換し始めるチームが出てきたりしたので、オフィシャルは、レースを中断し、一度全車をピットに戻しました。問題はオフィシャルが、一度ウェットレース宣言を出しておいて、本来ドライ用のスリックを履いて有利だったミラー選手に不利になるような裁定をしたことです。
その結果、グリッド位置を調整し、ミラー選手を他の選手よりもかなり前の位置でスタートさせることになりました。レースは、結局15分遅れでスタートすることになり、25周から24周に周回数も減らされることとなりました。つまりスタート前からバタバタしていたわけです。
ディフェンディングチャンピオン・マルケスのミス
昨年のチャンピオン マルク・マルケス選手
そして、オープニングラップも終わり、レース前のグリッドに各ライダーがついたところで、昨年のチャンピオンだったマルク・マルケス選手のホンダ RC213Vのエンジンがストール(停止)しました。
この段階で、マルケス選手は、グリッドの最後尾につくか、ピットスタートをするかのどちらかを行うべきでした。しかし、マルケスは押しがけでエンジンをかけ、逆走し6番手グリッドに付き直したのです。
いやいや、これは完全にアカンやろ!後ろの選手や左右の選手に迷惑なだけじゃなく、レースの規定に違反する行為でした。今から考えれば、この時点からなにかがおかしかったと思います。
というのも一度スタートを遅らしているとはいえ、もう一度仕切り直しして、ペナルティとして上記の処置をオフィシャルが行うべき問題なのです。マルクは、確かにこの時点でやってはいけない行為をしていますが、オフィシャルも毅然とした態度でレースを運営する必要がありました。
レースはスタートし、スタートしましたが、ホンダのダニ・ペドロサ選手と、ヤマハのヨハン・ザルコ選手が接触しそうになり、ペドロサ選手がウェットパッチ(路面の濡れている部分)に乗っかっていきなり転倒しました。
そして、3周目にトップのマルケスに対して、ライドスルーペナルティが課せられました。一度ピットに入って、スタートするというライドスルーは、スプリントレースでは、非常に厳しい裁定です。まあ、ここは逆走してグリッドについたマルケスの過失からすると当然だと思います(ホントはスタート時に課すべきペナルティですが)。
今回13位でMotoGP初入賞した中上貴明選手
マルケスは、19位でレースに復帰しますが、これで勝利は絶望的になりました。本来ならば、ここで無難にポイント獲得に切り替えるべきコンディションの路面状態でしたが、マルクはまだ勝つ気でいたのです。
問題は、レース中盤の9周目に起きました。マルケスは、18番手のアプリリアのアレイシ・エスパルガロ選手を追い抜こうとして、無理やりインから強引に抜きにかかり、マシンは接触しました。
エスパルガロは、アウトにはらむものの、転倒は免れました。しかし、路面が濡れている状態での無理なインからの突っ込みは危険です!いくらマルクの方が速いとはいっても、ラインの自由度の少ない状態でやっていいことではありません。そして、マルケスはポジションを一つ下げるように指示されます。
そして、悪夢はレース残り4周というところで起きました。マルケスは、7番手まで浮上し、6位の生ける伝説バレンティーノ・ロッシ選手(ヤマハ)のすぐ後ろまできていました。
ところがマルケスは、ここでも強引にインから抜きにかかり接触しました。ロッシも粘りましたが、アウト側のグラベルにひっかかって転倒します。マルケスは片手を上げて謝罪しますが、ロッシは激怒します(そりゃそうだ)。
インが空いていないのに、無理やりねじ込んだら誰でも転倒します!明らかに、マルケスの走りはおかしかったです。ロッシは、レースを続行するも19位まで順位を下げます。当然ながらマルケスには、30秒ものペナルティが課せられ、最終的な順位の5位からの大幅ダウンの18位となり、ノーポイントに終わりました。
救いはクラッチローの優勝と中上入賞!
優勝したカル・クラッチロー選手
マルケスが焦りによって奇妙な?1人相撲をしている間、スズキのアレックス・リンス選手や、ヤマハのヨハン・ザルコ選手、そしてホンダのカル・クラッチロー選手による熾烈な優勝争いが繰り広げられていました。
順位が目まぐるしく入れ替わる中、残り2ラップでリンス、ザルコを抜きクラッチローが首位になります!そのままフィニッシュし、クラッチロー、ザルコ、リンスというリザルトで波乱のレースは決着します。
クラッチローは中盤、タイヤを温存していたのが勝負どころで功を奏しました。クラッチローは、冷静且つ大胆なレース運びで、優勝したのだと思います。ファステストを連発していた荒れた展開のマルケスより、冷静にレースをコントロールしていたクラッチローが勝利するのは必然でした。
マルケスは、不運でしたが、色々と強引すぎました。特にウェットパッチがところどころ残るコース上での相手が回避できない状況での強引な追い抜きは危険です!レースはフェア(公正)に行われるべきであり、前年のチャンピオンといっても例外ではありません。
しかし、どんなときでも諦めずに前を狙うアグレッシブなマルクの走りは、魅力的ですし、攻撃的なライディングを止めてもらいたくはありません。今回のような相手が危険な攻め方を普段はしていない(少々強引ではあるけど)ので、次のレースから立て直して欲しいです。
前回優勝のアンドレア・ドヴィツィオーゾ選手(ドゥカティ)は、6位フィニッシュで終わりました。ドゥカティは、苦手なコースを攻略することが、重要なポイントになってくるでしょう。
そして、アジア勢ではハフィス・シャリーン選手(ヤマハ)が、またまた9位入賞です。同じく、日本の中上貴明選手(ホンダ)も13位入賞とMotoGP初ポイントを2戦目で獲得しました!
クラッチローの優勝と、中上のポイント獲得で、LCRホンダは、チームとしてトップに立ちました。好調だったホンダにポイントをもたらしたのは、皮肉にもサテライトチームだったというわけです。
今回は想像以上に混乱したレースでした。MotoGPを運営するドルナには、もっと毅然としたレースディレクションが求められると思います。
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