どんな時代にも天才というのは必ずいます。マイク・ブルームフィールドは、1960年代の白人のギタリストの中でも抜き出たテクニックとトーンを持つギタリストでした。ホワイトブルースとは、黒人がやっていたブルースを白人のギタリストがやっていたことを現す名称です。
■ホワイトブルース界最高のギタリスト
マイク・ブルームフィールドは、1960年代初頭にポール・バタフィールド・ブルース・バンドに加入し、エルヴィン・ビショップとの息の合ったツインギターで頭角を現していきます。
1965年には、Highway 61 Revisitedで、ボブ・ディランのアルバムに参加し、アル・クーパーと知り合います。そして、翌1966年にポール・バターフィールド・ブルース・バンドのセカンドアルバム”EAST-WEST”が発表されます。
9曲目のEAST-WESTで、東洋のフレーズと西洋のフレーズを弾き分けるという離れ業を成し遂げています。このあたりは、ラヴィ・シャンカール(インドのシタール奏者)の影響が大きいでしょう。極上のトーンのブルースギターも健在で、エルヴィン・ビショップとのかけ合いも最高です!
マイクは、この後1967年に新しいバンド、エレクトリック・フラッグを結成するもののファースト・アルバムをリリース後脱退します。
■アル・クーパーとのセッション
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1968年にロックにとって記念碑的作品が世に出ました。”Super Session”というアルバムは、マイク・ブルームフィールドと、アル・クーパーがジャムセッションする様子をスタジオ盤で出すという画期的な試みでした。
3曲目以外は、A面ほぼインストという強烈なアルバムでマイク・ブルームフィールドとアル・クーパーのオルガンの強烈なコンビネーションはもちろんのこと、エレクトリックフラッグ時代からのベースのハーヴェイ・ブルックスやドラマーのエディ・ホーもしっかりとしたリズムで支えています。
しかし、一番凄いのはマイク・ブルームフィールドのギターです。特に1,2,5のブルースギターは、クリーンからクランチの極上のトーンです。おそらく、名器と呼ばれた59年製のギブソン・レスポールとフェンダー系のアンプの組み合わせだろうと思います。
しかし、5曲目のReallyを録り終えた時点(なんとセッション2日目!)で、当時不眠症だったマイク・ブルームフィールドが姿を消すというとんでもない事態が起きます。
そこで、後半であるB面にはスティーヴン・スティルスが呼ばれます。スティーヴン・スティルスは、バッフォロー・スプリングフィールドのギタリストです。B面のキモは7曲目の”Season of The Witch”(魔女の季節)です。
B面の曲の大半はボーカル曲です。ギターは、リード主体というよりバッキング込みのイナタい雰囲気で、マイク・ブルームフィールドとは違ったタイプのプレーヤーです。
スティーヴン・スティルスは、このセッションの後にCSN&Yで歴史的名盤「デジャ・ヴ」を発表します。個人的に好きなギタリストの一人です。
これより後にリリースされた”The Live Adventure of Mike Bloomfield and Al Kooper”(フィルモアの奇蹟)の1968年のフィルモア・ウェストのライブでも、マイク・ブルームフィールドが3日目に不眠症でダウンし、代役としてエルヴィン・ビショップやカルロス・サンタナが呼ばれました。
その時、アル・クーパーが観客にマイクがいなくなった経緯を説明するのですが、不眠症のマイクに対して「そんな状態でもライブをしてくれたことは本当に尊敬してるんだけど」とMCで言っていて非常に困惑している様子がわかります。
スーパー・セッションとフィルモアの奇蹟は、ロックにおけるジャム・セッションブームを引き起こしたアルバムでした。オールマン・ブラザーズ・バンドのAt Fillmore Eastと並ぶライブアルバムが、フィルモアの奇蹟なのです。
■マイク・ブルームフィールドのその後
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マイク・ブルームフィールドは、その後、ソロアルバムやライブ盤を発表したりしますが、1981年に麻薬中毒のために38歳で亡くなります。偉大な足跡を残したマイク・ブルームフィールドですが、ちゃんとしたバンドに在籍していたら、もう少し違った結果になっていたかもしれません。
マイク・ブルームフィールドの実力は、当時最高のギタリストと呼ばれていたエリック・クラプトンに比肩するほどのものでした。ジミ・ヘンドリックスが革命的なギタリストなら、温故知新というべきギターを弾いていたのがマイク・ブルームフィールドだったのです。
特に、トーンの素晴らしさは他にない魅力を持っていました。不眠症や麻薬中毒がなければ、ちゃんとしたメンバーを集めてスーパーバンドを作っていたかもしれません。そういったムラっ気を含めての天才であり、マイク・ブルームフィールドの魅力なのです。
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ブルームフィールドは、常にスローブルースで納得させるソロを弾くことができる、という、ジミヘンにもクラプトンにもできない芸当ができました。ジミはいい時は本当に素晴らしいのですが、うまくいかない時も多いし、クラプトンは職人的には完璧なんだが「イマイチ」も多い。ブルームフィ―ルドのプレイはァ―シーなものからモダンなフィーリングのものまであるが、彼はどのような場合も、決してありきたりな白人ロックにはならず、黒人とも違う、一種の昇華されたブルースというものになりました。あと独自の、モードによる速弾きを活かしたプレイでの孤高の音楽的世界も持っており、再評価されるべきアーティストだと思います。
ハイメさん、はじめましてこのブログを運営しているp90dogearことtkd69です。僕のブルームフィールドのイメージは、ブルース弾かせても、モダンなソロ弾いてもうまいギタリストというものです。バターフィールド・ブルース・バンド時代のテレキャスターや、後のレスポールを使った絶妙なトーンなど本当に素晴らしいギタリストです。
クラプトンやジミヘンほど、日本では有名ではありませんが、ハメイさんのように、音楽に詳しい人の評価が高く、もっとブルームフィールドの知名度が上がって欲しいと思います。
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