よく言われるのが、UK(イギリス)とUS(アメリカ)のロックは、同じ英語圏でありながらシーンが違うということです。ロックのチャートでよくある話なのですが、UKとUSでは順位ががらっと違っていたりします。
■UK ROCKの系譜とは?
1970年代の世界3大バンドのクィーンは、アメリカでチャートでトップになったのは、意外にも8枚目の”The Game“でした。クィーンの有名な6枚目”News of The World“ですら、全米3位でしたのでアメリカのシーンと、イギリスとの違いによるチャートの差は明確です。
イギリスには、1960年代、ビートルズやキンクスなどのブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれるアメリカのロックシーンにUKロックが殴りこみをかけた現象がありました。
ローリング・ストーンズやクリームのようにアメリカの黒人音楽であるブルースに強い影響を受けたバンドがいる一方で、ブリティッシュなテイストのあるビートルズやキンクスなどのバンドがいたのです。
「どうちゃうねん!」って友人に聞かれたら、キンクスの名曲”Waterloo Sunset“を聴いてもらっています。この曲は、テムズ川に架かるウォータールー橋の情景を書いた曲です。ウォータールー・サンセットは、イギリスの文化テイストでロックを表現した素晴らしい曲です。
UK ROCKは、簡単にまとめるとイギリスの文化的背景を持つバンドによるロックの表現全般のことです。その中でもイギリスの持つロックに対する先進性だとか、風土的テイストのあるバンドが、特にUKらしいと言われています。
そして、UKロックの血脈は1970年代のクィーンや、1980年代のニューロマンティックや、90年代のガレージロックなどに受け継がれていくのです。2001年にレディオヘッドが問題作である”KID A”を発表して以降のUKロックとして現在も輝きを放っているのが、MUSEなのです。
■Museの特徴とは?
左からMUSEのマシュー、ドミニク、クリス 奥のキーボードはサポートのモーガン
Museは、イギリスの南西部で生まれたバンドで、1990年代初頭にギター・ボーカルのマシュー・べラミー、ベースのクリス・ウォルステンホルム、ドラムのドミニク・ハワードで結成されました。
1994年に地元のバンドコンテストで優勝して、バンド名をミューズと改名し、1999年にジョン・レッキーがプロデュースしたファーストアルバム”Showbiz“は、NMEアワーズの新人賞を獲得するなどの評価を得ました。
ミューズがデビューした1999年は、レディオヘッドやオアシスなどのロックバンドが全盛の頃で、僕もこの頃のミューズがここまで影響力のあるバンドに成長するなど思ってもいませんでした。
よくバンドのエッセンスが知りたければ、ファーストアルバムを聴けといわれます。これは、ある意味的確な言葉で、ミューズの場合は、官能的なグラムロックのテイストと、オルタナティブロック以降の音楽を3ピースで表現したバンドという印象を受けました。
特に、ボーカル、ギターのマシュー・べラミーのファルセットによるハイトーンボーカルと曲のゴシックな感覚は、聴いてすぐに「イギリスっぽいな!」と思いました。
■名盤を連発!世界的なバンドとなったMuse
ベースのクリス・ウォルステンホルム
ミューズは、セカンドアルバム”Origin of Symmetry”から、シンセサイザーを積極的に取り入れたり、サウンド面での厚みを重視していくようになります。そして、2003年発表のサードアルバム”Absolution“で、全英1位となるヒットを記録し、全世界で300万枚を売り上げます。
この頃になると、ポストロックなどの打ち込み系の音楽が徐々に主流になってきていました。そんな中、ロックバンドとしてのスタイルを堅持しつつ、新しい音楽性を開拓しようとしているミューズのアルバムを楽しみにしているロックファンは多かったのです。
そして、4枚目の”Black Holes and Revelation”も名盤レベルの出来で、全英1位、全米2位のセールスを記録します。2009年には、僕が個人的に一押しのアルバム、”The Resistance“をリリースし、バンドの音楽性は更に高まります。
ザ・レジスタンスは、曲の流れの良さと、2曲目の”Resistance”、6曲目の”Unnatural Selection”、最後のメドレーと名曲揃いのアルバムです。マシューの高速タッピングなどの独特のギタープレイや、EDMなどの要素も取り入れて、21世紀のロックというべき革新的な意欲作です。
ただ、このアルバム以降は音楽配信サービスが主流になり、CDによるセールスは落ち込む時代となっていきます。6枚目のアルバム”The 2nd Law”は、全世界で1位のセールスを記録しますが、全英で25.5万枚と最盛期の全英106万枚より大きく落ち込むことになります。
そして、2015年に発表された”Drones“も5枚目のレジスタンスに劣らない名盤ですが、全英売り上げは1位の17万枚と、ストリーミングが主流となった時代としては健闘しています。
■マシュー・べラミーの機材について
マシューとMansonのカスタムギター
マシューは、Mansonと呼ばれるギターを使用しています。このカスタムギターは、カオスパッドをボディに装着しているものや、MIDIのないマットブラックの2ハム仕様のギターもあります。
マシュー・べラミーのシグネイチャーモデルであるManson MB-1は、アルダーボディにボルトオンのV型ネックと、フェンダー テレキャスターカスタムのような外観です。
このモデル以外にも、フロントをP-90にしたギターや、ボディのトップにアルミを貼ったモデルや、MXR フェイズ90を内臓したものまで、ヒュー・マンソンがカスタマイズしたギターを複数使っています。
また、PODなどの最新のギターアンプシュミレーターや、ローランドのギターシンセ、ロックトロンのスイッチングシステムなど、新時代のギターヒーローらしいデジタル機材を使っています。
MUSEは、最近のバンドの中でもお気に入りで、新しいアルバムを毎回楽しみにしています。それにしても、ロックもまだまだ進化する余地があるのだと思わせてくれるバンドです。
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