さっそく観賞してきました!クリストファー・ノーラン監督最新作DUNKIRK ダンケルクを!この作品は、第二次世界大戦で、実際にあった空前絶後の撤退戦をもとに制作された映画です。
■ダンケルクの戦いとは?
1940年5月、ドイツに敗れた連合軍はフランス北部のダンケルクまで追い詰められました。当時のイギリスの首相、ウィンストン・チャーチルは40万人の兵士を脱出させる「ダイナモ作戦」を強行します。
ドイツ軍は、機甲師団を温存し、空軍によるダンケルク攻撃を実行します。結果的には、砂がクッションとなって爆撃の効果が薄れ、イギリス兵が死亡したのは1万人といわれています。撤退できたのは、36万人で、残り3万人が捕虜となりました。
人的被害を回避できたという点において、この作戦は大成功だったといえます。初期のヨーロッパ戦線は失敗続きのイギリス軍ですが、ダイナモ作戦は、ジョンブルの意地を見せた成功例です。チャーチル自身が書いた「第二次世界大戦」で、ダンケルクに撤退を決めたのは、イギリスの指令官ゴート卿(ジョン・ヴェレカー)であるとされています。
■迫力の映像!ダンケルクの再現!
今回、ダンケルクを観賞したのは天王寺アポロシネマです。平日の昼間なので、客はそこそこでしたが、年齢層は幅広く、クリストファー・ノーラン監督の知名度の高さをうかがわせました。ノーラン監督は、「ダークナイト」や「インターステラー」などの作品が代表作です。
僕がダンケルクを観にいったのは、歴史的に名高い「ダイナモ作戦」を今のハリウッドがどのように撮ったのか興味があったからです。予想外だったのは、陸での撤退戦の様子を思い切りカットしたことです。陸戦、特にカレーの防衛戦がなければ撤退は成功しませんでした。当然ながらそこを描写するだろうと思っていたのですが、潔くカットされていました。
そして、冒頭での一兵士の視点を重視するやり方を、海においては民間船の船長の視点、空では、スピットファイアのパイロットの3人で続けたことです。ここで重要なのは、撤退を指揮したゴート卿ではなく、一兵士や民間人の視点が重視されたことです。従来の戦記物では、活躍するのはこの場合、ゴート卿やアレキサンダー少将でしょう。
ノーラン監督はあえて、ダンケルクという作品を戦術や、戦略といった観点で語らなかったのだと思います。撤退するときの困難を描写するなら、将官ですらない一兵士の方が、リアリティを感じられるからです。
ダンケルクには、2つの重要な側面があります。次々と起こる困難によるパニック映画としての緊迫感と、スピットファイアのパイロットや、民間船の英雄的行動です。戦争映画は、作戦を指揮する立場の主人公の視点から語られるものと、一兵士の立場で不条理な戦場を描写するものに分かれます。
ダンケルクは、その2つのカテゴリーだと後者に近いですが、反戦を描くものではありません。撤退戦という、極限の状態からサバイバルするということが、様々な要素によって支えられていたという事実を描写することがテーマだからです。
トミーというイギリスの二等兵を救出するのは、空軍であったり民間船の協力なしには実現できなかったのです。結局のところ、生き残ることこそが、イギリスのその後の勝利に繋がるのです。戦場にかかわらず、友軍を救出するために動いた民間船の船長や、スピットファイアの燃料が切れるところまで友軍を助けたパイロット、極限状態から生還したトミーを描けば、ダンケルクという戦場を知ることができるのです。
この映画の大きな見せ所は本物のスピットファイアを使った空戦や、燃え盛る輸送船からの脱出などの臨場感溢れる映像です。難しく考えることよりもノーラン監督によって生み出されたヒリヒリした戦場を体感する映画だと思ってください。
■ダンケルクに登場した戦闘機について
スーパーマリン スピットファイア
メッサーシュミット Bf109
ハインケル He111
ダンケルクには、第二次世界大戦の名機といえる戦闘機が登場します。イギリス空軍の誇る戦闘機スピットファイアは、主役級の活躍をしていました。劇中で船長が、「ロールスロイスのエンジン音」とおっしゃってましたがその通りです。この時のスピットファイアは、最新鋭機で配備されている数にも限りがありました。
1940年では設計の古臭いハリケーンの生産量の方が多く、バトル・オブ・ブリテン(1940年7月からのイギリス本土の戦い)においても3分の2がこの機体だったとされています。ハリケーンは構造が単純だったため、量産が容易だったのです。スピットファイアは、ダンケルクにおいては、最新鋭機だけに機体を調べられないように燃やされる描写がありました。
メッサーシュミットBf109は、ドイツ空軍の誇る名機です。単葉(主翼が一枚だけ)で、全金属製のモノコック構造、引込脚や、密閉式キャノピーなど、第二次世界大戦中の戦闘機のベンチマークといえるスペックを備えていました。
ドイツ軍の主力戦闘機であり、エーリヒ・ハルトマンのようなエースパイロットを輩出した名機です。この映画では、敵機として登場し、スピットファイアと激戦を繰り広げます。
ハインケル He111は、ドイツの双発(エンジン2基)爆撃機です。大戦初期の主力爆撃機であり、バトル・オブ・ブリテンでは数多くのHe111が撃墜されました。
■ダンケルク感想
Bf109とスピットファイアの空戦が見事でした!パニック映画的な手法で撮られた輸送船からの脱出なども手に汗握る出来でした。平日割り1,100円だったので充分に楽しめた映画でしたが、気になるところもありました。
1.時系列がややこしい
わざわざ場面を切り替える必要があったの?というくらい分かりづらいです。異なる3つの視点から一つの出来事を立体的にとらえようとしたのでしょうが、空戦→民間船→トミーという場面転換が、いちいち時間を巻き戻すのでややこしかったです。
2.数が足りない
ダンケルクにおいて、空戦は重要なファクターでした。イギリス空軍も、虎の子のスピットファイアを戦線に出すくらいでしたから。スピットファイア、ハリケーン合わせて2~30機くらいは飛ばしてるんじゃないかと(汗)。劇中では、3機だけだったので数が足りません!
1については、演出上のスパイスのつもりだったのでしょう。もう少しシンプルにしても良かったと思います。2については、クリストファー・ノーラン監督のCG嫌いが裏目に出たのではないでしょうか?
とはいえ、これだけの規模でダンケルクの戦いを再現しているのですから、映画館に観にいく価値は充分あります。ヨーロッパ戦線に興味のある人には、おすすめです!
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