今回は、Rickenbackerについて考察したいと思います。先日試奏したmodel 330の印象が頭から離れず、色々調べた結果、ギブソン、フェンダーに対抗するギターメーカーである理由が分かりました。
目次 この記事の内容
- 初のリッケンバッカー試奏は330
- リッケンバッカーとは?
- ジョンの325とビートルズのリッケンバッカー
- Model 330の特徴
- リッケンバッカーを愛用したギタリスト
- 現代でも色褪せない唯一無二の存在感
初のリッケンバッカー試奏は330
筆者が投稿したモデル330の試奏動画です。
最近行った島村楽器セブンパーク天美店に、Rickenbacker 330 Firegloが置いてありました。赤を基調にしたサンバーストで、独特のセミホローボディ、パワーのある330は、前から一度弾いてみたかったため、試奏することにしました。
最初は、リッケンバッカー独特のつまみの位置に戸惑い、特に小さいつまみ(フィフスコントロール)の意味が分かりませんでした。しかし、店員さんと試行錯誤した結果、フロントのみに効くフィルターのようなものだと分かりました。
リードをバリバリ弾くタイプがあまり使っている印象はなかったのですが、独特のボディ形状はフェンダーのストラト以上にハイポジションで弾きやすく、ミディアムスケールということもあり意外にもリードにも向いていると思いました。
更にパワーの上がった330タイプのPUは、P-90とも癖の違う独特の粘りがありつつも、歯切れのいいトーンがありました。ブリッジカバーのせいで、ミュートはしづらかったのですが、カバーを外せばカッティングにも向いているような印象を受けました。
ローズウッド指板なのに塗装されていたり、つまみの位置がギブソン系とは大きく異なっていたり、異彩を放つこのギターに惹かれるギタリストが多い理由が分かったような気がしました。
リッケンバッカーとは?
Rickenbackerとは、アメリカのカリフォルニア州にあるギターメーカーで1931年からの老舗です。創始者の1人のアドルフ・リッケンバッカーと第一次世界大戦のドイツの撃墜王エディー・リッケンバッカーにちなんで命名されました。
世界初の商品化されたエレクトリック・ラップスティールギターを1932年より販売するなど、先進的なメーカーでしたが、1952年にフェンダーとも関わりのあったF・C・ホールが買収します。
そして、ロジャー・ロスマイルズが入社します。彼は後にフェンダーにヘッドハンティングされ、フェンダーのフルアコやコロナドなども手がけるギター設計者です。時代はエレクトリックギターに移行しつつあり、リッケンバッカーもホロー構造のギターを中心に開発していきます。
後にビートルズのジョン・レノンが使用するリッケンバッカー 325や、最初期の12弦エレキギターである360/12などもこの時期に製作されたものです。有名且つスタンダドなベース4001も1961年に販売されました。
1960年代にビートルズのメンバーが使用した影響により、リッケンバッカーは世界中から注目されました。また、1970年代のイギリスのミュージシャンがリッケンバッカー330を使用したり、4001ベースを著名なベーシスト(イエスのクリス・スクワイア)が使用するなど影響力は健在でした。
現代においても尚、フェンダーやギブソンとは異なる個性を持つメーカーとして、存在感を持っているのが、リッケンバッカーという楽器メーカーなのです。
ジョンの325とビートルズのリッケンバッカー
ジョン・レノンとリッケンバッカー325
ここからはリッケンバッカーのギターについて語っていきたいと思います。まず、ビートルズのジョン・レノンが愛用したリッケンバッカー 325についてです。1958年にCapri325という名前で楽器ショー(NAMM Show)にて紹介されたギターが325の元のモデルで、ボディ材や仕様は各年代で異なります。
共通しているのが、トースタートップの3PUということ、ショートスケールで、ダブルカッタウェイのボディはセミホロー構造であることです。ボディ材は58年当初、アルダーでしたが、64年からはメイプルに変更されています。トースタートップは後年のものと比較すると出力は弱いですが、煌びやかなトーンが際立つPUです。
ジョンが購入したのは、ドイツのハンブルグにあるスタン・ウェイ・ミュージックで、長期在庫品だったのを安く買ったようです。58年の初期のモデルというのが、ジョンが入手した325で、写真にも残っています。
2本目は黒の325で、こちらは1964年のエド・サリバン・ショーから使用されたものです。最初の325は、酷使されボロボロになっていました。そこで、リッケンバッカー社はジョンに新しい325をプレゼントしたのです。
コントロールノブが5つになっていたりしますが、この325は64年以降のモデルとそれ以前の仕様が混ざっているもののようです。1960年代後半に、一度生産終了しましたが、1984年からリィシューモデルが販売しています。
ジョージ・ハリスンと360/12
ジョージ・ハリスンは360/12を1964年にリッケンバッカーから送られてから愛用しており、12弦仕様の独特のトーンは数々の名演を生みました。リッケンバッカーの12弦モデルは、ヘッドが縦巻きと横巻き両方のセルにより通常サイズであり、主弦と副弦の位置が通常の12弦とは逆になっています。
また、ポール・マッカートニーは1965年から4001Sを入手しており、色々なところで使っていたとされています。
Model 330の特徴
1970年代〜近年にかけて、リッケンバッカーを代表するギターと言えば330です。高級機の360と比較すると標準モデルという立ち位置です。メイプルのセミホローボディにメイプルネック、ローズウッド指板という材の構成、ハイパワーPUの搭載による、ファット且つ歯切れのいいトーンが特徴です。
ミディアムスケールの24フレット仕様であり、それでいながらギブソンの幅広タイプのナット幅よりも狭い1.63インチ、そして10Rの丸みのあるネック形状はコード弾きに適しています。
スタンダードモデルのため、リッケンバッカーの特徴であるステレオアウトはなく、モノラルで、指板もドットインレイになります。そのシンプルさによって、パンクやオルタナ系ギタリストに愛用されることが多い330は、360と並ぶリッケンバッカーの代表的なギターです。
リッケンバッカーを愛用したギタリスト
ポール・ウェラーと330
前述したビートルズに加えて、The Whoのピート・タウンゼントも印象的でした。70年代には、The Jamのポール・ウェラーが330を、1980年代にはThe Smiths時代のジョニー・マーとR.E.M.のピーターバックがリッケンバッカーを使用していました。個人的に330好きなのは、この3人(ピーターは360も)の影響が大きいです。
前述したギタリストに共通しているのは、リードよりもバッキングの名手で、曲作りに長けていて、楽曲を生かすタイプのギタリストが多いということです。メイプルボディ、メイプルネックのコードではっきりするトーンが特徴のリッケンバッカーをうまく活かしています。
またYESのベーシスト、クリス・スクワイア、ディープ・パープルのロジャー・グローバー、ザ・ジャムのブルース・フォクストンも4001を愛用しており、ベーシストにも人気があります。
唯一無二の存在感は現代でも色褪せない
今では、ほとんどのエレキギターがフェンダーやギブソンのスタンダードなモデルを参考に作られています。第三のエレキメーカーとして、1990年代にPRSが台頭するまで、リッケンバッカーはグレッチと共に、フェンダー、ギブソンに対抗しうるメーカーでした。
そして、独特のトーンと個性的なフォルムに魅せられたイギリスのギタリストが好んで使っていました。なので、今でもアメリカ製のギターなのにブリティッシュなイメージがあります。
高価なギターであるので、なかなか店頭にあっても試奏してこなかったのですが、丁寧に作られたギターであると触った瞬間に分かりました。今でもクラフツマンシップを持ってギターを生産し続ける老舗がリッケンバッカーなのです。
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