今回は、フェンダー・カスタムショップのマスターグレードについて解説します。1996年〜1999年の3年間製造されたマスターグレードですが、当時の技術で徹底して作られた究極のビンテージとも言えます。
目次 この記事の内容
- 近所で見かけたマスターグレード
- フェンダー・カスタムショップ設立について
- 究極のビンテージモデルの誕生
- 驚愕の製造方法
- マスタービルドシリーズとの違い
- 幻のマスタービルド
近所で見かけたマスターグレード
投稿者のあげたマスターグレードストラトの試奏動画です。
幻と言われるFender C.Shop Master Gradeを見かけたのは、最近のことです。ハードオフ大阪泉南店の動画をYouTubeにあげたところ、視聴者さんから八尾南にマスターグレードのストラトキャスターがあるという情報をもらいました。
まさか幻と言われるギターが、近所のしかもリサイクルショップに置いてあるとは思えなかったのですが、最近のハードオフの楽器コーナーの充実ぶりからするとあり得る話だと思い、八尾南店にバイクで向かいました。
投稿者のあげたこの記事の動画バージョンです。
すると本当に、1999年製 Fender Custom Shop Master Grade 1956 Stratocasterが置いてあったのです。さっそく試奏して現行のものとは異なる太いトーンに感激しました。八尾南店さんからも快い対応をしていただき、とても充実した日になりました。
ただ、問題があるとすれば、現在のマスタービルドシリーズ(通称MBS)との違いについてです。特に名前が酷似しているため今回そちらも解説します。試奏動画でやるには尺が長すぎるので、ブログで別に書くことにしました。
フェンダー・カスタムショップ設立について
ネック裏にあるカスタムショップの刻印
そもそもFender Custom Shopについて、詳細を知らないと明確な違いが分からないです。フェンダーのカスタムショップとは、カリフォルニア州にあるコロナ工場に1987年から設立された部門のことです。
レギュラーラインなどとは一線を画すシリーズとして、1982年から生産されていたのが、初期型のビンテージシリーズです。こちらのビンテージシリーズは現代のものとは異なる価値のあるものとされています。
1985年当時のCEOビル・シュルツと日本のギターメーカーフジゲンの協力によって、新たに建造されたのがコロナ工場です。勘のいい読者ならもう分かったと思いますが、元々はビンテージシリーズのビルダーを集めたのが、カスタム・ショップです。
ビンテージのモデルを、より忠実に再現することを目的にカスタム・ショップは設立されたのです。
究極のビンテージモデルの誕生
今回試奏したFender C.Shop Master Grade Stratocaster
1987年から開始されたカスタムショップが究極のビンテージモデルを製造します。それが1996〜1999年にかけて3年間生産された、Master Gradeです。よくマスグレと省略されることがあるマスターグレードとはこちらのモデルになります。
当時のレギュラーラインのビンテージシリーズは、通常の生産ラインを使用したもので、製法が根本的に異なるものでした。僕も所有していたことがある1990年代のビンテージシリーズは、トーンもどこか現代的で、確実に90年代のフェンダーのトーンだったのです。
そこで、カスタムショップでは製造方法までハンドメイドにこだわり、当時の木材やパーツの再現をするために厳選したスタッフで、最高のビンテージを作ることにしました。日本のフェンダーの代理店(1990年代当時)、山野楽器による企画からのようです。
驚愕の製造方法
杢目が凄いネック
そもそも究極のビンテージモデルとは何か?ということですが、製造方法の単純なマネだけではありません。1950年代後半からフェンダーのピックアップを担当していた、アビゲイル・イバラ女史が手巻きで仕上げたものを使い、1960年代からネックを担当していた、ハーバート・ガスラム氏までも招聘しています。
つまり実際に、当時のフェンダーで働いていた熟練工を呼んでまで再現しているのです。当然のように本物のビンテージの採寸や、手作業で空けられたキャビティなど、NCルーターすら使わない徹底ぶりです。
イバラ女史のPUの製造工程は、ここだけで説明しきれるものではないのですが、各年代毎に異なる調整を施したハンドワイヤリングのPUであるため、ワンオフ品のようなものらしいです。
僕が弾いた1956年製を模したストラトのトーンは、かなり太く、試奏用のマーシャルのトランジスタアンプから信じられないようなトーンが出ました。ここまで工法や手間が変わると同じストラトでも、出てくるトーンは別物です。正直、お金あったら即買いしてました(大汗)。
チームで生産し、当時のスペックをここまでやるか!と言わんばかりのこだわりで作られたのがマスターグレードで、その手間は通常のレギュラーラインの5〜6倍のようです。ぶっちゃけこれだけでも凄いギターなのが分かります。
マスタービルド・シリーズとの違い
MBS 1969 Telecaster Custom Built By Greg Fessler
Master Built Series(MBS)とはカスタムショップの中でも、一流の職人の称号であるマスタービルダーが個人主体で製造したギターのことです。それに対して、チームで行うのがチームビルドで、マスターグレードの後継とも言えるタイムマシーンシリーズもこちらに該当します。
人気のあるマスタービルダー、ジョン・クルーズやジョン・イングリッシュなどが作ったMBSモデルは普通のカスタムショップのものと違い、ビルダーの個性が反映されたものです。そのため、MBSモデルは仕様も様々なものがあります。
マスターグレードは幻のギター
マスターグレード 1963 ストラトキャスター 1997年製モデル
1990年代当時のカタログモデルとして最高峰であるマスターグレードは、生産する本数も限られており、期間も3年だったため、なかなか見かけることの出来ないギターです。
また、195〜60年代当時の熟練工の存在や、タイムマシーンシリーズよりも長い製作時間など、徹底的にこだわったモデルのため、現代でも探している人がいる人気のあるギターです。この時期でしか出来なかった究極のビンテージとも言えるギターなので、風格が違います。
今回、たまたま近所のハードオフで見かけましたが、希少価値のあるマスターグレード、買うなら50万円以上するので、気軽に薦められませんが、試奏して気に入ったらぜひ!!
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