エレキギターを大別すると、フェンダー社とギブソン社のギターの特徴によって傾向が決まるといっても過言ではありません。リッケンバッカーやPRSなど独自の規格のギターもありますが、一般的にみてギブソンとフェンダーのコピーもしくは発展型が占める割合が多いのです。
世界3大エレキギターの特徴
1950年代に開発された世界3大エレキギターの特徴がそのまま、ギブソンとフェンダーの違いともいえます。フェンダーのテレキャスターとストラトキャスター、ギブソンのレスポール・モデルが世界3大ソリッドギターとされています。
ギブソン レスポール・モデル
筆者も、過去の愛器はこの3大ギター中心ですし、比率はメインでギブソン系が多く、サブではフェンダー系ギターが多いです。フェンダーのテレキャスターは、カッティングやボーカルギターに向いており、ストラトキャスターはテレよりもリードが弾きやすいとされています。
筆者がYouTubeにあげたこの記事の動画バージョンです。実際に筆者のギターで後半で実演しています。
レスポールは、へヴィなボトムリフやリード向きというイメージがあり、どのギターを使っても一通りのことは出来るのですが、ギターの特質による音の傾向は確かに存在しています。
ピックアップの違いによる特性の違い
ストラトキャスターのシングルコイル
フェンダーのギターは、基本的にシングルコイルです。シングルコイルとは、文字どおり1つのコイルによって音を拾うタイプです。フェンダーのものは、6つのポールピース自体が磁石となっており、磁力が強く音が狭くなっています。
フェンダーの代表的なギターに搭載されているシングルPUは、明るめでハイが伸び、歯切れのいいトーンが特徴です。欠点は、ノイズが出やすいこととハムバッキングPUよりも出力が低いことです。
レスポールとハムバッキングPU
ギブソンのギターは、ハムバッキングPUを採用しているモデルが多いです。ハムバッキングとは、2つのコイルによって音を拾うタイプのPUです。元々ハムバッキングは、ハムノイズを軽減させる構造をしています。
2つのコイルを逆着磁にすることにより、ノイズを打ち消しあいます。構造的には磁石の土台の上に2つのコイルを置き、鉄のポールピースを通しています。これにより、シングルコイルよりパワーがありながらもノイズが少なく、オーバードライブ(歪み)しやすくなっています。
音の特徴としては、中低域が強調され、甘く暖かみがあります。欠点としては、フェンダー系シングルコイルのような伸びのある高域は無く、歯切れのいいサウンドは作りにくいことです。
材の違いによるトーンの特色
フェンダー テレキャスター
ボディの振動は、PUを通してもトーンの違いとなってきます。フェンダーは、アルダー材がボディとして使われることが多いです。広葉樹の中では比較的柔らかめの加工しやすい木材で、低域から高域までバランスの良い音色が特徴です。
アルダー材は、軽量且つ加工しやすく調達もしやすい材だったので、フェンダー系のギターのラインナップの大半で使われているスタンダードな木材です。まれにアッシュや、バスウッドなどのモデルもありますが、基本的にはアルダーを使っています。
ギブソン レスポール
それに対して、ギブソン系は高級なマホガニーを使っています。レスポールの場合は、マホガニーボディのトップ(上部)にメイプルを張り合わせています(注カスタムを除く)。マホガニーは、耐久性が高く、乾燥による狂いが生じにくい性質をしています。音色の特徴としては、柔らかく暖かみがあります。
トップ材のメイプルは、日本では楓としてポピュラーな素材です。メイプルは、硬く重いのでアタック感のあるしっかりとしたメリハリのあるトーンが特色です。マホガニーのぼやける部分をメイプルによって補完しているのが、レスポールの優れたトーンを生み出しているのです。
※SGやレスポールジュニアは、マホガニーのみのボディなのでレスポールのようなトーンとは違います。どちらかというとメリハリが効いているのはレスポールになりますし、トーンに締まりがあるような感じがします。
フェンダーは、メイプルのネックをボルトオンでネックを取り替えられます。メイプル指板、ローズウッド指板の2つがあり、メイプルの方が明るめ、ローズウッドの方が暖かみがあるといわれています。ギブソンは、マホガニーのセットネックにローズウッド指板です(稀にハカランダ)。
また、ギブソンはミディアムスケール、フェンダーはレギュラースケールで指板の間隔が違います。指が短い場合は、間隔の狭いミディアムスケールの方が弾きやすいです。とはいえ、ロングスケールのフェンダーでもよっぽどのことがない限り大丈夫だと思います。
ギターの構造による違い
フェンダーのボルトオン・ネック
世界で最初のソリッドボディのエレキギターであるエスクワイヤ(テレキャスターの原型)は、1949年にレオ・フェンダーによって開発されました。1950年よりブロードキャスターというモデル名で販売されましたが、グレッチとの商標登録の問題により、1951年にテレキャスターに改名されたのです。
テレキャスターのボディは、ボルトオン・ネックにより簡単に製造できるものでした。ギブソン レスポールのような手間のかかるアーチトップ構造は採用せず、加工しやすい平板なボディ形状をしているので量産向きのギターといえます。
レスポールの美しいアーチトップ
それに対して、1952年から生産されたのが、レスポール・モデルです。ギタリストのレス・ポールとの共同開発によって生み出され、1957年からP.A.Fと呼ばれたハムバッキングを搭載しました。
ネックとボディは、セットネックと呼ばれる木材同士を張り合わせて接着する伝統的な構造をしています。そのため、ネックを容易に交換することは出来ません。また、ボディ・トップはアーチトップと呼ばれる美しい曲面をしています。レスポールは、このように高級感のあるギターです。
ストラトキャスターは、1954年から販売されています。テレキャスターのシングルカッタウェイから、演奏性の高いダブルカッタウェイ(ネックの高音域を演奏しやすい形状)になり、電装部品を大型のピックガードに装着することによって、より簡便な組み立てが出来るようになりました。
シンクロナイズド・トレモロ(ビブラートのためのユニット)の鉄製のイナーシャブロックにより、テレキャスターで不足しがちであったサスティン(音の長さ)を伸ばす効果があります。ストラトは、このためにリード向けといわれているのです(テレキャスでリードをバリバリ弾くギタリストもいます)。
3大ギターの特色について
レースセンサーPUによって欠点を克服した90年代以降のストラトキャスター
こういったピックアップや、材の構成やギターの構造により、個性が明確に分かれています。フェンダー系のテレキャスターとストラトキャスターは、明るく歯切れのいいトーンが特徴で、ギブソン レスポール・モデルは、太く暖かみのあるトーンです。
テレキャスターは、材やマテリアルパーツの関係上、軽くカッティングに向いています。切れ味鋭いトーンは、キース・リチャーズや、ウィルコ・ジョンソンといったカッティングの名手に使われることが多いので、リズムギタリストやボーカリストの持つギターのイメージが強いです。
ストラトキャスターは、プレイアビリティの高さと、サスティンの長さでリードにも向いているため、ジミヘンやクラプトンといったリードもバッキングもこなせるギタリストに愛用されています。リズムカッティングにも向いたトーンのためオールマイティな使い方のできるギターです。
レスポールは、ジミー・ペイジやデュアン・オールマンといったリードやリフを作るのがうまいギタリストに使われています。近年では、メタルでのヘヴィなリフなどにレスポール系のギターが使われることが増えています。太くウォームなトーンは、クランチで弾いても気持ちのいいギターです。
色々使える3大ギター
ミニハムを搭載したレスポール・デラックス
とはいえ、ロイ・ブキャナンやツェッペリン初期でのジミー・ペイジのようにテレキャスでリードをバリバリ弾くギタリストもいます。レスポールをセンターポジションにして、歪みをおさえると、カッティングに適したトーンが出ますし、逆に歪ませたパワーの強いコード弾きという弾き方もあります。
ストラトは、色々使えて便利ですし、90年代以降のモデルではレースセンサーPUによってノイズを減らしたモデルもあります。ギブソンは、1968年からの再生産時にレスポールに歯切れのいいミニハムを搭載したデラックスというモデルもリリースしています。
色々と特色を書きましたが、基本の3大ギターはどれを選んでもオールマイティに使えるギターだと思います。見た目やトーンの好みで選んでも失敗しないギターなので、初心者からベテランまで安心しておすすめできるギターです。
※ここからは本音で話します。
初心者には、フェンダーからの方が敷居は低いと思います。というのも、ギブソンUSAの場合、レスポールは少し高価です。フェンダーUSAの場合は、アメリカンスタンダード(アメリカン・プロフェッショナルに改名)などの安価なモデルもあるのでとっつきやすいからです。
普通にフェンダー・ジャパンや、オービルなどの安価なコピーモデルから始めるというのもありですが、本家の方が近いトーンを持っています。どうしてもギブソンがいい!という場合には、SGやレスポール ジュニアなどの安価なモデルも選択肢に入れてもいいでしょう。
基本的にギターは好きなものを買うのが一番いいので、どれでもOKなのです。3大ソリッドギターを参考にするのが、エレキの理解を深めるのが早くなるのでまとめてみました。
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