アドベンチャーモデルが大型バイクの世界の販売台数のトップ10の中に数台がランクインしています。BMWのGSシリーズや、ドゥカティ ムルティストラーダ、スズキのVストローム、カワサキ ヴェルシス、ヤマハ MT-09トレーサーなど、排気量が大きなクロスオーバーモデルは、世界的にも売れ筋のバイクとして、各メーカーが力を入れています。
■パリ・ダカの栄光
XRV650 アフリカツイン
しかし、クロスオーバーバイクブームが到来する以前、1980年代に颯爽と登場したデュアルパーパスモデルがあります。XRV650 Africa Twinと呼ばれたブロスと同型の647ccの水冷V型2気筒エンジンを搭載したバイクは、パリ・ダカールラリーを制したNXR750のレプリカマシンでした。
パリ・ダカールラリーは、前回紹介したCRF250 ラリーの記事にも書いた世界で最も過酷なレースです。ホンダは、1986~1989年まで、ワークスマシンNXR750で4年連続チャンピオンという偉業を達成しました。
1989~1990年の市販車に近いマラソンクラスでも、XRV650 アフリカツインが連勝するという、実績を挙げ、世界中のラリーファンにとって記憶に残るバイクとなったのです。
アフリカツインは、その後XRV750として、742ccにボアアップした後継マシンが1990年から2000年まで販売され続けました。アフリカツインの名前は、デュアルパーパスモデルの王者として、記憶されることとなったのです。
■アフリカツインの復活!新型はハイテク満載?
CRF1000L アフリカツイン
昨今のクロスオーバーブームは、車だけでなくバイクにも及んでいます。世界でも有数のバイクメーカーであるホンダも、この流れに乗って、かつての名車を復活させることにしました。
CRF1000L Africa Twinと名付けられたそのモデルは、2015年から販売開始(日本では2016年)されました。かつてのアフリカツインから、様々な点が進化しています。
- 排気量が742ccから998ccに拡大されていること
- 52°バンクV型2気筒から270°位相クランク直列2気筒に変更
- 燃料供給方式がキャブレターからインジェクションに
- MTに加えてDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)も追加
- ABSを標準搭載
排気量の拡大は、ライバルの多くがリッタークラスだからでしょう。Vツインからパラレルツインの変更は、賛否両論ありますが、DCT(オートマ)を搭載するなら、NCシリーズでの実例もあり、やりやすいエンジン形式だといえます。
CRF1000LのABSは、リアブレーキのみ、ON/OFFスイッチが付いています。オフロード走行においては、リアを意図的に滑らせるドリフト走行が有効なので、ABSをキャンセルするために設けられています。またGスイッチと呼ばれる、オフロード走行においてレスポンスを積極的にかけられるスイッチも増設されています(DCTのみ)。
そして、路面状況に応じて3段階に切り替えられるトラクションコントロールも装備されています。2眼ヘッドライトとテールランプには、LEDを採用し、シート高を870mmから850mmに変更できるシートアジャスタ機能も搭載しています。
※CRF1000L アフリカツイン スペック表()はDCT仕様
CRF1000L アフリカツイン | |
最高出力 kW【PS】/rpm | 70【95】/7,500 |
最大トルク N・m【kgf・m】/rpm | 98【10.0】/6,000 |
車体サイズ mm | 2,335×930×1,475 |
車両重量 kg | 232(242) |
燃料タンク容量 L | 18 |
使用燃料 | 無鉛レギュラー |
■アフリカツインの魅力について
2016年に日本仕様がデビューしたとき、NC750Sに乗っていた筆者は、うらやましく思いました。なぜなら、新しいアフリカツインには様々な魅力があったからです。
- 高速走行に有利なウィンドプロテクション
- フロント21インチ、リア18インチタイヤとスポークホイールの採用
- 大型のデュアルパーパス随一のオフロード走破性能
- アフリカツインに対する憧れ
大型のシールドによる、ウィンドプロテクションと1,000ccのエンジンは、高速走行を快適にしています。かつてのアフリカツインよりも出力を大幅に強化したエンジンであることもポイントです。また、燃費もWMTCモード燃費で、リッターあたり21.6kmと、リッタークラスのバイクとしては優秀です。
キャストホイールと違ってスポークホイールは、オフロード走行に向いています。スポーク自体がしなりのある構造だからです。その反面チューブレスタイヤを標準搭載できないデメリットはありますが、オフロード走行には必須のホイールだといえます。
また、オフロードに適したフロント21インチ、リア18インチタイヤの採用など、タイヤサイズにもホンダの本気が見られます。
リッタークラスのクロスオーバーモデルの中でもオフロード走行に適したサスペンションストローク量(230mm)のある倒立フロントフォークです。リアは、プロリンク式のスイングアームで、悪路走行に強い足回りを持っています。
アフリカツインは、なんちゃってクロスオーバーとは違い、砂丘やフラット林道をこなせられる走破性を持っているのです。
なんといっても、アフリカツインはデュアルパーパスの王様です!復活すると聞いただけでも、嬉しかったです。ホンダドリームで、実車を目にすると、迫力のあるデザインにほだされ、危うく買うところでした(大汗)。
2018年にマイナーチェンジ?
写真は現行アフリカツイン
CRF1000L アフリカツインは、2018年モデルからマイナーチェンジし、機能が強化されることと、アドベンチャースポーツと呼ばれる派生タイプが追加されることが、2017年のEICMA(ミラノショー)にて発表されました。
大きな変更点は、CBR250RRにも採用されているスロットル・バイ・ワイヤです。簡単にいうと、メカニカルワイヤーを使わずに、電気信号(電線のみ)でスロットルを制御する機能のことです。
他には、トラクションコントロールが、3段階から7段階になったり、リチウムイオンバッテリーの採用、2kgの軽量化、4レベルのライディングモードの追加、オートキャンセルウィンカーの採用など、数多くの改良がされています。
そして、アドベンチャースポーツは、24.2L(スタンダードは18.8L)の燃料タンク、スクリーンが80mm拡大、グリップヒーター、AC電源の標準装備、サスペンションストローク量のアップに伴うシート高の増加など、ロングツーリングに適した仕様となります。
■アフリカツインのグレード別価格
CRF1000L アフリカツインは、林道を含めたツーリングや、高速道路を使ったロングツーリングに向いています。純正タイヤはロード向きのダンロップD610ですが、オフロード向きのブロックタイヤを履かせることにより、更にオフロード走破性が向上します。
タイヤサイズが、ロード向きとはいえない21インチ、18インチですので、オフロードを走るライダー向けのツーリングバイクだと思います。気になるのが、232kgの車重です。オフロードは転倒することを前提に走るので、車体の重さがネックになると思います。
※CRF1000L アフリカツイン価格
CRF1000L アフリカツイン | |
ヴィクトリーレッド・トリコロール 6MTモデル | 138万 |
単色カラー 6MT | 135万 |
ヴィクトリーレッド・トリコロール DCT | 149万 |
単色カラー DCT | 146万 |
タイプ | 税込み 単位 円 |
僕が買うとしたら、DCTではなく6MTのトリコロールでしょう。定価が消費税込みで、138万円なので、かなり高いですが、新設計のエンジンに、多機能メーター、トラクションコントロールや、ABSの切り替えスイッチに、ETC標準搭載など、価格に見合う装備が付いています。
2018年モデルが販売されるタイミングで、2017年モデルを値引いてもらうのも、ありでしょう。マイナーチェンジで、色々なポイントを改善していると思うので、おすすめは2018年モデルのスタンダードです。
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