F-35Bといずもの空母化

2017年の12月のニュースで、日本は国家安全保障戦略(NSS)においてF-35Bの導入と、それに伴ういずも型護衛艦の改修を行う方針であることが報道されました。

F-35Bの導入検討?

F-35Bは、マルチロール(多目的)・ステルス機であるF-35のSTOVLバージョンです。STOVLとは、短距離離陸、垂直着陸のことです。全備重量(兵装と燃料を満タンにした状態)では、STOL(短距離離陸)を行い、兵装を使いきったり、燃料が少なくなった状態での垂直着陸での運用が想定されています。簡単に例えると、ヘリの着陸能力を持っている機体ということです。

F-35Bは一応、ハリアーのような垂直離陸も可能とされていますが、燃料消費の問題からSTOLでの離陸が実用上、求められるでしょう。

F-35Bは、機体の胴体部分にリフトファンを設けました。垂直着陸時には、リフトファンを回転させ、空気を機体の下に噴射します。それと同時にF135エンジンの排気ノズルを垂直に曲げること(3BSM)により、ジェット推力を下方に噴出することによって垂直着陸が行えるようになっています。

ウェポンベイが胴体部にあるF-35において、B型はリフトファンや3BSMによる重量増のため、ミサイルなどの兵装は20%減の積載量となっています。

また、燃料タンクも他のタイプより小さく設計されていたり、B型にしかないSTOVL機能の水平飛行時のデッドウェイトによる燃費の悪化という問題があります。それらの要因により、F-35Bの航続距離はA型と比較して3分の2~4分の3くらいといわれています。

ただし、これらの条件以外での性能は、他のF-35に近い性能を持っています。アメリカでは、強襲揚陸艦による運営を想定しているため航続距離の問題より、STOVL機であることが重要視されています。

また、F-35には、艦載機としてC型が用意されています。B型は、本来海兵隊のAV-8BハリアーⅡの後継機であり、揚陸のための支援を行うための機体です。なお、F35Bは2015年7月には初期作戦能力(IOC)を獲得しています。

いずも型護衛艦の改修について

いずも型護衛艦は現在、1番艦の「いずも」と、2番艦の「かが」が就役しています。F-35Bを搭載するなら、いずも型の改修が必要であり、そのための予算も必要になるでしょう。

いずも型護衛艦は、2015年から就役したヘリコプター護衛艦(DDH)です。いずも型より以前のヘリコプター護衛艦である、ひゅうが型と比較して排水量で6,000t増加の1万9,500t、全長は51m長い248mとなっています。

動力機関は、ガスタービンで、最大出力は11万2,000PSで、最大速度は30ノットというスペックとなっています。最大搭載数は14機で、常時搭載定数は、SH-60J/Kが7機、MCH-101が2機です。


いずもの建造費に1,139億円、かがに1,155億円かかっています。対潜哨戒任務こそ、いずも型護衛艦の主任務です。格納庫の関係上、6~10機のF-35Bの搭載になると思うので、予備機合わせて一隻あたり最大12機のF-35Bが必要になります。

F-35Bは1機あたり146億円といわれています。2隻のいずも型に搭載する機数を揃えるのに、3,504億円の費用が必要となってきます。

しかも、いずも型はこのままでは固定翼機を運用できません。甲板を耐排熱加工し、船首部分のCIWS(ファランクス)の移動、格納庫の拡張など、運用までに必要な作業があります。

将来的には、海兵隊同様の強襲揚陸艦の導入を視野に入れているのではないかと思われます。というのも、尖閣諸島などの南西諸島での有事を想定しているならば、上陸も視野に入れた作戦行動が考えられるからです。

憲法第9条との整合性

確かに、中国も空母をウクライナから購入し、J-15の着艦訓練を行うなど積極的に運用を計画しています。こういった動きに呼応する形で、なし崩し的に日本も自衛隊の装備を拡張しつつあります。

しかし、忘れてはならないのは、日本は憲法第9条によって専守防衛のための自衛隊のみを所持していることです。攻撃は、日米安保条約により、アメリカが担当することになっています。

この前提を破って攻撃型の兵器の運用をするならば、国民投票による憲法の改正が必要でしょう。空母や巡航ミサイルは、本来は現時点で導入してはならない兵器なのです。

防衛省や安倍政権の既成事実化による軍備の拡張は、憲法9条との整合性を著しく欠いており、法治国家とは思えない手続きばかりが目立ちます。また、安倍首相による新年の記者会見で、憲法改正について言及していました。

緊急事態条項など有事の際に首相に権限が集中するようなものを追加するような案があります。よって現在の自民党政権に、憲法改正を担わせるのは、あまりにも危険です。

どちらにせよ、F-35Bの導入と、いずも型の改修は、巡航ミサイルの購入同様、メディアや国民による監視が必要な案件です。

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