F-2後継機は国際共同開発へ

日本の国防上で重要なF-2戦闘機の後継として、技術実証機X-2ベースでの独自開発を断念し、国際共同開発になるという報道がありました。今回は、次期F-3の開発のプランをまとめてみました。

技術実証機X-2ベースの開発の断念

三菱 X-2

心神もしくは、先進技術実証機ATD-Xと呼ばれていた機体は、2016年4月に初飛行する前に、X-2の正式名称が与えられました。X-2とは、1950年代のサーブ・サフィール91Bをベースにした高揚力研究機X-1Gの後継という意味があります。

アメリカ同様、Xナンバーは実験機ということなので、あくまでも研究のための機体です。X-2は、三菱をはじめ国内の220社もの協力によって開発された国産の実験機でした。

主な特徴は、実験機であるためF-22の4分の3サイズの全長14.174mと小型であること、石川島播磨重工業製(現IHI)の国産エンジンXF5-1を双発(エンジン2基)で搭載すること、そしてステルス性能を確保していることです。

X-2は、2009年の開発開始から2016年の初飛行、2017年10月の飛行終了まで実に8年間ものプロジェクトでした。しかし、飛行回数は当初予定していた50回から32回と減小され、さらにアメリカに打診していた電磁実験を拒否されています。明らかに、アメリカは日本の独自開発に対して消極的な態度をとり続けています。

X-2にかけられた開発費用は、400億円と限られており、座席とキャノピーは練習機T-4のもので、主脚をT-2からそれぞれ流用してコストを抑えています。低RCS(レーダー反射断面積)を実現し、セラミックや炭化ケイ素の複合材により、レーダー波を吸収することができます。

XF5-1は、アフターバーナーを必要としていますが、推力49kN(アフターバーナー使用時約5t)、タービン入口温度1,600度、推力重量比7.8:1という性能の4分の3サイズのエンジンです。また、偏向パドルを取り付けてあるので、F-22ラプターのような機動の実験もされたと考えられます。

しかし、フルサイズとして計算(×1.25)してもエンジン1基の推力は61.25kNと、F-22に搭載されているF-119-PW100の1基あたり165kNには遠く及ばない数値です。日本の航空産業の弱点は、昔からエンジン技術にあり、有名なゼロ戦の栄12型エンジンの馬力も低いために、機体をぎりぎりまで軽量化した逸話が残っています。

戦後初の国産支援戦闘機 F-1

また、戦後初の国産戦闘機である三菱 F-1も、ロールスロイス/チュルボメカ製エンジンをライセンス生産したXT-2エンジンを採用していました。IHI製XF5-1の原型となったエンジンは、同じIHIのF3であり、これは日本の練習機T-4のエンジンとして採用されています。

F3からの発展型として開発されているXF5-1は、X-2での実証実験が終了してからも発展型のXF9-1のコア部分が2017年にIHI(旧石川島播磨重工業)から納品されたというニュースが2017年7月にありました。

XF9-1は、前述のF-22ラプターのエンジン、F-119にも引けを取らない性能があるとされていて、2018年6月には完成予定となっています。おそらく、このエンジンが次世代ハイパワー・スリムエンジンの原型となるもので、2025年以降に開発が完了される見込みとなっています。

三菱F-2について

2030年には退役する予定の三菱 F-2

そもそも三菱F-2は、空対艦ミサイルによる艦艇攻撃、空戦、対地攻撃など複数の任務をこなすことのできるマルチロール機です。航空自衛隊は、攻撃機という名称を使わず、支援戦闘機というカテゴリーとして分類してきました。

現在の主力戦闘機は、F-15Jイーグルですが、こちらの任務は主に空戦となっています。F-2は、ジェネラル・ダイナミック社のF-16の改良型であり、日米共同開発した機体です。

F-2は、三菱F-1のように国産にする計画もありました。しかし、開発費用の高騰や当時(1980年代中頃)日米貿易摩擦といった社会的背景、エンジンだけの供与に応じるメーカーが見当たらなかったことで、日米共同開発となったのです。

結局F-2は、1990年から開発を開始し、2000年には量産初号機が航空自衛隊に納入され(ロールアウト)ました。F-2の開発費は、3270億円かかりました。また、単発戦闘機としては、F-15Jと同額の1機あたり120億円という高額さで、当初予定されていた機数(141機)よりも少ない98機が生産されるにとどまりました。


三菱電機が開発したフェーズドアレイレーダーを世界で初めて量産戦闘機に搭載するなど、電子装備の面で当時の先端技術を持った機体となっていました(このレーダー技術はアメリカにも提供されました)。

また、元となったF-16のフライ・バイ・ワイヤと日本独自のCCV(運動性能向上技術)や、F-110エンジンの131.23kN(アフターバーナー使用時)の推力によって高い機動性を有しています。

青い迷彩塗装と、日の丸の似合う「バイパーゼロ」という愛称にふさわしい戦闘機で、個人的には好きな機体なのですが、2030年には退役が予定されており、後継機の開発計画が立てられました。

国際共同開発案について

世界最強の戦闘機 F-22ラプター

F-2後継機の開発に関して2018年3月に、国内開発を断念し、国際共同開発にシフトするという報道がありました。国内開発を行う場合、開発費が高騰することが主な理由です。戦闘機の開発はユーロファイターや、F-35のように国際共同開発が主流となりつつあります。

航空自衛隊は、X-2やXF9-1の開発経験をF-2後継機に生かしたいという意向を強く持っています。ハイパワースリムエンジンの完成を、2025年以降に設定していることからも、それは伺えます。また、三菱電機のレーダーも採用するつもりだと思われます。

防衛装備庁によってRFI(情報提供要求)が、国内外のメーカーに出されており、アメリカのボーイングやロッキード・マーティン、ノースロップなどの有力な航空機メーカーや、スウェーデンのサーブ社などから回答があったようです。

その中でもロッキード・マーティンは、F-22の機体にF-35のアビオニクスを組み合わせた戦闘機を打診しているとのことです。元々空自は、老朽化したF-4の後継としてF-22を購入したがっていましたが、機密の漏洩を懸念したアメリカから許可が下りなかったという経緯があります。

今回は、トランプ政権側の武器を輸出したいという意向が働いていると思われます。そうなると独自開発した技術を生かせる機会は少なくなるのではないでしょうか。

イギリスとの共同開発の可能性について

長距離誘導空対空ミサイル ミーティア

イギリスは、F-4EJの退役によるF-X(次期主力戦闘機導入計画)に対して、ユーロファイターを売り込みにきていました。2011年にはユーロファイター・タイフーンは、F/A18やF35とともに有力候補の一つとされていました。

国内のライセンス生産を認可していることや、1機あたりの単価も安く済むことからもF-35よりもユーロファイターを購入する方がいいとの声もありました。結局、アメリカのF-35を購入することになるのですが、イギリスの外交努力の結果として、日英ミサイル共同開発がスタートしたのです。

MBDA社のAAM(空対空ミサイル)ミーティアをベースとしたJNAAMです。JNAAMのシーカー(目標を探査・追尾する装置)を三菱電機が担当することになっています。このJNAAMは、F-35のウェポンベイに格納できる大きさになる予定です。

イギリスのBAEシステムズも日本のRFIに対して回答するということなので、F-2後継機は日英共同開発の可能性もあります。ソースコードの開示などについてもイギリスは、開放的なので、共同開発するなら欧州のメーカーと組んだ方がいいかもしれません。

アメリカはF-2を開発するさいにも、フライ・バイ・ワイヤなどのソースコードを秘匿したことがあります。ミーティアで共同開発しているイギリスや、短距離離陸機で実績のあるスウェーデンなどの欧州と組んだ方が日本にとってはメリットがあると思います。

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