今回は、2023年夏アニメレビュー前編です。『AIの遺電子 』、『あやかしトライアングル』、『アンデッドガール・マーダーファルス』、”SYNDUALITY Noir”、『好きな子がめがねを忘れた』、『聖者無双』の6作品です。
目次 この記事の内容
- 2023年夏アニメレビューについて
- AIの遺電子
- あやかしトライアングル
- アンデッドガール・マーダーファルス
- SYNDUALITY Noir
- 好きな子がめがねを忘れた
- 聖者無双
2023年夏アニメレビューについて
筆者が投稿したこの記事の動画バージョンです。
2023年夏アニメレビューの評価基準について、冒頭から説明します。基本的には、2023年の7〜9月の間に放送された1クールから、春からの2クールで終了したアニメをレビューします。
『呪術廻戦』と『ダークギャザリング』は2クール目まで続いているので、今回は評価しません。対照的に分割2クールの『無職転生 II』は1クール目が一区切りしたので、後編でレビューします。
また、作品の評価は星1〜5の5段階評価、1が駄作で3が普通、4が佳作、5が覇権クラスという区分になります。基本的に視聴を最終回まで続けた作品は3以上となります。尚、星0.5区分も存在しており、甲乙つけ難い中での差だと理解していただければ幸いです。
AIの遺電子
『AIの遺電子』は、週刊少年チャンピオンに連載されていた山田胡瓜(やまだきゅうり)の漫画を原作にしたテレビアニメです。チャンピオンという掲載誌といい、AI技術が発展した時代の医者を主人公にした、新時代のブラック・ジャックとでも言うべき作品です。
高度に発展したAI技術は、ヒトとそっくりなヒューマノイドという人間と同じような外観を持ち、感情のある存在を生み出しました。ヒューマノイドを専門に診察する医者、須堂光は、ヒューマノイドの治療を通じて、悩みや倫理といった問題に直面していくことになります。
医療ものとして、AI技術やロボットという来るべき時代の新しい問題を取り上げつつ、人をベースにしているヒューマノイドとそれに関わる登場人物の視点から、色々と考えさせられる内容になっています。1話完結で、オムニバス形式で語られる短編中心というところもブラック・ジャックを彷彿とさせます。
アニメーション制作は、老舗のマッドハウスで、監督はベテランの佐藤雄三、シリーズ構成は金月龍之介(きんげつりゅうのすけ)です。話の内容はテーマが深く、1話、1話丁寧に作られていました。星は辛めに3.5となります。
あやかしトライアングル
『あやかしトライアングル』は、To Loveるシリーズで知られる矢吹健太朗が原作の漫画を元にしたテレビアニメです。どちらかというと忍者アクション+お色気TSFものという感じで、主人公の祭里がTS(性転換)する意外は、いつもの矢吹神の雰囲気バリバリの作品になっています(笑)。
お色気要素を、妖の王シロガネの姿で局部を隠すことによって成立させるという、かつてない斬新なやり方にびっくりしました。深夜アニメだし、もうちょっと露出増やしても文句を言われないと思うのですが、現在だとこれくらい気を遣う必要があるのでしょうか?
アニメーション制作はCONNECT、監督は『アクティヴレイド』の秋田谷典昭(あきたやのりあき)、シリーズ構成はヤスカワショウゴです。星は3.5で、もう少し作画が良かったら佳作になっていたと思います。
アンデッドガール・マーダーファルス
『アンデッドガール・マーダーファルス』は、青崎有吾原作の小説を元にしたテレビアニメです。怪物×近世ヨーロッパ×推理という、非常に魅力的な舞台に、首だけの不死の美少女輪堂鴉夜と、怪物を狩る助手真打津軽とメイドの馳井静句の3人が、様々な謎を解いていく物語です。
さながらサロメの逆パターンのような鴉夜の姿が印象的です。鴉夜は900年以上生きている不死の存在で、持ち前の観察眼と推理力で探偵として旅をしています。怪人が関与している事件専門としながら、ヨーロッパを旅して自分の体を探しているという話です。
鳥籠使いと呼称される助手の津軽とメイドの静句の戦闘シーンも見どころです。近世に出てくるシャーロック・ホームズや、アルセーヌ・ルパンといったお馴染みのキャラクターも参加し、さながらカオスな状況になったりしますが、最終回は綺麗にまとまりました。
アニメーション制作は『さらざんまい』のラパントラックで、監督は『昭和元禄落語心中』の畠山守(小保真一)でシリーズ構成は高木登です。耽美的で退廃的な雰囲気がとても良く、作画も良かったため佳作認定の星4です。これからも続きがあるような終わり方だったので、続編を楽しみにしています。
SYNDUALITY Noir
今期期待の鴨志田一原案のオリジナルロボットアニメが、“SYNDUALITY Noir”です。アニメーション制作がエイトビットということで、『ナイツ&マジック』で培った、ロボットアクションを3DCGで行うという路線は継承されており、迫力のあるロボバトルが展開されていました。
ロボットのことはコフィンと呼称され、ドリフターと呼ばれるパイロットと、機体を制御するパートナーのメイガス(ヒトと異なる人造人間)のコンビによって運用されています。
メイガスは男性型と女性型があり、それぞれドリフターが同性と異性のパターンがあります。主人公、カナタとヒロインのノワールは、テイジー・オーガと呼ばれるコフィンを駆って、パートナーとしての絆を深めていきます。
監督は『ナイツ&マジック』の山本裕介、シリーズ構成はあおしまたかしです。1クール目である12話で、一番盛り上がる戦闘をピークにして終わりました。2024年1月からの2クール目にも期待が高まります!星は4で佳作認定、続編を期待しているロボットアニメです。
好きな子がめがねを忘れた
『好きな子がめがねを忘れた』は、月刊ガンガンJOKERにて連載中の藤近小梅(ふじちかこうめ)原作の漫画のテレビアニメ化作品です。とにかく今期は『マルドゥック・スクランブル』で知られるGo Handsの作画に注目が集まり、この好きめがと『デキる猫は今日も憂鬱』はその2トップとも言える出来でした。
1話目で話題になったのは主人公の小村くんが階段を昇るシーンです。長回しのカメラアングルで、人が実際に階段を上がる動きと背景を連動させて立体的に見せています。
つまり、実写映画のようなカメラワークが、アニメでも3DCGの発展によって可能になったということです。しかも、これがテレビシリーズで行われたというところが画期的でした。
また学校において、光が当たったときの光彩を表現する手法(新海誠以降の3DCGアニメの常套句)に加えて、埃を丁寧に描写したり、ローアングル(実相寺アングルを参考にしたと思われる)多用とか、色々と細かい点が凄かったです。
惜しむらくは、最初の階段シーンを超えるカメラワークが最終回まで無かったことで、これはデキ猫にも書くことなのですが、予算の都合で初回にかなり気合を入れすぎた結果ではないかと思いました。
総監督は『マルドゥック・スクランブル』の工藤進、監督は”COPPELION”で演出を担当していた横峯克昌(よこみねかつまさ)で、シリーズ構成は八薙玉造(やなぎたまぞう)です。
ヒロインの女子中学生、三重さんの魅力は、髪質の繊細な描写で表現されていました。三重さんは癖毛で、長い髪をしているのですが、風と動きで髪が流れる様子を作画で美しく見せています。これはおそらく、アルフォンス・ミュシャのファムファタールをイメージした演出ではないかと思いました。
小村くんの視点からの三重さんというところも結構ポイントで、甘酸っぱい初恋ならではのドキドキする感じをうまく出せていました。こういう初恋っていいなーって思わせてくれる感じがして今期トップクラスに面白い作品でした。採点は星4.5名作認定です。
聖者無双〜サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~
『聖者無双~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~ 』は、ブロッコリーライオン原作のラノベをアニメ化した作品です。アニメーション制作は、横浜アニメーションラボとクラウドハーツです。
元サラリーマンの転生者が、異世界において治癒士となり、冒険者ギルドで訓練しつつ、異世界で生き残る術(すべ)を身につけていくというストーリーです。作画は誉められたレベルではないのですが、主人公ルシエルの生き様がコミカルに描かれており、不思議と完走してしまったアニメでした。
なろう小説として人気作のようで、師匠や豪運先生、物体Xといった要素がなんとも言えない雰囲気を出しています。単純な冒険ものにならないところがポイントで、ストーリー展開だけでも十分に視聴を続けられたのは、原作が面白かったからなのか?と思いました。
監督は玉川真人(たまがわまこと)、シリーズ構成は『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』の大知慶一郎で、星は3になります。
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