今回の記事は、実店舗の名前を伏せます。というのも当事者同士で解決済みで、僕もその現場にいたのですが、店は真摯に対応してくれたからです。一番腹が立っているのは、ギブソン社の表記問題で、ギターに詳しくない人なら間違いかねないことをしたのです。
目次 この記事の内容
- 友人のES-335Dotに対する違和感
- スタジオラインのギターであることが発覚!
- ギブソンの不可解な名称変更
友人のES-335DOTに対する違和感
友人のものとは異なるGibson ES-335
きっかけは、友人のA君が所有していたギブソン ES-335Dotを売ることにした件です。A君は、1年6ヵ月前にES-335を購入したのですが、ネックの太さや、やっている音楽の種類の違いに悩んでいました。
一緒に行って買いにいったわけでもなく、スタジオなどで現物を拝見したこともなかったので、漠然とES-335のようないいギターを持っているA君がうらやましかったです。本当は、ちょっと弾かせてもらいたかったのですが、売るなら仕方ありません。
A君が売りに行った日は、まだ腹の調子が悪かったのですが、友人が安易に売ったら後悔すると思ったので、無理して大阪市内に出ました。ただ、楽器は店に売る場合は安く買われてしまうケースが大半です。出来るだけ高く売れる店が見つかるまで付き合うつもりでした。
そして、A君のギターをケースから出して見た時に、ふと違和感を覚えました。どことなく記憶にあるES-335の姿と違うのです。まあ、箱物よりもソリッドギターに詳しい筆者(tkd69)のことだから見間違いだと思っていました。
最初に査定してもらった店は、A君が実際に買ったところでした。A君は、ES-335のことだから15万円くらいで買い取ってもらえると思っていたようです。筆者の経験から、おそらく12万円以下だと思っていたのですが、査定が終わるととんでもない結果が出ました。
「6万円です」と店員さんが言った瞬間、Aくんの顔はこわばりました。僕も、ES-335の査定にしてはおかしいと思い、次の店に行ってみることにしました。
スタジオラインのギターであることが発覚!
出典 https://www.rockin.co.jp/ 2018年製 ES-335Dot
ところが、次の店でも下取りこみで9万円台、通常買取なら8万円という結果が出ました。ぶっちゃけ、この価格も予想を大幅に下回っていました。というのも、ES-335の場合、レギュラーラインなら30万円くらいする高級ギターです。下取りこみでも11〜12万円は出るはずで、査定が低すぎると思いました。
ここで、マクドナルドに入って今後の方針を確認しました。正直言って気の毒なくらい、意気消沈していたA君から幾らで購入したのか聞きました。すると、Aくんは23万円出して購入したようです。ぶっちゃけ、ES-335にしては安いですが、中古で購入したならそれくらいかとも思いました。
そして、3つ目の店でようやく納得出来る答えが出たのです。査定をやってもらうと、10数分で結論が出ました。そして、ここでも7万円で理由を尋ねると、驚愕の返答がきました。「スタジオですから買取は安くなります」と。
これを聞いた瞬間、全ての謎が解けました。A君がES-335だと思っていたギターは、スタジオラインの安価なモデルだったのです。僕は怒りのあまり、我を忘れそうになりました。というのも、スタジオならその価格で買い取るだろうし、23万円で購入するには、あまりにも高すぎる買い物だと思ったのです。
ギブソンには、レスポールにもありますが、レギュラーラインとスタジオラインがあります。レギュラーラインのギターは、通常ラインのギターで、スタジオは安価に作られているギターで1ランク以上下がるギターなのです。ES-335タイプの新品でも特価品なら20万円以下、中古なら13、14万円で売られているギターです。
ES-335の場合、通常のバインティングとは異なり、ボディのみの黒いバインティング、ネック材はマホガニーではなくメイプルです。しかも、杢目が綺麗に出ているトップ材も使ってはいません。
そういえば、付属のハードケースも黒くてフラットな形状のものでした。3つ目の店でも言っていましたが、レギュラーラインの場合、中央が膨らんだ形状の茶色いケースが付属しているはずなのです。そして、A君はスタジオであることを知らないままに購入したというのです。
ギブソンの不可解な名称変更
出典 https://www.rockin.co.jp/ 2018年製でもES-335 Traditionalこそが、レギュラーラインのES-335
AくんがES-335を買った店に戻り、担当者に話を聞きました。「この店ではスタジオを23万円で売りつけるのですか?一体どうなっているのですか!」A君のギターを売った店員に対し、はっきりとスタジオラインを高価に売っていることについて問い質しました。
すると、店員さんは2018年の限定モデルなので高いモデルだと言いました。しかし、それなら最初の査定額はいったいなんなのか、さっぱり話が噛み合いませんでした。店長を呼んできてもらって説明されたのですが、どうやらスタジオという名前を意図的に外したのはギブソンらしいことが解りました。
2018年、経営の危機だったギブソンUSAは、ES-335のスタジオにバーストバッカーPUを搭載したスタジオモデルからスタジオという名称を外したES-335DOTを販売しました。つまり、安価なラインのES-335にピックアップをいいものに変えたモデルを作ったのです。
もちろん、本家ギブソンがES-335Dotという名称で売っているなら、店員のいうようにES-335ではあります。しかし、客はES-335を買いにきているので、普通ならスタジオラインであることは説明すべきです。もし、その説明がないまま売ったのなら、その分の過失は店にあることになります。
そこは、店側も了承してくれ、価格は書けませんが通常よりも高い査定で買い取ってもらえました。最初は、実店舗の名前もちゃんと書いておこうと思ったのですが、その後の対応に誠意を感じたので、ここでは伏せます。
そして、店で解ったのは当時は新品特価で23万円で売ったとのことでした。それならスタジオラインでも、安くはありませんが普通の価格だとは思いました。ただ、可哀想なのはAくんです。本物のES-335だと思って買ったのに、まさかスタジオだとは・・・。
これではっきりしたのは、ギブソンの商売のやり方です。2018年に倒産の危機にあったというのもむべなるかな、と思いました。というのもレスポールも通常のスタンダードの他に、クラシック、トラディショナルとややこしいラインナップになっているのです。
正直、メイプルネック、ブラックバインティングのモデルを、いくら電装パーツを豪華にしてもスタンダードラインのような名称で売るのは反則です。楽器店で買い取る場合、値崩れして6〜9万円という査定が出るのも当たり前です。
ぶっちゃけ、ギターに詳しい筆者でも、ちゃんと調べていなかったら、安いES-335だとしか思わないでしょう。材の構成やケースで解るのですが、説明されないと勘違いして買ってしまうと思います。
こういう商品を本家のギブソンが売るというのはいかがなものでしょうか。2019年製以降のDotモデルではマホガニーネックになっているようですが、なんとも後味の悪い結果に呆然としました。
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