今回は、前回でXLR250RとXR250の紹介をしたので、コンセプトの異なる車名の似たバイク、ホンダ XR230の解説をします。XR230は、SL230の後継バイクです。223ccの信頼性の高い空冷エンジンと、オフ車の中でも805mmというシート高による足つき性のいい、取り回しのいいバイクでした。
XR230の得意なフィールド
出典 https://www.honda.co.jp/ XR230の白
筆者がCRF250Lを購入を検討していたとき、XR230は候補の一つでした。というのも車重が120kgと軽く、シート高805mmのフレンドリーさ、223ccの空冷単気筒SOHCエンジンは、XLR200Rのものをボアアップし、SL230が採用していた信頼性の高いエンジンです。
今は閉鎖されているブログでXR230の紹介があり、オフが走りやすそうなイメージがありました。XR230は2009年に生産終了していて懇意にしているホンダドリームに中古を検索してもらいました。在庫が無かったことと、後継のCRF250Lの足つきがなんとかなりそうだったので、CRFを選びました。
XR230が得意なのは、二輪二足と呼ばれるセローのような使い方だと思います。轍や、マディで足つき性の高さを生かした足漕ぎや、低出力ながらトルクのあるエンジンの粘りで林道を走破していくことです。
逆に、障害物を乗り越えるなどのシチュエーションでは、最低地上高の高いフルサイズオフ車の方が有利です。しかし、軽さと足つき性による走破性の高さは、あなどれません。
実際に悪路を走ってみると、最高出力よりトルクが重要です。ぶっちゃけた話、オフロードでは、そこまで飛ばせません。路面状況がころころ変わるし、ガードレールのない林道では、エンジン出力よりも取り回しが重要になってくるのです。
XR230の経歴
出典 https://www.honda.co.jp/ XR230の初期型
XR230の前のモデルは、ホンダ SL230でした。1997年にデュアルパーパスバイクとしてデビューし、ヤマハのセローのようなフレンドリーなバイクでした。外観上の特徴としては、スズキのジェベルのような丸目の大径ヘッドライトです。
XR230は、XLR250RがXR250にモデルチェンジした2003年の2年後の2005年に販売開始されています。SL230の後継バイクなのですが、XRシリーズとして外観もシュラウドの付いたXR250と共通のものになっています。
XR400モタード、XR100モタード、XR50モタードなどの販売開始によるモタードシリーズのラインナップの充実の影響かもしれません。ユーザー側からすれば、なぜ排気量の低い軽二輪を2車種用意したのかと疑問に思うことでしょう。
前述したとおり、XR250とXR230はエンジンも設計思想も異なる別系統のマシンです。林道やコースを走るベテランやある程度オフに慣れたユーザー向けがXR250で、初心者や、扱いやすさを重視するライダー向けがXR230です。また、ハンドルの切れ角が51度とトライアルバイク並みという点も優れています。
ホンダは、XLR250Rのライバルであるセロー225と競合しない立ち位置でいました。しかし、1990年代にDT230ランツァや、カワサキKLX250SRなどの強力なライバルの登場で、ラインナップの補強をする必要が出てきたのです。
そこで今まで手を出していなかった、セローの独壇場であった気軽に乗れるトレール車というジャンルに、SL230で挑戦し、ある程度の支持があったので、モデルチェンジをきっかけにして、XRシリーズに組み込んだということです。
つまり、XR230のライバルはセローであって、XR250ではないのです。ここまでは、ホンダの狙い通りに、ユーザーの棲み分けはできていました。しかも、2005年からはセローがフルモデルチェンジし、排気量が拡大されて250ccとなったのです。ということは、225ccのセローのユーザーがXR230に乗り換えることもあったということです。
しかし、2007年に排ガス規制によってXR250/モタードが生産終了になると、XR230のみとなってしまいます。
ホンダのフルサイズオフのファンからは、色々なことを言われたようですが、XR230には、軽量さと取り回しの良さという武器がありました。そのため、地道に支持するバイク乗りもいたのです。
出典 https://www.honda.co.jp/ XR230モタード
2008年には、XR230のモタード版であるXR230 Motardも販売開始されました。17インチタイヤを前後に装備し、よりオンロードで走りやすくなったバイクです。しかし、2009年には、これまた排ガス規制によって生産が終了してしまいます。
筆者がCRFの購入を検討していた2018年で、なかなかいい中古が見つからなかったのも生産終了してから9年経過していたからです。
※XR230 スペック表
XR230 | |
最高出力 kW(PS)/rpm | 13(18)/7,500 |
最大トルク N・m(kg・m)/rpm | 18(1.8)/5,500 |
車体サイズ mm | 2,080×825×1,100 |
車両重量 kg | 122 |
燃料タンク容量 L | 8.7 |
使用燃料 | 無鉛レギュラー |
XR230の後継バイクとは?
筆者のCRF250L
現在のホンダのラインナップの中には(2019年)、XR230の後継バイクと呼べるものが見当たりません。XR250の後継といえば、水冷単気筒のCRF250Lです。高速も走りやすいパワーに、フルサイズの車体という点でコンセプトは、XR250のものを踏襲しています。
セローは、250ccとなっても225の頃のようなフレンドリーさはあります。しかし、フルサイズよりも小さく、中途半端に見える223~225ccという排気量のオフ車は、国産には見当たりません。
トレールバイクにおけるベストバランスは、排気量が223~225ccにこそあったのかもしれません。今のところセロー250がかつてのセロー225や、XR230に近い特性を持っています。
そして、CRF250Lにもローダウン仕様があり、足つきという観点では、XR230に近いです。とはいえ、セロー225やSL230、XR230のようなバイクは他にありません。そこで、今購入するなら中古ということになります。
僕がXR230を探していた時期では、ドリームの方では名古屋に一台、走行距離の少ないものがありました。筆者が懇意にしているドリーム店とは別系統の店らしく、取り寄せできないのであきらめました。ぶっちゃけ、2005~2009年の4年間しか製造していないので、いい状態のものが見つかったら、すぐに押さえないといけないでしょう。
XR230の欠点は、18PSという最大出力の低さです。法定上は、高速道路を走ることはできますが、おとなしく左車線を走った方が良さそうです。高速を頻繁に走る場合は、別のバイクを買った方がいいです。
ホンダには、XR230のように出力が低くても気軽に冒険できる扱いやすさのあるトレール車をまた作ってもらいたいです。
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