最近販売されたばかりのホンダ CRF450Lのライバル車といえば、KTMくらいしか思いつきません。国内メーカーが、かつて国内販売していたバイクで400ccクラスのトレール車もしくはモタード車といえば、スズキのDR-Z 400S/SMがありました。
国内で400ccトレールバイクが流行しない理由とは?
DR-Z400S
スズキ DR-Z400Sは、市販レーサーRM250をベースに開発されました。日本国内では、2000年の4月に販売され、国内で唯一といっていい400ccクラスのトレールバイクとして、期待されていたのですが、販売面で苦戦しました。
400ccの水冷DOHCエンジンは、最大出力40PS、最大トルク4.0kgf・mというハイパワーで、車体は乾燥重量129kgという軽量ぶりで、トレールバイク最速といっても過言ではないスペックを誇っていました。国産初の水冷400ccトレールバイクです。
海外では、よく売れていたモデルですが、国内販売は頭打ちでした。国内では、ヤマハ セロー225や、ホンダ XR250などが売られていた時代なので、パワーやスペックでは大幅に差のある状況でした。
日本国内の林道は狭く、パワーよりも乗りやすさが重視されます。特にオフロードバイクで400ccの車体は、パワー、サイズ共に持て余してしまうケースが多かったのです。
DR-Z400Sは車検もあるので、従来から販売している250ccクラスのトレール車の方を選んでしまうのもいたしかたないでしょう。ユーザーの需要に合わない形での販売は、苦戦するのです。国内仕様は残念ながら2008年に排出ガス規制のために販売終了してしまいました。
同じような危惧を、ホンダCRF450Lに感じます。特に450ccという排気量は、日本では大型2輪を所持していないと乗れないバイクとなってしまいます。
しかし、ローシート仕様の国内とは違い、海外仕様はよく売れました。日本人にとっては、895mmのシート高は凶悪な高さで取り回しに苦労しましたが、大柄な外国人にとっては、問題なく扱えました。なにより、広い土地では400ccトレールの余裕のあるパワーが、メリットになります。
※DR-Z400Sスペック
DR-Z400S | |
最大出力 PS/rpm | 40/7,500 |
最大トルク kgf・m/rpm | 4.0/6,500 |
車体サイズ mm | 2,310/875/1,225 |
車両重量 kg | 129(乾燥重量) |
燃料タンク容量 L | 10 |
使用燃料 | 無鉛レギュラー |
DR-Z400SM 過激なモタードモデル!
DR-Z400SM
そして、一時期峠の下り最速マシンとして、名が通っていたのが、2004年から販売されたDR-Z400SMです。SMとは、スーパーモタードの略で、ロード70%、ダート30%の比率のレースのことです。
スーパーモタードは、1979年にアメリカで発祥し、ヨーロッパにまで広がりました。そのモタード用マシンとして、スズキがDR-Z400を基に開発したのが、DR-Z400SMというわけです。なにげに、400ccの初の国産モタードバイクです。
倒立フロントフォークに17インチのオンロード用タイヤの組み合わせは、元々軽量且つハイパワーな車体をしっかりと支えました。クイックなハンドリングと、軽量な車体の組み合わせは、峠の下りでめっぽう速かったのです。うまいライダーが、DRZに乗っていると、信じられないようなパフォーマンスを発揮しました。
DR-Z400Sよりは、需要はあったと思います。日本国内に限っていえば、DR-Z400SMの方がよくみかけました。ホンダも後追いの2005年にXR400モタードを販売していますが、こちらは万人向きのマイルドな味付けのマシンでした。
XR400モタードは、CB400SSと共通の空冷のOHCエンジンで、最大出力30PSのオールラウンドに使えるバイクでしたが、あまり人気が出ませんでした。2008年に排ガス規制のために販売終了するまで、モタードバイクとして一番人気のあったバイクが、DR-Z400SMでした(XR400Mも同じ年に販売終了)。
DR-Z400Sと同様に、国内モデルはローシート仕様による尻痛から三角木馬と揶揄されるシートや、車検が必要なことから爆発的なヒットこそしなかったのですが、峠や街乗りというシーンにおいて無類の強さを持っていたことから名車といわれています。
普通二輪最速のオフローダー
今では、国内販売されることのなくなった400ccまでの普通二輪で乗れる最速のオフロードモデルDR-Z400S/SMですが、排ガス規制の緩い地域の北米や、オーストラリアでは継続販売されています。インジェクション化はされておらず、キャブのままですが、海外ではホットな400ccオフローダーの人気はあるようです。
余談ではありますが、冒険家の賀曽利隆さんが使っていたバイクが、DR-Z400Sです。賀曽利さんが乗っていたことから、ツーリング特性は低いというわけではないと思います。
高速道路や、峠での速さとどこでも走られる万能さと、壊れにくく頑丈な車体と、今でも魅力のあるオフ車が、DR-Z400S/SMだと思います。冒険には、ぴったりの相棒になりそうです。
CRF450Lの販売を皮切りにして、スズキもインジェクション化した、新しいDR-Z400シリーズを展開したら面白いのですが、今のところそういった噂は聞こえてきません(涙)。
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