Mountain:巨漢のギタリストと70年代アメリカンハードロック

Mountainは、ハードロックバンドとして、1970年代に活躍したアメリカのバンドです。1969年にセルフタイトルの”Mountain“というアルバムでデビューしました。

マウンテンの軌跡

このファーストアルバムは、ギタリストのLeslie Westのソロアルバムとしての側面が強く、まだバンドの形が出来上がっていませんでした。

1969年8月のウッドストックに出演した際のメンバーは、ベースにフェリックス・パパラルディ、ドラムにN.Dスマート、キーボードに加入したばかりのスティーヴ・ナイトといった構成でした。

ドラマーを、コーキー・レイングに変更して録音したセカンド・アルバム”CLIMBING!“で、マウンテンは完全にブレイクします。大ヒット曲”Mississippi Queen”や、”For Yassgur’s Farm”といった名曲揃いのアルバムは、バンドの知名度を格段に上げることとなります。

続く、サードアルバムの”Nantucket Sleighride“もアメリカのビルボード200で、16位となり続く4作目“Flowers of Evil”でも35位と、マウンテンは順風満帆のように見えました。しかし、バンドの屋台骨ともいえるレスリー・ウェストと、フェリックス・パパラルディの分裂により、マウンテンは1972年に解散します。

レスリー・ウェストとコーキー・レイングは、元クリームのベーシスト、ジャック・ブルースと新たなバンド、WB&Lを結成します。しかし、ジャック・ブルースが抜けたために、バンドは解散し、再びフェリックス・パパラルディとレスリー・ウェストが、マウンテンを再結成します。

その後の、1974年に”Avalanche“を発表するも、以前のようなヒットとはならず、再びバンドは解散します。

名盤CLIMBING!

SAN FRANCISCO, CA – APRIL, 1970: Leslie West and Felix Pappalardi of the music group Mountain perform in April, 1970 in San Francisco, California. (Photo by Robert Altman/Michael Ochs Archives/Getty Images)

僕がマウンテンを聴くようになったきっかけは、レスリー・ウェストのメインギターが、ギブソン・レスポール・ジュニアだったからです。

去年、心斎橋のイシバシ楽器店で中古購入してから、そのトーンに惚れこみ、ジュニアといったらレスリー・ウェスト!ということで、マウンテンのアルバムをネットで探しました。

最初は、輸入盤のアルバム5枚セットを頼んだのですが、なかなか届かず、購入先のネットショップがいい加減なところで在庫もなく、現地から取り寄せということになりました。1ヵ月以上待たされましたが、結局注文を向こうからキャンセルしてきました(怒)。

最終的には、中古でアルバムを購入しました。りずむボックス神戸元町店の中古CDは、説明以上に状態が良かったですし、対応も早かったです。これから気になる中古CDは、ここで買うようにします。CLIMING!(邦題勝利への登攀)は、何度も聴くお気に入りのアルバムとなりました。

1曲目のMississippi Queen(ミシシッピー・クィーン)から、これぞハードロック!といえる強烈なリフのご機嫌なナンバーです。1971年の映画『バニシング・ポイント』に使われた名曲です。気合の入ったレスリーのボーカルも必聴です!

2曲目のTheme from An Imaginary Westernは、しっとりとした曲で、ここでのレスリー・ウェストのギターのトーンは素晴らしく、メロディアスに響きます。

そして、再び激しいNever In My Lifeで勢いをつけます。この、ネバー・イン・マイ・ライフ(邦題君がすべて)は、当時のラジオのヘビーローテーションとなったようです。

そして、4曲目のSilver Paperでは、ミドルテンポでソウルフルな曲です。そこから名曲For Yasgur’s Farmに繋がります。ヤスガーの農場は、ウェットなパパラルディのボーカルも味があります。

ヤスガーの農場とは、1969年の伝説のロックフェスティバル、ウッドストックの会場のことです。ウッドストックとは、ボブ・ディランやザ・バンドが住んでいた町の名前で、フェスティバル開催者のマイケル・ラングは当初ここを会場にする予定でした。


しかし、地元の住民の反対により、ウッドストックから南西に60km離れたべセルにあるマックス・ヤスガーの農場を使ったというわけです。曲の内容は、普通にラブソングなのですが、ヤスガーの農場をタイトルにしているあたり、さすがはウッドストック出演バンドだと思います。

この曲でのレスリー・ウェストのメロディアスなペンタトニックスケールの泣きのトーンは絶品で、耳コピしてしまうほど惚れこみました!最近ギターで弾くお気に入りのナンバーです。

6曲目のTo My Friendは、アコギのインスト曲です。続く7曲目もアコギのナンバーで、ここで少し落ち着いてから、再び激しいリフのSittin’ on A Rainbowで高揚し、しっとりした9曲目のBoys In The Bandで終わります。

この後、サードアルバム、ナンタケット・スレイライドも購入し、聴いてみましたが、個人的には勝利への登攀の方が好きなアルバムです。いずれ機会をみて、他のアルバムも揃える予定です。

マウンテンのサウンドの特徴

写真は筆者の2016年製ギブソン レスポールJr.

マウンテンでのレスリー・ウェストの使用ギターで有名なのが、ギブソン・レスポールJr.です。1954年からギブソンのラインナップに加わったギターです。

ピックアップをブリッジ側の一つだけにして、マテリアルパーツを減らし、マホガニー単板というスペックで、安価なモデルとして誕生しました。

しかし、ドッグイヤーのP-90と、鳴りのいいボディの組み合わせは、独特のトーンがありました。特に、レスリーの代名詞ともいえるピッキング・ハーモニクスは、P-90をボディに直付けしたジュニアならではの技です。

レスリーのピックは、俗にいうへなへなピックで、非常に柔らかいものです。おそらく、頻繁に起こるピッキング・ハーモニクスを柔らかいピックでコントロールしていたのでしょう。

以前の記事でも書いたのですが、生鳴りは今まで買ったギブソンのエレキの中でもNo1です。強烈なほどダイレクトなトーンが作られますが、アンプのボリュームを上げたときのハウリングも起こりやすいギターでもあります。

しかし、クランチなくらいの歪みのトーンでは、他の追随を許さないほどのギターです。これと低音のよく響くパパラルディのギブソン EB-1ベースとの組み合わせが、マウンテンのサウンドのキモだと思います。

ギタリストとしてのレスリーのプレイは、とてもメロディアスです。ペンタトニックの魔術師といわれるほど、インプロビゼーションでもメロディアスなプレイをし、ボリュームノブを使ったバイオリン奏法や、スライドまで弾きこなしていました。

フェリックス・パパラルディは、元々クリームのプロデュースをしていた人です。その繋がりで、マウンテンもよくクリームの後釜バンドとか言われます。

マウンテンは、クリームと違った個性があります。特にレスリー・ウェストのギターは、クラプトンとは異なりブルースベースではなくロックが基となっていたのだと思います。

クリームは、エリック・クラプトンのイメージでブルースロックっぽく語られますが、ジャック・ブルースやジンジャー・ベイカーの音楽志向により、モダンな試みの多い先鋭的なバンドでもありました。

マウンテンは、クリームでは実現できなかった理想をフェリックス・パパラルディが目指したバンドでもありました。最初はレスリー・ウェストとの関係もうまくいっていたのですが、徐々に音楽的な方向性が合わなくなっていきました。

70年代中盤での解散という結末になりましたが、この2人がいてこそのマウンテンです。マウンテンは、エドワード・ヴァン・ヘイレンやマイケル・シェンカーなど後のギタリストにも影響を与えたのです。

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