ホンダ シビック タイプR:最新のシビックはイギリス製?

シビックといえば、ホンダの主要ラインナップの車であり、かつては庶民の足として、ハッチバックのコンパクトカーの代表格のような扱いでした。タイプRは、6代目EK型に、1997年に追加されたスポーツグレードです。

ホンダ車の代表格だったシビック

EK型シビック タイプR

同じFFスポーツカーのインテグラ タイプRと同様に、エンジンやサスペンションをチューニングしたのが、シビック タイプRです。峠からサーキットまで走ることを想定したメーカーによるスペシャルなグレードがタイプRでした。

それまでのシビックの最高グレードSiRよりも強化されたリッターあたり100PSを超える最高出力185PSの1.6Lエンジンに、レカロシート、momoのステアリングホイールに、固められた足回りと、純粋に走りのためのメーカーチューニングを施されています。

1990年代後期の「テンロク(1.6Lエンジンの車)」の中でも最速の部類に入るホットな車がシビック タイプRでした。どこの峠に行っても必ず見かけるほどの人気があり、走り屋のマストアイテムでした。

日本からの撤退

FD2型 シビック 無限RR  タイプRを無限がさらにチューンした車

シビックの人気は、2000年代に入ると下降していきます。2001年、7代目となるEP3型が販売されるものの、イギリス生産であったことと、3ドアハッチバック車の人気の低迷、人気のコンパクトカーフィットの販売開始などの要素が加わって、日本国内の販売が下火になっていきます。

8代目のシビック タイプRは、日本仕様が4ドアセダン、欧州仕様が3ドアハッチバックになるなど、ボディタイプがそれぞれの地域毎に用意されるという迷走した時期でした。

この時期の4ドアシビックは、国内生産されていました。国内仕様のFD2型シビック タイプRはそこそこヒットしました。FD2型タイプRは、2010年に生産終了し、国内生産のシビック タイプRの歴史は、ここで途切れることとなります

国内仕様のタイプRの生産終了に伴って、2010年にはヨーロッパ仕様のシビック タイプR ユーロが国内で限定販売されるなど、ホンダファンでも理解不能な売り方がされていました。おそらく、ミドルサイズにまで肥大化したシビックでは、国内での売り上げが期待できなかったからでしょう。

日本国内向けに、コンパクトカーであるフィットを主力として位置づけ、シビックは海外を中心に展開するという販売戦略がとられることとなりました。

FD2が生産終了した2010年に、シビックは国内での販売から撤退し、マニア向けにイギリスで生産したタイプRを限定的に輸入するという方法でお茶を濁していたわけです

その後、シビックは北米市場や欧州市場でのミドルクラス車として販売され続け、国内は実質的に撤退していました。たまに、タイプRの限定販売があるくらいだったのです。

7年振りの国内販売!シビック タイプRの雄姿再び

FK8型 シビック タイプR(プロトタイプ)

2017年7月、待望のシビックの国内販売が復活しました。製造こそイギリスですが、販売台数の制限のない正規販売です!もちろん、タイプRの復活もあります。10代目シビックFK型をベースにニュルブルクリンクFF最速を目指して作られた本物のタイプRが、日本に帰ってきたのです。

僕もバイクは、ホンダを乗り継いでいるほどのホンダ党ですし、この復活は嬉しいのですが、サイズが大きすぎて狭い道路の日本では持て余しそうです(大汗)。

ノーマルのシビック(5ドアハッチバック)でも、全長4,520mm、全幅1,800mm、全高1,435mmとC~Dセグメント並みの立派な車格になり、かつての5ナンバー(EK型)とは違って3ナンバーとなってしまいました。

日本の立体駐車場にぎりぎり納まるサイズである全幅1,800mmにはなっていますが、狭い峠の多い日本では、かつてのシビックの魅力である小型でキビキビ走るというには、少々(というかかなり)大きなサイズとなってしまいました。


しかも、走りのグレードであるタイプRは、これよりもさらにワイドに作られています。全長4,560mm、全幅1,875mm、全高1,435mmという立派なサイズでは、近所の道路の幅を超えてしまっています(涙)。

※シビック タイプR スペック表

シビック タイプR
最高出力 kW【PS】/rpm 235【320】/6,500
最大トルク N・m【kgf・m】/rpm 400【40.8】/2,500~4,500
車体サイズ mm 4,560×1,875×1,435
車両重量 kg 1,390
燃料タンク容量 L 46
使用燃料 無鉛プレミアム(ハイオク)

 

しかし、2.0Lの直列4気筒のVTEC ターボエンジンのパワーとトルクは素晴らしいです。最高出力320PS、最大トルク40.8kgf・mもの強力なパワーは、ニュルブルクリンク北コース7分43秒80という、2017年4月でのFF最速タイムを記録しました。

ぶっちゃけ、直接のライバルはFFのルノー・メガーヌ R.S.(ニュル7分54秒36)でしょうが、4WDのモンスターハッチ、アウディ RS3や、ゴルフ Rなども視野に入ってくるタイムだと思います。

そうなってくると、320PSのパワーですら、簡単に凌駕されてしまいます。アウディ RS3は、2.5Lの5気筒ターボエンジンにより400PSもの最高出力を誇る4WDのモンスターマシンです。今のボディサイズなら、このクラスとやりあうくらいでないと、ホンダのタイプRの沽券に関わります。

シビック タイプRは凄いけど世界は広い!

出典 https://www.autocar.jp/  シビック タイプR リア側

国内のメディアの大半は、「FFニュル最速」というキーワードを強調しています。しかし、世界にはモンスター・ハッチというべき4WDの同クラスのハッチバックがごろごろしています。

かつてのタイプRが、テンロクのNA(自然吸気エンジン)での最速を目指して作られていたことを考えると、果たして今のタイプRはどうなのでしょうか?

現代のホットハッチは、ターボ化し、ハイパワー化しています。FF(フロントエンジン前輪駆動)にこだわらなければ、もっとパワーを出せたかもしれません。

6MTモデルのみというのは、マニュアル好きにはいいのですが、速さという点ではどうでしょう。ホンダには、バイクでもDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を実現するなど、優れた技術力があります。おそらく、DCTの方が変速スピードは格段に上でしょう。

これだけ、大きなサイズだと3Lエンジンにして4WD化し、DCTを搭載したバージョンにすれば、クラス最速を実現出来たでしょう。2LのFFに6速マニュアルは、もはや時代遅れのこだわりではないでしょうか?

確かに、絶妙なハンドリングやブレンボの強力なブレーキなど、エンジン以外のところにも魅力はあります。しかし、広く世界を見ると最速の座を狙うために今後やらなければならないことは、迷わず4WD化だと思います。

個人的には、価格の高騰も気になります。消費税込みで450万円って・・・(絶句)。かつてのシビック タイプRって確か200万円以下で買えたような。燃費は、JC08モードでリッターあたり12.8kmとそこそこですので、そこまで維持費はかかりませんが。

エクステリアは、近未来チックですが、素直にカッコいいと思います。実際、既にツーリング先で2台見かけたのですが、充分インパクトのある形でした。

サーキットを頻繁に走りに行く人で、MT好きにはたまらない車でしょう。色々と書きましたが、よくこのご時勢に6MTのタイプRを作ってくれたと思います。

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