今回は、2023年の秋アニメレビュー前編です。2023年の秋に完結、もしくは一区切りしたアニメが対象で、星1〜5までの5段階評価とします。前編は『オーバーテイク』、『グッド・ナイト・ワールド』、『ゴブリンスレイヤーII』、”SHY”、『呪術廻戦』、”16bitセンセーション”、”SPY×FAMILY”の7作品です。
目次 この記事の内容
- オーバーテイク!
- グッド・ナイト・ワールド
- ゴブリンスレイヤーII
- SHY
- 呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変
- 16bit センセーション ANOTHER LAYER
- SPY×FAMILY Season2
オーバーテイク!
『オーバーテイク!』は始まった直後から期待していたアニメでした。と言うのも、あの『アルドノア・ゼロ』の制作会社TROYCAとあおきえい監督、更にキャラクター原案に『放浪息子』の志村貴子など、錚々たるメンバーが制作しているからです。
F4というカテゴリーは、4輪のモータースポーツの登竜門的な位置付けです。それでも若いレーサーがひしめき合うクラスであることから、六田登の”F”が描いたF3という舞台にも通じるものがあります。
TROYCAのお家芸である3DCGを使ったレースシーンは見どころの一つですが、主人公で高校生ドライバーの浅雛悠(あさひなはるか)と、トラウマを抱えたカメラマン眞賀 孝哉(まどかこうや)の2人を主軸にしたドラマパートも重視されています。
実際のF4のスポンサーの問題や、チーム運営、などモータースポーツにまつわる様々なことを取り上げています。レースのことに興味のない人でも入りやすくなるように、眞賀孝哉というレース関係の素人からの目線があるというのは重要な要素だったと思います。
シリーズ構成は関根アユミで、アルドノア・ゼロにも関わっていた脚本家です。F4というモータースポーツを扱っていて、丁寧に作られていたことは評価できますが、周りのアニメのレベルが今回は高すぎました。よって星は3.5となりますが、個人的には佳作に近い出来だったと思っています。
グッド・ナイト・ワールド
『グッド・ナイト・ワールド』は、裏サンデーとマンガワンに連載されていた岡部閨(おかべうる)のWeb漫画が原作のアニメです。Netflixで10月から独占配信されていたので、後述の”PLUTO”と共に視聴していました。
この作品は、VRゲームのプラネットという世界と現実の話を交互に取り混ぜていく形で物語が展開していきます。その中でも一目置かれているプレイヤー集団の赤羽一家を主軸に据えて、そこに海賊団だったり、黒い鳥という謎の存在が絡んできます。
中盤あたりで、赤羽一家が、現実世界で不仲な家族だったということが分かり、赤羽士郎こと有間小次郎がプラネットの開発者の一人だったということが明らかにされます。小次郎の目的は、AIであり強力なバグで現実世界でのプラネットプレーヤーの不審死に関わっている黒い鳥の抹消でした。
一方で長男のイチこと有間太一郎は、弟の明日真が黒い鳥の影響で、精神を侵食され入院し、このままだと死の危険性があると父親の部下である神室花から聞かされます。そして、黒い鳥を弟の精神から排除するため、神室に促された方法で救出します。
そんな中、黒い鳥の影響はついに現実世界まで侵食し、多くの人々がAIによってゲーム世界に精神が取り込まれるようになってしまいます。最終回では、黒い鳥の正体、父親と息子の絆などが描かれ1クール12話でストーリーは完結します。
制作は”ID INVADED”のNAZ、監督は、『薬屋のひとりごと』で絵コンテやEDを担当している菊池カツヤ、シリーズ構成は、『げんしけん』、”×××HOLIC”の横手美智子です。他の作品のクオリティの高さが影響して星は佳作の4ですが、本来なら5を点けていてもおかしくない出来でした。
ゴブリンスレイヤーII
前に紹介した第1期から5年経った2023年に、『ゴブリンスレイヤーII』として第2期が放送されました。原作は、蝸牛くも(かぎゅうくも)の同名小説で、ダークファンタジーとして期待していた作品でした。
ゴブリンスレイヤーという、対ゴブリン戦闘に特化したスペシャリストと、その仲間の活躍を描いたものです。今回は、新米の少年魔術師がゴブリンスレイヤーと反発しながらも、彼から影響を受けて成長していきます。そして、終盤にはゴブリンの司祭の召喚した強力な魔物との戦いがあり、ストーリーは悪くなかったです。
しかしながら、制作がWHITE FOXからライデンフィルムに代わり、クオリティ(特に序盤)が落ちたのは痛かったです。星は3.5で、総監督は尾崎隆晴、監督は高田美里、シリーズ構成は倉田英之(くらたひでゆき)です。
SHY
“SHY”は、週刊少年チャンピオンに連載中の実樹ぶきみ(みきぶきみ)原作のテレビアニメです。恥ずかしがりの日本のヒーローシャイこと紅葉山輝の物語です。ヒーローものというジャンルですが、過度にシャイなヒロインが、ヒーローとして成長していく話なので、内面描写のしっかりした描き方だと思いました。
また、ロシアのヒーローであるスピリッツや、スターダスト、レディ・ブラックなど、他のヒーローとの関わりであったり、友人の小石川さんらとのやり取りなども取り混ぜられていました。その一方で、アマラリルクという存在との戦いであったり、メリハリのある展開で飽きさせなかったです。
しかし、何か新しい試みやギミックというものが欲しかったように思えました。作画はかなり良かったのですが、星は3.5になります。制作は『転生したらスライムだった件』、『ブルーロック』のエイトビット、監督は『彼方のアストラ』の安藤正臣、シリーズ構成は『かぐや様は告らせたい』の中西やすひろという強力な布陣でした。
呪術廻戦 懐玉・玉折/渋谷事変
夏アニメから始まった、『呪術廻戦』の第二期が、『懐玉・玉折(かいぎょく・ぎょくせつ)』と『渋谷事変』です。前半の懐玉・玉折は五条悟と夏油傑(げとうすぐる)の2人の過去と別れ、後半の渋谷事変では高専術師と呪詛師との間で起きた闘争を描いています。
原作は芥見下々(あくたみげげ)の「週刊少年ジャンプ」に連載中の同名漫画です。制作はMAPPAでタイトなスケジュールがスタッフのX(旧Twitter)で明かされ、問題になりました。特にびっくりしたのが劇場版の『呪術廻戦0』がわずか数ヶ月で制作されたという話です。
アニメの制作スケジュールが逼迫しているということは前から聞いていましたが、これから解消する必要があると思います。監督は演出のうまさで知られる御所園翔太(ごしょぞのしょうた)で、シリーズ構成は『進撃の巨人』の瀬古浩司です。
クオリティはさすがのMAPPA!宿儺と漏瑚の戦闘シーンなど、見どころはたくさんあり、今期の中でもトップクラスでした。また、渋谷事変で多くの人気キャラクターが退場するという事態に騒然となっていたことから影響力は高く、星は名作認定の4.5です。第三期の制作も決まっており、これからも楽しみにしています。
16bitセンセーション ANOTHER LAYER
“16bitセンセーション ANOTHER LAYER”は、元はみつみ美里、甘露樹(あまづゆたつき)、若木民木(わかきたみき)の『16bitセンセーション』という同人漫画がベースのテレビアニメです。
元々の原作者であるみつみ美里と、甘露樹はLeaf出身で実際に美少女ゲームを手がけていました。今回、アリスソフトや、カクテル・ソフト、Leafなどの有名な美少女ゲーム会社の協力があり、当時のパッケージを含めてアニメに登場するという快挙を成し遂げました。
往年エルフの名作、『同級生』のパッケージ見て、懐かしさのあまり涙してしまいました(笑)。同人誌ベースの話とは異なり、新たに秋里コノハという少女が主人公として、2023年から1992年にタイムスリップ(作中ではタイムリープと呼称)し、当時のゲーム作りを手伝うというものです。
コノハは何度もタイムスリップして、1996年や1999年に行ったりきたりを繰り返し歴史を変えていきます。1990年代(1980年代もあった)のゲーム作りの手法については、実際に制作に携わっていた原作者や時代考証(RetroPC Foundation)がしっかりしていたため、リアルに描き込まれていました。
アルコールソフトというソフトメーカーが再三登場し、プログラマーの守、てんちょー、漫画版の主人公メイ子、かおり、キョンシーなども出ています。特に原作よりも守の位置付けが重要キャラになっており、NECの名器PC9801がやたらとクローズアップされることになります(笑)。
個人的には佳作の4を点けたいアニメですが、星は3.5です。作画のカロリーがもう少しあれば佳作認定していたと思います。それくらい、斬新な設定でした。制作は、stシルバーで、監督は佐久間貴史です。本当に好きなアニメで、色々と楽しめられました。
SPY×FAMILY Season2
こちらもジャンプ作品で遠藤達哉原作の“SPY FAMILY”です。Season2に入り、偽装家族の仲も深まってきたように感じます。2つの陣営の戦争を回避するため、西国のスパイ黄昏ことロイドが、市役所勤務で東国の暗殺者イバラ姫ことヨルと、超能力者の子供アーニャとそれぞれの秘密を隠したまま、偽装家族として生活するという話です。
制作はWIT STUDIOとCloverWorksという強力なタッグで行われており、作画、テンポ全ての面で素晴らしいアニメになっています。前半の日常パート中心から、後半は豪華客船でのヨルの護衛ミッションとなっていました。
シーズン2の見どころは、ヨルのアクションシーンで、ここは気合が入っていました。犬のボイドも最終回で活躍していたし、アーニャの顔芸も健在でした。監督は古橋一浩(ふるはしかずひろ)と原田孝宏(はらだたかひろ)で、シリーズ構成は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』の大河内一楼です。
流石のクオリティで星は4佳作認定です。12/22には劇場版の公開もあり、今後とも目を離せないシリーズになっていくと思います。
後編へ続く
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