前回から続いて、今回はP-90特集のその2です。ギブソンからエピフォンのP-90ピックアップ搭載ギターを紹介していきます。レスポール・ジュニア、SGスペシャル、ファイヤーバード、エピフォン・カジノなどP-90のイメージのあるギターを解説していきます。
目次 この記事の内容
- レスポール・ジュニア
- SG・スペシャル
- ファイヤーバード・ノンリバース
- エピフォン・カジノ
- P-90の特性とマッチした4機種
レスポール・ジュニア
筆者が使っていたレスポール・ジュニア
元々Gibsonは、積極的に安価なモデルを出すメーカーでもありました。スチューデントモデル(学生向け)などと呼ばれた廉価版という位置付けで登場したのが、このLes Paul Juniorでした。
1952年から販売開始されたレスポール・モデルは、1954年からカスタムが登場し、通常のモデルはスタンダードとなりました。しかし、当時の価格で300ドル近いレスポールは、学生などの若年層には手の届かないギターだったのです。
筆者の投稿した、この記事を元にした動画です。
そこでギブソンは、マテリアルパーツを減少したり、アーチトップ(ボディをなだらかに加工すること)などの手間のかかる工程を省くことで、予算を抑えたモデルを販売することにしたのです。
レスポール・ジュニアは、ドッグイヤータイプのP-90のみマウントしたモデルです。50年代当時は自然乾燥した木材が豊富にあったため、廉価版でもホンジュラスマホガニーのボディや、ハカランダ指板といった今では考えられない高級な木材が使われています。
レスポール・スペシャルのダブルカッタウェイ仕様
レスポール・スタンダードといえば、トップメイプル、バックマホガニーですが、マホガニー1ピースボディのジュニアの鳴りは、P-90を1基のみマウントする潔さもあり、鳴りのいいギターでした。P-90が2基のスペシャルもありました。
また、バーブリッジ(テールピースのみのブリッジ)のためダイレクト感のあるトーンがより得られる結果となりました。レスポールと比較すると軽く、独特のトーンに魅了されたマウンテンのレスリー・ウェストなどのギタリストが愛用していました。
現代でもレギュラーライン、ヒストリック・コレクションなどで作られ続ける人気のあるモデルで、年代によってはダブルカッタウェイのモデルもあるので選んで購入できるラインナップがあります。
SG・スペシャル
現行のSG・スペシャル
初期のカルロス・サンタナや、フーのピート・タウンゼントが愛用していたのが、SG Specialです。元々SGは、レスポールの後継シェイプとしてダブルカッタウェイや、マホガニーボディのみのボディは軽量で、1961年から販売開始されました。
当然ながら、最初はレスポールの名前がそのまま使われていて、1963年にレス・ポール氏との契約が切れ、SGという名前に変更されました。しかし、最初にSG(ソリッド・ギターの略)の名前は、P90が1基のテレビ、P-90が2基のスペシャルには採用されていたのです。
つまりギブソンの歴史上、初めてSGの名前が使われたのがスペシャルで、ミニハムやハムバッカーなど仕様は様々ですが、60年代中盤の、P-90が2基、バーブリッジのモデルが一番印象に残っています。
SGシェイプにP-90の組み合わせは、歯切れの良さとリード時の粘りのあるトーンによって、リズムギターからリードにまで使える守備範囲の広いギターです。現代では、レギュラーラインに1960年代中盤モデルを模したスペシャルがあり、ブラック・サバスのトニー・アイオミモデルなどもラインナップされています。
ファイヤーバード・ノンリバース
カスタムショップで生産されているノンリバースモデル
同じギブソンのギターの中でも特異な存在が、Gibson Firebirdです。1963年に販売されたリバースモデルはミニハムバッカーを採用していましたが、1966年から1969年にかけて生産されたノン・リバースモデルは、IとIIIがP-90を搭載していました。
また、鳥が羽を広げたようなレイ・ディードリットのデザインした形状のリバースモデルに対して、ボディもこぶりになり、普通のギターに近づけています。スルーネック構造から通常のセットネック構造になっています。
ぶっちゃけ、ノンリバースのP-90のモデルは数も少なく、なかなか見かけませんが、マホガニーの薄めのボディに歯切れと太さを持つP-90の組み合わせは、とても理にかなうものではないかと思いました。
エピフォン・カジノ
現行のエピフォン・カジノ
セミアコというよりは、構造的にはフルアコになるギターを紹介します。ハウリングと鳴りを抑制するための5プライ構成の表板などで、セミアコっぽい扱いをされているのが、Epiphone Casinoです。
元々は独立した会社だったエピフォンは、1961年にギブソンに買収されました。そしてギブソン・ES-330の別ブランド製品として、1961年に登場したのがカジノです。ビートルズの使用によって、元のギブソンよりも有名になってしまいました。
海外生産される前の1960年代は、ギブソンのカラマズー工場で生産されていたため、エピフォン・カジノは、同時代のギブソン系ギターに勝るとも劣らない品質のギターでした。
ドッグイヤータイプのP-90を2基マウント(1基のモデルもある)し、センターブロックがない故の甘く太いトーンや、ES-335系のギターと異なる生鳴りなどが特徴のギターです。
初期モデルは、16フレットでジョイントされたセットネックとなっており、ハイポジションのプレイアビリティは高くないモデルでした。1968〜1969年に製造されたモデルでは、19フレット仕様になっています。
P-90の特性とマッチした4機種
2019年製 ギブソン・SG・スペシャル
今回紹介した4機種は、どれもP-90の特性とマッチした構造のギターが多いです。ジュニアやスペシャルは、廉価版故にシンプルな構造にした結果、ハムよりも歯切れのいいP-90の持つトーンに合った構成になっていますし、カジノやES-330はふくよかなトーンが特徴にもなっています。
今回紹介したギターの大半は、現代でも生産され続ける定番モデルとなっています。ハムPUとは異なるP-90の特性を好むギタリストが、これらのギターを使い続けたおかげで、ジュニアや、スペシャル、カジノは廃盤されずに(中断はあったが)残っています。
ノンリバースのファイヤーバードも、カスタムショップや限定バージョンで、たまに作られています。個人的には、このあたりの定番モデルが好きなのですが、次回はギブソン系列とは異なるメーカーなどのP-90を搭載したギターなど紹介します。
ピンバック: ギブソン系のシングルコイル!P-90特集その1:歴史と特徴 | K.T Dogear+
ピンバック: P-90特集!その3:P-90を搭載したイレギュラーなギターを紹介! | K.T Dogear+