ヤマハ R1-Z:最後の2ストネイキッドクォーター

1999年に、バイクメーカーが2ストロークバイクの販売を中止するまで、販売されていたネイキッド2ストローク車が、ヤマハR1-Zです。RZ250から続くネイキッド2スト車最後のバイクR1-Zを解説していきます。

過激な出力特性を抑えて乗りやすいネイキッドに!

ヤマハ R1-Zは正確には、アールワンズィーと読みます。筆者は、今回の記事を書くまでアールワンゼットと読んでいました(大汗)。そんなボケが解説するな!というのもおっしゃる通りなのですが、クオーターバイクが400ccのバイクと互角以上にやり合えた時代を知っているので、書かせて下さぃ(小声)。

筆者が子供の頃から憧れていたバイクの一つに、ヤマハのRZ250がありました。2ストロークネイキッドの代表格で、350ccのエンジンもポン付けできたので、ナナハンキラーと呼ばれていたバイクです。

バイクブームの1980年代は、とにかく峠が熱かった時代です。特に軽くて鬼のように速い2ストローク250ccマシンは、当時の花形でした。サスペンションの問題とか、タイヤの性能を抜きにして語れば、4ストローク全盛の今の250ccマシンでは、80~90年代の2ストマシンにはどう足掻いても勝てないでしょう。

そんな、時代の空気が色濃く残っている1990年に登場したのが、ヤマハ R1-Zです。R1-Zは、レーサーレプリカTZR250と同じエンジンを公道仕様に中低速寄りにチューンして搭載しています。

当時の2ストレプリカの中低速はカスカスで、公道では乗りにくい特性だったので、これは正解でしょう。簡単にいうと、過敏なエンジン特性を抑えて、街乗りでも普通に扱いやすいチューニングを施したということです。

この扱いやすくなったパラツインと、鉄製のトラスフレームの美しさと、片側2本出しチャンバーが、R1-Zのいいところです。

2ストロークは悪者扱い!最後まで生産した意地の1台

1990年のウェイン・レイニーとYZR500

R1-Zが、販売開始された1990年代は、2ストローク車の受難の時代でした。まだ、MotoGPが始まる前の時代で、2輪のロードレースでは世界選手権の最高峰が、2ストローク500ccだったのです。しかし、レース用のマシンと違って、販売用のマシンは、徐々に排ガス規制によって、2ストロークが少なくなっていきました。

なぜ、2ストが速いのか?という点については、エンジンの構造の問題です。4ストロークエンジンが、4行程必要なことを文字通り2行程で済ましているからです。これにより、クランクシャフト1回転あたりの出力が、4ストロークよりも圧倒的に高くなります。

2ストロークは、排気ガスを丁寧に処理することが困難になっていたり、パワーバンドがピーキーになってしまう欠点もあります。小排気量のエンジンに向いていることから、主にオートバイのエンジンとして用いられることが多いです。

実体験として、2スト車のチャンバーから、白煙が吹いていた光景があります。あの白煙には、オイルが混じっていたりして、2スト車の後ろにつくのは嫌でした。2ストは、4ストと違ってオイルも消費していくので、常にオイルを用意する必要がありました。


しかし、実際に走ってみると、同じ排気量の4スト車より圧倒的に速い!250ccクラスは、4ストロークが軟弱に感じられるほどでした。そんな王様のような2ストロークも環境問題がクローズアップされるにつれ、徐々に問題視されるようになってきたのです。

排ガス規制が、年々厳しくなっていく中、NOxやらNO2といった有害な物質を多く含んだ2ストロークの排気ガスは規制の対象となっていきました。当時のオートバイメーカーも対応に苦慮するようになり、2ストロークマシンは徐々に開発されなくなっていったのです。

そんな時代の変化によって、せっかく登場したR1-Zも販売中止になるのか、と思っていました。ところが、ヤマハは1999年までの9年にわたってR1-Zを生産し続けました

ホンダのように新規開発のCRM250AR(排ガス規制に適応するための新機構を搭載)というバイクを登場させるのではなく、あくまでも最後のRZ系のバイクを作り続けたのです。これは、2ストロークのヤマハの意地だと思います。当時は、漢(オトコ)らしいヤマハの対応に感激して、俺もR1-Z欲しい!と思っていました。

R1-Zの実力とは?

出典 https://www.webike.net/

RZ250や、RZ250Rと異なるポイントとして、当時はTZR250RというV型2気筒の新型レプリカが、R1-Zが販売された翌年に販売されました。サーキット走行や峠などでは、TZR250Rが、街乗りやツーリングを含めたオールラウンドな使い方にR1-Zという棲み分けができていました。

あえて、車体剛性落としてまで鉄製のトラスフレームにしたのにも、扱いやすくするためという、ちゃんとした理由があったのだと思います。当時のプロジェクトリーダーの竹本氏が大事にしたことは、「乗っていてどうか」ということです。あえて、しなやかさを演出するという狙いとおりのマシンに仕上がっています。

最高出力は、1990年の自主規制いっぱいの45PS、1992年の後期型において、自主規制の40PSとなったため、出力は5PS低下しました。

※R1-Z(前期型)のスペック

ヤマハR1-Z
最高出力 PS/rpm 45/9,500
最大トルク kg・m/rpm 3.7/8,500
車体重量(乾燥重量)kg 133
車体サイズ mm 2,005×700×1,040
燃料タンク容量 L 16
使用燃料 無鉛レギュラーガソリン

車両重量が乾燥重量で、133kgと軽量でパワーが45PS、トルクは3.7kg・mですので、今の400ccクラス以上の運動性能を誇っています。これなら当時のレプリカの400ccとも互角に渡り合えたというのも納得できます。

レプリカのTZRよりもマシとはいえ、前傾が少しきつめのセパレートハンドルです。扱いやすいギア比といっても2ストならではのじゃじゃ馬感があり、カン回すととても楽しいマシンです。

とはいえ、ネイキッドマシンとしてツーリングにも使用できる懐の広さもあり、バリバリのレプリカにはない街乗りのやりやすさもあります。燃費は、キャブが完調でも4スト車よりは、悪いでしょう。

今のバイクにはない魅力のある2ストローク車として、30年近く経った今でも魅力のあるマシンが、ヤマハ R1-Zなのです。

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