豊作だった2018秋アニメ!その1

2018年の秋アニメも2019年の1月で完結しました(2~3クール作除く)。秋アニメのレベルは高く、僅差での順位になりました。あくまでも個人的なアニメランキングなので、その点はご了承ください。

第1位:青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない

出典 https://ao-buta.com/ バニーガール姿の桜島麻衣

『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(通称青ブタ)は、鴨志田一原作のライトノベル、青春ブタ野郎シリーズのアニメ化作品です。青ブタのアニメシリーズは、電撃文庫25周年記念作となっています。

ぶっちゃけ、最初は長くて変なタイトルのアニメとしか思っていませんでした。しかし、1話からバニーガールの姿で図書館をうろつく、ヒロインの桜島麻衣が、「思春期症候群」の影響で、他人から認知されなくなっていくという奇抜な設定に惹かれました。

この場合、他人から認知されなくなっていくというのは、存在しないのと同じになってしまうことなのです。主人公の梓川咲太は、眠ると麻衣のことを忘れることに気づいて、眠らないように連日徹夜します。そんな咲太の限界を超えた寝不足を見かねた麻衣は、こっそり睡眠導入剤を飲み物に混ぜて眠らせます。

そして、咲太すらも舞のことを忘れてしまうのですが、あることがきっかけで思い出します。その直後、テスト中の教室を飛び出し、麻衣に全校生徒の前で告白するのです。その行為こそが、舞を人々に認知させるものでした。麻衣の認知されない思春期症候群は消滅し、平穏な学園生活に戻ったように見えたのですが・・・。

青春ブタ野郎シリーズの1巻である『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』が、ちょうどアニメの3話までになるようです。2巻の『青春ブタ野郎はプチデビル後輩の夢を見ない』は、アニメの6話までとなっていて、3巻は8話まで、4巻は10話までとなっています。

各エピソードで、時間を繰り返す能力(厳密には未来をシュミレートする能力)だったり、ドッペルゲンガーだったり、存在をお互いに入れ替えたりと、様々な思春期症候群と咲太は対峙して、解決していきます。量子力学などのSF的考証は、ヒロインの1人で友人の双葉理央が相談役として解説してくれます。

毎回、巻ごとのヒロインは交代していくのですが、咲太にとっての彼女は常に麻衣です。シリーズ通じて、麻衣と咲太の仲が進展していくのは、とても好ましく描かれています。そんな中、5巻である『青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない』の内容が、11話~テレビシリーズ最終話の13話までとなっています。

出典 https://ao-buta.com/ 健気な妹かえでとネコのなすの

ぶっちゃけ、この話は涙無しでは見られません。主人公、咲太の妹梓川かえではてっきり不登校だけだと思っていました。ところが、かえでは解離性同一障害による、交代人格だったので、過去の自分の記憶がまったくなく、体中に痣や傷が出る思春期症候群も併発していました。

通っていた中学で、主人格である梓川花楓がいじめを受け、解離性同一障害を発症してしまった2年前から、かえでとして生きていた妹と、家族がバラバラになっても妹との暮らしを選んだ兄という2人を主軸に物語が動きます。つまりこの章でのヒロインは妹のかえでです。

かえでは、外出することすら恐怖を感じていました。しかし、兄に麻衣という彼女ができたことで、兄の負担を減らそうと、目標を立てます。外からの電話で会話したり、外出してプリンを買ったり、目標を次々と健気に頑張ってクリアしていきます。

そして、咲太と動物園に行ってパンダを見て、夜間の学校に行って総ての目標を暫定的とはいえクリアしたかえでは、次は昼間の学校に行きたいと咲太に告げます。その翌日、花楓の意識が戻り、かえでは消失します。消えてしまったかえでの存在はあまりに大きく、咲太は叫び、苦しみます。

しかし、咲太の初恋の人牧之原翔子が現れ、咲太をなぐさめ、かえでの日記を読みます。そこには、咲太の支えによって必死に生きてきたかえでの気持ちが書かれており、咲太は涙を流さないことを誓います(泣くわ!こんなん)

ラストは、麻衣と仲直りした咲太と検査のため入院していた花楓が退院するところで終わります。花楓は、かえでの残した日記を読み、自分が1人でなかったことを知ります。

出典 https://ao-buta.com/ 主人公の梓川咲太

思うに、かえでから花楓に戻るきっかけとして、かえでの努力が不可欠だったのでしょう。あまりにも負荷のかかる出来事があった場合、主人格から交代人格にシフトすることは、誰にでもある可能性なのです。交代人格が、主人格ではなしえなかったことを達成したので、元の人格に統合されたのではないでしょうか?

ロボットや、タイムマシーンなどが出なくても、SFとして充分に成り立っており、思春期症候群という設定がしっかり生きています。それに加えて、麻衣や理央、かえでのような魅力的なヒロインの持つ内面の問題や、叙情的な表現など、様々な要素のある傑作です。

秋アニメは、まれに見るほど優れた作品が多く、どの作品を1位にするか迷うところなのですが、個人的には、1位は青ブタで間違いないと思っています。アニメ制作は、A-1 Pictures高円寺スタジオから改称したCloverWorksで、監督は増井壮一です。

劇場版の『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』が、2019年初夏に公開予定で、今から楽しみです。

第2位:色づく世界の明日から

出典 http://www.iroduku.jp/ 主人公の魔法使い月白瞳美

『色づく世界の明日から』は、最後まで1位にするか迷った作品でした。というのもP.A.WORKS制作による本作の作画は、今季最高水準で、色の表現が特に素晴らしく、脚本も良かったからです。また、オリジナル作品というのもポイントが高く、青ブタの妹の話がなかったら1位になっていたかもしれません。

主人公の女子高生、月白瞳美は、2078年の時代の魔法使い。ある理由から、魔法を嫌悪し、自分の幸福を望まなくなった心を閉ざした少女です。祖母の月白琥珀の魔法によって、時間を遡り、60年前の2018年にタイムスリップします。

タイムスリップしたのは、同じ長崎で祖母の家である魔法家に居候することになり、同学年の祖母、琥珀も留学先から戻ってきます。南ヶ丘高校の写真美術部に2人とも在籍することになり、魔法写真美術部として活動していくこととなります。

瞳美は、心因的な色覚異常で、世界をモノクロでしかとらえられません。最初、写真美術部に勧誘されても入部をためらったのは、それが原因です。しかし、写真にモノクロがあることを知り、入部します。

色づく世界の明日からというタイトルは、瞳美の色覚からきているタイトルです。瞳美視点での色が付いていないモノクロの世界と、写真美術部の先輩、葵唯翔の絵によるカラフルな世界が対比として、存在しています。実はモノクロ写真は陰影によってカラー写真よりも叙情的な世界を表現できます


この作品で秀逸なのは、透過率を利用した光の表現(新海誠作品が代表的)に加えて、エンディングのモノクロの世界観と、デジタルによる絵画のような色彩を用いた色の技術の引き出しの多さです。1位になってもおかしくない革新的な作品だと思いました。

唯翔の絵は、パステル画のような色彩です。瞳美は、唯翔の絵を見ると色彩を感じられ、そのことがきっかけとなって唯翔に惹かれていきます。瞳美は、長崎の美しい景色を、魔法写真部のメンバーと共に、写真に撮ったり、琥珀と魔法を部活で披露していくうちに、魔法に対する嫌悪が薄れ、友人に心を開いていきます。

しかし、時を遡ったことによって、突然瞳美の姿が消えるなどの影響が出てきます。琥珀は瞳美を元の時代に戻すため、時間魔法を新月に行うことにするのです。

出典 http://www.iroduku.jp/

秀逸な色彩の表現ー月の光の微妙なコントラストをうまく表現している

最終話で、未来の2078年に戻った瞳美と、ようやくちゃんと向き合うことができるようになった2人の少女(同級生?)は、写真美術部のメンバーの孫だと思います。また、瞳美の祖父はおそらく琥珀が通っていた古本屋の店主です。

出来れば、後日談などもしっかりやって欲しかったですが、色々と説明くさいラストより綺麗に終わって良かったと思います。瞳美の墓参りは、ひょっとしたら写真美術部のメンバーかもしれません。最後の唯翔の絵本が瞳美が幼いころに色彩を唯一感じられた絵本だったという伏線の回収もしっかりしていて、秀逸な脚本だったと思います。

監督は、あの出崎統の下で助監督をしていた篠原俊哉で、近年では『凪のあすから』などのP.A.WORKS作品を手がけています。シリーズ構成は、『坂道のアポロン』、『宇宙兄弟』柿原優子です。

第3位 INGRESS THE ANIMATION

出典 http://ingressanime.com/ 主人公の翠川誠 特殊能力を持つセンシティブ

“INGRESS THE ANIMATION”は、フジテレビのノイタミナ枠とは違う新しいアニメ枠である“+Ultra”で放送されています。+Ultraは、海外での展開を目指した作品作りをするというコンセプトで設けられた番組枠です。大友克洋が番組ロゴを担当するなど、既存のアニメを超えたものを作るという気概を感じます。

実は、イングレスは、ゲーム原作のアニメでもあります。イングレスは、スマホ向けの位置情報ゲームで、1400万ダウンロードされています。オープニングとエンディング曲をイギリスのバンドalt-Jが担当しています。このオープニングは、アニメの秀逸さと曲の良さで、今季最高の出来です。

また、アニメ制作においても3DCGを多用するなど、テレビシリーズとは思えない作画の質の高さです。最近の3DCGを使ったテレビアニメとしては、『亜人』や『シドニアの騎士』ですが、それらの作品と比較してもCRAFTARの技術は高いです。CRAFTARは、『花とアリス殺人事件』スティーブンスティーブンが改名した制作会社です。

イングレスのゲームはやったことありませんが、ポータルというポイントにあるXMという物質は、人間の心身に多大な影響を及ぼします。パワースポットなどの古代遺跡に、多くのポータルが存在していて、XMによって特殊な能力を発揮するのが、センシティブと呼ばれる特殊能力者です。

おそらく、イギリスでレイライン、東洋では龍脈と呼ばれる地中に流れる気のことをXMという粒子で表現しているのでしょう。ストーンサークルなどの古代遺跡は、レイラインの気の力の強いところに建てられており、古代の人々はそこを聖地として崇めました。

主人公で特殊捜査官だった翠川誠は、サイコメトリー(物質から記憶を読み取る能力)を最初から持っていて、センシティブに覚醒してから更にその能力が拡大します。

XMを可視化でき、かつ増幅したり言語化できる能力を持つ、ヒロインであるサラ・コッポラを巡って、ヒューロン社と対立します。また、未来予測と驚異的な身体能力を持つジャック・ノーマンと誠は手を組んでヒューロンに連れ去られたサラを救出に向かいます。

全11話で、物語の起承転結がしっかりとしています。誠とジャックの旅も、冒険活劇の要素を多分に含まれており、想像した以上の出来でした。

しかし、少し惜しいところは、最終話でサラとジャック(ジャックはおそらく死亡)の生死がはっきりしないところでしょうか。それと、エヴァの人類補完計画のようなシチュエーションは必要だったのでしょうか?

最終話でのテロップによると、続きがあるような感じでしたが、綺麗に終わっていれば、1位にしていたかもしれないアニメです。海外ドラマのような国際的な感覚があり、年齢層も高めに設定されていたと思います。誠は30歳くらいで、サラは20代、ジャックは40歳くらいの年齢設定です。

監督は、デジタル技術の気鋭のクリエイター櫻木優平で、脚本は月島総記を代表とするチーム月島です。次の+Ultraは、谷口悟朗監督の”revisions”で今から楽しみです。

その2に続く

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