2016年の三菱に続いて、スバルの燃費データ改竄問題も新たな事実が出てきました。ネットの普及で実燃費を実際のユーザーレビューを気軽に見られるようになったので、クルマを購入するときにカタログデータを鵜呑みにすることは減りました。スバルの水平対向エンジンの特徴と、カタログ燃費と実燃費の違いについて解説します。
スバルの水平対向エンジンの燃費について
WRCのベース車として人気のあったインプレッサ STi
そもそも、スバルの車は水平対向エンジンを搭載しています。昔は、直列エンジンも作っていたのです。スバルは自動車メーカーとして、あまり大きくない企業規模の関係から水平対向エンジンのラインに統一することにしたのです。
スバルは、1960年代のスバル1000から水平対向エンジンを搭載しています。ガソリンを燃焼させるシリンダーを水平にして、重心を低くでき、且つ振動を相殺できるというメリットがあります。
ボクサー(BOXER)エンジンとも呼ばれる水平対向エンジンですが、デメリットもあります。エンジンの幅が広くなることと、特殊な形状のため修理やオイル交換の工賃が高いことです。
ショートストロークで、高回転に強い特性を持つ水平対向エンジンですので低回転に弱いのです。燃焼効率の問題で日本の市街地での水平対向エンジンの燃費は、あまりいいとは言えません。
しかも、スバルは4WD(四駆)で有名なメーカーです。2WDよりもタイヤ4つに駆動力のかかるスバル車は、燃費のいい車とはいえないのです。しかし、雪道や悪路に強いイメージがあり、1990年代のWRCでトップクラスの実力のあったメーカーです。
水平対向エンジンの回転フィーリングにもファンが多く、スバリストと呼ばれています。しかし、今のエコ中心のクルマ市場の影響で、2010年から生産されているFB型エンジンでは、ロングストローク化によって燃費性能の向上をしています。
とはいえ、スバルの主力エンジンが、水平対向エンジンである以上、エコ全盛の時代では厳しいのでしょう。そういったことから、今回の燃費不正に繋がった可能性はあります。
カタログ燃費と実燃費の違い
マツダCX-3
最近では、カタログ燃費を信用せず、インターネットなどで実燃費を参考にするケースが増えてきました。僕もクルマとバイクの燃費は、価格comやみんカラなどのユーザーの投稿の方が実燃費に近いと思います。
2011年から義務化されているJC08モードは、日本の国土交通省の燃費測定方法です。それまでの10.15モードよりも厳しい規定とされていますが、主にシャシダイナモメータ(測定用のローラー)によって行われ、8.171kmを走行した結果によって燃費を割り出しています。
もちろん、車種によっての違いはありますので、テストコースでの走行抵抗値を負荷設定して、シャシダイナモで測定しています。しかし、この測定方法でも実際の燃費とは大きく乖離しており、実燃費はカタログ燃費の6割~7割といわれています。
2018年10月から国土交通省の定めた燃費基準は、国際基準であるWLTPに移行することになっています。主な特徴は、コールドスタート(エンジンが冷え切った状態)がJC08モードの25%から100%に変わったこと、アイドリングの比率が29.4%から15.4%が変わったこと、荷物を載せた状態を想定してテストされることです。
これにより、今後はアイドリングストップ機能の燃費測定上の優位性は少なくなると思われます。また、実燃費にJC08モードよりは近くなると思われます。マツダはWLTCモードとして、国際基準の燃費測定方法を他のメーカーより先駆けて明記しています。
※マツダ CX-3のカタログ燃費
車種 | JC08モード燃費 | WLTC燃費 |
CX-3 スカイアクティブ-G 2.0 4WD | 16.6km/L | 15.2km/L |
こうしてみると、WLTCもしくは、WLTPでは実燃費の7割~8割ほどになると予想されます。JC08モード燃費よりも、WLTPで表記された方が実燃費に近い数値が出ているので、カタログスペックで参考にするならWLTPの方がオススメします。
インプレッサG4の実燃費について
現行型インプレッサG4
今回は、スバル インプレッサ G4(セダン)で実燃費とカタログ燃費を比較してみます。インプレッサ G4は、JC08モードでリッターあたり15.8km(2.0L 4WD仕様車)というカタログ数値です。
実際に購入したユーザーからの情報で、市街地8km/L~高速17km/Lが2人、平均して10km/Lが1人です。試乗ユーザーでは、平均燃費12km/Lが2人です。ということは、平均でリッターあたり11.5kmといったところでしょう(価格comユーザーレビュー参照)。
11.5割る15.8で、0.727ですので、だいたい7割ということになります。2リッターの水平対向4気筒で4WDだとこれくらいが妥当なところだと思います。このように実燃費を計算してみると、道路の状況や信号の多さ、使い方によって偏差はありますが、おおむねカタログ数値の6~7割といった燃費となっています。
車種 | JC08モード燃費 | 実燃費(価格comなど) |
インプレッサG4 (2.0L AWD) | 15.8km/L | 11.5km/L |
特にストップアンドゴーの多い、市街地ではリッターあたり8kmと悪く、逆に2リッターエンジンの余裕のあるパワーの生かせる高速道路ではリッターあたり17kmとカタログスペック以上の数値が出ています。
インプレッサ G4は、兄のアクセラを購入するさいに試乗したクルマです(試乗したのは1.6L仕様車)。印象としては、スバルらしいハンドリングの良さや、1.6リッターでも充分なパワーなど魅力のある車です。今回の燃費の不正は非常に残念ですが、企業体質を見直して、いいクルマを作っていってもらいたいです。
スバル車のいいところは、4WDの質の高さとボクサーエンジンのレスポンスの良さです。クルマを積極的に楽しむスバリストにとってはいいクルマです。どうしても燃費が気になるならハイブリットカーか、フィットのような燃費のいいコンパクトカーという選択肢もあります。
このように実燃費というのは、メーカーのカタログスペックよりもユーザーの声の方が参考になります。ただ、新型車などでデータが少ない場合は、JC08モードの場合は6~7割、WLTPの場合は7~8割と考えた方がいいでしょう。
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